政略結婚相手に本命がいるようなので婚約解消しようと思います。

本編

4

その後も散策した。

流行りの小物が売っているお店や、露店などを紹介した。
令嬢にプレゼントしてはどうかというと、私の好みを聞かれた。

「私はこれですかね。」

ブルーの宝石が入ったネックレスを選ぶ。

「そんな小ぶりなもので良いのか？」

「ええ、主張が激しくないほうが好ましいです。」

「ではこれを。」

「え？でもこれは私の好みであって…」

そう言って殿下はさっさと会計を済ます。
そして私の背後に周りネックレスをつける。

「いいんだ。これは俺からのプレゼントだ。」

「あ、ありがとうございます…」


婚約解消するならこんなプレゼントいらないのに。
今日のお礼ってことかしら。
他意はないだろうからありがたく受け取っておこう。

「…その色が好きなのか？」

「？はい、落ち着きます。」

「そ、そうか…」

「殿下？」

「あ、いや、その…私にもまだチャンスがあるのかと」

「え？」

なんのことを言ってるのかしら？

「その色は私の瞳と同じ色だから、」

「！！！！」


よく見るとたしかにそうだ。
それを落ち着く色なんていうと私が殿下を見て落ち着くと言っているようなものだ。
とたんに恥ずかしくなり、俯いた。

殿下も何故か顔をそらし、

「つ、次に行こう。」

「はい…。」

そうして殿下との買い物は終わった。





家に帰り、殿下から貰ったネックレスをもう一度見る。
ブルーの宝石がキラキラと光っている。
それを眺めながら今日一日を思い出す。

すごく楽しかった。
殿下とあんなに話したのも、長く一緒にいたのも初めてだった。
殿下の笑顔も初めてで、プレゼントも初めて貰った。
初めてだらけのお出かけだった。

こんなに良くしてもらって、婚約解消したらもう関わることもないのよね…。
そして、殿下の隣にいるのはかの令嬢なのだわ。

そう思うと、また少しだけ
胸が痛んだ。


「これは私自身に向けたことじゃないわ。全部令嬢のための練習なのよ。」


そう。期待しちゃだめ。
本当は私のことを想ってくれているなんて…
考えるだけ無駄だ。


フルフルと頭を振り、ネックレスを小物入れに戻しベッドに潜った。

その日の夢は幼いときに王宮であった男の子と遊んでいる夢だった。
笑いあって、あの頃が一番楽しかったかもしれない。

あの男の子は元気かな…。
そう思いながら深い眠りについた。