17 / 60
もう一匹の淫魔5
しおりを挟む
窓に居たのはアレクだった。急いで戻ってきたのだろう。額に少し汗を滲ませて少年淫魔を睨んでいる。
「やっぱりてめぇかルカ…わざわざ偽のコウモリまで寄越しやがって、どういうつもりだよ」
「……別に、あの飽き性のアレクがついに契約したって聞いたから、その相手を見にきただけだよ」
「俺を魔界に追い払ってる間にわざわざご苦労なこって。もう用は済んだだろ。帰れ」
「…もう少しくらい味見していいでしょ?お腹すいた」
「こいつは駄目。俺の大事なご主人様だから」
「っ……」
「腹減ったならその辺の適当な人間襲えばいいだろーが。
とにかくご主人様から離れろよ」
「……」
少年は俺を見た。その瞳には、たしかに憎悪の光が宿っていた。
俺の胸ぐらを掴む手が力を増す。
締め上げられて、さすがに苦しい。
「くっ…」
「っ!ルカ…」
俺の置かれた状況に気付いたらしいアレクが、地を這うような低い声で言った。
「…俺を本気で怒らせたいわけ?」
「っ!」
アレクに底冷えする視線で睨まれて、少年の羽根がシュンと萎びたように見えた。
酷く傷付いたような泣きそうな顔をして俺から手を離すと、最後に俺をキッと睨みつけ、少年は玄関からバサバサと飛び去っていった。
アレクはそれを見届けると窓から床に降り、俺を抱き締めてきた。
「遅くなってごめんな…痛い?」
首の歯形にそっと触れながら言われる。
「別に…」
消毒するように、アレクはペロペロと傷口を舐めた。
「ん……さっきの、やつって…」
「ルカ…ただの顔見知りの淫魔。…あいつ昔っからああなんだよ。俺の物盗ったり、いちいち突っかかってきやがるし、俺のこと嫌ってんのか知らねーけど…」
「……」
いや、むしろあれは…
少年がポツリと呟いた言葉を脳内で反芻する。
“…なんで僕じゃダメなの…アレク…”
あれは…そういうことだよなぁ…
淫魔の世界の、すごくドロドロした恋愛事情に、俺は巻き込まれてしまったんじゃないだろうか。
俺はアレクに気付かれないように、そっとため息をついた。
「やっぱりてめぇかルカ…わざわざ偽のコウモリまで寄越しやがって、どういうつもりだよ」
「……別に、あの飽き性のアレクがついに契約したって聞いたから、その相手を見にきただけだよ」
「俺を魔界に追い払ってる間にわざわざご苦労なこって。もう用は済んだだろ。帰れ」
「…もう少しくらい味見していいでしょ?お腹すいた」
「こいつは駄目。俺の大事なご主人様だから」
「っ……」
「腹減ったならその辺の適当な人間襲えばいいだろーが。
とにかくご主人様から離れろよ」
「……」
少年は俺を見た。その瞳には、たしかに憎悪の光が宿っていた。
俺の胸ぐらを掴む手が力を増す。
締め上げられて、さすがに苦しい。
「くっ…」
「っ!ルカ…」
俺の置かれた状況に気付いたらしいアレクが、地を這うような低い声で言った。
「…俺を本気で怒らせたいわけ?」
「っ!」
アレクに底冷えする視線で睨まれて、少年の羽根がシュンと萎びたように見えた。
酷く傷付いたような泣きそうな顔をして俺から手を離すと、最後に俺をキッと睨みつけ、少年は玄関からバサバサと飛び去っていった。
アレクはそれを見届けると窓から床に降り、俺を抱き締めてきた。
「遅くなってごめんな…痛い?」
首の歯形にそっと触れながら言われる。
「別に…」
消毒するように、アレクはペロペロと傷口を舐めた。
「ん……さっきの、やつって…」
「ルカ…ただの顔見知りの淫魔。…あいつ昔っからああなんだよ。俺の物盗ったり、いちいち突っかかってきやがるし、俺のこと嫌ってんのか知らねーけど…」
「……」
いや、むしろあれは…
少年がポツリと呟いた言葉を脳内で反芻する。
“…なんで僕じゃダメなの…アレク…”
あれは…そういうことだよなぁ…
淫魔の世界の、すごくドロドロした恋愛事情に、俺は巻き込まれてしまったんじゃないだろうか。
俺はアレクに気付かれないように、そっとため息をついた。
10
お気に入りに追加
839
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる