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不穏な足音。
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「ちょっと篠原さんっ!貴方まさか非常階段で一階まで下るつもりっ?!」
非常階段を駆け下り始めた浩介を見て、要が慌てて呼び止める
「ッ、他にどんな方法があるっていうんだよっ!」
「ペントハウスに繋がるエレベーターは一つしかないけど――
その一階下のフロアからならエレベーターが四つあるの!
それで洋一を追うわよ!」
要が非常階段の踊り場から
パントハウス一階下のフロアのドアを開けながら浩介に向かって叫ぶ
「~~~ッ、それを早く言えっ!」
それを聞いて浩介は赤面し
今度は階段を駆け上がりながら要に向かって叫んだ…
「…ッ、うぅ…、」
エレベーターを出てエントランスホールをつっきり
どこか慌てた様子のコンシェルジュの声を無視して洋一は泣きながら外へと駆け出す
『“運命の番”が現れた途端…αとβが互いにどんなに愛し合っていても
αは平気でβを捨て、Ωを選ぶ…
抗えないんだよ…“運命の番”には…
現に――要さんは抗えなかっただろ…?』
―――そんな事…そんな事ないよ…っ、だって…言ったもん…
命さん…俺に言ったもん…っ!
涙で歪む視界の中…洋一はただひたすら走る
『お前の為ならその“運命”すら跳ね除けてみせる…』
―――跳ね除けてみせるって…言ったもん…“運命”を…
その言葉に“運命の番”のような確たる確証はなく…
それでも洋一は命のその言葉を信じたくて…その言葉に縋りたくて
追ってくる迷いを振り払うかのように、何処へ向かうでもなく
ただがむしゃらに走り続けた…
どれくらい走ったか…
「…ッ、はっ…はぁッ、はぁッ、、」
洋一は自分が今居る場所が分からないまま、人気の無い公園へと辿り着き
荒げる呼吸と、ドクドクと激しく脈打つ鼓動を落ち着かせる為に
目についたベンチに腰を下ろす
「、はぁ…はぁ…、ふっ、うぅぅ…、ッ、、」
呼吸が落ち着くにつれ
洋一の瞳からは再び涙が溢れだし
洋一は嗚咽を押し殺しながら溢れる涙を手の甲で拭う
―――あきらさん…おれ…、
どうしたらいい…?
洋一が迷い、両手で顔を覆いながら俯く…
するとそんな洋一の正面でジャリッという複数の土を踏む足音が聞こえ――
「おもしれー匂いが漂ってくっから来てみれば――
お前…ひょっとしてβか?」
「…?」
洋一が慌てて服の袖で涙を拭い、恐る恐る顔を上げる…
するとそこにはひと際身長が高く
ガッチリとした体格のガラの悪そうな男を筆頭に
後ろにいた5,6人の男達が洋一の事を見ながら
卑下た笑みを浮かべて立っていた…
非常階段を駆け下り始めた浩介を見て、要が慌てて呼び止める
「ッ、他にどんな方法があるっていうんだよっ!」
「ペントハウスに繋がるエレベーターは一つしかないけど――
その一階下のフロアからならエレベーターが四つあるの!
それで洋一を追うわよ!」
要が非常階段の踊り場から
パントハウス一階下のフロアのドアを開けながら浩介に向かって叫ぶ
「~~~ッ、それを早く言えっ!」
それを聞いて浩介は赤面し
今度は階段を駆け上がりながら要に向かって叫んだ…
「…ッ、うぅ…、」
エレベーターを出てエントランスホールをつっきり
どこか慌てた様子のコンシェルジュの声を無視して洋一は泣きながら外へと駆け出す
『“運命の番”が現れた途端…αとβが互いにどんなに愛し合っていても
αは平気でβを捨て、Ωを選ぶ…
抗えないんだよ…“運命の番”には…
現に――要さんは抗えなかっただろ…?』
―――そんな事…そんな事ないよ…っ、だって…言ったもん…
命さん…俺に言ったもん…っ!
涙で歪む視界の中…洋一はただひたすら走る
『お前の為ならその“運命”すら跳ね除けてみせる…』
―――跳ね除けてみせるって…言ったもん…“運命”を…
その言葉に“運命の番”のような確たる確証はなく…
それでも洋一は命のその言葉を信じたくて…その言葉に縋りたくて
追ってくる迷いを振り払うかのように、何処へ向かうでもなく
ただがむしゃらに走り続けた…
どれくらい走ったか…
「…ッ、はっ…はぁッ、はぁッ、、」
洋一は自分が今居る場所が分からないまま、人気の無い公園へと辿り着き
荒げる呼吸と、ドクドクと激しく脈打つ鼓動を落ち着かせる為に
目についたベンチに腰を下ろす
「、はぁ…はぁ…、ふっ、うぅぅ…、ッ、、」
呼吸が落ち着くにつれ
洋一の瞳からは再び涙が溢れだし
洋一は嗚咽を押し殺しながら溢れる涙を手の甲で拭う
―――あきらさん…おれ…、
どうしたらいい…?
洋一が迷い、両手で顔を覆いながら俯く…
するとそんな洋一の正面でジャリッという複数の土を踏む足音が聞こえ――
「おもしれー匂いが漂ってくっから来てみれば――
お前…ひょっとしてβか?」
「…?」
洋一が慌てて服の袖で涙を拭い、恐る恐る顔を上げる…
するとそこにはひと際身長が高く
ガッチリとした体格のガラの悪そうな男を筆頭に
後ろにいた5,6人の男達が洋一の事を見ながら
卑下た笑みを浮かべて立っていた…
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