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提案。2
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―――ッ!?
「そっ…れは…、」
繋から出された受け入れがたい“提案”に命は絶句し、その身を強張らせる…
「…返して欲しいのだろう?皆瀬 洋一を…」
「…ッ、」
繋のその言葉に命は一瞬ギリッと歯噛みし
再び握り締めた拳が軋むほどに力を込めながらその表情は苦悶で満ちる…
「なに…悪い提案ではあるまい?
お前はどのみち鬼生道の為にΩか女と結婚をし世継ぎを残させねばならぬ身…
だったら確実にαを生めるΩとさっさと番って子を成してしまえば
鬼生道は安泰…
お前だって鬼生道の嫡子としての責任を果たすという意味でも楽になろう…
その後は――
取りかえした皆瀬 洋一を愛人として囲うなり何なりして好きにすればいい…
簡単な話だろう…?」
「愛人…」
さもこれが当然の妥協点と言わんばかりに話す自分の父親に
命の不快感と不信感は増す…
しかし現状…洋一を取り戻す為には繋の“提案”に乗る以外に
命に選択肢は無く…
「…私が――契と番えば…洋一を返して頂けるのですね?」
「ッ!?」
「…考えてやろう…」
「…」
あくまで“返す”と言わない辺り…自分の父親の小狡さを感じながらも
それでも命はグッと自分を押し殺し
洋一を取りかえすことのみを考える…
―――この“提案”を俺が飲めば…洋一は俺を軽蔑するだろう…
それでも…
それでも俺はお前を…っ!
「…分かりました。契と…番います。」
「ッ、ちょっとあきちゃん本気っ?!」
命の出した答えに、円が思わず命の方を振り返る…
するとそこには何の感情も映さない瞳で繋を見つめる命の姿があり――
「…ッ、」
一切の感情を押し殺したかの様な命のその表情に円が息を飲み込む…
そこに命が繋を見つめたまま静かに口を開き
「ですがその前にせめて一目…
一目だけでも洋一と会って話をさせていただきたく…」
自分の息子が生まれて初めてみせるその表情に
繋の表情からも人を見下す様な笑みは消え
命達が此処に姿を見せてから初めてその真剣な表情を命達に見せる…
「…いいだろう。
ならば後日…お前の元に私の使いの者を寄越すので
その者に例のβの元までお前を案内させるとしよう…
お前はその時に例のβと好きなだけ会って話をするといい…話は以上だ。
――お前からは?」
「…ありません。」
「…そうか。なら――」
繋が静かに片手を挙げると
命達を取り囲んでいた護衛兼社員達はその場からスッ退き、命達に道を開ける
「お引き取り願おうか…
私もまだこれからやる事があるのでな。」
そう言うと繋はカウンターに向き直り、近くに居た部下に何やら耳打ちをし
命達はエレベーターに向かって歩きだす…
そこに命が急に何かを思いだしたかの様に繋に向かって口を開き――
「!そういえば山下は…」
「山下?ああ保か…保ならとっくに解放した。
その内お前の元に連絡を寄越すだろう…」
「そうですか…」
それを聞き、命は少しホッとしながら円と共にエレベーターに乗り込む…
するとドアが閉まると同時に円が命の方を見ながら声を荒げ――
「あきちゃん本気なのっ?!」
「…何がだ。」
「契と番うって話し!」
「本気だ。」
「何で…っ、」
「…他に洋一を助け出す方法が見当たらない。」
「ッ、だからって――」
「…何だ。お前だって俺が契と番うのは好都合だろう?
何しろお前は俺から洋一を奪おうとしていたし
何より今日だって俺が契と会っていた隙に洋一を連れ去ろうとしていたのだろう?」
「う”っ…それは――そうだったけど…」
「…やはりな。どうりで都合よく臨海公園にお前がいたわけだ。」
命がフッと円の分かり易い行動に力無く微笑みながら吹きだし
そんな命に若干ムッとしつつも、円が取り繕うように言葉を発する
「でも…でも…っ!今は違うっ!
