淫魔と俺の性事情

みき

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もう一匹の淫魔5

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窓に居たのはアレクだった。急いで戻ってきたのだろう。額に少し汗を滲ませて少年淫魔を睨んでいる。

「やっぱりてめぇかルカ…わざわざ偽のコウモリまで寄越しやがって、どういうつもりだよ」
「……別に、あの飽き性のアレクがついに契約したって聞いたから、その相手を見にきただけだよ」
「俺を魔界に追い払ってる間にわざわざご苦労なこって。もう用は済んだだろ。帰れ」
「…もう少しくらい味見していいでしょ?お腹すいた」
「こいつは駄目。俺の大事なご主人様だから」
「っ……」
「腹減ったならその辺の適当な人間襲えばいいだろーが。
とにかくご主人様から離れろよ」
「……」

少年は俺を見た。その瞳には、たしかに憎悪の光が宿っていた。
俺の胸ぐらを掴む手が力を増す。
締め上げられて、さすがに苦しい。

「くっ…」
「っ!ルカ…」
俺の置かれた状況に気付いたらしいアレクが、地を這うような低い声で言った。

「…俺を本気で怒らせたいわけ?」
「っ!」

アレクに底冷えする視線で睨まれて、少年の羽根がシュンと萎びたように見えた。
酷く傷付いたような泣きそうな顔をして俺から手を離すと、最後に俺をキッと睨みつけ、少年は玄関からバサバサと飛び去っていった。

アレクはそれを見届けると窓から床に降り、俺を抱き締めてきた。
「遅くなってごめんな…痛い?」
首の歯形にそっと触れながら言われる。

「別に…」
消毒するように、アレクはペロペロと傷口を舐めた。
「ん……さっきの、やつって…」
「ルカ…ただの顔見知りの淫魔。…あいつ昔っからああなんだよ。俺のモン盗ったり、いちいち突っかかってきやがるし、俺のこと嫌ってんのか知らねーけど…」
「……」


いや、むしろあれは…

少年がポツリと呟いた言葉を脳内で反芻する。
“…なんで僕じゃダメなの…アレク…”

あれは…そういうことだよなぁ…

淫魔の世界の、すごくドロドロした恋愛事情に、俺は巻き込まれてしまったんじゃないだろうか。
俺はアレクに気付かれないように、そっとため息をついた。
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