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大神様。
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神代インターナショナルの社長室にて――
「…何見てんの?」
八咫が社長室正面に置かれた
黒塗りの高級感漂うエグゼクティブデスクに寄り掛かりながら
椅子に座って手元の数十枚の紙束を見つめる神代に声をかける
「――今度…横山富蔵が主宰する資金集めパーティーの招待客リストだ。」
「ああ…明後日開催される予定の…て事は――」
「当然鬼生道も出席する。」
「じゃああの良い匂いの秘書も…?」
「ああ…リストに乗ってる。」
神代が手に持っていた顔写真付きのリストを机の上に置き
その一番上に置かれていたリストを一枚、今度は八咫が手に取って呟く
「それにしても…マジで売ってくんねーかなこのβ…」
「何だ。お前もすっかりあの匂いの虜か。
人の事を散々馬鹿にしておいて…」
神代が呆れたといった視線を八咫に向けるが
八咫はそんな視線を無視して
洋一の顔写真が貼られているリストを見つめながら、らしくなく俯く
「まあ…匂いの事もあるんだけど…
その――何て言うか…」
「惹かれる。」
「ッ!お前もかっ!?」
「…じゃなきゃ欲しいだなんだと…
本人とその雇い主を前に面と向かって言うものか。」
「だよなwあん時は俺、帰りの車の中で笑った笑ったw
『幾ら出したら譲ってくれる?』って何だよって!
自分で言ってて可笑しくて仕方なかったわww」
まさか自分の口からあんな言葉が咄嗟に出てくるなんて――と…
八咫がもう一度洋一の写真に目を落としたその時
デスクに置かれた固定電話の内線のランプが点滅し、神代がボタンを押す
「どうした?近衛。」
『社長。大神(おおかみ)様が起こしになられております。』
「――ッ!?大神様が…っ?!」
「大神様っ?!何お前――今日此処に大神様が来る予定だったのっ!?」
「いや…そんな予定は――」
神代と八咫の間に緊張と動揺が走る
『――如何なさいますか…?』
「…通せ。」
『かしこまりました。』
神代がボタンから手を離すと通話は切れ、2人の間に重苦しい空気が流れる…
暫くしてドアからノックの音が響き――
「社長。大神様をお連れいたしました。」
「…入れ。」
「失礼いたします。」
神代の秘書である近衛がドアを開け、先に一歩前へと社長室に踏み入れると
背後に控えて居た人物にお辞儀をしながら中へと迎え入れる
「…ようこそ…おいで下さいました大神様…
今日はどういったご用件で…?」
神代が緊張した面持ちで社長室に入ってきた人物に話しかける
「ん~…そーだなぁ~…」
ドアからゆったりとした歩調で社長室に入ってきたその人物は
マッシュウルフな髪型の銀色の髪を揺らし
銀色の瞳で真っ直ぐに神代と八咫を捉(とら)えながら
その中性的な顔立ちに見惚れるような微笑を浮かべて神代達の方へと近づく…
一見するとΩの様な雰囲気を醸し出すその人物を前に
神代と八咫は緊張で表情が強張る…
「特に要件は無いんだけどぉ~…何してるかなって…
何?要件がなきゃ――来ちゃっダメだった?」
「そっ…そんな事は――」
「ふぅ~ん…あっそう…
ところで――その机の上に置いてあるのは?」
大神と呼ばれた人物が、机の上に置かれている紙束を指さす
「こ、れは…明後日行われるパーティーの招待客リストで――」
神代が緊張でどもりながら説明する中、大神はツカツカと机に近づき
リストの一枚を手に取る
すると大神がそのリストに貼られている顔写真を見て
みるみるうちにその銀色に輝く瞳を見開いていく…
「ッ!?まさか…そんなまさか…」
「…?如何なさいましたか…?」
驚愕の表情を浮かべたまま、食い入る様にその顔写真を見つめ続ける大神に
神代はおずおずと声をかけるが大神は反応せず…
暫く大神がその写真を見続けた後、その口元に美しいのに悍(おぞ)ましい…
見る者を凍り付かせるような笑みを浮かべると
