111 / 128
血統。
しおりを挟む
―――こーちゃんに近づいたのは
ようちゃんの事を知る為の偶然装った必然だったとはいえ…
円は浩介のマンションを出て
マンション駐車場とその目の前にある公園との間を走る
小さな道路脇に停めてあるシルバーの高級車に向け、速足に近づいていく…
―――“言霊”の効き目が薄い事がきになって…
こーちゃんの事を色々調べてみたら
まさかこーちゃんのお父様が意外な大物だった事に驚いたけど…
シルバーの高級車の手前で
ビシッと背筋を伸ばして待機していた運転手と思しき男性が
円の姿を確認するや否や
車のドアを開け、コチラに向かって歩いてくる円に頭を下げながら
円が車に乗り込むのを待つ
―――こーちゃんのあの様子から察するに…“言霊”の事といい
あきちゃんと同じように親によって“知らずに”
何かしらの計画か実験に加担させられている可能性が――
円が表情を険しくしながら車に乗り込もうとしたその時
「ッ、だから待てってっ!」
浩介の手がすんでのところで円の手首を掴み
車に乗り込もうとしていた円を引きとめる
「もう…何?こーちゃん…そんなに僕と離れるのが嫌なの?」
円は一瞬で表情を笑顔に作り変えると、自分の手を掴んでいる浩介に向き直る
「ッ!ちげーわっ!あんな意味深な事呟かれて…
気にすんなって方がおかしいだろ?!」
「あ…なぁ~んだ…違うのか…
僕はこーちゃんから離れるの嫌なんだけどさぁ~…
こーちゃん“言霊”の効き悪いし…
持って帰れないのが残念だなぁ~って思ってたのに…」
「ッ!?おまっ、」
「ふふっ、」
焦る浩介に円は満面の笑みを浮かべ返す
「ッ、ところで…さっきのアレ、何だよ。」
「アレって?」
「“運命”が造られてるとか何とかってやつっ!」
「ああ…だからアレはあくまでも“噂話”だって言ったでしょ?」
「…その“運命”を造る“噂話”と俺の反応と…
どういった関係があるんだよ?」
「別に?何も無いよ?」
「嘘つけ。さっき『その反応が見れただけでも来た甲斐あった』
とか言ってたじゃねーか。」
「チッ…覚えてやがったか…」
「…その顔で舌打すんな。答えろ。」
その可愛らしい顔をあからさまに嫌そ~…に歪める円に
浩介はちょっと笑ってしまう
「…ねぇこーちゃん。」
「…何だよ。」
「“答え”ってのはね…案外近くに転がっていたりするもんなんだよ?」
「?」
「…そうだね…それじゃあ僕からこーちゃんにヒントをあげる。
“自分の血統を辿れ”。
父方か母方かまでは教えないよ?自分で探して。」
「はあ?…何だよ、ソレ…」
「あ、後――」
円の瞳が、少しだけ戸惑いで揺れる
「何か分かったとしても…
こーちゃん自身は“何も知らなかった”んだから――
自分を責めちゃダメだよ?いい?分かった?」
自分を気遣うように何度も念を押す円に、浩介はかえって不安を煽られ…
「…それってどーいう…」
浩介が再び円に事の真偽を確かめようと口を開きかけた時
円か自分の手首を掴んでいる浩介の手をスッと外すと、さっさと車の中に乗り込む
「あっ…おい…、」
「…出して。」
「かしこまりました。」
戸惑う浩介をその場に一人残し
円を乗せた車は静かにその場を走り去っていく…
「ッ、何なんだよ…“自分の血統を辿れ”って…」
更に意味深な事を円から聞かされ…
一人残された浩介はもう、会社どころではなく…
―――ああもうっ!
そこまで言うんだったら辿ってやろうじゃないの!俺の血統っ!!
もし何も出なかったら…円のやつ、覚えてろよ…っ!
