ヤクザ、ホームレスを飼う。

深淵歩く猫

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着いてしまった場所は…

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“条件”を飲めば“アイツ等”から守ってやるという黒崎の言葉を信じて
如月は縋る様な気持ちで黒崎の車に乗り込んだが――

―――黒崎さんの言葉を――そのまま信じて良かったんだろうか…

勢いで車に乗り込み、5分もしない内に如月の脳裏に“後悔”という二文字が過る…

―――そもそも私は――黒崎さんの事を何も知ら無い…

“アイツ等”から守ると言っても――どうやって…?と…

如月は悶々としながら車の中で考え続けた…


そもそもの事の発端は半年前――


如月は自分の経営する会社、“如月エンタープライズ”で
ある日突然、如月自身に身の覚えの無い疑惑が社内で持ち上り…
如月はそれを否定し続けたが――
如月のパソコンからその疑惑を証明する断片の様なモノが見つかり…

それが決定打となり、如月は取締役会議の場で辞任を言い渡され…

その後如月は会社や妻の弁護士からあらゆるものを奪われ
失意の中、ホームレスにその身をやつす事に…

それだけならまだ良かったが――

如月がホームレスとなって数日後…
如月の元に謎の男達が現れ
「如月優一さん?我々と一緒に来ていただきましょうか…」と…
ソレを断ると、男達は嫌がる如月を無理矢理車の中に押し込めようとし
如月は命からがら何とかその場は逃げおおせる事が出来たが――

その日以降、度々謎の男達から追われる事となり
そいつらから逃げる為に各地を転々としながらホームレス生活をしていたのだ…

―――ホームレスとなって…
   なんの価値も無い私を執拗に追いかけ回す
   “アイツ等”の“目的”は分から無いけど――
   私を守ると言った黒崎さんの“目的”も“手段”も分からない…
   私は一体どうしたら…

如月が俯きながら戸惑い、悩んでいると

「――着いたぞ。今日から此処が貴方の“家”となる場所だ…」
「…え…?」

如月が隣で自分の肩を抱き寄せながら座る黒崎の言葉に顔を上げ
窓の外に目をやる

するとそこには木製の和風な門が見え、門の横の表札に見事な文字で

“龍道会(りゅうどうかい)”と書かれており――

―――なんか――ヤクザさんみたいなお名前が…

戸惑う如月を前に、門は黒崎たちを乗せた車を迎え入れる為に
ゆっくりとその重々しい扉をギギギギギ…という音と共に開いていく…

そして門が開ききり、如月は門の先に広がる光景に言葉を失い
そして青ざめた…

―――これ……って……

門の先には、それはそれは見事なお屋敷が見え――
その屋敷へと続く道の両サイドには
スーツを着た男達が横一列にズラッと整列して並び
その誰もが一糸乱れる事無く腰を30度に曲げ、綺麗なお辞儀をしながら
ゆっくりとその道を通る黒崎達を乗せた車を出迎えているのだ…

―――これってまさか…

青ざめ、言葉を失っている如月を他所に
車はゆっくりとお屋敷の玄関の前で停まり――

「――さ、降りるぞ。」

黒崎が真っ青になりながら茫然としている如月の手を取り、車を降りる

「く…黒崎さん…貴方一体――」

如月は血の気の引く思いで、この場から逃げだしたいのグッと堪えながら
隣に立つ黒崎に怯える視線を向けながら、震える小さな声で尋ねる

「ああ…貴方に言い忘れていたが――
 俺はこの龍道会で17代目組長をやっている…
 所謂(いわゆる)“ヤクザ”って奴だ。」
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