静かにその口を開いた
「やっと――見つけた…
ようちゃん。」
「…何見てんの?」
八咫が社長室正面に置かれた
黒塗りの高級感漂うエグゼクティブデスクに寄り掛かりながら
椅子に座って手元の数十枚の紙束を見つめる神代に声をかける
「――今度…横山富蔵が主宰する資金集めパーティーの招待客リストだ。」
「ああ…明後日開催される予定の…て事は――」
「当然鬼生道も出席する。」
「じゃああの良い匂いの秘書も…?」
「ああ…リストに乗ってる。」
神代が手に持っていた顔写真付きのリストを机の上に置き
その一番上に置かれていたリストを一枚、今度は八咫が手に取って呟く
「それにしても…マジで売ってくんねーかなこのβ…」
「何だ。お前もすっかりあの匂いの虜か。
人の事を散々馬鹿にしておいて…」
神代が呆れたといった視線を八咫に向けるが
八咫はそんな視線を無視して
洋一の顔写真が貼られているリストを見つめながら、らしくなく俯く
「まあ…匂いの事もあるんだけど…
その――何て言うか…」
「惹かれる。」
「ッ!お前もかっ!?」
「…じゃなきゃ欲しいだなんだと…
本人とその雇い主を前に面と向かって言うものか。」
「だよなwあん時は俺、帰りの車の中で笑った笑ったw
『幾ら出したら譲ってくれる?』って何だよって!
自分で言ってて可笑しくて仕方なかったわww」
まさか自分の口からあんな言葉が咄嗟に出てくるなんて――と…
八咫がもう一度洋一の写真に目を落としたその時
デスクに置かれた固定電話の内線のランプが点滅し、神代がボタンを押す
「どうした?近衛。」
『社長。大神(おおかみ)様が起こしになられております。』
「――ッ!?大神様が…っ?!」
「大神様っ?!何お前――今日此処に大神様が来る予定だったのっ!?」
「いや…そんな予定は――」
神代と八咫の間に緊張と動揺が走る
『――如何なさいますか…?』
「…通せ。」
『かしこまりました。』
神代がボタンから手を離すと通話は切れ、2人の間に重苦しい空気が流れる…
暫くしてドアからノックの音が響き――
「社長。大神様をお連れいたしました。」
「…入れ。」
「失礼いたします。」
神代の秘書である近衛がドアを開け、先に一歩前へと社長室に踏み入れると
背後に控えて居た人物にお辞儀をしながら中へと迎え入れる
「…ようこそ…おいで下さいました大神様…
今日はどういったご用件で…?」
神代が緊張した面持ちで社長室に入ってきた人物に話しかける
「ん~…そーだなぁ~…」
ドアからゆったりとした歩調で社長室に入ってきたその人物は
マッシュウルフな髪型の銀色の髪を揺らし
銀色の瞳で真っ直ぐに神代と八咫を捉(とら)えながら
その中性的な顔立ちに見惚れるような微笑を浮かべて神代達の方へと近づく…
一見するとΩの様な雰囲気を醸し出すその人物を前に
神代と八咫は緊張で表情が強張る…
「特に要件は無いんだけどぉ~…何してるかなって…
何?要件がなきゃ――来ちゃっダメだった?」
「そっ…そんな事は――」
「ふぅ~ん…あっそう…
ところで――その机の上に置いてあるのは?」
大神と呼ばれた人物が、机の上に置かれている紙束を指さす
「こ、れは…明後日行われるパーティーの招待客リストで――」
神代が緊張でどもりながら説明する中、大神はツカツカと机に近づき
リストの一枚を手に取る
すると大神がそのリストに貼られている顔写真を見て
みるみるうちにその銀色に輝く瞳を見開いていく…
「ッ!?まさか…そんなまさか…」
「…?如何なさいましたか…?」
驚愕の表情を浮かべたまま、食い入る様にその顔写真を見つめ続ける大神に
神代はおずおずと声をかけるが大神は反応せず…
暫く大神がその写真を見続けた後、その口元に美しいのに悍(おぞ)ましい…
見る者を凍り付かせるような笑みを浮かべると
静かにその口を開いた
「やっと――見つけた…
ようちゃん。」
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