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――だから欲しい…
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命は洋一を姫抱きしたまま広い廊下を歩き
道行く人々は何事かと命たちを見つめるが――
命はそんな人々の視線を気にする様子も無く歩き続ける…
そんな命達を見つめる者の中には、数人のαらしき存在も居て
未だに薬のせいでΩの発情フェロモンを漂わせる洋一にザワつくが
洋一を抱えて歩く命のただならぬ気配に気圧され動く事が出来ず…
周りの人たちはただただ茫然としながら命たちを見送る
そこにホテルの鍵を持った佐伯が命に近づき――
「――命様…部屋の――鍵です…」
「…ッ、すま…ない…」
命は佐伯から鍵を受け取るとそのままエレベーターへと歩き始め
佐伯は洋一を連れ、部屋へ向かおうとする命に思わず声をかけた
「ッ、命様っ!」
「…なんだ…」
「その…本当によろしいので…?
互いに正気では無いこんな状態で事に及べば――」
お互いに傷つく事は目に見えている…と…
佐伯はもう…何もかも察してはいるが
翌日の洋一と命の事を思うとどうしても耐えきれずに佐伯は聞いてしまう
「ッ、確かに…間違って…、いるな…
皆瀬の意志を無視してこんな――」
―――…わかってる…わかって…いるんだ…っ、
今の皆瀬が正気ではない事ぐらい…だが――
フェロモンに流され、相手の意志を無視して
動物のように相手を求めるαの本能に命は嫌悪していたが…
虚ろな目をして自分の事を見つめる洋一の目を見つめながら
命が意を決したかのように口を開く
「だが…俺がもう――抗えそうに…ないんだ…、
皆瀬を欲する…自分の本能に…」
―――他のΩのフェロモンだったら…意地でも抗っていた…
“お前は運命なんかじゃない!”…と――
けどコレは違う…
例え“偽物”でも
俺を誘うこのフェロモンは皆瀬から溢れているから…だから――
命はそれだけ呟くと
まだ何かを言いかけたところでソレをグッと飲み込んだ佐伯を後に残し
洋一を連れてエレベーターへと乗り込んだ…
エレベーターの中で…
「あきらさん…いいにおい…」
洋一が命の胸に頬を擦り寄せ、甘えるような仕草をしながら
トロンとした表情で呟く…
「…皆瀬…、」
命の洋一を抱く手に力が籠る
恐らく命からも神代や八咫と同じ様に洋一のヒートフェロモンに中てられて
ラット時に溢れ出るフェロモンが微かに溢れ始めているのだろう…
狭いエレベーターの中…
命は洋一の匂いに酔い
洋一は命の匂いに溺れ…
互いが互いの最も好きな匂いに包まれながら
エレベーターはホテルの最上階で止まり
命はエレベーターから降りると
洋一を片時も地面に下ろす事無く目的の部屋の前まで歩き
佐伯から渡されたカードキーで部屋のドアを開け、中へと入る
すると洋一が命のスーツの襟首を震える両手で掴み
命の顔を自分の方へと引き寄せると
その耳元に熱い吐息と共に囁く
「――命さん…欲しい…」
そう囁いた後に頬を紅潮させ、熱で潤んだ瞳で命の瞳を見つめる洋一に
命は聞き返す
「…本当に…良いんだな…?」
―――分かってる…聞き返すだけ無意味だって事ぐらい…
今の皆瀬は正気じゃない…
誰が聞いたって答えは一緒…
今にも泣きそうな顔をしながら聞き返す命に
涙で潤む瞳で真っ直ぐに命の瞳を見つめながら洋一が静かに口を開く
「命さん“が”欲しい…
命さん“だから”欲しい…っ!」
まるで自分の気持ちを見透かしたように
ハッキリと2度も自分が欲しいとそう答える洋一に
命は思わず嬉しくなって
その唇に噛みつく様にキスをした…
道行く人々は何事かと命たちを見つめるが――
命はそんな人々の視線を気にする様子も無く歩き続ける…
そんな命達を見つめる者の中には、数人のαらしき存在も居て
未だに薬のせいでΩの発情フェロモンを漂わせる洋一にザワつくが
洋一を抱えて歩く命のただならぬ気配に気圧され動く事が出来ず…
周りの人たちはただただ茫然としながら命たちを見送る
そこにホテルの鍵を持った佐伯が命に近づき――
「――命様…部屋の――鍵です…」
「…ッ、すま…ない…」
命は佐伯から鍵を受け取るとそのままエレベーターへと歩き始め
佐伯は洋一を連れ、部屋へ向かおうとする命に思わず声をかけた
「ッ、命様っ!」
「…なんだ…」
「その…本当によろしいので…?
互いに正気では無いこんな状態で事に及べば――」
お互いに傷つく事は目に見えている…と…
佐伯はもう…何もかも察してはいるが
翌日の洋一と命の事を思うとどうしても耐えきれずに佐伯は聞いてしまう
「ッ、確かに…間違って…、いるな…
皆瀬の意志を無視してこんな――」
―――…わかってる…わかって…いるんだ…っ、
今の皆瀬が正気ではない事ぐらい…だが――
フェロモンに流され、相手の意志を無視して
動物のように相手を求めるαの本能に命は嫌悪していたが…
虚ろな目をして自分の事を見つめる洋一の目を見つめながら
命が意を決したかのように口を開く
「だが…俺がもう――抗えそうに…ないんだ…、
皆瀬を欲する…自分の本能に…」
―――他のΩのフェロモンだったら…意地でも抗っていた…
“お前は運命なんかじゃない!”…と――
けどコレは違う…
例え“偽物”でも
俺を誘うこのフェロモンは皆瀬から溢れているから…だから――
命はそれだけ呟くと
まだ何かを言いかけたところでソレをグッと飲み込んだ佐伯を後に残し
洋一を連れてエレベーターへと乗り込んだ…
エレベーターの中で…
「あきらさん…いいにおい…」
洋一が命の胸に頬を擦り寄せ、甘えるような仕草をしながら
トロンとした表情で呟く…
「…皆瀬…、」
命の洋一を抱く手に力が籠る
恐らく命からも神代や八咫と同じ様に洋一のヒートフェロモンに中てられて
ラット時に溢れ出るフェロモンが微かに溢れ始めているのだろう…
狭いエレベーターの中…
命は洋一の匂いに酔い
洋一は命の匂いに溺れ…
互いが互いの最も好きな匂いに包まれながら
エレベーターはホテルの最上階で止まり
命はエレベーターから降りると
洋一を片時も地面に下ろす事無く目的の部屋の前まで歩き
佐伯から渡されたカードキーで部屋のドアを開け、中へと入る
すると洋一が命のスーツの襟首を震える両手で掴み
命の顔を自分の方へと引き寄せると
その耳元に熱い吐息と共に囁く
「――命さん…欲しい…」
そう囁いた後に頬を紅潮させ、熱で潤んだ瞳で命の瞳を見つめる洋一に
命は聞き返す
「…本当に…良いんだな…?」
―――分かってる…聞き返すだけ無意味だって事ぐらい…
今の皆瀬は正気じゃない…
誰が聞いたって答えは一緒…
今にも泣きそうな顔をしながら聞き返す命に
涙で潤む瞳で真っ直ぐに命の瞳を見つめながら洋一が静かに口を開く
「命さん“が”欲しい…
命さん“だから”欲しい…っ!」
まるで自分の気持ちを見透かしたように
ハッキリと2度も自分が欲しいとそう答える洋一に
命は思わず嬉しくなって
その唇に噛みつく様にキスをした…
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