ヤクザ、ホームレスを飼う。

深淵歩く猫

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条件。

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「お帰りなさい。黒崎さん。」

屋敷の広い玄関を潜ると、廊下の奥からぞろぞろと10人位の若い男達が
正面に整列し、黒崎と、黒崎に腰を抱かれたまま固まっている如月に向けて
一斉に頭を下げる。

「おう。今帰った。部屋の準備は?」
「出来てます。」
「そうか。なら、俺が呼ぶまで誰も部屋に近づけるなよ?分かったな。」
「分かりました。」
「――柳葉。」
「はい。」
「俺達が部屋に籠ってる間に、組員たちに伝えとけ
 “絶対に逃がすな”…と。」
「…本当に――伝えるんですか…?」
「…?」

柳葉が憐れむような視線を如月に向け
如月がそんな柳葉の視線を不思議に感じて首を傾げて戸惑う…

「ああ。」
「俺は…反対です…これじゃあ彼が余りにも――」
「???」
「柳葉。」

黒崎の視線がスッと鋭くなり、柳葉を睨む

「ッ、す、すみませんっ!出過ぎた事を…っ!
 直ぐに伝えておきますっ!」

柳葉は黒崎の一睨みに慌ててその場を立ち去り
他の組員たちもそそくさと自分達の持ち場へと戻って行く

「…さて――貴方に“条件”を伝える為の部屋へと行こうか…」

黒崎が玄関で靴を脱ぎ、用意されていたスリッパに履き替え
如月も慌ててそれに続き、靴を履き替える
そして黒崎の隣に立つと、黒崎は微笑みながら如月の腰に再び手を回して
2人は長い廊下を歩きだした…

途中、長い廊下を沿うようにして立て付けられたガラス戸から見える外の景色に
如月は息を飲む

―――凄い…まるで何処かの日本庭園だな…

視線の先に広がる、よく手入れされた庭を眺めながら
如月は黒崎と共に廊下を進む

そして黒崎がある豪勢な絵柄が描かれた襖(ふすま)の前で立ち止まると

「――此処が、貴方に“条件”を伝える為の部屋だ…」

黒崎が襖を開け、如月の背中を強く押して如月を部屋の中へと押し込む

「ッ!ちょ…何を…」

突然背中を押され、如月が黒崎に抗議しようと振り返った瞬間
ピシャッ!と黒崎が後ろ手に襖を閉め――

「そこで…伝えますよ。“条件”…」…と
黒崎がクイッと顎を前の方に振り、如月に前を見るようにと促す

「…?」

如月が黒崎を不審に思いながら黒崎に促されたほうを見てみる

「え…?」

すると広い十二畳くらいある部屋の真ん中に
2枚の布団が畳の上に敷かれており――

―――え…ナニコレ…え…?

黒崎は布団の方を見て固まっている如月の腕を掴むと
布団が敷いてある方へと歩きだす

「ッ!?ちょっ、ちょっと待って下さい黒崎さんっ!!
 コレはどういう――」

目の前に広がる光景に混乱し
焦る如月を無視して、黒崎は強引に如月の腕を引き
布団の敷いてある場所まで連れて行く

そして布団の敷いてある場所まで辿り着くと
黒崎は戸惑う如月の両肩を掴んで後ろの布団の上へと押し倒した…

ドサッ…

「――ッ!?!?」

突然黒崎から押し倒され――
如月はこの状況が理解出来ずに、起き上がれないように両肩を押えつけ
上から覆い被さる様にして自分の事を見下ろしている黒崎に向かって
困惑と怯えた表情を見せながら如月は震える声で必死に尋ねた…

「く…黒崎さん…コレは…一体…っ?」

黒崎の胸を肘で押し返しながら、起き上がろうと黒崎の下でもがく如月に
黒崎は薄い笑みを浮かべ、上唇を舐めながらこう告げた…

「――コレが…貴方への“条件”ですよ如月優一さん…」
「――え…?」
「貴方は此処で俺に抱かれ続ける事…コレがアイツ等から守ってやる“条件”…
 最もココで貴方が“条件”を拒んでも――俺は今から貴方を抱くし――




 もうこの家から貴方を外に出す気も無いけどな。」
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