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重なる掌。
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『愛してる…』
「うぅぅ…ッ、」
何の前触れもなく、好きをすっ飛ばした命からの愛の告白に
洋一は泣きながら命の胸に顔を埋めたまま身悶え続ける…
―――やっぱズルイよ…命さんは…
俺が躊躇って中々言葉に出来ない言葉を
簡単に言葉にして先に言っちゃうんだもん…ズルイよ…
洋一は益々命の胸に顔を埋め、悶々とする気持ちを抱えながら涙を零す…
そこに車は目的地であるホテルへと辿り着き
二人は甘い空気を漂わせたまま車から降り――
「…ご苦労だったな、山下…今日はお前ももう帰って休んでいいぞ。」
「…分かりました。」
命がドアを閉めると、車内の山下が窓越しに軽く命たちに頭を下げた後に
車をその場から静かに発進させ、去っていく
「…さて、俺達もホテルに入るか。」
「ぁい…」
車中で散々泣いてしまった洋一は
目元に残る涙をグシグシと手の甲で拭いながら、鼻声で命にそう答えると
ホテルに入って行く命の後を
俯き、出来るだけ今の自分の顔を誰かに見られないようにしながら歩く…
「先ほど予約を入れた者だが…」
「鬼生道様!お待ちしておりました。
コチラがご予約頂いたスイートの鍵になります。」
「ああ、暫く厄介になる。行くぞ、洋一。」
「あっ…はい…」
スイートという単語と、受け付けに居る人達の自分達を見送る視線が気になり
洋一が気後れする
―――…男二人で泊まるホテルの部屋に…
当然のようにスイートを取っちゃうんだもの…
うぅ…痛い…受付の人達の視線が痛い…
この間のホテルもそーだったけど…
あ、あれは部屋選んだのは佐伯さんか。
けど――あの時は俺も命さんもヤバイ状態だったにも関わらず
佐伯さんは部屋選ぶのに冷静にスイートを選んだのか思うと…
…その…
洋一は改めてあの時の状況を思いだしてしまい
再び熱を持って赤くなり始めた自分の頬を両手で隠す
そこに待っていたエレベーターのドアが開き、命はさっさと乗り込むが
依然自分の両頬を両手で覆ったまま動かない洋一に気が付き、声をかける
「どうした?洋一…早く乗れ。」
「あ…は、はい…っ、」
命の声に洋一がハッとなって慌ててエレベーターに乗り込むと
自分の隣に躊躇いがちに立った洋一に向け、命が静かに口を開く
「気にするな。」
「え?」
「お前はやたらと人の目を気にする…だから――気にするな。」
―――バレてた…
「はい…」
エレベーターのドアが二人の前でスゥー…っと閉まり
二人を乗せたカゴは最上階へ向け、静かに上昇し始める
「うわぁ…」
シースルーのカゴの中から見る外の景色は
いつしか夕方から夜へと移り変わり…
洋一は徐々に昇っていく外の景色を、食い入る様に見つめる
―――綺麗…
二人っきりの空間
無言で外の景色を眺め続ける洋一の手の甲に
ふと、命の手がそっと重なり…
「…」
洋一が前を見つめたまま、無言で重なってきた命の掌に自分の掌を重ね返し
命の指と指の隙間に自分の指を滑り込ませると、キュッ…っとその手を握り
命も洋一の手を握りかえす…
「…」
二人は互いに無言で外の景色を見つめながら
互いに固く握り合った掌から伝わる肌の温もりに
互いの気持ちは徐々に昂(たかぶ)っていく…
「…洋一…」
「…はい…、」
命の親指が、洋一の親指をもどかしく撫でる…
「…お前を…抱きたい。」
命の言葉に洋一が息を飲み込み
命の言葉に答えるかのように洋一が命の手を更にギュッと強く握りしめると
