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その目的は…
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―――洋一…っ!
契のヒートフェロモンを振り切り
命が微かに残る洋一の残り香を頼りに公園内を駆け巡る
―――潮の香りが大分キツイ…
これでは洋一の匂いが消えてしまうのも時間の問題…
早く後を追わないと…
命が焦りながら辺りをキョロキョロと見渡しながら洋一の姿を捜し求める…
―――それにしても…先程から山下と電話が繋がらないのだが…
一体どうしたというのだ?山下が俺からの電話に出ないだなんて…
せめて山下と連絡が取れれば
まだ洋一が公園内に居るかどうかの確認が出来たというのに…
この臨海公園は周りを海に囲まれており
駐車場からゲートを出なければ公園内からは出る事は出来ず…
それ故に洋一が公園内から出たのであれば必ず駐車場を通るハズなので
命は駐車場に停めた車で待機しているハズの山下と連絡が取りたいのだが
連絡がつかず…
―――洋一も…契との事を気にしてか、俺からの電話に出ようともしない…
まったく…後で見つけたらお仕置きついでにキチンと言い聞かさねば…
俺に必要なのは契ではなくお前だけだと…
命はもどかしい思いをしながら、洋一の残り香を追って公園内を走り回る…
そこにふと、命の数メートル先で複数の人影がしゃがみ込んでいるのが見え――
―――…ん?彼等はこんな時間に此処で一体なにを…
命は立ち止まり、そのしゃがんでいる人影を目を凝らして見つめる…
するとその複数の人影は
犬のお座りの様なポーズをとりながら円を描くようにして並んで固まっており…
「………」
その異様な光景に命は眉を顰め、若干引きつつ
関わら無いよう…その集団を遠巻きに眺めながら
その場を通りすぎようとしたが――
―――!この匂いは洋一の…
命の鼻腔をより強い洋一の匂いが掠め
命は一瞬近づくのを躊躇ったが
一段と匂いを強く感じる犬のお座り集団の方へと命は足を向ける…
すると月明かりの元、命がそのお座り集団に近づくにつれ
彼等の姿がハッキリと見てとれるようになり…
―――ッ!?アレはまさか――円と…狼かっ?!
犬のお座りポーズをした集団の中心には何故か円らしき人物がうつ伏せで倒れ
そのすぐ傍では狼が無表情でお座りをしている姿が見え…
―――…コレは一体どういう状況だ…?何かの宗教的儀式の一環か?
アイツ等は二人揃って何かの宗教団体にでも入信したのか…?
その余りの異様な光景に命の混乱具合に拍車がかかり
言葉も無くただ黙って命はその光景を茫然と眺めていたが
―――ッ!これは洋一の匂い…アイツ等から…?
!?まさか…アイツ等洋一に何かしたのでは――
円と狼からひと際強い洋一の匂いを感じとり
命が嫌な予感を覚え、無表情で地べたにお座りをしている人々を避けながら
倒れている円に駆け寄る
「ッ、おい、円起きろっ!オイッ!!」
「ん…」
命が倒れている円の肩を掴んで強く揺する
すると円の目蓋がぼんやりとした様子で開き始め――
「……?
―――ッ!?ようちゃん…っ!」
バッと円がその場から凄い勢いで飛び起き
慌てて何処かに向かおうとするのを、命が円の手を掴んで止める
「待てっ、円っ!」
「ッ、離して…って――あきちゃんっ?!
何で此処に…契はどーしたの?一緒に居るハズじゃあ――」
「ッ!?何でお前が契の事を知って…」
「えっ?!ああっ!何の話??ボクワカンナイナー」
「…とぼけるな。さてはお前…俺が今日契と会う事を知っていたな…?」
「…さあ…何の事だか…それよりあきちゃん…コレ一体どーゆー事?」
「…貴様…話を逸らす気か!?」
命が円の態度にムッとし、問い詰めようと掴んだままの円の手をグッと引く
そこに円が手に持っていた注射器からわざわざ針を外し
シリンジを命に投げてよこした
「…?コレは――鬼生道系列が運営する病院でのみ使用されている注射器…
コレが一体どうしたというのだ?」
命が円から渡された注射器のシリンジ部分をマジマジと見つめながら尋ねる
すると円の表情が見る見るうちに険しくなり――
「…そっちこそとぼけないでよ…その注射器で僕を気絶させたヤツ等が
ようちゃんを此処から連れ去ったんだから…」
「なっ、に…っ?!洋一が連れ去られただとっ?!一体誰に…っ!」
命が思わず鬼の形相で円に掴みかかる
「い”っ…そんなの知らないよっ!
突然黒いスーツにサングラスかけた怪しい連中が数人
ようちゃんを何処かに連れ去って行っちゃったんだから…
その注射器を使ったって事は――鬼生道の関係者じゃないの?
あきちゃん…本当に心当たりが無いわけ…?」
「そんなものあるわけ――」
『今度私の前にそのβを連れてきなさい。
その匂い…私も是非嗅いでみたい…』
「ッ!?」
―――まさか…
「…あきちゃん?」
命の顔色が徐々に青くなる
―――まさか父上が洋一を…?いや…そんなまさか…
いくらアノ人でも“匂い”の為に洋一をかどわかすなど…
命が青ざめたまま口に手を当て、何やら考え込む…
そこに命のスマホの着信音が鳴り響き
命がポケットからスマホを取り出して画面を確認すると
そこには今まで連絡の取れなかった山下の名前が表示されており――
ピッ、
『――命様。』
「…山下…お前今まで何して――」
『皆瀬さんを連れ去った者達を尾行しておりました。』
「なッ…尾行ってお前…洋一はっ!?無事なのかっ?!お前は今何処に…っ、」
命が矢継ぎ早に山下に質問を投げかける
『皆瀬さんは恐らく無事です。
途中、皆瀬さんを乗せた車は
厳重な警備が敷かれた建物へと続く地下道に入られてしまい…
それ以上…後を追う事は出来ませんでしたが…』
山下が悔しさを滲ませた声で呟く
「…そうか…」
『…それより命様…落ち着いて聞いて下さい。』
「何だ?」
『皆瀬さんを連れ去った連中は繋様の…
お父上の配下の者達です。』
契のヒートフェロモンを振り切り
命が微かに残る洋一の残り香を頼りに公園内を駆け巡る
―――潮の香りが大分キツイ…
これでは洋一の匂いが消えてしまうのも時間の問題…
早く後を追わないと…
命が焦りながら辺りをキョロキョロと見渡しながら洋一の姿を捜し求める…
―――それにしても…先程から山下と電話が繋がらないのだが…
一体どうしたというのだ?山下が俺からの電話に出ないだなんて…
せめて山下と連絡が取れれば
まだ洋一が公園内に居るかどうかの確認が出来たというのに…
この臨海公園は周りを海に囲まれており
駐車場からゲートを出なければ公園内からは出る事は出来ず…
それ故に洋一が公園内から出たのであれば必ず駐車場を通るハズなので
命は駐車場に停めた車で待機しているハズの山下と連絡が取りたいのだが
連絡がつかず…
―――洋一も…契との事を気にしてか、俺からの電話に出ようともしない…
まったく…後で見つけたらお仕置きついでにキチンと言い聞かさねば…
俺に必要なのは契ではなくお前だけだと…
命はもどかしい思いをしながら、洋一の残り香を追って公園内を走り回る…
そこにふと、命の数メートル先で複数の人影がしゃがみ込んでいるのが見え――
―――…ん?彼等はこんな時間に此処で一体なにを…
命は立ち止まり、そのしゃがんでいる人影を目を凝らして見つめる…
するとその複数の人影は
犬のお座りの様なポーズをとりながら円を描くようにして並んで固まっており…
「………」
その異様な光景に命は眉を顰め、若干引きつつ
関わら無いよう…その集団を遠巻きに眺めながら
その場を通りすぎようとしたが――
―――!この匂いは洋一の…
命の鼻腔をより強い洋一の匂いが掠め
命は一瞬近づくのを躊躇ったが
一段と匂いを強く感じる犬のお座り集団の方へと命は足を向ける…
すると月明かりの元、命がそのお座り集団に近づくにつれ
彼等の姿がハッキリと見てとれるようになり…
―――ッ!?アレはまさか――円と…狼かっ?!
犬のお座りポーズをした集団の中心には何故か円らしき人物がうつ伏せで倒れ
そのすぐ傍では狼が無表情でお座りをしている姿が見え…
―――…コレは一体どういう状況だ…?何かの宗教的儀式の一環か?
アイツ等は二人揃って何かの宗教団体にでも入信したのか…?
その余りの異様な光景に命の混乱具合に拍車がかかり
言葉も無くただ黙って命はその光景を茫然と眺めていたが
―――ッ!これは洋一の匂い…アイツ等から…?
!?まさか…アイツ等洋一に何かしたのでは――
円と狼からひと際強い洋一の匂いを感じとり
命が嫌な予感を覚え、無表情で地べたにお座りをしている人々を避けながら
倒れている円に駆け寄る
「ッ、おい、円起きろっ!オイッ!!」
「ん…」
命が倒れている円の肩を掴んで強く揺する
すると円の目蓋がぼんやりとした様子で開き始め――
「……?
―――ッ!?ようちゃん…っ!」
バッと円がその場から凄い勢いで飛び起き
慌てて何処かに向かおうとするのを、命が円の手を掴んで止める
「待てっ、円っ!」
「ッ、離して…って――あきちゃんっ?!
何で此処に…契はどーしたの?一緒に居るハズじゃあ――」
「ッ!?何でお前が契の事を知って…」
「えっ?!ああっ!何の話??ボクワカンナイナー」
「…とぼけるな。さてはお前…俺が今日契と会う事を知っていたな…?」
「…さあ…何の事だか…それよりあきちゃん…コレ一体どーゆー事?」
「…貴様…話を逸らす気か!?」
命が円の態度にムッとし、問い詰めようと掴んだままの円の手をグッと引く
そこに円が手に持っていた注射器からわざわざ針を外し
シリンジを命に投げてよこした
「…?コレは――鬼生道系列が運営する病院でのみ使用されている注射器…
コレが一体どうしたというのだ?」
命が円から渡された注射器のシリンジ部分をマジマジと見つめながら尋ねる
すると円の表情が見る見るうちに険しくなり――
「…そっちこそとぼけないでよ…その注射器で僕を気絶させたヤツ等が
ようちゃんを此処から連れ去ったんだから…」
「なっ、に…っ?!洋一が連れ去られただとっ?!一体誰に…っ!」
命が思わず鬼の形相で円に掴みかかる
「い”っ…そんなの知らないよっ!
突然黒いスーツにサングラスかけた怪しい連中が数人
ようちゃんを何処かに連れ去って行っちゃったんだから…
その注射器を使ったって事は――鬼生道の関係者じゃないの?
あきちゃん…本当に心当たりが無いわけ…?」
「そんなものあるわけ――」
『今度私の前にそのβを連れてきなさい。
その匂い…私も是非嗅いでみたい…』
「ッ!?」
―――まさか…
「…あきちゃん?」
命の顔色が徐々に青くなる
―――まさか父上が洋一を…?いや…そんなまさか…
いくらアノ人でも“匂い”の為に洋一をかどわかすなど…
命が青ざめたまま口に手を当て、何やら考え込む…
そこに命のスマホの着信音が鳴り響き
命がポケットからスマホを取り出して画面を確認すると
そこには今まで連絡の取れなかった山下の名前が表示されており――
ピッ、
『――命様。』
「…山下…お前今まで何して――」
『皆瀬さんを連れ去った者達を尾行しておりました。』
「なッ…尾行ってお前…洋一はっ!?無事なのかっ?!お前は今何処に…っ、」
命が矢継ぎ早に山下に質問を投げかける
『皆瀬さんは恐らく無事です。
途中、皆瀬さんを乗せた車は
厳重な警備が敷かれた建物へと続く地下道に入られてしまい…
それ以上…後を追う事は出来ませんでしたが…』
山下が悔しさを滲ませた声で呟く
「…そうか…」
『…それより命様…落ち着いて聞いて下さい。』
「何だ?」
『皆瀬さんを連れ去った連中は繋様の…
お父上の配下の者達です。』
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