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第1話
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-キンコンカンコーン…
授業終了の鐘が鳴り、教師が出ていく。
一気に騒がしくなる教室。
俺は大きく伸びをしてから席を立つ。
周りの生徒たちも続々と立ち上がり、友人と集まってこの後の予定を話し合っている。
俺はカバンを肩にかけ、教室を出ようとした。
「廉様」
「……」
ああ、またか。
名前を呼ばれた方を向くと、そこには案の定見覚えのある、一人の男子生徒が立っていた。
むかつくくらい整った容姿をしている。
「お疲れ様です。この後はどうされますか?」
「…帰るよ…自分の部屋」
「お送りいたします」
「いいって」
「廉様!」
また違う俺を呼ぶ声が教室に響く。
今度は少し高めの聞き慣れた声。
見ると華奢な男子生徒が自分を見て微笑んでいる。
こちらも美少年と言って差し支えない容姿をしている。
「お疲れ様です!お帰りですか?お荷物お持ちします」
ああもう、わらわらと…
「いいって。重くないし、一人で帰る」
「えっ、でも一人じゃ危ないですよ」
「そうですよ。廉様を狙う輩は多いんですから」
「自分の身くらい自分で守れる」
「ですが、」
「椿」
「っ、はい…」
「梓」
「っはい」
「俺の親衛隊なら俺の言うこと聞けるだろ?」
二人の男の名前を呼んで、目を見つめながら言う。
こいつらには、これが一番効く。
「///…わかりました」
「はい///」
予想通り顔を真っ赤にして、二人の男は俺の望む言葉を述べた。
「いい子。じゃあな」
赤い顔のまま呆けたようにその場に立ちすくむ二人を残し、俺は教室を出る。
廊下を歩き、自分の寮部屋に戻る合間にも、すれ違う男子生徒はチラチラと俺に視線を送ってくる。
自分でも信じられないが、俺はこの全寮制男子高校でかなりモテる。
男が男に好意を抱くなんて考えもしていなかったが、この学校では普通のことらしい。
入学してから何度も男に告白されたし、体の関係を持ちたいとストレートに迫ってくるやつもいる。
この学校で人気のある生徒には親衛隊が組織される。さっきの生徒達は俺の親衛隊で、椿はその隊長だ。
身の回りの世話をしてくれたり、俺を狙う変なやつから俺を守ってくれたりする。少しお節介だったり鬱陶しく感じることもあるけれど、そういう時はさっきみたいに相手を見つめたり、頭を撫でたり壁ドンしたりしてやれば言うことを聞く。
冗談だと思っていたが、どうやらあいつらは本気で俺のことを好きらしい。
俺なんかのどこがいいんだか…
曲がり角を曲がる。
と、その時、体にドンッと衝撃を感じた。
「っ」
向こうからも人がやってきていたようで、俺は気付かずぶつかってしまったらしい。
目の前の生徒がふらつき、バサバサと何やら本が落ちる音がする。
見ると廊下に何冊もの教科書が散らばっている。
「悪い。」
「いや、こっちこそ」
「…よっと」
落ちた教科書を拾い上げ、相手に差し出す。
相手は知らないイケメンだった。
「はい」
「ありがとう……っ!?」
黒髪の、背の高い男子生徒。
彼は俺を見ると、少し目を見開いて固まってしまった。
え、何?
