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二十億光年の面影【前編】
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まだ幼かった頃、私は奇妙な夢を見た事がある。妙にはっきりした、現実めいた夢を。
その夢を見る前日、私は道ばたで奇妙な拾い物をした。友達と遊んだ帰り道の、一人で歩いていた夕焼けの路上でのことだった。
それはビー玉のようなものだった。ちょうどビー玉くらいの大きさで、まるでビー玉のように透き通っていて、中心にだけ細い銀色の針のようなものが幾本か入っていた。夜空のような瑠璃色をしたそれは、自ら光を放っているかのように見えた。
当時私は『西風のくれた鍵』という児童書を愛読していた。アリソン・アトリー作の、人間と妖精の世界の交錯を描いた短編集だった。その中に出てくる「妖精の花嫁ポリー」という、ピクシー妖精に嫁いだ人間の少女のお話が特に気に入っていた。彼女が時々人間の世界を恋しく思い、地上にそっとピクシー達のおもちゃや宝物を置いておくというお話の結びが、とても好きだった。
――ピクシーのサファイアだ。
私はそう思って嬉しくなった。そしてその『宝石』をスカートのポケットに入れた。
今にして思えば、それは単なるビー玉だったのだろう。翌朝見つけられなくなったのも、単にどこかに転がっていてしまっただけだったのだろう。けれども私はその晩に見た夢のせいで、その玉はピクシー妖精の宝玉もかくやという貴重な品だったと長らく信ずる事になった。
私は帰宅すると新しい宝物を大事にしまい込んでから両親と一緒に夕飯を食べ、お風呂に入り、眠りについた。そしてその晩遅く、こつこつと窓を叩く音で私は目を覚ました。
当時私は既に自分専用の部屋を貰っていて、部屋には私しか居なかった。一人ぼっちの部屋で私は目を覚まし、眠い目を擦りながら窓の外を見た。そこで一気に眠気が吹き飛んだ。二階である筈の窓の外に、どう見ても人間ではない者が立っていたからだ。
その生き物は人間とそんなには変わらない姿をしていた。ただ額にも三つ目の目があって、手の指が六本あって、耳がとんがっていて、肌が緑色で、髪の毛がない以外には。爪先から首元までを覆う黄色い服を着ていて、小脇に望遠鏡のようなものを挟んでいた。子供だった私よりは大きく、父や母ほどには背が高くなかった。
――ピクシーが宝石を取り返しにきた。
咄嗟に思ったのはそれだった。事実、その正体はピクシーではなかったものの、用件は私の思った通りだった。
「こんばんは」
「……こんばんは」
思うより柔らかな声でピクシーは挨拶をした。警戒しながら私は挨拶を返した。両親の部屋へいつでも逃げていけるよう、じりじりと立ち上がりながらではあったけれど。
「怖がらせるつもりじゃなかったんだ。すまないね」
そのピクシーは優しい、穏やかな声をしていた。声には少し音楽的な響きが混じっていた。その声音が、少しだけ私の恐怖と警戒を解きほぐした。
「なにかご用があるんでしょ?」
「良く分かるね。君は賢い子だね」
問い掛けると、ピクシーはにっこり笑った。そして言った。
「君が拾ったものを返してほしいんだ」
――ああ、やっぱり。
私が思ったのはそれだけだった。『西風のくれた鍵』には少年がピクシー妖精の宝物を拾って家に持ち帰り、夜にピクシー妖精がそれを取り返しにくる話もあったから。
そして少しわくわくし始めた。自分が物語の主人公になった気がした。そんな私の表情をどう読みといたのか、ピクシーは更に言葉を続けた。
「とても大切なものなんだ。あれがないと、私は面影を追いかけていけないんだ」
「オモカゲ?」
知らない言葉に私は首を傾げた。ピクシーの飼い犬のオモカゲちゃんが家出してしまったのかと考えた。
私は動物を飼った経験はなかったけれど、犬や猫や小鳥に家出されて泣いている友達を見た事はあった。だからピクシーの事が気の毒になり始めた。
「そんなにだいじなものなの?」
「ああ。自転や公転を計算して、誤差を修正してくれるんだ」
「う、ん……?」
知らない言葉ばかりが飛び出して、私は混乱した。分かったのは、あの宝石が何かを計算する道具なのだと言う事だけだった。
「よくわからないけど、すごくだいじなんだね?」
「ああ。私の大事な人の面影を見せてくれるんだ。あれがないと、どこまで行っても見えないんだ」
宝石があれば見えるというのがどういう事なのかは分からなかったが、ピクシーの穏やかな声には必死さが混じっていた。私は返す代わりに何かをくれと頼むこともきっとできたのだろう。けれどそんなことは思いもかけないほどに、ピクシーの表情と声は必死だった。
「分かった、返す」
「ありがとう!」
私はベッドを降りて勉強机の前へ行った。引き出しを開け、「宝箱」にしている箱を開け、あの宝石を取り出す。暗い部屋の中で、私の手の中で、宝石は夜空の瑠璃色に光っていた。
ピクシーに宝石を手渡すために窓を開けようとして初めて気付いたが、私達はずっと窓硝子越しに会話をしていた。それなりに厚みがある筈の板硝子を通しても、ピクシーの声は頭に直接響くように明瞭に聞こえていた。いや、事実そうだったのかもしれない。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう!」
私の差し出した宝石をピクシーは大切そうに受け取った。そして小脇に抱えていた望遠鏡のようなものを持ち直し、その一部凹んだ箇所に嵌め込んだ。一連の動作を興味津々で見ている私に気付き、ピクシーは笑った。
「見てみるかい?」
「うん、見たい」
私が頷くとピクシーは足下を見て、望遠鏡を持っていない方の手で何か小さな機械を操作した。それから、私に窓から出てくるように言った。
窓から身を乗り出してピクシーの足下を見ると、何メートルも下にある地面から完全に独立して、円形の足場が広がっていた。薄桃色にうっすらと光る、ちょうどピクシーと私が並んで立つのに充分なほどの広さの足場だった。
私はこわごわ窓枠を乗り越え、ピクシーに手助けされながらその隣に降り立った。靴も靴下も履いていない足の下で、足場は柔らかくも固くも冷たくも温かくもない不思議な感触で私を受け止めた。
私がおっかなびっくり一人で立つと、ピクシーは望遠鏡を空へ向けて脇にあるボタンやねじを幾度か触った。それから「よし」と呟いて、私に望遠鏡を渡してくれた。
「それで空を見てごらん。方角はどうでも構わないから」
「わかった」
私は頷くと、空に向けた望遠鏡に右目を当てて左目を瞑った。初めはぼんやりと、霞がかったようにしか見えなかった。だが暫く見つめていると、不意に対象物がはっきりと目に飛び込んできた。
隣に立っているピクシーとよく似た別のピクシーが、手を振っていた。にこやかに、親しげに、愛おしげに、微笑みをたたえて。その口は何かを言っているように動いていたが、私には何も聞こえず、唇の動きを読む事も私には出来なかった。
私は望遠鏡から目を離した。それをピクシーに返しながら尋ねる。
「この人がオモカゲさん?」
「いや、そうじゃないよ」
望遠鏡を大切そうに受け取りながら、ピクシーは笑った。今更になった説明を加えてくれる。
「面影というのは、思い出の事だよ。思い出の中にある姿の事だよ」
「じゃあ、この人は今どこにいるの?」
私が尋ねると、ピクシーは笑顔のままでくしゃりと顔を歪めた。ひどく悲しげな眼だった。
「もういないんだよ」
受け取った望遠鏡を空へ向けながら、ピクシーはそれだけ言った。望遠鏡を覗き込みながら、私と目を合わせないまま、言葉を続ける。
「この人はもう、宇宙の果てまで探しても、どこにもいないんだよ」
