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round one
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洋一達を乗せたリンカーンがパーティー会場であるホテルへと到着し
命と佐伯、それと少し眠そうにぼんやりとした様子の洋一がリンカーンから降り
ホテル内へと入って行く…
「…大丈夫か?皆瀬…」
「はい…大丈夫です…御免なさい…心配をおかけしてしまって…」
「…気にするな。」
本当は洋一の腰に手を添えて支えてやりたかったが――
相手が男性女性共に子供が生めるΩならともかく
α男性とβ男性とでは未だにそいった事に対して周りから奇異(きい)に見られる傾向があり…
命は周りの目を気にして洋一を支える事が出来ないもどかしさからが
ギリッと歯噛みする…
―――コレが父の面目を保つために出席しているパーティーではなかったら…っ、
命が思わず苦虫を噛み潰したような表情になるのを必死に堪えながら
会場のホール手前に設置された受付に到着すると
正装をした係員から招待状の提示を求められ――
「招待状を拝見します。」
「――コレだ。」
命が招待状を係員に手渡し
係員が招待状に埋め込まれたicチップをセンサーで読み取り
パソコンで招待客の確認をする
「…鬼生道 命様、皆瀬 洋一様、佐伯 純子様ですね?確認いたしました。
どうぞ、お入りください。」
係員はそう言うと扉の前で待機する2人の係員に指示を出す
すると扉の前にいた係員2人が重々しい扉を命たちの目の前で開けていき――
「凄い…」
目の前に広がる華やかな光景に
今までこういったパーティーに当然ながら出た事が無い
庶民代表を体現している洋一は思わず感嘆の声を漏らす
「では…進むとするか…
皆瀬。余り俺から離れるなよ。」
「は、はいっ、」
会場に入って行く命、佐伯に続いて
緊張した面持ちの洋一が辺りを気にしながら恐る恐る会場に足を踏み入れる
そこに早速洋一の匂いに気が付いたα3人が、周りをおどおどと見つめる
洋一の傍に近づいてきて
「そこのキミ…随分と良い匂いがするね…名前は?」
「え…あの…」
「ホント、良い匂い…貴方ひょっとしてΩ?」
「Ωにしては華がなさすぎるような…あ、失礼。恐らくβだろ。
それにしても本当に良い匂いだなキミ…どうだい?少し向こうで私と話でも…」
頭がまだボーっとし、言葉が上手く出てこない洋一は
次々と色々聞いてるα達を前にして混乱し
どう話を合わせたらいいものかも分からずにおろおろとするばかり…
そこに自分の後に洋一が着いてきていない事に気が付いた命が
3人のαを前におろおろとしている洋一を見つけ
慌てて洋一の傍に駆け寄る
「…これはこれはお三方――
私の連れが何か失礼でも?」
「!?鬼生道様っ!いえ――別に…
ただ…彼から余りにも良い匂いがするものでしたから遂…」
「そうでしたか。それでは私達はコレで…」
命がボーっとしている洋一の背に手を添え
早々にその場から立ち去ろうとするが――
「あ、お待ちください!
もう少し――私たちとお話でも致しませんか?鬼生道様…」
余程洋一の匂いを気に入ったのか、離れがたい様子で3人が命に食い下がる
「お連れの彼――本当に良い匂いがしますわねぇ…
一体どこでお知り合いに?」
「もしよろしかったら彼を少し私に御貸ししてはもらえませんか?
