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団長 × アミル

顛末と事後処理

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 男たちを捕らえ聴取を済ませた騎士団が次に向かったのは領主の館。
 平静を装いたいのか薄ら笑いを浮かべて虚勢を張る領主へ団長が罪状を突き付ける。

「魔獣の卵の不正取得、それから禁止されている魔獣の売買、飼育。
 管轄の騎士団の一部を取り込み目こぼしをさせていたことも把握している。
 もはや言い逃れのできるものではない」

 大人しく縄に付けと言い渡されても領主の顔にはまだ笑みがあった。

「騎士団への口出しは認めるがその他の魔獣の飼育や卵の不正取得などは私には関係のないことだろう。
 不正な手段で得た卵を購入しようとしたことは確かだがそれで魔獣飼育の罪まで擦り付けるのは感心しないな。
 騎士団の不祥事を紛らわすために手柄が必要なのな理解するがもう少し穏便なやり方というものがある」

「……そうか、町に魔獣を引き寄せさらには騎士を魔獣に襲わせ殺害しようとした罪まで付けてほしいと、そういうことか」

 領主がぎょっとして目を見開く。

「バカな!
 町に魔獣が来てしまったのは不慮の事故だ! この町が襲われ壊滅でもしたら私だって困る!
 まして騎士の殺害など……!」

「お前が魔獣の卵を優先的に買い入れるために不正飼育をしていた男を見逃していたのは事実だ。
 ブラッディホークの幼体を取引現場まで連れてこさせたことも聞いている。
 そしてその結果町がブラッディホークに襲われた」

 原因を作った責任は領主にもあると告げられ事態のまずさに顔を青褪めさせる。

「お前の部下も捕らえているが、男からブラッディホークを買い取り飼育を始めるつもりだったそうだな」

「まだ何もしていない!!」

 悲鳴のような声で否定を叫び慈悲を仰ぐが、騎士団も国もそこまで甘くなかった。

「知ってるか?
 売買が成立した時点で飼育権は移っているんだ。
 つまりお前はもうブラッディホークの飼育を始めていることになる」

 机に乗せた手はぶるぶると震えていてもう平静を取り繕うこともできないようだ。

「そしてお前が否定していた騎士を魔獣に襲わせようとした殺害未遂のことだが」

「そうだ! それだけは違う!
 私は何も指示していない! 関わっていないんだ!!」

 領主の必死の懇願に帰って来たのは冷たい瞳だけだった。
 その視線に領主は震え上がる。
 邪魔だった騎士団を息のかかった者を利用し鼻の利く者や懐柔できそうにない者を貶め排除してきた領主にはがありありと浮かんでいた。
 鋭い眼光のまま口を開かない団長に代わり側に控えていた騎士が口を開く。

「それはこれからの聴取で明らかになるでしょう。
 謂れのない罪まで押し付けることはしませんので快くご協力ください。
 ……我々が寛大なうちに」

 絶望に落ちた思考で領主はその微かな救いに飛びついた。
 これで聴取は速やかに済むだろう。連行される領主の背には抗い罪を軽くする気概はもうない。
 洗い浚い知っていることを話し必死に罪を重ねられるのを拒むはずだ。そうなれば聴取が楽になる。
 救援から始まった異常事態の事後処理の面倒さを思いながら騎士たちは館の捜索に入った。







 領主も絡んだ魔獣飼育の一件は世間よりも騎士団本部へ衝撃を与えたようだ。
 彼の騎士団の内部へ広範囲に及んだ汚職と不正を一掃するのには時間と人員がかかる。
 王宮も事態を重く見て中央の騎士団を派遣することに決まった。

 僕たちはといえばここの騎士団の代わりに討伐に向かったり、怪しい動きをする者がいないかを警戒し、それを報告書に綴る日々を過ごしている。
 腐敗の進んだ騎士団だが拘束するにはこちらの人数が足りず、また中央騎士団の先遣隊が調査を進めているらしいのでそちらは放置して自分たちにできることをしていた。
 ここの騎士団は謹慎という形になっており、一部の不正に関わっていないことが確認された騎士のみ中央騎士団と連携して職務に当たっている。
 アミルたちが所属する騎士団への救援要請も正式な物ではなく、一度目の魔獣の襲撃にまともな対処をしようとしなかった上層部に業を煮やした一部の騎士によるものだったことが確認された。団長曰く不正は不正なのでお咎めなしとはいかないようだが内情を監査してやむなしと判断される可能性も高いそうだ。

 そんなわけで腐敗の一掃に忙しい中央騎士団の先遣隊と謹慎中の騎士たちに代わりアミルの所属する騎士団が魔獣の討伐や町の治安維持などを行っている。
 中央騎士団の本隊が到着するまでの暫定的な措置だという。

 魔獣飼育の件は領主の素直な自白もあって事件自体は早く片付いた。
 貴族の、しかも領主が絡んだ一件ということでこちらには王宮から人が来て領主代行をしているとか。
 他の不正がないかも改められ、それが済み次第捕らえられた領主の罪が確定する。
 事件としてはもうこちらの手は離れているけれど、王宮へ報告するための書類の作成に団長は忙殺されていた。
 カイルを連れてくれば良かったとまで言っていたので余程大変なのだろうと同情する。
 そう言いながらも当然ながら書類は速やかに作成し、中央騎士団への引き継ぎは滞りなく終わった。


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