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浴衣。
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「う…」
如月がベッドの上で身動(みじろ)ぎながら目を覚ます…
―――此処は…
如月は天井を眺めながら昨夜の出来事を思いだす
―――そうだ…私は昨日…散々黒崎に――
「…ッ、うぅ…」
ココまで思いだし、如月の瞳には薄っすらと涙が滲みだし
如月は両手で顔を覆いながら声を押し殺して呻く
―――何で…こんな事に…
『…ヤクザもんの言葉何かを信じちゃったのがアンタの運の尽き…』
―――…ずるい…
出会った時に私に一言も“ヤクザ”だなんて言わなかった癖に…
黒崎は如月を救った当初“自分を探していた”…とは言ってはいたものの
如月からしたらスーツを着たカッコイイ人が
自分をホームレス狩りから助けてくれた――くらいの認識しかない人物が
急に“アイツ等”から守ってやると言いだし
その代わりにと提示された“条件”は
如月が家に着くまで一切語られる事が無かった上に
自分がヤクザだという事をこの屋敷に着くまで黙っていた黒崎の行為は
正に“騙し討ち”以外の何ものでもなくて…
しかもその“条件”を飲もうが飲むまいがこの屋敷に足を踏み入れたら最後
如月にはもう選択肢すら与えられず
黒崎に抱かれる事前提…
囲われる事前提という…
―――こんなの…私を騙す気満々の後だしじゃんけんじゃないか…
如月は今に至るまでの経緯のあまりの理不尽さに憤る…
そこに部屋のドアが急にノックされ――
「ッ!?」
如月はビクリと身体を震わせ
ドアの方をベッドに横になったままぎこちない動作で見つめる
するとドアがキギギギギィ…と軋んだ音を立てて開き――
「あ。如月さん!おはようございます。
…といってももう…昼過ぎてんですけどね…」
柳葉が食事の乗ったトレーを手に持ち
躊躇いがちに部屋に入ってきた
「…貴方は確か…」
「柳葉 恭介(やなぎば きょうすけ)って言います。
あ、朝食――てか昼食をお持ちしたんすけど――食べられますか?」
柳葉が如月のいるベッドへ恐る恐る近づき、如月は痛む身体…
主に腰からくる鈍痛に顔を顰(しか)ませながらゆっくりと身体を起こす
すると今自分の着ている浴衣がはらりと肌蹴、胸や腹に無数の紅い点が見え――
「…ッ、」
如月は再び昨夜の黒崎との激しい情事を思いだし
屈辱で唇を噛みしめながら慌てて肌蹴た浴衣を首元までキッチリと着直し
片手で閉じた浴衣の前合わせ部分をギュッと押えながらふと、如月は辺りを見回す
「…そう言えば――黒崎…っ、さん…は…?」
自分をほぼレイプ同然で犯した男にさん付けするのは癪に障ったが――
流石に彼の舎弟?とおもしき人を前に呼び捨ては良く無いと…
如月は律儀に黒崎に“さん”を付け
先程から姿の見えない黒崎にホっとしながらも不思議に思い柳葉にその事を尋ね
柳葉はベッドテーブルをセットし、その上に食事の乗ったトレーを置きながら
如月の方を見ながら躊躇いがちに口を開く
「黒崎さんはその――“会合”に向かわれてまして…」
「会合…?」
「説明すると長くなるんでいろいろ省きますが
まあ組織間での話し合いです。」
「はあ…」
どうせ詳しく聞いたところで
ヤクザの世界の事なんてきっと訳が分から無いだろうからと…
如月はそれ以上の事は聞かず
ベッドテーブルの上に柳葉が用意してくれた食事に目を移す
「…美味しそう…」
見ればテーブルの上には
鳥とごぼうの炊き込みご飯にほうれん草のお浸し
それと綺麗な色の卵焼きに豆腐の味噌汁と…