死んじゃったの? とは聞けなかった。その寂しげな横顔にかける言葉が見つからず、私は所在なくピクシーを見ていた。
私もピクシーも何も言わないままで時間が過ぎた。ピクシーは望遠鏡で夜空を見上げたまま、私はその横顔を見上げたまま、じっと立っていた。
不意に、ピクシーの閉じた二つの目の端で何かがきらりと光った。あ、と思う間もなく、それは光る筋となって流れ落ちた。
三つの目玉から緑色の涙を流しながら、ピクシーはいつまでも望遠鏡を覗き込んでいた。何も言わず、望遠鏡越しの面影に見入っていた。
「だいじょうぶ?」
「ああ。ありがとう」
おそるおそる声を掛けると、ピクシーはようやく我に返ったように望遠鏡から目を離した。私を見下ろして、涙を拭いながらにっこりと笑う。哀しげな笑顔だった。
「もう、君は眠らないとね。明日という日もある」
「……そうだね」
言外に別れを告げられて、私は名残惜しい気持ちで頷いた。涙を見たせいだろうか、私はこのピクシーに親近感のような気持ちを抱いていて、別れがたい気分だった。
私を抱き上げてベッドの上へ戻してくれたピクシーは、緑色の涙の筋の残る顔で、紫色に充血した目を細めて微笑んだ。
「いつか追いかけたい面影が出来たら、私を呼ぶと良い。今日のお礼に、君の気が済むまで面影を追いかけてあげるよ」
「また会えるの?」
ぱっと顔を輝かせた私に、ピクシーは「君が本当に望むならね」と微笑んだ。
「枕元に、この色の布を置いて眠りなさい。見つけられるように、私は君のことも見ている事にするから」
黄色い服の襟元をつまんで引っ張って見せながら、ピクシーはそう言った。黄色い布を枕元にと、私は胸に刻み込んだ。
「でも、いいの? オモカゲを見てなくて」
「ああ、大丈夫」
私が気を遣ってみせると、ピクシーは微笑んで頷いた。なんでもないことのように、けれど微かな痛みを滲ませる声で答えた。
「この星の時間で十年もすれば、私はもう面影に追いつけなくなってしまうから」
ピクシーはそう言って寂しそうに笑った。
そんな妙ちきりんな夢の事なんて、ずっと忘れていた。ごくごく稀に、SF映画や今までに見た奇妙な夢のことが話題になった時に、ふと思い出す程度のものだった。
それをはっきりと思い出したのは、私にも追いかけたい面影が現れたからだ。宇宙の果てまでも追いかけてもう一度会いたい面影が、今の私にはあるからだ。
私の恋人が酒気帯び運転の車にはねられて、呆気なく他界した。即死だった。
私は茫然としながら通夜に出席し、葬儀に参列し、火葬場で彼の骨を拾った。涙も出なかった。泣けない私を、彼の母親は泣きながら抱き締めてくれた。
私は茫然としたまま家に帰り、お清めの塩をまき、自室へ戻った。そして呆然としたまま、ピクシーとのあの約束を思い出した。
まさに今こそ、面影を追いかけたい時だ。あのピクシーがしていたように、面影を追いかけて宇宙の果てまでも行きたい時だ。わずかの間だけでも、一瞬だけでも、彼の面影に会えるならば私はどこまででも行く。
私は真っ黄色のハンカチを箪笥から探し出して枕元に置き、そして寝床に入った。思った以上に疲れていたのか眠りはすぐに訪れた。
いつの間にやってきたのだろう。私は見知らぬ部屋の中に居た。
ほぼ真円の部屋の中で、私はあのピクシーと向かい合って座っていた。窓の外には暗い宇宙が星を散りばめて果てしなく広がっていた。
「何年ぶりだろうね」
ピクシーはそういって、懐かしそうに笑った。記憶の中のそれと同じ、寂しさが滲んでいる笑顔だった。
ああ、この人は今も寂しいんだ。そう思いながら、私も笑顔を返した。そうしたつもりだった。だがピクシーは心配そうに眉を寄せたから、私は上手く笑えていなかったのかもしれない。
「君も、大事な人を亡くしたんだね」
そう言いながら、ピクシーは苦しそうな顔をした。まだ癒えぬ傷が痛むように。
だがすぐに、ピクシーは表情を切り替えて立ち上がった。どうやらこの宇宙船の運転席らしい、計器やボタンが並んでいる部屋の隅の一角へと歩いて行く。
「じゃあ、早速出かけようか。朝になっても君が目覚めなかったら、君の家族が心配する」
「『目覚めなかったら』? 私、ここにいるよ?」
私が聞きとがめると、ピクシーはああと笑った。
「君は君の体ごとここにいる訳じゃないんだ。君の精神だけがこの船に乗り込んでいるんだよ。君の体は君の家で、君が戻るまで眠っているよ」
「へえ」
そんな事も出来るのかと、私は頭の片隅でだけ感心した。頭の大部分は早く彼の面影に会いたいと急かしていたが、頭の片隅はピクシーのもつ技術に感心していた。
ピクシーが慣れた様子で何か操作すると、宇宙船は初めはゆっくりと、次第にスピードを上げて動き出した。窓の外の星々が一瞬の煌めきとなって瞬く間に消えて行く。
私は座っていた椅子から立ち上がり、ピクシーの傍へいった。空いていた隣の椅子に座り直すと、ピクシーは私を見て笑った。
「私は元々宇宙飛行士だったんだ。この宇宙船で、あちこちへ行ったよ」
懐かしむように三つの目を細め、ピクシーはそう言った。
「この宇宙船は光よりも速く動けるから、面影を追い越して待ち受ける事が出来るんだ」
「そうなんだ」
それはきっととてもすごい事なのだろうと、私はまた頭の片隅でだけ思った。暫くの間、私もピクシーも何も言わなかった。沈黙が宇宙船の中に満ちていた。やがてピクシーが口を開いた。
「とりあえず、ここで降りてみよう」
ピクシーは独り言のように呟き、また計器を操作した。 白く光っていた窓の外が徐々に茶色っぽくなってくる。窓の外に風景が現れる。
紫色の虚空の中を、宇宙船はゆっくりと下降して行く。やがて小さな揺れとともに静止した。
「さあ、降りよう」
「うん」
立ち上がりながらピクシーが計器をまた操作すると、部屋の隅の床の一部が開いた。
赤茶けた荒野が一面に広がっていた。ひどく殺風景な場所に見えた。
「この望遠鏡は、宇宙飛行士が地上の家族とやり取りするために開発されたんだ」
地面に三脚を据え付けながらピクシーはそう説明した。
「地上の家族が空に向かってメッセージを送る。宇宙飛行士は遠くでその光を、この望遠鏡で捕らえる事が出来る。望遠鏡が自動的に、見たい人の姿を探し出してくれる」
望遠鏡を三脚の上に据え付けたピクシーは、角度を少し調整してから私を振り返った。
「さあ、見てごらん」
私は頷き、ピクシーが体を横にずらしてあけた場所へ立った。あの幼かった頃とは全く異なる期待で胸を躍らせながら、望遠鏡を覗き込んだ。けれど望遠鏡を覗き込んでも、靄がかかったようになっていて何も見えなかった。
「面影を探したい人を思い浮かべながら、このねじを回してごらん」
ピクシーはそう指示しながら私の手を取り、望遠鏡の脇についているねじの一つに触れさせた。燃えるように熱い手だった。
私は言われた通り、恋人の笑顔を思い出しながらゆっくりとねじを回した。ぼやけていた視界に徐々にピントが合ってくる。そして完全に焦点が合ったとき、私は息を呑んだ。
彼が居た。生きて、笑って、『私』の隣に居た。
服装から推し量るに、それは最後のデートの日の光景だった。彼がその帰り道に事故に遭った、最悪の日の光景だった。
レンズの向こうで彼と『私』は笑っていた。自分がその晩命を落とすとは、隣に居る人をもうすぐ喪うなどとは、考えてもみない二つの笑顔で。
――帰らないで。あの道を通らないで。
私の必死の願いなどつゆ知らず、レンズの向こうの彼と『私』は楽しげに談笑している。その日最後に入ったバーで隣り合わせにグラスを傾けている彼と『私』には、レンズ越しに二人を見ている私の願いは届かない。
『じゃあ、また来週』
『ああ。寝る前に電話するから』
『うん、じゃあね』
それが最後の会話だった事を覚えている。その夜に掛かってきた電話は彼の声ではなくて、涙に濡れた彼の母親の声で私に彼の死を告げた。
