βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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危険手当が出ます。

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「皆瀬洋一。俺にはお前が必要だ。」

命に肩をガッチリと掴まれ
強い眼差しで自分の目を見つめながらハッキリとそう言う命に
洋一はただただ戸惑うばかり…

「あ、の…突然必要って言われても――
 俺にはどうしたらいいのか…」

要に似た瞳で真っ直ぐ自分の事を見つめてくる命から“必要”と言われ
若干顔が熱くなるのを感じて命から視線を逸らす洋一を他所に
命は洋一に募る様な視線を送り続けながら口を開く

「皆瀬…俺は先ほども言った通り
 俺がΩのフェロモンに抗えたのは全部
 お前から漂うその匂いのお陰だと思っている。
 Ωのフェロモンの匂いを振り切りお前に噛みついた事も
 Ωのフェロモンに中てられた俺が予想以上の速さで解放された事も全部…」

命が今もなお洋一から漂ってくる匂いに目を細める

「だから皆瀬…俺を助けると思って協力してくれ。
 Ωのフェロモンに抗う為に…」
「Ωのフェロモンに抗う為にって俺に言われましても…
 具体的にどうしたら――」
「何、簡単な事だ。お前は常に俺の傍に居るだけでいい。」
「傍に居るだけ…?」

命の言葉に洋一は不思議そうに首を傾げながら命の事を見つめた

「――俺は立場上鬼生道財閥と関わりにある会社や企業のとの関係悪化を防ぐために
 定期的に各社を巡り、今後の方針を決めたり
 各社が主催する資金集めのパーティー何かに出席したりする。
 皆瀬…お前はそんな俺の傍にただにいるだけでいい…頼む。」
「ぅ…そんな…頼まれても…」

副社長直々に頼むと請われ
洋一は益々どう答えたらいいのかが分からずに口籠る

「俺が狙われている事はさっきのΩ女の件でもわかっただろう?
 さっきのΩ女が個人で俺を狙ったのか
 或いは誰かに雇われたかまでは分からんが――
 俺が行くところ行くところ常に危険が付き纏う…
 “Ωのフェロモン”と言う危険がな。
 だからお前には俺がΩのフェロモンに抗う手段として
 常に俺の傍に居てもらいたいのだ。――“秘書”として。」
「秘書って――え…?…え”ぇぇえええっ!?!?」

狭い店内に洋一の声が響き渡る

「当然だろ?四六時中俺の傍にいても違和感のない役職と言ったら秘書しかない。
 俺にはもう既に有能な秘書が一人就いているが――
 お前には俺のもう一人に秘書って事でグロースから改めて雇いたい。
 当然給料は今の倍払う。」
「おおっ!」

2人のやり取りを傍で聞いてた浩介が思わず声を上げる

「ちょ、ちょっと待って下さいっ!急にそんな事言われても
 俺、秘書職なんか…っ、」
「安心しろ。
 秘書という肩書はあくまでもお前を俺の傍にお置くための口実に過ぎない。
 実際の秘書の仕事はもう一人の秘書が全部やってくれる。」
「で…でもそれじゃあ何だか給料泥棒みたいで悪いです…」
「それこそ心配無用だ。お前は俺の傍に居るだけで役に立つのだから…」
「でも…」
「あとついでに危険手当も出す。」
「え?危険手当??何で???」

秘書になれと言われただけでも混乱している洋一に
更に追い打ちをかけるようにして危険手当まで出すと言われ
洋一の混乱具合に拍車がかかる

「俺はさっきΩのフェロモンに中てられてお前の項に噛みついただろ?
 この先俺と一緒に居て、同じような事が起こらないとは限らない。
 だから――その為の危険手当と考えて欲しい。気にするな。」
「気にします。めっちゃ気にしますソコっ!」

自分はまた項を噛まれて痛い思いをするかもしれないと考えただけでゾッとし
洋一は青くなりながらも決死の思いで口を開いた

「あの――折角のお話ですけれども断らせて――」
「早速で悪いが――お前は明日から俺の秘書として働いてもらう。
 辞退はナシだ。」
「そんなぁ~…横暴だぁ~…」
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