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一度でいいから書類の山を手で払ってみたい。
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「…まさか…皆瀬さんまで寝坊なさるとは…」
「う”…ご、ごめんなさい…」
「洋一は俺につき合って二度寝しただけだ。責めてやるな。」
「…なお悪いです。二度寝などという社畜憧れの惰眠を貪るなど…」
「むぅ…」
目的地へと向かうリムジンの車内で…
佐伯はハァ~…と大きな溜息をつきながらシステム手帳を開く
「ところで命様…皆瀬さん…昨日もお二人に少しお話しをしましたがその…
今日の予定の事なのですが…」
佐伯がスケジュールを見ながらその表情を歪め
実に伝え辛そうに言葉を閊(つか)えさせながら正面に座る命を伺い見る…
すると命の表情も忌々し気に歪んでいて――
「…分かっている。横山がセッティングした昼食会への参加…だろ…?」
「…はい…」
「横山…」
命が口にするのも汚らわしそうに言葉を吐き捨て
洋一の表情が一瞬にして曇る…
「…“あんな事”も御座いましたし…
誠に僭越(せんえつ)ながら私から横山氏に
今回の昼食会は中止、もしくは延期なされた方がよろしいのでは?と…
打診を試みたのですが聞き入れてはもらえず…このような事に…
申し訳ありません命様…私が力不足なばかりに…」
佐伯のシステム手帳を持つ手が微かに震える
「…お前が申し訳なさそうにする必要はない。佐伯…」
「しかし…っ、」
「今回のこの昼食会は父の達ての希望でもある。
どの道避けては通れなかった事だ。気にするな。」
「…ッ、」
佐伯は歯を食いしばり、その表情に悔しさを滲ませながら俯き
車内に重苦しい空気が立ち込める…
そこに命が険しい表情のまま洋一に声をかける
「…洋一。」
「…はい。」
「お前は…本当にいいのか…?」
「何がです?」
「昼食会…
向こうが何故か名指しでお前の事を指名してきたが…
嫌なら無理せず車で待っていてもらっても――」
自分を見つめながら言いづらそうに口籠る命に
洋一は微かな微笑みを命に向けながら口を開く
「俺の事なら心配しなくても大丈夫です。命さん…」
「しかし…」
「…横山さんと会うのはまだ怖いですけど…俺が昼食会に出なかったせいで
命さんの立場が悪くなるのは嫌ですしそれに――」
「…?」
「俺が…命さんと離れるのが嫌なんです…だから…俺も一緒に行きます。」
「ッ、洋一…っ!」
命が感極まって隣に座る洋一の事を思いきり抱きしめる
「心配するな洋一…
お前の事は俺が守る。アイツにはもう…指一本お前に触れさせはしない…」
「命さん…」
洋一も命の背に両手を回してギュッとその身体を抱きしめる…
「…」
もう慣れっこになりつつあるとはいえ…
二人だけの世界に入り浸る命と洋一を眺めながら
佐伯が申し訳なさそうに口を挟む
「…お二方…感極まっているところ申し訳ありませんが――
昼食会の前にまずは本社で溜まっている仕事を少しでも減らしていただかないと…
皆瀬さんがマーキング臭のせいで命様から離れていた間
命様がどうにも仕事に身が入ら無かったせいで仕事が大分溜まっておりますので…」
それを聞いて洋一がパッと命から離れ、恐る恐る口を開く
「あの…溜まってるってどれくらい…」
「30㎝の書類の山が二つほどデスクに並ぶくらいには…」
「…マジですか。」
「昼食会の後も今夜は残業になるかもしれません。お覚悟を。」
「う”…ご、ごめんなさい…」
「洋一は俺につき合って二度寝しただけだ。責めてやるな。」
「…なお悪いです。二度寝などという社畜憧れの惰眠を貪るなど…」
「むぅ…」
目的地へと向かうリムジンの車内で…
佐伯はハァ~…と大きな溜息をつきながらシステム手帳を開く
「ところで命様…皆瀬さん…昨日もお二人に少しお話しをしましたがその…
今日の予定の事なのですが…」
佐伯がスケジュールを見ながらその表情を歪め
実に伝え辛そうに言葉を閊(つか)えさせながら正面に座る命を伺い見る…
すると命の表情も忌々し気に歪んでいて――
「…分かっている。横山がセッティングした昼食会への参加…だろ…?」
「…はい…」
「横山…」
命が口にするのも汚らわしそうに言葉を吐き捨て
洋一の表情が一瞬にして曇る…
「…“あんな事”も御座いましたし…
誠に僭越(せんえつ)ながら私から横山氏に
今回の昼食会は中止、もしくは延期なされた方がよろしいのでは?と…
打診を試みたのですが聞き入れてはもらえず…このような事に…
申し訳ありません命様…私が力不足なばかりに…」
佐伯のシステム手帳を持つ手が微かに震える
「…お前が申し訳なさそうにする必要はない。佐伯…」
「しかし…っ、」
「今回のこの昼食会は父の達ての希望でもある。
どの道避けては通れなかった事だ。気にするな。」
「…ッ、」
佐伯は歯を食いしばり、その表情に悔しさを滲ませながら俯き
車内に重苦しい空気が立ち込める…
そこに命が険しい表情のまま洋一に声をかける
「…洋一。」
「…はい。」
「お前は…本当にいいのか…?」
「何がです?」
「昼食会…
向こうが何故か名指しでお前の事を指名してきたが…
嫌なら無理せず車で待っていてもらっても――」
自分を見つめながら言いづらそうに口籠る命に
洋一は微かな微笑みを命に向けながら口を開く
「俺の事なら心配しなくても大丈夫です。命さん…」
「しかし…」
「…横山さんと会うのはまだ怖いですけど…俺が昼食会に出なかったせいで
命さんの立場が悪くなるのは嫌ですしそれに――」
「…?」
「俺が…命さんと離れるのが嫌なんです…だから…俺も一緒に行きます。」
「ッ、洋一…っ!」
命が感極まって隣に座る洋一の事を思いきり抱きしめる
「心配するな洋一…
お前の事は俺が守る。アイツにはもう…指一本お前に触れさせはしない…」
「命さん…」
洋一も命の背に両手を回してギュッとその身体を抱きしめる…
「…」
もう慣れっこになりつつあるとはいえ…
二人だけの世界に入り浸る命と洋一を眺めながら
佐伯が申し訳なさそうに口を挟む
「…お二方…感極まっているところ申し訳ありませんが――
昼食会の前にまずは本社で溜まっている仕事を少しでも減らしていただかないと…
皆瀬さんがマーキング臭のせいで命様から離れていた間
命様がどうにも仕事に身が入ら無かったせいで仕事が大分溜まっておりますので…」
それを聞いて洋一がパッと命から離れ、恐る恐る口を開く
「あの…溜まってるってどれくらい…」
「30㎝の書類の山が二つほどデスクに並ぶくらいには…」
「…マジですか。」
「昼食会の後も今夜は残業になるかもしれません。お覚悟を。」
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