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戸惑い。
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―――洋一…っ!
捕まえたタクシーの中で、浩介が洋一に何度も電話をかけるが
洋一からの反応は無く…
―――どうしたんだよ洋一…電話にでろって!早く…っ!
命に電話をかける前にも浩介は洋一に電話をかけたが
洋一が電話に出る事はなく…
それで心配になった浩介が、恥を忍んで命に連絡を取ったわけだが――
―――ッ、まさか…!洋一はもう既にあのサイコパス野郎に…っ!
焦る浩介の頭の中を嫌な予感が過ぎる…
そんな中、タクシーは悠長にマンションに到着し――
「っ、はいコレっ!お釣りはいいからっ!!」
浩介は運転手に一万円を手渡すと、急いでマンション内へと駆けこみ
目に着いたフロント内にいるコンシェルジュに慌てた様子で声をかける
「すみませんっ!皆瀬さんは御在宅でしょうか――」
「…」
「ッ、すみませんっ!!」
苛立つ浩介が思わず大声を上げ
フロントに立つコンシェルジュ二人に詰め寄るが――
「…?」
二人はまるで浩介の事が見えていないかのように無表情のまま
一点を見つめたっきりウンともスンとも言わず…
―――どーなってんだよオイ…、
浩介がそんな二人を前に狼狽え、辺りを見回す
―――マズイな…コンシェルジュにペントハウスに行く許可を貰えないと…
部外者の俺が無断でエレベーターに乗っても
エレベーターは動かない…!
浩介が焦り、ギリッと歯噛みする
そこにペントハウス直通のエレベーターのドアが開き――
「――ッ!?洋一っ!!」
「…ッ、」
エレベーター内に洋一の姿を捉え、浩介は思わず叫ぶが洋一は微動だにせず…
その代わり、洋一の首筋に顔を埋め
人目もはばからずに洋一の事を抱きしめていた円が声のした方を振り向き――
「あっ!お前っ!!」
「ッ!こーちゃんっ?!どーして此処に…
ちゃんと“部屋から出るな”って言っておいたのに…!
それよりも見張りは何して――」
浩介がこの場に居る事に余程驚いたのか
円が驚愕の表情を浮かべながら固まり、浩介はそんな円に詰め寄ろうとする
しかし――
「ッ!と…“止まって!こーちゃん”」
「ぐっ…」
―――また…っ!
円の一言に浩介の足は地面に縫い止められたかのように動かなくなるが
上体は前へ出ようとしていたために、ガクンッと前につんのめり
浩介は勢い余ってその場で膝と両手を床につき、身体の自由を奪われる…
しかしそれでもなお浩介は顔を上げて円の事を睨みつけ――
「おっ…まえ…ッ!俺に何し…っ、」
「……ッ」
―――やっぱり…
こーちゃんには僕の“言霊”が“完全”には効いていない…何故…
円が戸惑いながら床に膝を着いて自分の事を睨んでくる浩介を見つめる
そこにエントランス前から車の急ブレーキ音が聞こえ
浩介がホッとした顔をしながら呟いた
「ッ、やっと…来たか…っ、“命様”…」
捕まえたタクシーの中で、浩介が洋一に何度も電話をかけるが
洋一からの反応は無く…
―――どうしたんだよ洋一…電話にでろって!早く…っ!
命に電話をかける前にも浩介は洋一に電話をかけたが
洋一が電話に出る事はなく…
それで心配になった浩介が、恥を忍んで命に連絡を取ったわけだが――
―――ッ、まさか…!洋一はもう既にあのサイコパス野郎に…っ!
焦る浩介の頭の中を嫌な予感が過ぎる…
そんな中、タクシーは悠長にマンションに到着し――
「っ、はいコレっ!お釣りはいいからっ!!」
浩介は運転手に一万円を手渡すと、急いでマンション内へと駆けこみ
目に着いたフロント内にいるコンシェルジュに慌てた様子で声をかける
「すみませんっ!皆瀬さんは御在宅でしょうか――」
「…」
「ッ、すみませんっ!!」
苛立つ浩介が思わず大声を上げ
フロントに立つコンシェルジュ二人に詰め寄るが――
「…?」
二人はまるで浩介の事が見えていないかのように無表情のまま
一点を見つめたっきりウンともスンとも言わず…
―――どーなってんだよオイ…、
浩介がそんな二人を前に狼狽え、辺りを見回す
―――マズイな…コンシェルジュにペントハウスに行く許可を貰えないと…
部外者の俺が無断でエレベーターに乗っても
エレベーターは動かない…!
浩介が焦り、ギリッと歯噛みする
そこにペントハウス直通のエレベーターのドアが開き――
「――ッ!?洋一っ!!」
「…ッ、」
エレベーター内に洋一の姿を捉え、浩介は思わず叫ぶが洋一は微動だにせず…
その代わり、洋一の首筋に顔を埋め
人目もはばからずに洋一の事を抱きしめていた円が声のした方を振り向き――
「あっ!お前っ!!」
「ッ!こーちゃんっ?!どーして此処に…
ちゃんと“部屋から出るな”って言っておいたのに…!
それよりも見張りは何して――」
浩介がこの場に居る事に余程驚いたのか
円が驚愕の表情を浮かべながら固まり、浩介はそんな円に詰め寄ろうとする
しかし――
「ッ!と…“止まって!こーちゃん”」
「ぐっ…」
―――また…っ!
円の一言に浩介の足は地面に縫い止められたかのように動かなくなるが
上体は前へ出ようとしていたために、ガクンッと前につんのめり
浩介は勢い余ってその場で膝と両手を床につき、身体の自由を奪われる…
しかしそれでもなお浩介は顔を上げて円の事を睨みつけ――
「おっ…まえ…ッ!俺に何し…っ、」
「……ッ」
―――やっぱり…
こーちゃんには僕の“言霊”が“完全”には効いていない…何故…
円が戸惑いながら床に膝を着いて自分の事を睨んでくる浩介を見つめる
そこにエントランス前から車の急ブレーキ音が聞こえ
浩介がホッとした顔をしながら呟いた
「ッ、やっと…来たか…っ、“命様”…」
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