どれも見るからに美味しそうではあるものの――
如月は昨日の黒崎との行為のせいか食欲がわかず…
目の前に出された食事をただ困った顔をして見つめるのみで…
「あの…食べないんすか…?」
「…食欲が――余りなくて…」
「そう――なんですか…」
気まずい沈黙が2人を包む中
そこに更に申し訳なさそうに柳葉が口を開く
「あの…如月さん。」
「…何でしょう…」
「黒崎さんからの言伝(ことづて)で…
『屋敷の外には出ないように。』…との事です。」
「………」
「あ、その代わり屋敷内は自由に見て回っても構わないとの事です。
後、庭も――」
「………」
「…如月さん?」
「…どのみちこんな格好じゃあ…何処にも逃げられないよ…」
自分が逃げ出す事を警戒しての黒崎の言伝に
如月はフフ…と、力ない笑みを浮かべ
自分の着せられている女物の浴衣を俯きながら見つめる…
それは昨日、黒崎との情事の時に着せられていたものとはまた別モノの
今度は白地に淡い色彩の蝶の絵柄が施されたもので――
如月はその絵柄を見ながら軽く溜息を突く
そこに柳葉が躊躇った様子で声をかけ…
「でも――似合ってると思いますよ?その浴衣。」
「え…?」
「淡い色合いとか――
色の白い如月さんの肌と顔立ちにピッタリだと俺は思うけど――」
此処まで言って、柳葉が如月の方を見る
すると怪訝な顔をした如月と目が合い――
「しっ、失礼しましたっ!無駄話が過ぎましたね!
食事は後で回収に来るんで――食べれるだけ食べちゃってくださいっ!
それじゃあ俺、失礼します!」
そういうと柳葉は慌てて部屋を出ていき
残された如月は茫然とその後姿を見送る
「…だから…食欲無いって…」
如月はそう呟きつつ、目の前の卵焼きを一口だいに箸で割り
そっと口へと運ぶ
「…美味しいけど…」
如月は卵焼きを一口食べた後そう呟くと
再び溜息を吐き、窓の外を静かに見つめた…
如月がベッドの上で身動(みじろ)ぎながら目を覚ます…
―――此処は…
如月は天井を眺めながら昨夜の出来事を思いだす
―――そうだ…私は昨日…散々黒崎に――
「…ッ、うぅ…」
ココまで思いだし、如月の瞳には薄っすらと涙が滲みだし
如月は両手で顔を覆いながら声を押し殺して呻く
―――何で…こんな事に…
『…ヤクザもんの言葉何かを信じちゃったのがアンタの運の尽き…』
―――…ずるい…
出会った時に私に一言も“ヤクザ”だなんて言わなかった癖に…
黒崎は如月を救った当初“自分を探していた”…とは言ってはいたものの
如月からしたらスーツを着たカッコイイ人が
自分をホームレス狩りから助けてくれた――くらいの認識しかない人物が
急に“アイツ等”から守ってやると言いだし
その代わりにと提示された“条件”は
如月が家に着くまで一切語られる事が無かった上に
自分がヤクザだという事をこの屋敷に着くまで黙っていた黒崎の行為は
正に“騙し討ち”以外の何ものでもなくて…
しかもその“条件”を飲もうが飲むまいがこの屋敷に足を踏み入れたら最後
如月にはもう選択肢すら与えられず
黒崎に抱かれる事前提…
囲われる事前提という…
―――こんなの…私を騙す気満々の後だしじゃんけんじゃないか…
如月は今に至るまでの経緯のあまりの理不尽さに憤る…
そこに部屋のドアが急にノックされ――
「ッ!?」
如月はビクリと身体を震わせ
ドアの方をベッドに横になったままぎこちない動作で見つめる
するとドアがキギギギギィ…と軋んだ音を立てて開き――
「あ。如月さん!おはようございます。
…といってももう…昼過ぎてんですけどね…」
柳葉が食事の乗ったトレーを手に持ち
躊躇いがちに部屋に入ってきた
「…貴方は確か…」
