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吐露。
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―――アレ以降…皆瀬の匂いに特に変化はない…
ダイニングテーブルで食後のコーヒーを啜りながら
命がキッチンで朝食の後片付けをしている洋一の後姿を見つめる
―――てっきり…アレは風呂上がりに原因があるのではと思って
風呂上がりの皆瀬に警戒をしていたが――
アレ以降…皆瀬が風呂から上がった後の匂いを嗅いでも
特に発情はしなかったし…アレは一体…
命が眉間にシワを寄せながら、もうひと口コーヒーを啜ろうとしたその時
リビングのインターホンが鳴り――
「あ…」
「いい、俺が出る。」
命がリビングへと移動し、インターホンの画面を見る
するとそこには平たい箱を抱えたコンシェルジュが立っており
命がボタンを押しながら尋ねた
「――何だ。」
『命様。お届け物です。“nymphee”(ニュンペー)からの…』
「遂に届いたか…分かった。今からそちらに向かう。」
ピッと命がインターホンを切ると、そのまま玄関へと赴(おもむ)き
コンシェルジュから箱を受け取ってダイニングへと戻る
「皆瀬。スーツが届いたぞ。」
「…スーツ?」
洋一が丁度後片付けを終え、命の方へと振り返る
「この間“nymphee”(ニュンペー)で仕立ててもらったスーツだ。」
「ああ!あの時の!」
命がダイニングテーブルの上にスーツの入った箱を置くのが見え
布巾で手を拭きながら洋一がソワソワした感じでダイニングテーブルへと近づく
「コレが…」
「開けてみるといい。」
「え…良いんですか?」
「お前のだからなw」
洋一がスーツの入った箱を前に
まるでプレゼントを貰った子供みたいにキラキラとした目で尋ねてくるものだから
命が笑いながら洋一に箱を開けるよう促す
「じゃあ早速…」
洋一が手を拭いていた布巾をテーブルの上に置くと
本当にプレゼントの箱を開けるみたいに慎重に慎重にその箱を開けていく…
「うわぁ~…」
そして洋一がスーツの入った箱を両開きにすると
中から透明な防水カバーに包まれたフォーマル用のスーツが姿を現し――
「すっごいキレー…カッコイイ…」
その洗練されたそのスーツのデザインに、洋一が見惚れながら呟き
箱の中からスーツを両手で大事そうにそっと持ち上げ
命の方へと視線を向ける
「命さんコレ…」
「ああ、大事に着ろよ。」
「はい…っ!あのコレ…何て言ったらいいのか…
本当に有難うございますっ!」
洋一が「うわぁ~…うわぁ~…」と言いながら
手に持つフォーマルスーツをぱぁ~っと華やいだ表情で眺め続け
そんな洋一を前に、命の顔はだらしないほどに綻びっぱなしで――
「――それにしても…間に合って良かったな。」
「はぇ?」
何が?――と洋一は口にしようとしたが
直ぐにある事に気が付き
「ああ!明日――横山さんが主宰するパーティーがあるんでしたっけ?」
「そうだ。当然、お前も出席する事になっているのだが…」
「…?」
ココまで言って、命が急に口に手を当て口籠り始め
洋一がソレを見て、不思議そうに首を傾げる
「どうか…しましたか…?」
「いや…なに…
お前を――このまま狼の群れの中に一緒に連れて行っていいものかどうか
迷ってな…」
―――?狼の…群れ??
口に手を当て、更に真剣に悩みだした命に
洋一は益々首を傾げる
「明日のパーティーには神代や八咫…多くのαが出席する…
Ωなら入場前に抑制剤を強制的に飲まされるから
俺が会場内でフェロモンに中てられる心配は無いんだが――
お前のその匂いは…どうしたもんかと思ってな。」
「――?何か――マズイ…ですか?俺の匂い…」
「何がマズイって…お前なぁ…群がって来るだろうが…
お前の匂いに引き寄せられて…会場のα達が…」
「??それが何か問題でも…?」
「ッ!?お、ま…っ、本気で言ってるのか…?!」
キョトンとした表情で言ってくる洋一に、命は絶句する
「だって――俺の匂いに発情効果は――」
「“ナイ”のは知っているっ!そう事じゃなくて――ああもうっ!!」
「???」
命は洋一の鈍さに思わず頭を抱える
「ッ俺が…っ、」
「ッ!?」
急に伸びてきた命の手が、洋一の両肩を強く掴むと
何処か苦し気な表情を浮かべ
切なげに揺れる瞳で自分の事を見つめてくる命に
洋一は戸惑い、困惑する…
「俺が…嫌なんだ…、
お前が…他のαに近づかれたり…触れられたりするのを見るのが…っ、」
「え…」
真っ直ぐに洋一の瞳を見ながら
「耐えられない…、」
「…ッ、」
まるで愛の告白でもしているかのように苦し気にそう囁く命に
洋一はどう返したらいいのか分からない上に
何だかジワジワと顔に熱が集まってくるのを感じ
ソレを命からごまかす為にわざと笑って戯(おど)けてみせる
「や…やだなぁ…命さん…wそんな心配しなくても――
俺、βですよ?他のαに触られても何も起きませんってw」
焦りながらアハハ…と笑う洋一に
命がそっと洋一の背に両手を回し
掻き抱くように洋一を抱き寄せる
