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犬猫は、自分が可愛いって分かってる 1
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「えっ…俺…?」
浩介の手を握りしめながら
目の前でニコニコと花が綻ぶような可愛らしい笑みを浮かべる円に浩介は戸惑う
―――貴方は?なんて聞かれても俺…なんもしてねーし…
あ、でも子供がちゃんと名乗ったのに
大人の俺が名乗らなかったら示しがつかねーか…
自分の事を見上げてくる円に、浩介は何処か違和感を感じながらも
躊躇いがちにその口を開いた
「俺は――篠原 浩介(しのはら こうすけ)って言うんだけど――
とりあえずキミが無事で良かったよ。それじゃあ俺はこれで…」
何だかよく分から無いけれども
何もしていないのに円から自分に向けられるキラッキラの笑顔に
浩介は居心地の悪さを覚え、急いでその場から立ち去ろうとする
しかし――
「あっ!ちょっと待って下さいっ!」
「ッ!ちょっ、お?!」
見た目からは想像も出来ない程の強い力で円に腕を引っ張られ
浩介の膝が面白いほど後ろにガクッとなり
浩介は思わず後ろに倒れそうになるのを上体に力を入れ踏ん張る事で何とか耐える
「ちょっと…危ないでしょーがっ!いきなり引っ張っちゃ――」
浩介がふぅ~…と息を吐き、ちょっとイラッとした感じで円の方を振り返る
するとそこには泣きそうな顔をしながらアワアワと慌てふためく円の姿があり――
「あ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…っ!
僕あの…っ!この辺越してきたばかりで…
それであの…散歩していたらその…道とかわかんなくなっちゃって…っ、」
大きな銀色の瞳に薄っすらと涙を浮かべ始め
たどたどしくも必死に浩介に言い募る円のその姿に
浩介の中の庇護欲がどんどん膨れ上がっていく…
「それであの…あの…っ!」
浩介の目にはもう既に垂れた耳と尻尾が見えてい始め
捨てられた子犬の様な顔をして自分の事を見つめてくる円に
浩介は遂に耐えきれなくなり――
「…迷子になったから…送ってくれって言うんだろ…?」
折れた
―――だってさぁ…だってさぁ~っ!あんな縋る様な目ぇされたらさぁ…
ほっとけないじゃん…っ!
ホント俺ってこの手のタイプに弱いよなぁ~…洋一に事といい…
ハァーーー…と、浩介が大きな溜息を吐きだしながらガクッと項垂れ
目の前の円の顔がぱぁっ!と華やぐ
「有難うございますっ!篠原さん!それであのぉ~…出来たら――
この辺の事も案内してくれるともっと嬉しいんですけど…ダメですか…?」
「はあっ?!」
余りにも図々しい円の一言に
浩介は思わず項垂れていた顔をバッと上げ一言言ってやろうと口を開きかけるが――
「ダメ…ですか…?」
大きな瞳をうるうると潤ませ
上目遣いで浩介の事を見つめてくる円に浩介は「う”っ…」と小さく呻くと
「いいよわかったよっ!案内するよっ!!」
「本当ですか!?有難うございます!w
篠原さんが良い人でホント…助かりましたw」
「ハァ~…あ、そう…」
浩介はため息交じりにそう言うと、後ろも見ずに歩きだし
円はその後をひょこひょこと小走りでついて歩いた…
円が駅の方から適当に歩いてきたというので
浩介は車では無く、駅までの道のりを歩いて行くことに決め
道すがら円の希望通り、この辺を案内しながら歩く
すると円が一件の店の軒先で足を止め――
「篠原さん。喉…乾きません?僕が奢りますんで――
ここでちょっと飲んでいきましょうよ!」
円の声に浩介が振り向き、円が指さすを方を目で追うと
そこは浩介なじみの居酒屋で――
「あー…奢ってもらえるのは嬉しいけど――ココはダメかな。」
「?どうして…?」
「ここ、居酒屋。」
「じゃあ丁度いいじゃないですか!入りましょうよ!」
「ちょちょちょ!だからダメだってっ!!
キミ、未成年でしょーがっ!」
円が構わず店に入ろうとするのを浩介が慌てて止める
「えっ…何言ってるんですか?篠原さん…
僕もうとっくに成人してますよ?」
キョトンと首を傾げながらそう言う円に浩介が一瞬真顔になり
ワンテンポ遅れて正気に戻った浩介が慌てふためく
「…え?はっ??…嘘でしょ??
どー見ても…どー頑張ってもキミ、高校生くらいにしか見えないよっ?!?!」
目の前でふわふわとした笑みを浮かべる円に
浩介は絶句しながらジロジロと見てしまう
「ふふ♪よく言われますw
でも僕今27歳で――」
「は…?はあぁぁぁあああっ?!
27ってマジかよっ!俺と同い年っ?!その見た目でっ?!?!