――帰らないで。
私の声にならない祈りは届かない。二人はやがてグラスを空にして立ち上がってしまった。
――彼を引き止めて。
何も知らずに暢気に笑っている『私』の事が憎かった。一分でも十秒でも『私』が彼を引き止めてさえくれれば彼は死なずに済むのに、それを伝えられない私の事が憎かった。私と彼との間に広がる距離と時間が、その断絶が憎かった。
彼は『私』が電車に乗るのを見送ると、自分も電車に乗り込んだ。
――もう間に合わない。
そう思うと涙が零れそうになった。だがせめて彼の最期を見届けようと、涙を堪えてレンズ越しの風景に集中した。
電車を降りた彼が夜道を歩き出した。刻々と彼の最期が近づいてくる。死神が彼に迫って行く。歩道を歩く彼に車が迫った。
私は咄嗟に望遠鏡から顔をもぎ離していた。後ろから私を見守っていたピクシーを振り返る。一度唇をきつく噛み締めて、それから告げた。
「もっと遠くに連れて行って」
もっと彼を見ていられる場所へ。もっと長く面影に見入っていられる場所へ。
「じゃあ、行こうか」
私の言葉を予期していたようにピクシーは言い、宇宙船へと足を向けた。
その夢を見る前日、私は道ばたで奇妙な拾い物をした。友達と遊んだ帰り道の、一人で歩いていた夕焼けの路上でのことだった。
それはビー玉のようなものだった。ちょうどビー玉くらいの大きさで、まるでビー玉のように透き通っていて、中心にだけ細い銀色の針のようなものが幾本か入っていた。夜空のような瑠璃色をしたそれは、自ら光を放っているかのように見えた。
当時私は『西風のくれた鍵』という児童書を愛読していた。アリソン・アトリー作の、人間と妖精の世界の交錯を描いた短編集だった。その中に出てくる「妖精の花嫁ポリー」という、ピクシー妖精に嫁いだ人間の少女のお話が特に気に入っていた。彼女が時々人間の世界を恋しく思い、地上にそっとピクシー達のおもちゃや宝物を置いておくというお話の結びが、とても好きだった。
――ピクシーのサファイアだ。
私はそう思って嬉しくなった。そしてその『宝石』をスカートのポケットに入れた。
今にして思えば、それは単なるビー玉だったのだろう。翌朝見つけられなくなったのも、単にどこかに転がっていてしまっただけだったのだろう。けれども私はその晩に見た夢のせいで、その玉はピクシー妖精の宝玉もかくやという貴重な品だったと長らく信ずる事になった。
私は帰宅すると新しい宝物を大事にしまい込んでから両親と一緒に夕飯を食べ、お風呂に入り、眠りについた。そしてその晩遅く、こつこつと窓を叩く音で私は目を覚ました。
当時私は既に自分専用の部屋を貰っていて、部屋には私しか居なかった。一人ぼっちの部屋で私は目を覚まし、眠い目を擦りながら窓の外を見た。そこで一気に眠気が吹き飛んだ。二階である筈の窓の外に、どう見ても人間ではない者が立っていたからだ。
その生き物は人間とそんなには変わらない姿をしていた。ただ額にも三つ目の目があって、手の指が六本あって、耳がとんがっていて、肌が緑色で、髪の毛がない以外には。爪先から首元までを覆う黄色い服を着ていて、小脇に望遠鏡のようなものを挟んでいた。子供だった私よりは大きく、父や母ほどには背が高くなかった。
――ピクシーが宝石を取り返しにきた。
咄嗟に思ったのはそれだった。事実、その正体はピクシーではなかったものの、用件は私の思った通りだった。
「こんばんは」
「……こんばんは」
思うより柔らかな声でピクシーは挨拶をした。警戒しながら私は挨拶を返した。両親の部屋へいつでも逃げていけるよう、じりじりと立ち上がりながらではあったけれど。
「怖がらせるつもりじゃなかったんだ。すまないね」
そのピクシーは優しい、穏やかな声をしていた。声には少し音楽的な響きが混じっていた。その声音が、少しだけ私の恐怖と警戒を解きほぐした。
「なにかご用があるんでしょ?」
