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離さないで…
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洋一が気を失っている間――
命が慣れない…
というか今までやった事の無い男同士の後処理の方法などをネットで調べ
悪戦苦闘しながら洋一の身体を綺麗にしていく…
その間も洋一はぐったりとしたまま目覚める事はなく――
―――…大分…無理をさせたからな…
何とか後処理を終え
命が洋一にバスローブを着せ終えると
洋一を起こさない様…その身体をゆっくりとベッドの上に横たえさせる…
―――目の周り…赤くなってるな…
横山に襲われ、その後も散々命に啼かされ…
むしろこの数時間の間
洋一が涙を流さなかった瞬間など無かったのではないかと思われるくらい
ずっと泣き続けていた洋一の目の周りは
目を瞑(つむ)っていても一目で泣いていた事が分かる位
薄っすらと赤くなっていて…
「…すまない…洋一…」
命はベッドに腰を下ろし
洋一の赤く腫れている目元にそっと指を這わせながらふと
洋一の首の後ろの青痣に気が付き
その表情を歪める…
『…ごめ…、あきら…さん…おれ…Ωじゃ…な…て…ッ、』
―――違う…そうじゃない…
そう言う事をお前に思わせたかった訳じゃ――
しかしそこには隠しようのないほどに痣となって残る歯形の数々…
それは自分が散々洋一にΩである事を望んだ証で…
―――ッ…違うんだ…俺はただ…お前を俺だけのものにしたかっただけで…
命の表情が…悲痛で歪んだまま迷いで揺れる…
―――詭弁(きべん)…だな…
確かに俺は…お前に望んでしまった…Ωである事を…
命の触れる事を躊躇う指先が
洋一の項にそっと触れ、洋一の表情が一瞬ピクリと動く…
―――でもそれは――他に方法を知ら無いから…
お前を…俺の元に繋ぎ止めておく方法を…
お前が…他の誰かに心奪われたりしない方法を…
俺は…何も知らない…情けない話だが…
生まれてこのかた28年…
妹ほどではないにしろ、命もそれなりに恋愛経験はしてきた…
家の為と割り切ったものから
Ωのフェロモンに中てられ危うく契りそうになったものまで様々…
このどれも――命が本気で好きになった者はおらず…
それ故に命自身も戸惑う
今まで誰に対しても感じる事の無かった“好き”という感情や
それと同時に嫉妬やら独占欲やら執着やら…
洋一に対してのみ次々と湧いてくるこれらの感情に
どう対処したらいいのか…と…
―――洋一…俺がお前にΩ性を望んでしまった事で
お前を傷付けてしまったのなら本当にすまない…でも――
命が洋一の項を触っていた手を静かに離す…
―――いや…今は止めておこう…
とりあえず…もう一度冷たいシャワーを浴びて頭を冷やそう…
命はそう考えると
静かにベッドから腰を上げ、シャワーを浴びる為にその場から離れた…
暫くして――
「…洋一…」
命が頭をタオルでふきながら、ベッドルームに戻ると
洋一がボンヤリとした感じでベッドから起きていて――
「…命…さん…」
「起きて平気か…?昨夜は大分お前に無茶をさせてしまったから――」
―――…?何か…様子が…
命が洋一に何処か違和感を感じながらも静かに近づく
すると命が洋一の手の届く範囲に近寄った途端
「ッ、洋一?!」
洋一がベッドの上から突然命に手を伸ばし、命に抱きついてきた…
「…洋一…?」
「…なれ……ないで…」
「…?」
「…離れ…ないで…っ、置いてかないで…!――要…みたいに…」
「ッ?!」
唐突に洋一の口から出た妹の名前に、命が固まる
―――そうか…洋一は知らないのか…
要が――妹が嫌々桜花家の息女と番った事を…
そして最後まで洋一と別れる事を拒んでいた事を――
洋一が命にしがみつき、胸に顔を埋めながら泣きだす…
「俺…、βだけど…っ、命さんの“運命”には…、ッなれない…けど…っ!
あ、きら…さんが望む事…何でも…する、から…っ!だから――
俺から…離れないで…っ、突然居なくなったりしないで…!」
命が慣れない…
というか今までやった事の無い男同士の後処理の方法などをネットで調べ
悪戦苦闘しながら洋一の身体を綺麗にしていく…
その間も洋一はぐったりとしたまま目覚める事はなく――
―――…大分…無理をさせたからな…
何とか後処理を終え
命が洋一にバスローブを着せ終えると
洋一を起こさない様…その身体をゆっくりとベッドの上に横たえさせる…
―――目の周り…赤くなってるな…
横山に襲われ、その後も散々命に啼かされ…
むしろこの数時間の間
洋一が涙を流さなかった瞬間など無かったのではないかと思われるくらい
ずっと泣き続けていた洋一の目の周りは
目を瞑(つむ)っていても一目で泣いていた事が分かる位
薄っすらと赤くなっていて…
「…すまない…洋一…」
命はベッドに腰を下ろし
洋一の赤く腫れている目元にそっと指を這わせながらふと
洋一の首の後ろの青痣に気が付き
その表情を歪める…
『…ごめ…、あきら…さん…おれ…Ωじゃ…な…て…ッ、』
―――違う…そうじゃない…
そう言う事をお前に思わせたかった訳じゃ――
しかしそこには隠しようのないほどに痣となって残る歯形の数々…
それは自分が散々洋一にΩである事を望んだ証で…
―――ッ…違うんだ…俺はただ…お前を俺だけのものにしたかっただけで…
命の表情が…悲痛で歪んだまま迷いで揺れる…
―――詭弁(きべん)…だな…
確かに俺は…お前に望んでしまった…Ωである事を…
命の触れる事を躊躇う指先が
洋一の項にそっと触れ、洋一の表情が一瞬ピクリと動く…
―――でもそれは――他に方法を知ら無いから…
お前を…俺の元に繋ぎ止めておく方法を…
お前が…他の誰かに心奪われたりしない方法を…
俺は…何も知らない…情けない話だが…
生まれてこのかた28年…
妹ほどではないにしろ、命もそれなりに恋愛経験はしてきた…
家の為と割り切ったものから
Ωのフェロモンに中てられ危うく契りそうになったものまで様々…
このどれも――命が本気で好きになった者はおらず…
それ故に命自身も戸惑う
今まで誰に対しても感じる事の無かった“好き”という感情や
それと同時に嫉妬やら独占欲やら執着やら…
洋一に対してのみ次々と湧いてくるこれらの感情に
どう対処したらいいのか…と…
―――洋一…俺がお前にΩ性を望んでしまった事で
お前を傷付けてしまったのなら本当にすまない…でも――
命が洋一の項を触っていた手を静かに離す…
―――いや…今は止めておこう…
とりあえず…もう一度冷たいシャワーを浴びて頭を冷やそう…
命はそう考えると
静かにベッドから腰を上げ、シャワーを浴びる為にその場から離れた…
暫くして――
「…洋一…」
命が頭をタオルでふきながら、ベッドルームに戻ると
洋一がボンヤリとした感じでベッドから起きていて――
「…命…さん…」
「起きて平気か…?昨夜は大分お前に無茶をさせてしまったから――」
―――…?何か…様子が…
命が洋一に何処か違和感を感じながらも静かに近づく
すると命が洋一の手の届く範囲に近寄った途端
「ッ、洋一?!」
洋一がベッドの上から突然命に手を伸ばし、命に抱きついてきた…
「…洋一…?」
「…なれ……ないで…」
「…?」
「…離れ…ないで…っ、置いてかないで…!――要…みたいに…」
「ッ?!」
唐突に洋一の口から出た妹の名前に、命が固まる
―――そうか…洋一は知らないのか…
要が――妹が嫌々桜花家の息女と番った事を…
そして最後まで洋一と別れる事を拒んでいた事を――
洋一が命にしがみつき、胸に顔を埋めながら泣きだす…
「俺…、βだけど…っ、命さんの“運命”には…、ッなれない…けど…っ!
あ、きら…さんが望む事…何でも…する、から…っ!だから――
俺から…離れないで…っ、突然居なくなったりしないで…!」
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