微かに震える声で恥じらうように俯きながら小さく答えた…
「俺も…命さんが欲しい…」
「うぅぅ…ッ、」
何の前触れもなく、好きをすっ飛ばした命からの愛の告白に
洋一は泣きながら命の胸に顔を埋めたまま身悶え続ける…
―――やっぱズルイよ…命さんは…
俺が躊躇って中々言葉に出来ない言葉を
簡単に言葉にして先に言っちゃうんだもん…ズルイよ…
洋一は益々命の胸に顔を埋め、悶々とする気持ちを抱えながら涙を零す…
そこに車は目的地であるホテルへと辿り着き
二人は甘い空気を漂わせたまま車から降り――
「…ご苦労だったな、山下…今日はお前ももう帰って休んでいいぞ。」
「…分かりました。」
命がドアを閉めると、車内の山下が窓越しに軽く命たちに頭を下げた後に
車をその場から静かに発進させ、去っていく
「…さて、俺達もホテルに入るか。」
「ぁい…」
車中で散々泣いてしまった洋一は
目元に残る涙をグシグシと手の甲で拭いながら、鼻声で命にそう答えると
ホテルに入って行く命の後を
俯き、出来るだけ今の自分の顔を誰かに見られないようにしながら歩く…
「先ほど予約を入れた者だが…」
「鬼生道様!お待ちしておりました。
コチラがご予約頂いたスイートの鍵になります。」
「ああ、暫く厄介になる。行くぞ、洋一。」
「あっ…はい…」
スイートという単語と、受け付けに居る人達の自分達を見送る視線が気になり
洋一が気後れする
―――…男二人で泊まるホテルの部屋に…
当然のようにスイートを取っちゃうんだもの…
うぅ…痛い…受付の人達の視線が痛い…
この間のホテルもそーだったけど…
あ、あれは部屋選んだのは佐伯さんか。
けど――あの時は俺も命さんもヤバイ状態だったにも関わらず
佐伯さんは部屋選ぶのに冷静にスイートを選んだのか思うと…
…その…
洋一は改めてあの時の状況を思いだしてしまい
再び熱を持って赤くなり始めた自分の頬を両手で隠す
そこに待っていたエレベーターのドアが開き、命はさっさと乗り込むが
依然自分の両頬を両手で覆ったまま動かない洋一に気が付き、声をかける
「どうした?洋一…早く乗れ。」
「あ…は、はい…っ、」
命の声に洋一がハッとなって慌ててエレベーターに乗り込むと
自分の隣に躊躇いがちに立った洋一に向け、命が静かに口を開く
「気にするな。」
「え?」
「お前はやたらと人の目を気にする…だから――気にするな。」
―――バレてた…
「はい…」
エレベーターのドアが二人の前でスゥー…っと閉まり
二人を乗せたカゴは最上階へ向け、静かに上昇し始める
「うわぁ…」
シースルーのカゴの中から見る外の景色は
いつしか夕方から夜へと移り変わり…
洋一は徐々に昇っていく外の景色を、食い入る様に見つめる
―――綺麗…
二人っきりの空間
無言で外の景色を眺め続ける洋一の手の甲に
ふと、命の手がそっと重なり…
「…」
洋一が前を見つめたまま、無言で重なってきた命の掌に自分の掌を重ね返し
命の指と指の隙間に自分の指を滑り込ませると、キュッ…っとその手を握り
命も洋一の手を握りかえす…
「…」
二人は互いに無言で外の景色を見つめながら
互いに固く握り合った掌から伝わる肌の温もりに
互いの気持ちは徐々に昂(たかぶ)っていく…
「…洋一…」
「…はい…、」
命の親指が、洋一の親指をもどかしく撫でる…
「…お前を…抱きたい。」
命の言葉に洋一が息を飲み込み
命の言葉に答えるかのように洋一が命の手を更にギュッと強く握りしめると
微かに震える声で恥じらうように俯きながら小さく答えた…
「俺も…命さんが欲しい…」
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