60 / 128
マーキング。
しおりを挟む
時刻は午前9時半を回り――
「…命様、着替えをお持ちしました。」
「ご苦労だったな。」
佐伯が命達が宿泊しているホテルの部屋を尋ね
命が佐伯を部屋に招き入れながら、佐伯から着替えの入ったバッグを受け取る
命はともかく
洋一が昨日着ていたフォーマルスーツは主にスラックスが酷い事になっていて
とてもじゃないが穿ける状態ではなく…
命が佐伯に頼んで洋一の着替えのついでに
自分の分の着替えも持ってこさせたのだった…
「…それにしても――
昨夜の私の心配は杞憂(きゆう)に過ぎなかったようで安心いたしました。
…で、いかがでしたか?初夜の方は。」
「ブフッ!」
昨夜散々自分を心配させた意趣返しと言わんばかりに
佐伯が皮肉を込めて放った一言に
ブランチを食べ終わり
ソファーでくつろぎながらコーヒーを啜っていた洋一が
思わず飲んでたコーヒーを吹き零す
「良かったぞ。珍しいな。お前がそんな下世話な事を聞いてくるなんて…」
しかし命はそんな佐伯の一言には動じず
何かあったのか?くらいの表情を浮かべながら佐伯の事を見返す命に
―――ああ、そうだった…
この方にはこういった類(たぐい)の皮肉は通じないんだった…
と…佐伯は精いっぱいの皮肉を命に受け流され、ひっそりと溜息を漏らす
「ところで――」
「うぇ?」
洋一が零したコーヒーをタオルで拭きながら佐伯の方を見る
「皆瀬さんから漂うこのマーキング臭…キツすぎます。
命様…独占欲も大概になさってください。」
佐伯が洋一に近づき、クンクンと匂いを嗅ぎながらその綺麗な顔を顰める
―――まーきんぐ…?
洋一が首を傾げる
―――あー…そーいえば…中学か高校の保体でそんな事習ったなぁ~…
αは性交渉の際、他のαに意中の相手を取られないよう
相手を自分のものだと主張する為に
同じαにしか分から無い自分の匂いを精液と一緒に相手に擦り付け――
!?
洋一の顔がみるみる青くなっていく…
「そっ…それって…つまり――」
「…マーキングの匂いを漂わせてる以上…
皆瀬さんは他のαの方に対して“自分はαに抱かれました。”――と
宣言しているようなもんです。」
「~~~ッ、あっ…命さんっ!」
「?洋一は俺のものだろう?何か問題が??」
「~~~~~~ッ、う”ぅうぅ~…」
洋一はバスローブのまま頭を抱え、ソファーの上で小さく丸まる
「…しかし――αは数が少ないとはいえ
ただでさえαを惹きつける匂いを漂わせているのに
更にこんなキツいマーキング臭まで漂わせた状態の皆瀬さんを連れて歩くのは
大変危険かと…
αの中には性別や第二の性がΩに関わらず
マーキングされた人を好んで襲う野蛮人もいると聞きますし…
とりあえず皆瀬さんは今日はマンションの方に早々に戻られ
今日と明日はマンションに居られた方が安全かと…」
「…そうか。なら俺も一緒に――」
「命様はこの後会議が御座いますので絶対に出て頂かないと。
とりあえずお二方。早く御召し物をお着替えになってください。」
「むぅ…」
佐伯の一言に命は渋々着替えの入ったバッグを開けながら
その場でバスローブを脱いで素っ裸になり
洋一もバスローブを脱ごうとするが――
「…お二方…私が“女”だという事をお忘れで?」
「はっ!」
「…?それがどうかしたのか?」
洋一は固まり、佐伯は呆れながら二人に背を向ける中
命は何食わぬ顔でさっさと服を着替え始めた…
「…命様、着替えをお持ちしました。」
「ご苦労だったな。」
佐伯が命達が宿泊しているホテルの部屋を尋ね
命が佐伯を部屋に招き入れながら、佐伯から着替えの入ったバッグを受け取る
命はともかく
洋一が昨日着ていたフォーマルスーツは主にスラックスが酷い事になっていて
とてもじゃないが穿ける状態ではなく…
命が佐伯に頼んで洋一の着替えのついでに
自分の分の着替えも持ってこさせたのだった…
「…それにしても――
昨夜の私の心配は杞憂(きゆう)に過ぎなかったようで安心いたしました。
…で、いかがでしたか?初夜の方は。」
「ブフッ!」
昨夜散々自分を心配させた意趣返しと言わんばかりに
佐伯が皮肉を込めて放った一言に
ブランチを食べ終わり
ソファーでくつろぎながらコーヒーを啜っていた洋一が
思わず飲んでたコーヒーを吹き零す
「良かったぞ。珍しいな。お前がそんな下世話な事を聞いてくるなんて…」
しかし命はそんな佐伯の一言には動じず
何かあったのか?くらいの表情を浮かべながら佐伯の事を見返す命に
―――ああ、そうだった…
この方にはこういった類(たぐい)の皮肉は通じないんだった…
と…佐伯は精いっぱいの皮肉を命に受け流され、ひっそりと溜息を漏らす
「ところで――」
「うぇ?」
洋一が零したコーヒーをタオルで拭きながら佐伯の方を見る
「皆瀬さんから漂うこのマーキング臭…キツすぎます。
命様…独占欲も大概になさってください。」
佐伯が洋一に近づき、クンクンと匂いを嗅ぎながらその綺麗な顔を顰める
―――まーきんぐ…?
洋一が首を傾げる
―――あー…そーいえば…中学か高校の保体でそんな事習ったなぁ~…
αは性交渉の際、他のαに意中の相手を取られないよう
相手を自分のものだと主張する為に
同じαにしか分から無い自分の匂いを精液と一緒に相手に擦り付け――
!?
洋一の顔がみるみる青くなっていく…
「そっ…それって…つまり――」
「…マーキングの匂いを漂わせてる以上…
皆瀬さんは他のαの方に対して“自分はαに抱かれました。”――と
宣言しているようなもんです。」
「~~~ッ、あっ…命さんっ!」
「?洋一は俺のものだろう?何か問題が??」
「~~~~~~ッ、う”ぅうぅ~…」
洋一はバスローブのまま頭を抱え、ソファーの上で小さく丸まる
「…しかし――αは数が少ないとはいえ
ただでさえαを惹きつける匂いを漂わせているのに
更にこんなキツいマーキング臭まで漂わせた状態の皆瀬さんを連れて歩くのは
大変危険かと…
αの中には性別や第二の性がΩに関わらず
マーキングされた人を好んで襲う野蛮人もいると聞きますし…
とりあえず皆瀬さんは今日はマンションの方に早々に戻られ
今日と明日はマンションに居られた方が安全かと…」
「…そうか。なら俺も一緒に――」
「命様はこの後会議が御座いますので絶対に出て頂かないと。
とりあえずお二方。早く御召し物をお着替えになってください。」
「むぅ…」
佐伯の一言に命は渋々着替えの入ったバッグを開けながら
その場でバスローブを脱いで素っ裸になり
洋一もバスローブを脱ごうとするが――
「…お二方…私が“女”だという事をお忘れで?」
「はっ!」
「…?それがどうかしたのか?」
洋一は固まり、佐伯は呆れながら二人に背を向ける中
命は何食わぬ顔でさっさと服を着替え始めた…
10
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!




【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる