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本編
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しおりを挟む食べ物につられた私はルーク様の婚約者のフリをすることになった。
「具体的にはどんなことをすれば宜しいですか??」
「そうだね。ひとまずこのあとホールで婚約者を決める発表しないといけないんだが、そこで君を指名するからでてきてほしい。」
ん?婚約者を発表??
「え?今日婚約発表するのですか?」
「あれ、もしかして聞いてないの?今日の舞踏会は王太子の婚約者を決めるパーティーだよ。」
「そうだったんですね。全然知りませんでした。」
王太子殿下の婚約者を決めるパーティーだったのね。お父様わざと言わなかったわね。
ん?王太子殿下の婚約者を決めるパーティーで発表するってことは…
「え?あなたはまさか…」
冷や汗が止まらなくなる。
「あぁ、やっぱり気づいてなかったんだ。私の正式な名はルーク・ド・リンデルンだ。一応この国の王太子をやっているよ。」
「王太子殿下っっ!?!?!?!?!?」
「さっき宰相と挨拶に来てくれたときも私の顔を見向きもしてなかったものね。」
くすくすと笑う王太子殿下をよそに、私は驚きが止まらなかった。
「た、大変なご無礼を…」
「無礼なんてされてないよ。気づいてないだろうなと思って話していた私も悪いさ。ごめんね。」
「いえ、滅相もないです……」
今までどんな話をしていたかも思い出せないほどの衝撃だった。私は王太子殿下となんて約束をしてしまったんだ。
「やっぱりさっきの約束はなかったことにする?」
王太子殿下はオロオロとする私に気づき、提案してくれる。
絶対に断ったほうがいいとは頭では理解している。
でも…
「やっぱりまだ見ぬ王宮のお料理を食べてみたいです。」
「そうか、良かった。断られたら強硬手段に出るところだった。」
「え?」
「なんでもないよ。」
よく聞こえなかったが、絶対よくないことを言っていた気がする。
けど聞ける雰囲気でもないからやめよう。
「じゃあ話を続けよう。先程言ったようにこのあとの婚約発表で、君を指名するから出てきてほしい。婚約指名のやり方は知ってる?」
「はい。」
婚約指名とは王族にのみ存在する指名されたら絶対に断れない儀式のことである。ただ、大体は事前にお互いに話を通し当日お互いの名を名乗り合う儀式をするだけである。
「なら良かった。指名を終わったあとは君の両親や陛下と話す場をつくられると思う。君はそこで私の隣にいて話を合わせてくれるだけでいい。あとは私に任せてくれていいよ。」
「わかりました。」
「その後は、手紙を送るから、予定を調整して王宮に来てくれたらいい。厨房に案内するよ。そのあとは一緒にお茶をしてくれると周りに疑われないかな。」
「わかりました。期限はいつまでですか?」
「そうだなあ。正式な婚約が決まるまではどう?」
正式な婚約?
殿下は今婚約したくないだけで婚約したい相手はいるのかしら。
もしかしたら、今日は来ていないからフリをするだけかも。
それならそんなに長くフリをすることもないから私の婚約にも影響はないわね。
「わかりました!早く好いた方と婚約できるよう応援しております。それまでは仮初の婚約者として精一杯頑張らせていただきます!」
「そうきたか…」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、私も全力で頑張るから、これからよろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
こうして殿下との仮初の婚約が決まった。
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