「柳葉 恭介(やなぎば きょうすけ)って言います。
あ、朝食――てか昼食をお持ちしたんすけど――食べられますか?」
柳葉が如月のいるベッドへ恐る恐る近づき、如月は痛む身体…
主に腰からくる鈍痛に顔を顰(しか)ませながらゆっくりと身体を起こす
すると今自分の着ている浴衣がはらりと肌蹴、胸や腹に無数の紅い点が見え――
「…ッ、」
如月は再び昨夜の黒崎との激しい情事を思いだし
屈辱で唇を噛みしめながら慌てて肌蹴た浴衣を首元までキッチリと着直し
片手で閉じた浴衣の前合わせ部分をギュッと押えながらふと、如月は辺りを見回す
「…そう言えば――黒崎…っ、さん…は…?」
自分をほぼレイプ同然で犯した男にさん付けするのは癪に障ったが――
流石に彼の舎弟?とおもしき人を前に呼び捨ては良く無いと…
如月は律儀に黒崎に“さん”を付け
先程から姿の見えない黒崎にホっとしながらも不思議に思い柳葉にその事を尋ね
柳葉はベッドテーブルをセットし、その上に食事の乗ったトレーを置きながら
如月の方を見ながら躊躇いがちに口を開く
「黒崎さんはその――“会合”に向かわれてまして…」
「会合…?」
「説明すると長くなるんでいろいろ省きますが
まあ組織間での話し合いです。」
「はあ…」
どうせ詳しく聞いたところで
ヤクザの世界の事なんてきっと訳が分から無いだろうからと…
如月はそれ以上の事は聞かず
ベッドテーブルの上に柳葉が用意してくれた食事に目を移す
「…美味しそう…」
見ればテーブルの上には
鳥とごぼうの炊き込みご飯にほうれん草のお浸し
それと綺麗な色の卵焼きに豆腐の味噌汁と…
どれも見るからに美味しそうではあるものの――
如月は昨日の黒崎との行為のせいか食欲がわかず…
目の前に出された食事をただ困った顔をして見つめるのみで…
「あの…食べないんすか…?」
「…食欲が――余りなくて…」
「そう――なんですか…」
気まずい沈黙が2人を包む中
そこに更に申し訳なさそうに柳葉が口を開く
「あの…如月さん。」
「…何でしょう…」
「黒崎さんからの言伝(ことづて)で…
『屋敷の外には出ないように。』…との事です。」
「………」
「あ、その代わり屋敷内は自由に見て回っても構わないとの事です。
後、庭も――」
「………」
「…如月さん?」
「…どのみちこんな格好じゃあ…何処にも逃げられないよ…」
自分が逃げ出す事を警戒しての黒崎の言伝に
如月はフフ…と、力ない笑みを浮かべ
自分の着せられている女物の浴衣を俯きながら見つめる…
それは昨日、黒崎との情事の時に着せられていたものとはまた別モノの
今度は白地に淡い色彩の蝶の絵柄が施されたもので――
如月はその絵柄を見ながら軽く溜息を突く
そこに柳葉が躊躇った様子で声をかけ…
「でも――似合ってると思いますよ?その浴衣。」
「え…?」
「淡い色合いとか――
色の白い如月さんの肌と顔立ちにピッタリだと俺は思うけど――」
此処まで言って、柳葉が如月の方を見る
すると怪訝な顔をした如月と目が合い――
「しっ、失礼しましたっ!無駄話が過ぎましたね!
食事は後で回収に来るんで――食べれるだけ食べちゃってくださいっ!
それじゃあ俺、失礼します!」
そういうと柳葉は慌てて部屋を出ていき
残された如月は茫然とその後姿を見送る
「…だから…食欲無いって…」
如月はそう呟きつつ、目の前の卵焼きを一口だいに箸で割り
そっと口へと運ぶ
「…美味しいけど…」
如月は卵焼きを一口食べた後そう呟くと
再び溜息を吐き、窓の外を静かに見つめた…
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