「あ…あきら…さん…?」
「…例え何も起きなくても――俺が嫌なんだ…
お前が――他の誰かの目に触れるのが…」
ダイニングテーブルで食後のコーヒーを啜りながら
命がキッチンで朝食の後片付けをしている洋一の後姿を見つめる
―――てっきり…アレは風呂上がりに原因があるのではと思って
風呂上がりの皆瀬に警戒をしていたが――
アレ以降…皆瀬が風呂から上がった後の匂いを嗅いでも
特に発情はしなかったし…アレは一体…
命が眉間にシワを寄せながら、もうひと口コーヒーを啜ろうとしたその時
リビングのインターホンが鳴り――
「あ…」
「いい、俺が出る。」
命がリビングへと移動し、インターホンの画面を見る
するとそこには平たい箱を抱えたコンシェルジュが立っており
命がボタンを押しながら尋ねた
「――何だ。」
『命様。お届け物です。“nymphee”(ニュンペー)からの…』
「遂に届いたか…分かった。今からそちらに向かう。」
ピッと命がインターホンを切ると、そのまま玄関へと赴(おもむ)き
コンシェルジュから箱を受け取ってダイニングへと戻る
「皆瀬。スーツが届いたぞ。」
「…スーツ?」
洋一が丁度後片付けを終え、命の方へと振り返る
「この間“nymphee”(ニュンペー)で仕立ててもらったスーツだ。」
「ああ!あの時の!」
命がダイニングテーブルの上にスーツの入った箱を置くのが見え
布巾で手を拭きながら洋一がソワソワした感じでダイニングテーブルへと近づく
「コレが…」
「開けてみるといい。」
「え…良いんですか?」
「お前のだからなw」
洋一がスーツの入った箱を前に
まるでプレゼントを貰った子供みたいにキラキラとした目で尋ねてくるものだから
命が笑いながら洋一に箱を開けるよう促す
「じゃあ早速…」
洋一が手を拭いていた布巾をテーブルの上に置くと
本当にプレゼントの箱を開けるみたいに慎重に慎重にその箱を開けていく…
「うわぁ~…」
そして洋一がスーツの入った箱を両開きにすると
中から透明な防水カバーに包まれたフォーマル用のスーツが姿を現し――
「すっごいキレー…カッコイイ…」
その洗練されたそのスーツのデザインに、洋一が見惚れながら呟き
箱の中からスーツを両手で大事そうにそっと持ち上げ
命の方へと視線を向ける
「命さんコレ…」
「ああ、大事に着ろよ。」
「はい…っ!あのコレ…何て言ったらいいのか…
本当に有難うございますっ!」
洋一が「うわぁ~…うわぁ~…」と言いながら
手に持つフォーマルスーツをぱぁ~っと華やいだ表情で眺め続け
そんな洋一を前に、命の顔はだらしないほどに綻びっぱなしで――
「――それにしても…間に合って良かったな。」
「はぇ?」
何が?――と洋一は口にしようとしたが
直ぐにある事に気が付き
「ああ!明日――横山さんが主宰するパーティーがあるんでしたっけ?」
「そうだ。当然、お前も出席する事になっているのだが…」
「…?」
ココまで言って、命が急に口に手を当て口籠り始め
洋一がソレを見て、不思議そうに首を傾げる
「どうか…しましたか…?」
「いや…なに…
お前を――このまま狼の群れの中に一緒に連れて行っていいものかどうか
迷ってな…」
―――?狼の…群れ??
口に手を当て、更に真剣に悩みだした命に
洋一は益々首を傾げる
「明日のパーティーには神代や八咫…多くのαが出席する…
Ωなら入場前に抑制剤を強制的に飲まされるから
俺が会場内でフェロモンに中てられる心配は無いんだが――
お前のその匂いは…どうしたもんかと思ってな。」
「――?何か――マズイ…ですか?俺の匂い…」
「何がマズイって…お前なぁ…群がって来るだろうが…
お前の匂いに引き寄せられて…会場のα達が…」
「??それが何か問題でも…?」
「ッ!?お、ま…っ、本気で言ってるのか…?!」
キョトンとした表情で言ってくる洋一に、命は絶句する
「だって――俺の匂いに発情効果は――」
「“ナイ”のは知っているっ!そう事じゃなくて――ああもうっ!!」
「???」
命は洋一の鈍さに思わず頭を抱える
「ッ俺が…っ、」
「ッ!?」
急に伸びてきた命の手が、洋一の両肩を強く掴むと
何処か苦し気な表情を浮かべ
切なげに揺れる瞳で自分の事を見つめてくる命に
洋一は戸惑い、困惑する…
「俺が…嫌なんだ…、
お前が…他のαに近づかれたり…触れられたりするのを見るのが…っ、」
「え…」
真っ直ぐに洋一の瞳を見ながら
「耐えられない…、」
「…ッ、」
まるで愛の告白でもしているかのように苦し気にそう囁く命に
洋一はどう返したらいいのか分からない上に
何だかジワジワと顔に熱が集まってくるのを感じ
ソレを命からごまかす為にわざと笑って戯(おど)けてみせる
「や…やだなぁ…命さん…wそんな心配しなくても――
俺、βですよ?他のαに触られても何も起きませんってw」
焦りながらアハハ…と笑う洋一に
命がそっと洋一の背に両手を回し
掻き抱くように洋一を抱き寄せる
「あ…あきら…さん…?」
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