ヤクザ、ホームレスを飼う。

深淵歩く猫

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ホームレス、搬送される

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スーツの男性が暴れる如月を抱えたまま路地裏を抜けると
目の前に停めてあった黒塗りの高級車の前に
グレーのスーツを着た若い男性が一人立っており

「お帰りなさい黒崎さん。その抱えておられる男性が?」
「ああ。俺が探していた人だ…
 ところで柳葉、後部座席を開けてくれ。」
「分かりました。」

そう言うと柳葉は後部座席のドアを開け、黒崎が暴れて嫌がる如月を
無理矢理後部座席へと乗せ
自分も続いて後部座席に乗り込もうとするが――

「ッ、降ろして…っ!」

如月が自分が乗せられたドアの反対側のドアハンドルを引いて
外へと逃げだそうとし
黒崎が慌ててドアハンドルを握る如月の手を掴むと
その手をグイッと強引に自分の方へと引き寄せ
更に如月のもがき暴れる肩を掴んで抱き寄せると如月の自由を奪う

「はっ…なせ…っ!い”ッ…つ…う”ぅう…っ、」
「…柳葉、早く車を出せ。」
「了解です。」

黒崎の言葉に柳葉は軽く頷くと
柳葉はギアを入れ、サイドブレーキを下ろして
車をその場から静かに発進させる

「――で…黒崎さん、これからどちらへ?」

柳葉がバックミラー越しに黒崎の様子を伺いながら行先を尋ねる

「とりあえず椎名のところへ。
 早くコイツを医者に診せないと…って――オイ!」
「はあッ…はあッ…うっ…くっ…う”ぅぅ…っ、」

黒崎に両手首を片手で掴まれたまま
急に呻きながら前屈みに蹲り出した如月に黒崎は焦り
黒崎は如月の身体を横にさせながら、頭を自身の膝の上に乗せると
運転席の背もたれをバンバンと叩く

「柳葉っ!!」
「分かってますってっ!」

黒崎に急かされ、柳葉はギアをオーバートップに入れると
アクセル全開で車を走らせた…


車は暫く走り続け、3階建ての廃ビルのような人気の無いビルの前で停まると
黒崎がぐったりとした如月を抱え、大慌てでビルの中へと駆けこんでいく

「椎名っ!」

バンッ!とドアを足で蹴破りながら黒崎がエントランスに駆け込む
すると近くの部屋から白衣を着た、一見すると女性の様にも見える
マットゴールドな髪色に肩までのロングウルフな髪型の髪を後ろに一纏めにした
スラッとした長身の男性が眠そうな雰囲気で顔を出した

「なぁ~にぃ~?黒崎…俺、眠いんだけどぉ~…」
「椎名っ!急患だ!頼めるか?!」
「断っても強引に押し付けるんでしょ?もぉ~…
 そこのストレッチャーの上に、その大事そうに抱えてんの乗せて。」

椎名にそう言われ、黒崎は近くにあったストレッチャーの上に如月を乗せる

「…後はコッチでやっとくから。アンタは帰ってて――」
「…此処に居る。」
「…勝手にしろ。」

椎名は黒崎に向かってそう吐き捨てると
如月を乗せたストレッチャーを押し、治療室へと入って行った…
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