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本編
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しおりを挟む「先程はダンスのお相手ありがとうございました。」
「こちらこそ。ダンスがとてもお上手なのですね。」
「ありがとうございます。あなたもとてもお上手だ。自分の魅せ方をわかっている踊りだったよ。相手を引き立たせつつ、自分も脇役にはならない、惹かれるダンスでした。」
「そんなに褒めていただけるなんて光栄です。」
「申し遅れました。私はイヴォン帝国のライノット・イヴォンといいます。」
ライノット・イヴォン様…って
「っ!皇太子殿下、大変な無礼を…申し訳ございません!」
今できる最敬礼をした私に、
「いいえ、名前も名乗らず誘ってしまった私が悪いんだ。私はあまり表に出ることが少ないから、初めて会うあなたが顔を知らなくて当然だ。どうか気にしないで。あなたのお名前を伺っても?」
「はい。私はリンデルン国から来ました、チュリ・リーヴェンと申します。」
「ああ、この国の者とはまた違った雰囲気をお持ちだとは思っていたが、リンデルンからきたんだな。」
「はい。」
「実はあなたが食事をとっているところを見て、コロコロ変わる表情が面白くて、話してみたいと思ったのだ。」
そうだったのね、そんなに表情変わっていたかしら…
「お恥ずかしい限りです。」
「いや、こういった場では料理は脇役だからね。でも様々な国の料理はこういった場でしか味わえない。社交も大切だが、そういった文化に触れることも大切だと私は思う。」
「ありがとうございます。」
それから少しだけ他愛もない話をして、
「有意義な時間をありがとう。ではまたお会いしよう。」
立ち去っていった。
皇太子殿下だしお忙しいわよね。
けど、少し気を張っていたからか、ホッとした。
しばらくしてからルークが戻ってきた。
「チュリ、一人にしてごめん。何もなかった?」
「はい。特に問題はありませんでした。」
するとワルツの音楽が流れた。
「チュリ、私と踊って頂けますか?」
「喜んで」
皇太子殿下もとても上手だったが、やっぱりルークとのダンスのほうが息が合う。
私に合わせてリードしてくれていてとても踊りやすい。
そして身体を密着させても安心できるところが何よりも心地よかった。
耳を近づけないと聞こえるはずのない、ルークの心臓の音まで聞こえてくるようで、ここにはルークと二人の世界で、周りには誰にもいないように感じてしまう。
「チュリ、誰かにダンスは誘われた?」
「はい。イヴォン帝国のライノット皇太子殿下にお誘いいただきました。」
「…そうか。私がいれば断れたが…ごめんね。」
「いえ、やはり帝国の皇太子殿下だけあって、様々なお話を聞け、有意義な時間を過ごせました。」
「共にいれなかった私が悪いのだが、それは少し嫉妬してしまう。」
「っ!」
そう言って私を引き寄せ、耳元で
「今夜は手加減できないかも。」
と囁かれ、顔が赤くなったのは言うまでもない。
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