その匂い…何処か2人っきりになれる場所で嗅いでみたい…」
あからさまにおかしな事を言いだす者まで現れだした3人を前に
命はこれでもかというほどの爽やかな営業スマイルを顔面に貼り付けると
笑みを模ったその形の良い唇を動かす
「残念ですが――
私達はこれから主催に挨拶をせねばなりませんのでこれで…」
「あら…ホント残念だわぁ…」
「それでは仕方ありませんな…」
「なら挨拶が終わった後にでも彼を――」
「では、失礼。」
命は強引にα3人から話を切り上げると、洋一を連れてその場を離れる
「…離れるなと言った傍からαに捕まるとはな…」
「う…御免なさい…」
「謝らなくていい。それにしても本当に油断ならないな…」
狼の群れの中を羊を連れて歩く羊飼いの気分を命は味わう
そこに最も警戒しなけらばならない狼の一声が命を呼び止める
「命さん。」
「…神代…」
「お、皆瀬ちゃん元気ぃ~?」
「…八咫まで…」
命は2人の顔を一瞥すると
あからさまに嫌な顔をしながらその場で深く息を吐きだした…
命と佐伯、それと少し眠そうにぼんやりとした様子の洋一がリンカーンから降り
ホテル内へと入って行く…
「…大丈夫か?皆瀬…」
「はい…大丈夫です…御免なさい…心配をおかけしてしまって…」
「…気にするな。」
本当は洋一の腰に手を添えて支えてやりたかったが――
相手が男性女性共に子供が生めるΩならともかく
α男性とβ男性とでは未だにそいった事に対して周りから奇異(きい)に見られる傾向があり…
命は周りの目を気にして洋一を支える事が出来ないもどかしさからが
ギリッと歯噛みする…
―――コレが父の面目を保つために出席しているパーティーではなかったら…っ、
命が思わず苦虫を噛み潰したような表情になるのを必死に堪えながら
会場のホール手前に設置された受付に到着すると
正装をした係員から招待状の提示を求められ――
「招待状を拝見します。」
「――コレだ。」
命が招待状を係員に手渡し
係員が招待状に埋め込まれたicチップをセンサーで読み取り
パソコンで招待客の確認をする
「…鬼生道 命様、皆瀬 洋一様、佐伯 純子様ですね?確認いたしました。
どうぞ、お入りください。」
係員はそう言うと扉の前で待機する2人の係員に指示を出す
すると扉の前にいた係員2人が重々しい扉を命たちの目の前で開けていき――
「凄い…」
目の前に広がる華やかな光景に
今までこういったパーティーに当然ながら出た事が無い
庶民代表を体現している洋一は思わず感嘆の声を漏らす
「では…進むとするか…
皆瀬。余り俺から離れるなよ。」
「は、はいっ、」
会場に入って行く命、佐伯に続いて
緊張した面持ちの洋一が辺りを気にしながら恐る恐る会場に足を踏み入れる
そこに早速洋一の匂いに気が付いたα3人が、周りをおどおどと見つめる
洋一の傍に近づいてきて
「そこのキミ…随分と良い匂いがするね…名前は?」
「え…あの…」
「ホント、良い匂い…貴方ひょっとしてΩ?」
「Ωにしては華がなさすぎるような…あ、失礼。恐らくβだろ。
それにしても本当に良い匂いだなキミ…どうだい?少し向こうで私と話でも…」
頭がまだボーっとし、言葉が上手く出てこない洋一は
次々と色々聞いてるα達を前にして混乱し
どう話を合わせたらいいものかも分からずにおろおろとするばかり…
そこに自分の後に洋一が着いてきていない事に気が付いた命が
3人のαを前におろおろとしている洋一を見つけ
慌てて洋一の傍に駆け寄る
「…これはこれはお三方――
私の連れが何か失礼でも?」
「!?鬼生道様っ!いえ――別に…
ただ…彼から余りにも良い匂いがするものでしたから遂…」
「そうでしたか。それでは私達はコレで…」
命がボーっとしている洋一の背に手を添え
早々にその場から立ち去ろうとするが――
「あ、お待ちください!
もう少し――私たちとお話でも致しませんか?鬼生道様…」
余程洋一の匂いを気に入ったのか、離れがたい様子で3人が命に食い下がる
「お連れの彼――本当に良い匂いがしますわねぇ…
一体どこでお知り合いに?」
「もしよろしかったら彼を少し私に御貸ししてはもらえませんか?
その匂い…何処か2人っきりになれる場所で嗅いでみたい…」
あからさまにおかしな事を言いだす者まで現れだした3人を前に
命はこれでもかというほどの爽やかな営業スマイルを顔面に貼り付けると
笑みを模ったその形の良い唇を動かす
「残念ですが――
私達はこれから主催に挨拶をせねばなりませんのでこれで…」
「あら…ホント残念だわぁ…」
「それでは仕方ありませんな…」
「なら挨拶が終わった後にでも彼を――」
「では、失礼。」
命は強引にα3人から話を切り上げると、洋一を連れてその場を離れる
「…離れるなと言った傍からαに捕まるとはな…」
「う…御免なさい…」
「謝らなくていい。それにしても本当に油断ならないな…」
狼の群れの中を羊を連れて歩く羊飼いの気分を命は味わう
そこに最も警戒しなけらばならない狼の一声が命を呼び止める
「命さん。」
「…神代…」
「お、皆瀬ちゃん元気ぃ~?」
「…八咫まで…」
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