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接触。
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服の採寸が終わり、洋一は命たちが戻って来るまでの間
店内を一人、見て回る事に…
―――はぇ~…やっぱどれも量販店とかで売ってるスーツと違って
光沢とか質感とか…見ただけで全然違うな…
どれも高そ~…
洋一が飾られている服を怖くて触る事も無く
ただただ驚嘆(きょうたん)しながら眺めていると
「――ほぅ…店内に入ったら何やら良い匂いがすると思ったら――
匂いの出所はお前か…」
「!?」
服を眺めていた洋一の背後から突然声をかけられ
洋一は驚いて首だけを動かして背後を見る
すると長身の男性が少し屈む様にして洋一の項に顔を近づけ
目を瞑りながらうっとりとした表情で洋一の匂いを嗅いでおり――
「ぇ…あ…あの…?」
「ああ…驚かせてしまって済まない。私は――」
「神代(かみしろ)様!」
奥で作業をしていた店主が少し慌てた様子で神代と呼んだ男性の元へと駆け寄り
男性に向かって声を掛けた
「一言お声をかけていただければ出迎えましたのに――
それで――今回はどういったご用件で…?」
「――いや、今回は仕事の都合で偶然この近くを通りかかったものだから
少し寄ってみただけだ。」
「左様で御座いますか。それでは私めは奥で作業をしておりますので
何か御用が御座いましたら何時でもお声をおかけください。
それでは失礼いたします。」
そう言うと店主は再び中断していた作業を再開する為に奥へと戻って行き
その場には緊張で固まっている洋一と神代と呼ばれた男性の2人きりに…
―――で…どーすんの?この気まずい空気…
洋一が声も出せずに神代を見つめていると
神代がそんな洋一の視線を感じ、洋一に向かって微笑みながら話しかけてきた
「――自己紹介がまだだったな。
それでは改めて…私の名は神代 焔(かみしろ ほむら)。
しがない会社などを経営している。…君は?」
「お…俺ですか…?」
「嫌なら無理にとは言わないが…」
端正な顔立ちに物腰の柔らかそうな笑みを浮かべてはいるものの――
βに有無を言わせないα特有の“威圧”を神代から感じた洋一は
委縮しながら口を開いた
「俺の名前は…皆瀬…洋一…です…」
「皆瀬洋一…良い名だ。それにしても――」
「ッ!?」
神代が突然洋一の腰を抱きよせ、首筋に顔を寄せながら呟く
「――本当に良い匂いだな…このまま家に連れ帰りたいくらいに…」
「―――ッ!ぅ…」
『坊や…良い匂いがするねぇ…だぁ~れも見ていないし…
このまま連れて帰っちゃおうかなぁ…』
神代の何気ない一言で
洋一の脳裏に、過去の忌まわしい出来事が一瞬過り
洋一の顔がみるみる青ざめていく…そこへ――
「――神代様。そろそろお時間です。お戻りを。」
「…分かった。それでは洋一…名残惜しいが私はこの辺で失礼するよ。
――また会おう…」
神代は洋一にそう言い残すと迎えに来た男性と共にその場を去り
一人残された洋一は青ざめたまま…その場から動けずに震え続けた…
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お帰り~!――で?鬼生道が新しく秘書として雇ったっていう男
どんなヤツだった?昨日も画像で顔は見たけど――
やっぱなんて事無いただの冴えないβだったろ?」
車に戻った神代に、若い男性が話しかける
「――良い匂いがした。」
「へ?」
「恐らく――昨日我々の計画を邪魔したのも彼の匂いが原因だろう…」
「――あの時アンタが言ってた“Ωの発情フェロモンを上回る何か”ってやつが
その男の匂い…だと?」
「ああ。」
「それで鬼生道がΩのフェロモンに抗う為にその男を雇ったと…?
その男の匂いがどんなもんなのかは知ら無いけど――
匂いで秘書にするってwそんな事ある?w」
「――実際…彼が鬼生道に雇われていなかったら私が欲しいくらいだ…」
「そこまでっ?!」
「お前も嗅いでみたら分かる。」
神代が若い男性にそう言うと、ゆっくりと動きだした車の窓から
遠ざかっていく“nymphee”を眺めながら洋一の匂いを思いだし
神代がうっとりと目を瞑る…
――本当に…
あそこが人目につくところで無かったら――連れ去っていたかもな…
皆瀬洋一…
店内を一人、見て回る事に…
―――はぇ~…やっぱどれも量販店とかで売ってるスーツと違って
光沢とか質感とか…見ただけで全然違うな…
どれも高そ~…
洋一が飾られている服を怖くて触る事も無く
ただただ驚嘆(きょうたん)しながら眺めていると
「――ほぅ…店内に入ったら何やら良い匂いがすると思ったら――
匂いの出所はお前か…」
「!?」
服を眺めていた洋一の背後から突然声をかけられ
洋一は驚いて首だけを動かして背後を見る
すると長身の男性が少し屈む様にして洋一の項に顔を近づけ
目を瞑りながらうっとりとした表情で洋一の匂いを嗅いでおり――
「ぇ…あ…あの…?」
「ああ…驚かせてしまって済まない。私は――」
「神代(かみしろ)様!」
奥で作業をしていた店主が少し慌てた様子で神代と呼んだ男性の元へと駆け寄り
男性に向かって声を掛けた
「一言お声をかけていただければ出迎えましたのに――
それで――今回はどういったご用件で…?」
「――いや、今回は仕事の都合で偶然この近くを通りかかったものだから
少し寄ってみただけだ。」
「左様で御座いますか。それでは私めは奥で作業をしておりますので
何か御用が御座いましたら何時でもお声をおかけください。
それでは失礼いたします。」
そう言うと店主は再び中断していた作業を再開する為に奥へと戻って行き
その場には緊張で固まっている洋一と神代と呼ばれた男性の2人きりに…
―――で…どーすんの?この気まずい空気…
洋一が声も出せずに神代を見つめていると
神代がそんな洋一の視線を感じ、洋一に向かって微笑みながら話しかけてきた
「――自己紹介がまだだったな。
それでは改めて…私の名は神代 焔(かみしろ ほむら)。
しがない会社などを経営している。…君は?」
「お…俺ですか…?」
「嫌なら無理にとは言わないが…」
端正な顔立ちに物腰の柔らかそうな笑みを浮かべてはいるものの――
βに有無を言わせないα特有の“威圧”を神代から感じた洋一は
委縮しながら口を開いた
「俺の名前は…皆瀬…洋一…です…」
「皆瀬洋一…良い名だ。それにしても――」
「ッ!?」
神代が突然洋一の腰を抱きよせ、首筋に顔を寄せながら呟く
「――本当に良い匂いだな…このまま家に連れ帰りたいくらいに…」
「―――ッ!ぅ…」
『坊や…良い匂いがするねぇ…だぁ~れも見ていないし…
このまま連れて帰っちゃおうかなぁ…』
神代の何気ない一言で
洋一の脳裏に、過去の忌まわしい出来事が一瞬過り
洋一の顔がみるみる青ざめていく…そこへ――
「――神代様。そろそろお時間です。お戻りを。」
「…分かった。それでは洋一…名残惜しいが私はこの辺で失礼するよ。
――また会おう…」
神代は洋一にそう言い残すと迎えに来た男性と共にその場を去り
一人残された洋一は青ざめたまま…その場から動けずに震え続けた…
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お帰り~!――で?鬼生道が新しく秘書として雇ったっていう男
どんなヤツだった?昨日も画像で顔は見たけど――
やっぱなんて事無いただの冴えないβだったろ?」
車に戻った神代に、若い男性が話しかける
「――良い匂いがした。」
「へ?」
「恐らく――昨日我々の計画を邪魔したのも彼の匂いが原因だろう…」
「――あの時アンタが言ってた“Ωの発情フェロモンを上回る何か”ってやつが
その男の匂い…だと?」
「ああ。」
「それで鬼生道がΩのフェロモンに抗う為にその男を雇ったと…?
その男の匂いがどんなもんなのかは知ら無いけど――
匂いで秘書にするってwそんな事ある?w」
「――実際…彼が鬼生道に雇われていなかったら私が欲しいくらいだ…」
「そこまでっ?!」
「お前も嗅いでみたら分かる。」
神代が若い男性にそう言うと、ゆっくりと動きだした車の窓から
遠ざかっていく“nymphee”を眺めながら洋一の匂いを思いだし
神代がうっとりと目を瞑る…
――本当に…
あそこが人目につくところで無かったら――連れ去っていたかもな…
皆瀬洋一…
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