あきちゃんがこんなようちゃんを人質に取られたような状態で
契と番うような事になったらようちゃんが悲しむし…
何より僕はようちゃんが悲しむ事は望んじゃいないっ!」
「あれだけ言霊で洋一を連れ去ろうとしていたヤツのセリフとは思えんな。」
「ッ!煩いなぁっ!!兎に角僕はこんなの絶対反対っ!何とかしないと…」
円はそう言うと口に手を当て、何やらブツブツと呟きながら考え込み
命はそんな円をチラリと見た後、直ぐに正面のドアに視線を向けると
一瞬辛そうな表情を浮かべたのち、その瞳を静かに閉じた…
※※※※※※※※※※※※
「ッ!誰だ貴様っ!どうやって此処へ――あ”が…、」
「!?主任っ!が、…はっ…、?」
ドサドサと…
一人の年老いた男性の足元に二人の男性が倒れ込む
「…遅かったじゃないか…」
ガラス張りの壁越しにその様子を見ていた一人の青年が
年老いた男性に紅い瞳を綻ばせながら声をかける
「…すまないね。何分この年老いた身では思うように身体が動かなくて…
その上キミの孫は中々尻尾を掴ませてはくれないし…
此処を見つけだすのも相当な手間がかかったよ…」
そう言うと年老いた男性は手に持った端末を操作し
青年が入っている部屋のドアの鍵を開ける
すると青年が透明なドアを押し開け、ゆったりとした動作で部屋から出ると
年老いた男性に微笑みながら歩み寄り、その身体を抱き寄せる…
「助けに来てくれて嬉しいよ…荒神…」
「…当然じゃないか…少し遅れてしまったが――
若返ったキミからしてみれば誤差の範疇…だろ?」
「確かに。」
二人は顔を見合わせ、クスクスと笑い合う
しかし青年からはすぐに笑みが消え
真剣な眼差しを荒神にむけながらその両肩に手を置くと、静かに口を開く
「それよりも荒神…よーいちは…」
「…今はまだ何とも…鬼生道が関わっているらしいが場所までは…」
「そうか…兎に角急がないと――
君の為にも…早くよーいちを見つけ出して私の研究を完成させねば…」
「そっ…れは…、」
繋から出された受け入れがたい“提案”に命は絶句し、その身を強張らせる…
「…返して欲しいのだろう?皆瀬 洋一を…」
「…ッ、」
繋のその言葉に命は一瞬ギリッと歯噛みし
再び握り締めた拳が軋むほどに力を込めながらその表情は苦悶で満ちる…
「なに…悪い提案ではあるまい?
お前はどのみち鬼生道の為にΩか女と結婚をし世継ぎを残させねばならぬ身…
だったら確実にαを生めるΩとさっさと番って子を成してしまえば
鬼生道は安泰…
お前だって鬼生道の嫡子としての責任を果たすという意味でも楽になろう…
その後は――
取りかえした皆瀬 洋一を愛人として囲うなり何なりして好きにすればいい…
簡単な話だろう…?」
「愛人…」
さもこれが当然の妥協点と言わんばかりに話す自分の父親に
命の不快感と不信感は増す…
しかし現状…洋一を取り戻す為には繋の“提案”に乗る以外に
命に選択肢は無く…
「…私が――契と番えば…洋一を返して頂けるのですね?」
「ッ!?」
「…考えてやろう…」
「…」
あくまで“返す”と言わない辺り…自分の父親の小狡さを感じながらも
それでも命はグッと自分を押し殺し
洋一を取りかえすことのみを考える…
―――この“提案”を俺が飲めば…洋一は俺を軽蔑するだろう…
それでも…
それでも俺はお前を…っ!
「…分かりました。契と…番います。」
「ッ、ちょっとあきちゃん本気っ?!」
命の出した答えに、円が思わず命の方を振り返る…
するとそこには何の感情も映さない瞳で繋を見つめる命の姿があり――
「…ッ、」
一切の感情を押し殺したかの様な命のその表情に円が息を飲み込む…
そこに命が繋を見つめたまま静かに口を開き
「ですがその前にせめて一目…
一目だけでも洋一と会って話をさせていただきたく…」
自分の息子が生まれて初めてみせるその表情に
繋の表情からも人を見下す様な笑みは消え
命達が此処に姿を見せてから初めてその真剣な表情を命達に見せる…
「…いいだろう。
ならば後日…お前の元に私の使いの者を寄越すので
その者に例のβの元までお前を案内させるとしよう…
お前はその時に例のβと好きなだけ会って話をするといい…話は以上だ。
――お前からは?」
「…ありません。」
「…そうか。なら――」
繋が静かに片手を挙げると
命達を取り囲んでいた護衛兼社員達はその場からスッ退き、命達に道を開ける
「お引き取り願おうか…
私もまだこれからやる事があるのでな。」
そう言うと繋はカウンターに向き直り、近くに居た部下に何やら耳打ちをし
命達はエレベーターに向かって歩きだす…
そこに命が急に何かを思いだしたかの様に繋に向かって口を開き――
「!そういえば山下は…」
「山下?ああ保か…保ならとっくに解放した。
その内お前の元に連絡を寄越すだろう…」
「そうですか…」
それを聞き、命は少しホッとしながら円と共にエレベーターに乗り込む…
するとドアが閉まると同時に円が命の方を見ながら声を荒げ――
「あきちゃん本気なのっ?!」
「…何がだ。」
「契と番うって話し!」
「本気だ。」
「何で…っ、」
「…他に洋一を助け出す方法が見当たらない。」
「ッ、だからって――」
「…何だ。お前だって俺が契と番うのは好都合だろう?
何しろお前は俺から洋一を奪おうとしていたし
何より今日だって俺が契と会っていた隙に洋一を連れ去ろうとしていたのだろう?」
「う”っ…それは――そうだったけど…」
「…やはりな。どうりで都合よく臨海公園にお前がいたわけだ。」
命がフッと円の分かり易い行動に力無く微笑みながら吹きだし
そんな命に若干ムッとしつつも、円が取り繕うように言葉を発する
「でも…でも…っ!今は違うっ!
あきちゃんがこんなようちゃんを人質に取られたような状態で
契と番うような事になったらようちゃんが悲しむし…
何より僕はようちゃんが悲しむ事は望んじゃいないっ!」
「あれだけ言霊で洋一を連れ去ろうとしていたヤツのセリフとは思えんな。」
「ッ!煩いなぁっ!!兎に角僕はこんなの絶対反対っ!何とかしないと…」
円はそう言うと口に手を当て、何やらブツブツと呟きながら考え込み
命はそんな円をチラリと見た後、直ぐに正面のドアに視線を向けると
一瞬辛そうな表情を浮かべたのち、その瞳を静かに閉じた…
※※※※※※※※※※※※
「ッ!誰だ貴様っ!どうやって此処へ――あ”が…、」
「!?主任っ!が、…はっ…、?」
ドサドサと…
一人の年老いた男性の足元に二人の男性が倒れ込む
「…遅かったじゃないか…」
ガラス張りの壁越しにその様子を見ていた一人の青年が
年老いた男性に紅い瞳を綻ばせながら声をかける
「…すまないね。何分この年老いた身では思うように身体が動かなくて…
その上キミの孫は中々尻尾を掴ませてはくれないし…
此処を見つけだすのも相当な手間がかかったよ…」
そう言うと年老いた男性は手に持った端末を操作し
青年が入っている部屋のドアの鍵を開ける
すると青年が透明なドアを押し開け、ゆったりとした動作で部屋から出ると
年老いた男性に微笑みながら歩み寄り、その身体を抱き寄せる…
「助けに来てくれて嬉しいよ…荒神…」
「…当然じゃないか…少し遅れてしまったが――
若返ったキミからしてみれば誤差の範疇…だろ?」
「確かに。」
二人は顔を見合わせ、クスクスと笑い合う
しかし青年からはすぐに笑みが消え
真剣な眼差しを荒神にむけながらその両肩に手を置くと、静かに口を開く
「それよりも荒神…よーいちは…」
「…今はまだ何とも…鬼生道が関わっているらしいが場所までは…」
「そうか…兎に角急がないと――
君の為にも…早くよーいちを見つけ出して私の研究を完成させねば…」
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