βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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色々すっとばして――

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結局、引っ越し先のライフラインがまだ整っていなかった為
今日中の引っ越しは難しいと判断し、諦めはしたものの――

命は円の捨て台詞が気になり
このまま襲撃のあったマンションに洋一を置いてはおけないと
信用のおけるホテルに連絡をとり
引っ越しを行う為のその他諸々の問題が解決するまでの間
とりあえずそのホテルで数日間過ごす事を決め
佐伯と浩介には一旦家に帰ってもらう事に…

「…それでは命様…明日、ホテルの方にお迎えにあがります。」
「分かった。」
「洋一。」
「ん?何、浩介。」
「…その…」
「?」
「この間は悪かったな…
 お前の気持ちも考えずにあんな…責めるような言い方して…」
「ああ…もう気にしてないよ。
 結局俺…誰に何言われても――命さんの事が好きなの…変わんないし…」
「ッ!?」
「――ッ、なんだよっ…惚気(のろけ)かっ?!ったくぅ~…
 まあいいや。兎に角俺は――
 お前が幸せならそれでいいって思ってるから…それでその――
 何かあったら連絡しろよ?何時でも相談のっから!」
「うん…有難う浩介…」

洋一がフワっと浩介に微笑む

「ッ、それじゃ、またな!」

浩介それだけ言って照れくさそうに微笑むと
照れ隠しなのかその場を駆け足で去って行き
佐伯もそれに続いてマンションを後にする

「さて…それじゃあ俺達もホテルに行くとするか。」
「はい。」

佐伯と浩介を見送った後
命と洋一は山下の待つ車へと乗り込み、ホテルへとむかう
その車中にて――

「…洋一。」
「はい。」
「その…さっきお前が言った言葉だが…」
「?」
「篠原に向かって
 誰に何言われても…俺の事が好きだと言ったあの言葉…」
「あ…」

命から改めて自分が言った言葉を繰り返され…
洋一は急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にする

「嬉しかったぞ。」
「ッ!」
「お前のあの言葉…本当に嬉しかった…」
「…命さん…」
「だから俺からも言わせてくれ。
 俺も――周りから何と言われようと…お前を愛してると…」
「――ッ!?待って待ってっ!好きすっ飛ばしちゃったよこの人っ!!」

洋一はもう顔がリンゴかトマトかってくらい顔を真っ赤っかになしながら
慌てふためき

命はそんな洋一を抱きよせ耳元で囁く

「ああ…俺はもう…
 好きをすっ飛ばして愛してる…お前の事を…誰よりも…」
「~~~ッ、うぅ…ズルイ~…やっぱりズルイよ…命さんは…っ、」

洋一は命にしがみつき、耳まで真っ赤になった顔を命の胸に埋めたまま
すすり泣き始め、命は微笑みを浮かべると
そんな洋一の頭を無言で優しく撫で続ける…

甘い空気が二人を包む中

山下がルームミラー越しにそんな二人の姿を見つめると
優しくフっと微笑んだ…
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