「…なに?」
「っ、いや、…なんでもない」
「?…気をつけてね」
俺はそのままその場を去ろうとした。
「あ、あのさ!」
「ん?」
「名前、聞いてもいいか?俺は水野達也」
「…俺のこと知らない?」
ナルシストかもしれないが、俺はこの学校ではそこそこ有名だと思ってた。
「有名人…なのか?悪い、俺編入してきたばかりだから、まだ、何も知らなくて」
「へぇ編入生なんだ。俺は五十嵐廉。一年だよ」
「俺も一年なんだ。あのさ、寮の103号室ってどこか分かるか?まだ慣れてなくて、帰りたいんだけど、迷っちまって」
「ああ、分かりにくいよな、この学校。いいよ。一緒に行こうか」
「え、いいのか?」
「うん。俺の寮部屋とめっちゃ近いし、俺も今から帰るとこだから」
「助かる」
授業終了の鐘が鳴り、教師が出ていく。
一気に騒がしくなる教室。
俺は大きく伸びをしてから席を立つ。
周りの生徒たちも続々と立ち上がり、友人と集まってこの後の予定を話し合っている。
俺はカバンを肩にかけ、教室を出ようとした。
「廉様」
「……」
ああ、またか。
名前を呼ばれた方を向くと、そこには案の定見覚えのある、一人の男子生徒が立っていた。
むかつくくらい整った容姿をしている。
「お疲れ様です。この後はどうされますか?」
「…帰るよ…自分の部屋」
「お送りいたします」
「いいって」
「廉様!」
また違う俺を呼ぶ声が教室に響く。
今度は少し高めの聞き慣れた声。
見ると華奢な男子生徒が自分を見て微笑んでいる。
こちらも美少年と言って差し支えない容姿をしている。
「お疲れ様です!お帰りですか?お荷物お持ちします」
ああもう、わらわらと…
「いいって。重くないし、一人で帰る」
「えっ、でも一人じゃ危ないですよ」
「そうですよ。廉様を狙う輩は多いんですから」
「自分の身くらい自分で守れる」
「ですが、」
「椿」
「っ、はい…」
「梓」
「っはい」
「俺の親衛隊なら俺の言うこと聞けるだろ?」
二人の男の名前を呼んで、目を見つめながら言う。
こいつらには、これが一番効く。
「///…わかりました」
「はい///」
予想通り顔を真っ赤にして、二人の男は俺の望む言葉を述べた。
「いい子。じゃあな」
赤い顔のまま呆けたようにその場に立ちすくむ二人を残し、俺は教室を出る。
廊下を歩き、自分の寮部屋に戻る合間にも、すれ違う男子生徒はチラチラと俺に視線を送ってくる。
自分でも信じられないが、俺はこの全寮制男子高校でかなりモテる。
男が男に好意を抱くなんて考えもしていなかったが、この学校では普通のことらしい。
入学してから何度も男に告白されたし、体の関係を持ちたいとストレートに迫ってくるやつもいる。
この学校で人気のある生徒には親衛隊が組織される。さっきの生徒達は俺の親衛隊で、椿はその隊長だ。
身の回りの世話をしてくれたり、俺を狙う変なやつから俺を守ってくれたりする。少しお節介だったり鬱陶しく感じることもあるけれど、そういう時はさっきみたいに相手を見つめたり、頭を撫でたり壁ドンしたりしてやれば言うことを聞く。
冗談だと思っていたが、どうやらあいつらは本気で俺のことを好きらしい。
俺なんかのどこがいいんだか…
曲がり角を曲がる。
と、その時、体にドンッと衝撃を感じた。
「っ」
向こうからも人がやってきていたようで、俺は気付かずぶつかってしまったらしい。
目の前の生徒がふらつき、バサバサと何やら本が落ちる音がする。
見ると廊下に何冊もの教科書が散らばっている。
「悪い。」
「いや、こっちこそ」
「…よっと」
落ちた教科書を拾い上げ、相手に差し出す。
相手は知らないイケメンだった。
「はい」
「ありがとう……っ!?」
黒髪の、背の高い男子生徒。
彼は俺を見ると、少し目を見開いて固まってしまった。
え、何?
「…なに?」
「っ、いや、…なんでもない」
「?…気をつけてね」
俺はそのままその場を去ろうとした。
「あ、あのさ!」
「ん?」
「名前、聞いてもいいか?俺は水野達也」
「…俺のこと知らない?」
ナルシストかもしれないが、俺はこの学校ではそこそこ有名だと思ってた。
「有名人…なのか?悪い、俺編入してきたばかりだから、まだ、何も知らなくて」
「へぇ編入生なんだ。俺は五十嵐廉。一年だよ」
「俺も一年なんだ。あのさ、寮の103号室ってどこか分かるか?まだ慣れてなくて、帰りたいんだけど、迷っちまって」
「ああ、分かりにくいよな、この学校。いいよ。一緒に行こうか」
「え、いいのか?」
「うん。俺の寮部屋とめっちゃ近いし、俺も今から帰るとこだから」
「助かる」
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