ヤクザ、ホームレスを飼う。

深淵歩く猫

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記憶にない再開

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「ん…」

カーテンから漏れた光の眩しさから、如月が薄っすらと目を覚ます

「ここ…は…?」

すると如月の目に飛び込んできたのは何時ものような
雨風をほんの少し防げる程度の何処かの店の軒先(のきさき)や
陸橋(りっきょう)の下などではなく
ちゃんとした…しかし如月の知らない何処かの天井で――

―――そうだ…私は昨日…っ!

「――い”ッ、うぅ…ぅ…っ、」

如月は昨日の出来事を思いだし、慌ててベッドからその身体を起こすが
全身を激しい痛みが襲い
如月は呻きながら自分の身体を抱きしめる様にして前屈みに蹲(うずくま)る

それと同時に今自分が着ている服が何時もの汚いボロでは無く
薄い水色の清潔な患者着である事に気が付き――

―――此処…病院か…?

如月が辺りをゆっくりと見回す…
すると床や天井などは打ちっぱなしのコンクリートで
一見すると病院には見えないのだが
自分が今居るベッドやパーテーション
内装何かは明らかに病院を感じさせるモノで…

―――やっぱり病院か…

如月が痛む身体を押してベッドから素足で降り
近くの窓の外を見ようとカーテンに手をかけたその時

「――お、目が覚めたか…」
「――ッ!?」

ガチャッとドアが開く音に驚き
如月がビクッとしながらドアの方を振り返ると
そこには昨日自分をホームレス狩りから助けてくれた
長身で黒いスーツを着た男性が
手に白いタオルとその上に髭剃りやら何かを乗っけて立っており――

「あ…ど、どなたか存じませんが…昨日は…助けていただき――」

如月が男性に対し、頭を下げながらお礼の言葉を言おうとした時
男性はドアからズカズカと窓辺に立っている如月に近づいていき

「――黒崎。」
「え…?」

男性がズイッと如月に顔を近づけながらそう呟き
如月が咄嗟に背をのけ反らせながら聞き返す

「俺の名前は黒崎 直也(くろさき なおや)。もっとも――
 その様子だと以前に俺に会った事などもう…忘れているようだがな…」
「…?」

―――私は――前に…彼と何処かで…?

如月が黒崎の言葉に戸惑っていると

「そんな事より…ちょっと俺と一緒に来てもらおうか。」
「え…あのっ、ちょっと?!」

黒崎は戸惑っている如月の手首を掴むと
その手を引いて部屋の外へと如月を連れ出した…


黒崎に腕を引かれ
ペタペタと、靴を履いてない如月の足音と
カツカツと小気味いい音を立てながら廊下を歩く黒崎の靴音が
静かな廊下に微かに響く中
黒崎が“入浴室”とプレートがかかった部屋の前で足を止め
抱えて持っていたタオルや髭剃りなんかを如月に手渡す

「…?あの…?」
「――風呂、入って来い。医者から入浴許可は取ってある。
 俺は貴方が風呂に入っている間に服などを用意しておいてやるから。」

そう言うと黒崎はガチャッとドアを開け
困惑している如月の背を押して入浴室へと押し込む

「あ…黒崎さん!ちょっと…」

如月が振り返り黒崎の方へと詰め寄ろうとするのを黒崎は無視してドアを閉め
カチッと入浴室のドアのカギを閉めて如月がそこから逃げられない様にすると
黒崎は微かに微笑み、その場を後にした…
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