81 / 128
久しぶり。
しおりを挟む
「…」
久しぶりに帰ってきた実家の廊下を
命は険しい表情のまま無言で歩き続ける…
『今度私の前にそのβを連れてきなさい。
その匂い…私も是非嗅いでみたい…』
―――“あの人”が何を考えいるのか…今の俺には皆目検討もつかないが――
車の傍で山下と共に待機していた佐伯が
険しい表情(かお)をしながら玄関から出てきた命の姿を確認すると
頭をスッと下げて命を出迎えるが
命はそれに構う余裕すら無いといった感じで
玄関手前に停めてある車に早々に乗り込むと
佐伯もそれに続いて命の隣の後部座席へと乗り込む…
「…出せ。」
「かしこまりました。」
命の一声に山下が車をゆっくりと発進させ
窓の外に見える自分の実家を、命が苦々しい思いで睨みつける…
―――α以外の全てを――いや…
自分以外の全てを見下しているような“あの人”が――
果たして匂いだけでβである洋一に会いたいだなんて思うだろうか…?
命の父親はこういっては何だが“α至上主義”的な側面があり…
余程の実力を示さない限り
α以外の存在は、存在そのものを認めようとはしない人物で――
そんな父親の側面を知っているが故に
匂いだけで洋一にあってみたいなどという自分の父親に
命は不信を抱く…
―――…何かある…
確証はないが確信ならある。
“あの人”がただの興味本位で行動を起こし
普段から見下しているΩやβに会おうとする事など絶対に有り得ない。
何か裏がある…
命の表情が険しさを増し
バックミラー越しに徐々に遠のいていく実家を歯がゆい思いで見つめる…
―――…兎に角…“あの人”の考えが分から無い以上――
真偽のほどを確かめるまでは
洋一を“あの人”に会わせるわけにはいかない…絶対に…
命は自分の気持ちを落ち着けるかのようにその場で一呼吸置くと
とりあえず自分が洋一を守る為にこれから何をすべきなのか…
その考えを巡らせ始めた…
※※※※※※※※※※※※※
―――そろそろ命さん…帰って来る頃かな…?
洋一がスマホ画面で時間を確認しようとしたその時
それとほぼ同時にスマホに非通知の着信が入り――
―――…誰からだろう…
洋一が疑問に思いながらもその通話ボタンを押し
恐る恐る電話に出る
「もしもし…?」
すると電話の向こうで、相手の息を飲む音が聞こえ
暫くしてから性別が判別しにくい声で返事が返ってきた
『――久しぶり。ようちゃん…』
久しぶりに帰ってきた実家の廊下を
命は険しい表情のまま無言で歩き続ける…
『今度私の前にそのβを連れてきなさい。
その匂い…私も是非嗅いでみたい…』
―――“あの人”が何を考えいるのか…今の俺には皆目検討もつかないが――
車の傍で山下と共に待機していた佐伯が
険しい表情(かお)をしながら玄関から出てきた命の姿を確認すると
頭をスッと下げて命を出迎えるが
命はそれに構う余裕すら無いといった感じで
玄関手前に停めてある車に早々に乗り込むと
佐伯もそれに続いて命の隣の後部座席へと乗り込む…
「…出せ。」
「かしこまりました。」
命の一声に山下が車をゆっくりと発進させ
窓の外に見える自分の実家を、命が苦々しい思いで睨みつける…
―――α以外の全てを――いや…
自分以外の全てを見下しているような“あの人”が――
果たして匂いだけでβである洋一に会いたいだなんて思うだろうか…?
命の父親はこういっては何だが“α至上主義”的な側面があり…
余程の実力を示さない限り
α以外の存在は、存在そのものを認めようとはしない人物で――
そんな父親の側面を知っているが故に
匂いだけで洋一にあってみたいなどという自分の父親に
命は不信を抱く…
―――…何かある…
確証はないが確信ならある。
“あの人”がただの興味本位で行動を起こし
普段から見下しているΩやβに会おうとする事など絶対に有り得ない。
何か裏がある…
命の表情が険しさを増し
バックミラー越しに徐々に遠のいていく実家を歯がゆい思いで見つめる…
―――…兎に角…“あの人”の考えが分から無い以上――
真偽のほどを確かめるまでは
洋一を“あの人”に会わせるわけにはいかない…絶対に…
命は自分の気持ちを落ち着けるかのようにその場で一呼吸置くと
とりあえず自分が洋一を守る為にこれから何をすべきなのか…
その考えを巡らせ始めた…
※※※※※※※※※※※※※
―――そろそろ命さん…帰って来る頃かな…?
洋一がスマホ画面で時間を確認しようとしたその時
それとほぼ同時にスマホに非通知の着信が入り――
―――…誰からだろう…
洋一が疑問に思いながらもその通話ボタンを押し
恐る恐る電話に出る
「もしもし…?」
すると電話の向こうで、相手の息を飲む音が聞こえ
暫くしてから性別が判別しにくい声で返事が返ってきた
『――久しぶり。ようちゃん…』
10
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!



怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる