ヤクザ、ホームレスを飼う。

深淵歩く猫

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ホームレスの災難

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午前零時をもう少しで回ろうかという時間帯
人気の無い路地裏で――

「…ッ、…ッ、」

ガスッ、ボスッ…と何かを殴っている鈍い音と

「――チッ…コイツ全然てーこーしてこねぇ~なぁ~…つまんね。」
「もうちょっと威勢の良いやつなら殴り甲斐もあんのになw
 これじゃ丸めた布団かマットレス殴ってんのと変わんねー…」
「あははwマットレス!確かにw」

複数人の男達の話し声と卑下た笑い声が大きく響き渡る
そこに…

「――オイ。そこで何してる?」

陰になっていて顔は良く見えないが、一人の黒いスーツを着た長身の男性が
地面に蹲(うずくま)っている黒い塊を蹴り続けている男達に声をかけてきた

「あ”?アンタにはかんけーねーだろ?すっこんでろよ。」
「そーだぜオッサン。俺達今、スッゲー気が立ってんの。
 怪我しない内にとっとと失せな。」

男達はさっきまで蹲っている人物を殴りつけていた鉄パイプなどを
肩でトントンと軽く叩きながらスーツの男性を威嚇するように睨み付ける…
しかしスーツの男性はソレを見て怯むどころかニッと口角を上げ
逆に鋭い視線で男達を睨み返しながら静かにその口を開く

「…そーはいかねーなぁ…」
「あ”?何だテメー…俺達とやろっての?こんなホームレスを助ける為に??
 ヒーロー気取りかよっ!w」

あははははw――と…蹲っている人物を囲む様に立っていた男達が
一斉に笑い声を上げ
普通の人ならその狂気を含んだ笑い声に恐れ戦(おのの)き立ち去るところを
スーツの男性は更に笑みを深くしながら答える

「――ヒーロー気取り…か。確かにな。w
 と、言う訳で――」

男性はツカツカと足早に男達に近づくと

「その人から――離れてもらおう…かっ!」
「…ッ!?」

スーツの男性の拳が、凄い勢いでさっきまで笑っていた男の腹にめり込み
腹を殴られた男は衝撃で後ろに身体を折り曲げるようにして軽く飛びあがった後
その場に声もなく頽(くずお)れる…

「オイ矢部っ!テンメ~…何しやがるっ!!」

ソレを見て、鉄パイプを持った男が激昂し
スーツの男性目がけて鉄パイプ振り下ろすが

男性は自分に振り下ろされる鉄パイプをスッと躱(かわ)し
男が振り切った鉄パイプを片手でグッと掴むと
ソレを両手で持っていた男の手からスッと引き抜くようにしてあっさりと奪い取り
鉄パイプを奪われ茫然としている男目がけて
容赦なく奪い取った鉄パイプを振り下げ――

「が…ッ、はっ、」

ガンッ!という鈍い音と共に男は地面に倒れ込み
僅か2分もしない内に2人の男がスーツの男性の足元に転がるさまを見て
その場に居た他の2人は後ずさる…

「おい…コイツ…ヤベーぞ…」
「逃げっか…」
「アイツ等どーする…?」
「バッカお前…そんなの逃げた後に考えるべ!」
「そ、そうだな!」

そう言うと残りの男達は慌てて逃げだし
スーツの男性は逃げていく男達を見送りながら
先ほどまで男達に暴行を受けて、その場に呻きながら蹲るボロボロの人物に近づく

「おい、大丈夫か…?」
「………」

スーツの男性から声を掛けられたその人物は一瞬ビクッと跳ねるが返事は無く…
ただ薄暗くてもその人物が微かに震えているのが見え――

「…」

スーツの男性は無言でその蹲っている人物に両手を伸ばすと

「ッ!?」

ヒョイとその人物を抱え上げ、所謂(いわゆる)姫抱っこというやつで
その人物を抱き抱えたままその場から歩きだし

「ちょっ…下ろして…う”ぐ…ぅッ、下ろして、ください…っ!」
「――駄目だ。」

スーツの男性は嫌がって身を捩り出したボロボロの小汚い人物にお構いなしに
歩き続ける

「――それにしても臭いな。」
「ッ、だからっ、下ろして…っ!っう”ぅ…私に…構わないでくれ…っ!」

ボロボロの人物はフケだらけのボサボサの髪を振り乱し
自分を抱えている男性から逃れようとその胸を押して僅かな抵抗を試みたが
スーツの男性は歩くのを止めず…

「暴れるな。スーツが汚れる。」
「だったら下ろして…」
「そうはいかないな…如月エンタープライズの元社長――
 如月 優一(きさらぎ ゆういち)さん。」
「ッ!?私を…知って…」

スーツの男性から名前と素性を明かされ、
男性に抱えられ、暴れて居た人物――如月はその身を固くする

「ええ…勿論知ってますとも…
 なんたって俺は――貴方をずっと探していたんですから…」
「――ッ!」

それを聞き如月は痛む全身をおして、男性の腕の中で更にもがく

「はっ…離してくれ…っ!お願いだから――」
「離すわけ無いでしょ?やっと見つけたのに…」

そう言うと男性は如月を抱えたまま
月夜に照らされて路地裏を颯爽と歩き続けた――
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