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side ハスライト
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しおりを挟むその後も散策した。
ミュランに流行りの小物が売っている店や、露店などを紹介してもらった。
ミュランから、好いている令嬢(ミュラン)にプレゼントしてはどうかと言われ、チャンスだと思い好みを聞いた。
「私はこれですかね。」
選んだのは小さめなブルーの宝石が入ったネックレスだった。
「そんな小ぶりなもので良いのか?」
「ええ、主張が激しくないほうが好ましいです。」
なるほどな。
普段寄ってくる女性たちは大きな宝石を好んでいたが、ミュランはそうではないようだ。
それに、偶然なのか俺の瞳の色だと言うことも嬉しく思い、購入することにした。
「ではこれを。」
「え?でもこれは私の好みであって…」
ミュランに何か言われる前にさっさと会計を済ます。
そしてミュランの背後に周りネックレスをつけた。
「いいんだ。これは俺からのプレゼントだ。」
「あ、ありがとうございます…」
やっと贈り物を直接渡すことができた。
その達成感で少し余裕ができたのか、気になっていたことを聞いてみた。
「…その色が好きなのか?」
「?はい、落ち着きます。」
「そ、そうか…」
落ち着く…。
まだ、期待してもいいのだろうか?
「殿下?」
「あ、いや、その…私にもまだチャンスがあるのかと」
「え?」
「その色は私の瞳と同じ色だから、」
「!!!!」
ミュランは全く気づいてなかったのか、とても驚いて顔を真っ赤にさせていた。
それを見て、俺も恥ずかしくなり咄嗟に赤くなる顔を見られないように逸らしてしまった。
「つ、次に行こう。」
「はい…。」
その後はミュランの好きな雑貨屋によったり、両親、使用人達にお土産を買った。
そうしてミュランとの買い物は終わった。
ミュランを家に送り届けてから王宮に戻った。
その間に今日一日を思い出す。
「あぁ、可愛い…」
とにかくミュランが可愛かった。
ミュランとあんなに話をできたのも、長く一緒にいたのも初めてだった。
贈り物も初めて直接贈れた。
自分の瞳と同じ色の宝石がついたものをミュランが選んでくれたことも嬉しかった。
俺の瞳が落ち着くと言ってくれたと思ってもいいのだろうか…。
そして、ミュランの態度が俺を意識してくれているように感じとても満足した。
このままミュランが俺を意識してくれたら、きちんと告白しよう。
今までのことを全部伝えよう。
今ならミュランも頷いてくれるのではないだろうか。
そんな淡い期待を持ちながら眠りについた。
このあとミュランに誤解を招くような事件が起こるなんて思いもせずに。
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