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命たちが屋敷に着いてから着々と荷解きを終えていき
全員で昼食を挟んでから更に二時間が経った午後14時過…
とりあえず今屋敷に持ち込んである荷をあらかた解き終え
書斎で一人、本棚の整理をしていた命の元に浩介が訪れる
「…おい、命様。」
「…何だ。今忙しい。」
さして忙しそうにはしておらず
むしろコチラを見る事も無く、手に持った本を立ったまま読みふけっている命に
浩介は若干ムッとしながらも書斎のドアを静かに閉め、命の元へと近寄っていき
その気配を察した命が読んでいた本をパタンと閉じ
近づいて来た浩介の方を見やる
「…何だ。」
相変わらずの姿勢の良さで首を軽く浩介の方に向ける命に
浩介が神妙な面持ちで命に小声で尋ねる
「…お前に――“運命の番”が現れたっていう噂が流れ始めているけど…
どうなんだ?」
「は?」
―――いや、どうなんだとはどうなんだ。
突拍子もない浩介の発言に命が目を丸くする
「待て。それは一体どういう…」
命が言葉の意味を測りかね、本気で戸惑っている様子に
浩介がちょっと残念そうに「チッ」と舌打ちをすると、言葉を続ける
「…その様子から察するに…どうやらこの噂はただの噂らしいな。残念。
もしこの噂が本当だったら…要さんに続いてお前までもが洋一を裏切ったとして
俺が洋一の代わりにこの場でお前をぶん殴って俺はスッキリできたのに…」
ハァ~…と、深い溜息を漏らす浩介に、命は不快そうに眉を顰める
「話が見えてこないのだが…さっきからお前は一体何の話をしている?」
「…いや…さ…この間っからお前に“運命の番”が現れたって話題が
女子社員たちの間で持ちきりになっててさ…
何でも?近いうちに鬼生道傘下の企業や会社の役員らを集めて
披露宴がとり行われるんだとかなんだとか…」
「なんだそれは…そんな話、聞いた事も無いぞ…」
「っぽいな。だが――だったら気をつけろよ?」
「何をだ。」
「噂。火の無い所には煙は立たないっていうけれど――
こういった噂には大抵…自分から火を点けて回っている変なヤツがいるからな。
この場合は噂の中心であるお前の“運命の番”とやらが一番怪しいんだが…
…兎に角用心しろよ。洋一の事も含めてな…」
「…心得ておこう。」
浩介は命にそれだけ言うと部屋を出ていき
命は手に持っていた本を棚に収め、次に仕舞うべき本を手に取った…
ブブブブブ…ブブブブブ…
ダイニング・キッチンで一人、冷蔵庫に中身を補充していた洋一のスマホが
カウンターの上で振動し始め、洋一が慌てて着信画面を見ると
そこには見覚えの無いアドレスからのメールが一件届いており…
―――誰からだろ…
いつも通り警戒心の薄い洋一は安易にそのメールを開く
するとそこには画面いっぱいの黒の中で赤文字で
『彼から離れろ』
とだけ書かれた一文があり、洋一が首を傾げる
―――…?ナニコレいたずら??彼から離れろっていわれても…
彼って誰よ…
離れて欲しいんだったらせめて名前くらい書いといてよもー…
と…どうせただの悪戯だろうとメール内容をさして気にも留める事無く
鈍い洋一は苦笑を浮かべながらさっさとそのメールを削除すると
再び冷蔵庫に中身を詰め込み始めた…
全員で昼食を挟んでから更に二時間が経った午後14時過…
とりあえず今屋敷に持ち込んである荷をあらかた解き終え
書斎で一人、本棚の整理をしていた命の元に浩介が訪れる
「…おい、命様。」
「…何だ。今忙しい。」
さして忙しそうにはしておらず
むしろコチラを見る事も無く、手に持った本を立ったまま読みふけっている命に
浩介は若干ムッとしながらも書斎のドアを静かに閉め、命の元へと近寄っていき
その気配を察した命が読んでいた本をパタンと閉じ
近づいて来た浩介の方を見やる
「…何だ。」
相変わらずの姿勢の良さで首を軽く浩介の方に向ける命に
浩介が神妙な面持ちで命に小声で尋ねる
「…お前に――“運命の番”が現れたっていう噂が流れ始めているけど…
どうなんだ?」
「は?」
―――いや、どうなんだとはどうなんだ。
突拍子もない浩介の発言に命が目を丸くする
「待て。それは一体どういう…」
命が言葉の意味を測りかね、本気で戸惑っている様子に
浩介がちょっと残念そうに「チッ」と舌打ちをすると、言葉を続ける
「…その様子から察するに…どうやらこの噂はただの噂らしいな。残念。
もしこの噂が本当だったら…要さんに続いてお前までもが洋一を裏切ったとして
俺が洋一の代わりにこの場でお前をぶん殴って俺はスッキリできたのに…」
ハァ~…と、深い溜息を漏らす浩介に、命は不快そうに眉を顰める
「話が見えてこないのだが…さっきからお前は一体何の話をしている?」
「…いや…さ…この間っからお前に“運命の番”が現れたって話題が
女子社員たちの間で持ちきりになっててさ…
何でも?近いうちに鬼生道傘下の企業や会社の役員らを集めて
披露宴がとり行われるんだとかなんだとか…」
「なんだそれは…そんな話、聞いた事も無いぞ…」
「っぽいな。だが――だったら気をつけろよ?」
「何をだ。」
「噂。火の無い所には煙は立たないっていうけれど――
こういった噂には大抵…自分から火を点けて回っている変なヤツがいるからな。
この場合は噂の中心であるお前の“運命の番”とやらが一番怪しいんだが…
…兎に角用心しろよ。洋一の事も含めてな…」
「…心得ておこう。」
浩介は命にそれだけ言うと部屋を出ていき
命は手に持っていた本を棚に収め、次に仕舞うべき本を手に取った…
ブブブブブ…ブブブブブ…
ダイニング・キッチンで一人、冷蔵庫に中身を補充していた洋一のスマホが
カウンターの上で振動し始め、洋一が慌てて着信画面を見ると
そこには見覚えの無いアドレスからのメールが一件届いており…
―――誰からだろ…
いつも通り警戒心の薄い洋一は安易にそのメールを開く
するとそこには画面いっぱいの黒の中で赤文字で
『彼から離れろ』
とだけ書かれた一文があり、洋一が首を傾げる
―――…?ナニコレいたずら??彼から離れろっていわれても…
彼って誰よ…
離れて欲しいんだったらせめて名前くらい書いといてよもー…
と…どうせただの悪戯だろうとメール内容をさして気にも留める事無く
鈍い洋一は苦笑を浮かべながらさっさとそのメールを削除すると
再び冷蔵庫に中身を詰め込み始めた…
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