浩介は速攻で会社に具合が悪くて休む旨の連絡を入れると
そのままある場所に電話をかけ始めた…
ようちゃんの事を知る為の偶然装った必然だったとはいえ…
円は浩介のマンションを出て
マンション駐車場とその目の前にある公園との間を走る
小さな道路脇に停めてあるシルバーの高級車に向け、速足に近づいていく…
―――“言霊”の効き目が薄い事がきになって…
こーちゃんの事を色々調べてみたら
まさかこーちゃんのお父様が意外な大物だった事に驚いたけど…
シルバーの高級車の手前で
ビシッと背筋を伸ばして待機していた運転手と思しき男性が
円の姿を確認するや否や
車のドアを開け、コチラに向かって歩いてくる円に頭を下げながら
円が車に乗り込むのを待つ
―――こーちゃんのあの様子から察するに…“言霊”の事といい
あきちゃんと同じように親によって“知らずに”
何かしらの計画か実験に加担させられている可能性が――
円が表情を険しくしながら車に乗り込もうとしたその時
「ッ、だから待てってっ!」
浩介の手がすんでのところで円の手首を掴み
車に乗り込もうとしていた円を引きとめる
「もう…何?こーちゃん…そんなに僕と離れるのが嫌なの?」
円は一瞬で表情を笑顔に作り変えると、自分の手を掴んでいる浩介に向き直る
「ッ!ちげーわっ!あんな意味深な事呟かれて…
気にすんなって方がおかしいだろ?!」
「あ…なぁ~んだ…違うのか…
僕はこーちゃんから離れるの嫌なんだけどさぁ~…
こーちゃん“言霊”の効き悪いし…
持って帰れないのが残念だなぁ~って思ってたのに…」
「ッ!?おまっ、」
「ふふっ、」
焦る浩介に円は満面の笑みを浮かべ返す
「ッ、ところで…さっきのアレ、何だよ。」
「アレって?」
「“運命”が造られてるとか何とかってやつっ!」
「ああ…だからアレはあくまでも“噂話”だって言ったでしょ?」
「…その“運命”を造る“噂話”と俺の反応と…
どういった関係があるんだよ?」
「別に?何も無いよ?」
「嘘つけ。さっき『その反応が見れただけでも来た甲斐あった』
とか言ってたじゃねーか。」
「チッ…覚えてやがったか…」
「…その顔で舌打すんな。答えろ。」
その可愛らしい顔をあからさまに嫌そ~…に歪める円に
浩介はちょっと笑ってしまう
「…ねぇこーちゃん。」
「…何だよ。」
「“答え”ってのはね…案外近くに転がっていたりするもんなんだよ?」
「?」
「…そうだね…それじゃあ僕からこーちゃんにヒントをあげる。
“自分の血統を辿れ”。
父方か母方かまでは教えないよ?自分で探して。」
「はあ?…何だよ、ソレ…」
「あ、後――」
円の瞳が、少しだけ戸惑いで揺れる
「何か分かったとしても…
こーちゃん自身は“何も知らなかった”んだから――
自分を責めちゃダメだよ?いい?分かった?」
自分を気遣うように何度も念を押す円に、浩介はかえって不安を煽られ…
「…それってどーいう…」
浩介が再び円に事の真偽を確かめようと口を開きかけた時
円か自分の手首を掴んでいる浩介の手をスッと外すと、さっさと車の中に乗り込む
「あっ…おい…、」
「…出して。」
「かしこまりました。」
戸惑う浩介をその場に一人残し
円を乗せた車は静かにその場を走り去っていく…
「ッ、何なんだよ…“自分の血統を辿れ”って…」
更に意味深な事を円から聞かされ…
一人残された浩介はもう、会社どころではなく…
―――ああもうっ!
そこまで言うんだったら辿ってやろうじゃないの!俺の血統っ!!
もし何も出なかったら…円のやつ、覚えてろよ…っ!
浩介は速攻で会社に具合が悪くて休む旨の連絡を入れると
そのままある場所に電話をかけ始めた…
0
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!



【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる