βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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メンズフォーマルはエロイ。

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一件目の横山商事との会合を終え
二件目の井沢カンパニーとの会合も無事に終えた命たちは
昼食の為に予約を入れていたフレンチレストランで昼食を済ますと
(ちなみにフレンチレストランでの洋一の昼食代は命が払った)
洋一のフォーマルスーツを仕立てる為に予約を入れていた服専門店
“nymphee”(ニュンペー)へと向かった…

―――うっわ…見るからに高そう…

車から降り、店の前に立った洋一はその店構えに感嘆の溜息を漏らす

店の外観は高級感漂う黒と茶を基調とした色合いで統一されており
ちょっと一見さんには入りずらい重厚かつ威圧感的な雰囲気が漂っていて――

―――こ、こんな安物のスーツ着た俺が入っちゃって…大丈夫なの…?

店の余りの威圧感に洋一は入るのを躊躇うが

「――何を突っ立っている?皆瀬。早く入るぞ。」

命が洋一の後ろからそう声を掛けると佐伯を引き連れ
相変わらず迷いのない足取りでスタスタと店のドア開けて店内へと入って行き
洋一はそんな命の後に続いて恐る恐る店内へと入って行く…

すると店の店主と思われる上品な雰囲気を漂わせた初老の男性が
店の中で綺麗な姿勢で立っており
命の姿を確認すると店主は一礼してから、静かに口を開いた

「――お待ちしておりました命様。要件は伺っております。
 それではコチラへ――」

店主に案内されて、洋一たちは店の奥へと通される

「それで――今回のご依頼はソチラの男性…
 皆瀬様の御召し物を仕立てるとの事ですが――
 間違いは御座いませんか?」
「ああ…コイツが俺と一緒にパーティーに出ても恥ずかしく無い格好を頼む。」
「――かしこまりました。ところで――
 本来なら生地選びからデザインまでをご本人様確認の元で行うのですが――
 如何なさいましょう?」
「え…」
「ああ…コイツは――
 こういった店は今回が初めてで勝手が分からんだろうから――
 今回は店主自らが見立ててくれると有難いのだが…」
「分かりました。皆瀬様もそれでよろしいですか?」
「あ、ハイ!それでよろしいです!」
「フフ…wかしこまりました。
 それでは皆瀬様、採寸を測らさせて頂きますので
 上着を脱いでコチラへ来ていただけますか?」
「ハイ。」

皆瀬が店主に言われた通りスーツの上着を脱ぎ始める
そこに命が皆瀬に向かって声をかけた

「皆瀬。」
「ハイ、何でしょう?」
「お前が此処で採寸を行っている間に
 俺はもう一社、会合を済ませておかねばならん所へがあるのだが――
 お前――俺が席を外しても大丈夫か?
 それともやっぱりお前の採寸が終わるまで俺も傍にいた方が…」
「命様。」

もう理由は分かり切ってはいるが――
洋一の傍から離れるのを渋る命に
佐伯が呆れた表情を浮かべながら命の名を呼ぶ

「もう予定が押しております。そろそろ店を出ないと…」
「しかし――」
「命様。」
「うっ…分かった…
 それでは皆瀬、俺が戻って来るまでの間大人しく此処で待ってろよ?いいな?
 それでは店主、後を頼む。」
「かしこまりました。」
「行くぞ佐伯。さっさと済ますぞ。」
「ハイ。さっさと済ませましょう。」

そう言うと2人は足早に店を出ていき
洋一はポカンとした表情でそれを見送り
店主はクスクスと笑いながら洋一の採寸を測り出した…
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