騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

文字の大きさ
上 下
41 / 69
副団長 × アミル

選ばせるつもりのない

しおりを挟む
 

 中央騎士団も到着して、ようやく引き継ぎを終えて帰還することになった。
 これほど早く引き継ぎが終わったのはカイルを始めとした先輩たちの働きのおかげだろう。
 当然アミルも働いたが逐一指示を聞きながらのアミルに対して、手順を把握している先輩方はカイルの無言の圧力を受けあちらこちらと走り回っていた。



 帰途に就く馬上では先輩たちがやっと終わったとぐったりした顔をしていた。
 馬の脚も遅くなっているような気がする。
 時折後ろを確認しているカイルもダレた空気に気づいていて笑みの奥で何か考えているようだった。


 しばらくしてカイルが馬の脚を緩めて振り向く。

「今日は町まで行って休むよ」

 あと少し頑張りなという言葉に先輩たちが歓声を上げた。
 先輩たちは本当に大変だったからか、ゆっくり休めると聞いて急に元気を取り戻す。

 現金なもので再び進み始めた脚は早くなっていた。
 引き継ぎがスムーズにいったおかげで日程に余裕があるのも理由の一つだろうし、ずっと働き詰めにさせていたから休ませたいというのもあるんだろう。

 けれど嬉しそうな先輩たちに対してアミルは複雑な思いだった。
 先輩たちが喜びの声を上げていた時、カイルの目はアミルを見ていた。

 誘うような意味ありげなものではなく、ただじっと。

 微かな期待と不安。
 胸を騒がせるのは期待の方が強いから。

(ああ、落ち着かない……)

 先頭を行くカイルは何を考えているんだろう。
 それ以上考えるのは止めて無心で足を進めた。





 町に入り喜び勇んで宿を出て行く先輩たちを見送る。アミルも食事に誘われたけれど軽くすませるからと断った。

 外に食べに行こうか買って来ようかと悩む。
 とりあえず動こうと部屋を出たところでカイルに捕まった。

「アミルはこっち」

「はあ……」

 反論する気もないので黙ってついて行く。
 取られたままの腕を離してくれと言う気も起きない。
 逃げられないように腕を掴んだまま歩くカイルを後ろから見つめる。
 アミルから表情は見えない、けれど。
 今、笑みを浮かべてないのだけはわかった。

「……何笑ってるの?」

 黙ったままのアミルを不審に思ったのか振り返ったカイルが訝し気な顔を見せる。

「笑ってました?」

 自覚はあったけれど誤魔化す言葉を選ぶ。
 曖昧に問うのでもなく笑みで誘うのでもなく、一方的に言い渡すような言葉に掴んだ腕。
 選ばせるつもりすらないそれに喜びを感じた。

 まあいいけど、と追及しないカイルは気づいているのか。
 いつも望む答えを選ぶように仕向け回答を操っていたカイルが、選択すら与えないのは初めてだってことに。
 それが嬉しい。勝手に口が緩むくらい。
 足早に進むカイルがアミルを連れて入ったのは騎士団で取ったのとは別の宿だった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました

むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...