こんなん詐欺だよ詐欺っ!!」
てっきりその愛くるしい見た目から
円の事を年端もいかない子供だと思っていただけに
思わず絶叫してしまった浩介の声に
道行く人たちの視線が何事かと一斉に浩介に向けられ――
「あ…えとじゃあ…とりあえずこの店に入ろっか。」
浩介はその気まずい空気に耐えきれず、逃げる様にして居酒屋の入口を開け
円を先に通してから、自分も後に続いて店内へと入った…
浩介の手を握りしめながら
目の前でニコニコと花が綻ぶような可愛らしい笑みを浮かべる円に浩介は戸惑う
―――貴方は?なんて聞かれても俺…なんもしてねーし…
あ、でも子供がちゃんと名乗ったのに
大人の俺が名乗らなかったら示しがつかねーか…
自分の事を見上げてくる円に、浩介は何処か違和感を感じながらも
躊躇いがちにその口を開いた
「俺は――篠原 浩介(しのはら こうすけ)って言うんだけど――
とりあえずキミが無事で良かったよ。それじゃあ俺はこれで…」
何だかよく分から無いけれども
何もしていないのに円から自分に向けられるキラッキラの笑顔に
浩介は居心地の悪さを覚え、急いでその場から立ち去ろうとする
しかし――
「あっ!ちょっと待って下さいっ!」
「ッ!ちょっ、お?!」
見た目からは想像も出来ない程の強い力で円に腕を引っ張られ
浩介の膝が面白いほど後ろにガクッとなり
浩介は思わず後ろに倒れそうになるのを上体に力を入れ踏ん張る事で何とか耐える
「ちょっと…危ないでしょーがっ!いきなり引っ張っちゃ――」
浩介がふぅ~…と息を吐き、ちょっとイラッとした感じで円の方を振り返る
するとそこには泣きそうな顔をしながらアワアワと慌てふためく円の姿があり――
「あ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…っ!
僕あの…っ!この辺越してきたばかりで…
それであの…散歩していたらその…道とかわかんなくなっちゃって…っ、」
大きな銀色の瞳に薄っすらと涙を浮かべ始め
たどたどしくも必死に浩介に言い募る円のその姿に
浩介の中の庇護欲がどんどん膨れ上がっていく…
「それであの…あの…っ!」
浩介の目にはもう既に垂れた耳と尻尾が見えてい始め
捨てられた子犬の様な顔をして自分の事を見つめてくる円に
浩介は遂に耐えきれなくなり――
「…迷子になったから…送ってくれって言うんだろ…?」
折れた
―――だってさぁ…だってさぁ~っ!あんな縋る様な目ぇされたらさぁ…
ほっとけないじゃん…っ!
ホント俺ってこの手のタイプに弱いよなぁ~…洋一に事といい…
ハァーーー…と、浩介が大きな溜息を吐きだしながらガクッと項垂れ
目の前の円の顔がぱぁっ!と華やぐ
「有難うございますっ!篠原さん!それであのぉ~…出来たら――
この辺の事も案内してくれるともっと嬉しいんですけど…ダメですか…?」
「はあっ?!」
余りにも図々しい円の一言に
浩介は思わず項垂れていた顔をバッと上げ一言言ってやろうと口を開きかけるが――
「ダメ…ですか…?」
大きな瞳をうるうると潤ませ
上目遣いで浩介の事を見つめてくる円に浩介は「う”っ…」と小さく呻くと
「いいよわかったよっ!案内するよっ!!」
「本当ですか!?有難うございます!w
篠原さんが良い人でホント…助かりましたw」
「ハァ~…あ、そう…」
浩介はため息交じりにそう言うと、後ろも見ずに歩きだし
円はその後をひょこひょこと小走りでついて歩いた…
円が駅の方から適当に歩いてきたというので
浩介は車では無く、駅までの道のりを歩いて行くことに決め
道すがら円の希望通り、この辺を案内しながら歩く
すると円が一件の店の軒先で足を止め――
「篠原さん。喉…乾きません?僕が奢りますんで――
ここでちょっと飲んでいきましょうよ!」
円の声に浩介が振り向き、円が指さすを方を目で追うと
そこは浩介なじみの居酒屋で――
「あー…奢ってもらえるのは嬉しいけど――ココはダメかな。」
「?どうして…?」
「ここ、居酒屋。」
「じゃあ丁度いいじゃないですか!入りましょうよ!」
「ちょちょちょ!だからダメだってっ!!
キミ、未成年でしょーがっ!」
円が構わず店に入ろうとするのを浩介が慌てて止める
「えっ…何言ってるんですか?篠原さん…
僕もうとっくに成人してますよ?」
キョトンと首を傾げながらそう言う円に浩介が一瞬真顔になり
ワンテンポ遅れて正気に戻った浩介が慌てふためく
「…え?はっ??…嘘でしょ??
どー見ても…どー頑張ってもキミ、高校生くらいにしか見えないよっ?!?!」
目の前でふわふわとした笑みを浮かべる円に
浩介は絶句しながらジロジロと見てしまう
「ふふ♪よく言われますw
でも僕今27歳で――」
「は…?はあぁぁぁあああっ?!
27ってマジかよっ!俺と同い年っ?!その見た目でっ?!?!
こんなん詐欺だよ詐欺っ!!」
てっきりその愛くるしい見た目から
円の事を年端もいかない子供だと思っていただけに
思わず絶叫してしまった浩介の声に
道行く人たちの視線が何事かと一斉に浩介に向けられ――
「あ…えとじゃあ…とりあえずこの店に入ろっか。」
浩介はその気まずい空気に耐えきれず、逃げる様にして居酒屋の入口を開け
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