βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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取り返す手段。

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※ヘイ、お待ち!
大分投稿がとどこおっておりましたが
ちょっとだけ再開です。



『…こんな時間にか?』

何処か相手を威圧するような声色に、命の表情は険しくなる

「…是非。」

拳を握りしめ、怯みそうになる自分を叱咤し
恐らく通話先では余裕の表情を浮かべているであろう自分の父に
命は挑む気持ちで話を続ける

『…分かった。なら鬼生道W.D.Pまで来るといい…そこで話を聞こう。
 …ところで――契とはもう番ったのか?』
「ッ!?何故…契の事を…ッ、」

唐突に父の口から出た契の名に、命は動揺を隠せずに狼狽える…

『…私が――“お前達”の行動を把握していないとでも?
 そこに居るのだろう…?大神の小倅こせがれ…』
「…ッ!」

通話をスピーカーにし、命の隣で事の成り行きを聞いていた円に緊張が走る

『気を失ったそうだが――怪我はなかったかな?』

―――コイツ…ッ、

円がギリッと歯噛みしながら、命の持つスマホを鋭く睨みつける

『…まあそんな事はどうでもいい…
 お前のその様子だと――契は失敗したとみえる…
 やはり“造られた運命”は不完全だったという事か…それとも――』
「…?」
『兎に角…話があるのなら先程言った場所で聞いてやろう…では…』

ピッ…と通話は一方的に切れ…
命が憎々しげにスマホ画面を見つめて溜息を吐き捨て
そんな命に円が不貞腐れながら文句を垂れる

「…ようちゃんと…あとついでに運転手の人返してって言えばよかったのに…」
「言ったからってあの人が素直に
 「じゃあ返してやろう。」何て言う訳がないだろう…
 そもそも白を切られるのがオチだ。」
「まあ確かに…
 それにしても…僕も聞いた事の無い様な場所の名前が出てきたね…
 鬼生道W.P.D…?ナニソレ…」
「鬼生道Weapons Development Programs…略して鬼生道W.D.P…
 国からの兵器開発などを請け負っている会社だ…
 当然表ざたに出来無い為にこの会社の存在を知るものは少ない…」
「へぇ~…鬼生道の暗部といったところ?」
「まあそんな所だ…」

命の表情に暗い影を落とす…

「…それにしても…そんな物騒なところを息子と話す場に指定してくるだなんて…
 アクション映画よろしく銃撃戦でもおっぱじめるみたいな雰囲気だね…
 息子と話すだけなのに…」
「あそこは鬼生道が所有する会社の中でも
 トップクラスのセキュリティを誇っている会社だからな…
 お前が俺と一緒に居る事も想定済みみたいだったし…
 その事を踏まえたうえで、あの会社を指定してきたんだろう…恐らくは…」
「…何ソレ…僕を警戒してそんな物騒な会社指定してきたって事?
 心外だなぁ~…」
「…人を“言葉”で操るようなヤツが言うセリフとは思え――ッ!?」

命がハッと何かを思いついたかのように円を見つめた後
おもむろに手に持ったスマホを操作しだす

「…?どうかした?あきちゃん…」
「お前が父に電話で洋一を返すよう言えば――」
「無駄だよ。」
「ッ!何故だっ、」
「機械を通して向こうに届く僕の声と言葉は“似て非なるモノ”だからね…
 電話越しじゃあ僕の言霊は通用しない…」
「…っ、そう…か…」

命があからさまにガックリと項垂れる

「けど――」
「?」
「僕が直接あきちゃんのお父様に会う事が出来たら――取りかえせるかもよ?


 ようちゃん。あとついでに運転手も。」
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