「良く分かるね。君は賢い子だね」
問い掛けると、ピクシーはにっこり笑った。そして言った。
「君が拾ったものを返してほしいんだ」
――ああ、やっぱり。
私が思ったのはそれだけだった。『西風のくれた鍵』には少年がピクシー妖精の宝物を拾って家に持ち帰り、夜にピクシー妖精がそれを取り返しにくる話もあったから。
そして少しわくわくし始めた。自分が物語の主人公になった気がした。そんな私の表情をどう読みといたのか、ピクシーは更に言葉を続けた。
「とても大切なものなんだ。あれがないと、私は面影を追いかけていけないんだ」
「オモカゲ?」
知らない言葉に私は首を傾げた。ピクシーの飼い犬のオモカゲちゃんが家出してしまったのかと考えた。
私は動物を飼った経験はなかったけれど、犬や猫や小鳥に家出されて泣いている友達を見た事はあった。だからピクシーの事が気の毒になり始めた。
「そんなにだいじなものなの?」
「ああ。自転や公転を計算して、誤差を修正してくれるんだ」
「う、ん……?」
知らない言葉ばかりが飛び出して、私は混乱した。分かったのは、あの宝石が何かを計算する道具なのだと言う事だけだった。
「よくわからないけど、すごくだいじなんだね?」
「ああ。私の大事な人の面影を見せてくれるんだ。あれがないと、どこまで行っても見えないんだ」
宝石があれば見えるというのがどういう事なのかは分からなかったが、ピクシーの穏やかな声には必死さが混じっていた。私は返す代わりに何かをくれと頼むこともきっとできたのだろう。けれどそんなことは思いもかけないほどに、ピクシーの表情と声は必死だった。
「分かった、返す」
「ありがとう!」
私はベッドを降りて勉強机の前へ行った。引き出しを開け、「宝箱」にしている箱を開け、あの宝石を取り出す。暗い部屋の中で、私の手の中で、宝石は夜空の瑠璃色に光っていた。
ピクシーに宝石を手渡すために窓を開けようとして初めて気付いたが、私達はずっと窓硝子越しに会話をしていた。それなりに厚みがある筈の板硝子を通しても、ピクシーの声は頭に直接響くように明瞭に聞こえていた。いや、事実そうだったのかもしれない。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう!」
私の差し出した宝石をピクシーは大切そうに受け取った。そして小脇に抱えていた望遠鏡のようなものを持ち直し、その一部凹んだ箇所に嵌め込んだ。一連の動作を興味津々で見ている私に気付き、ピクシーは笑った。
「見てみるかい?」
「うん、見たい」
私が頷くとピクシーは足下を見て、望遠鏡を持っていない方の手で何か小さな機械を操作した。それから、私に窓から出てくるように言った。
窓から身を乗り出してピクシーの足下を見ると、何メートルも下にある地面から完全に独立して、円形の足場が広がっていた。薄桃色にうっすらと光る、ちょうどピクシーと私が並んで立つのに充分なほどの広さの足場だった。
私はこわごわ窓枠を乗り越え、ピクシーに手助けされながらその隣に降り立った。靴も靴下も履いていない足の下で、足場は柔らかくも固くも冷たくも温かくもない不思議な感触で私を受け止めた。
私がおっかなびっくり一人で立つと、ピクシーは望遠鏡を空へ向けて脇にあるボタンやねじを幾度か触った。それから「よし」と呟いて、私に望遠鏡を渡してくれた。
「それで空を見てごらん。方角はどうでも構わないから」
「わかった」
私は頷くと、空に向けた望遠鏡に右目を当てて左目を瞑った。初めはぼんやりと、霞がかったようにしか見えなかった。だが暫く見つめていると、不意に対象物がはっきりと目に飛び込んできた。
隣に立っているピクシーとよく似た別のピクシーが、手を振っていた。にこやかに、親しげに、愛おしげに、微笑みをたたえて。その口は何かを言っているように動いていたが、私には何も聞こえず、唇の動きを読む事も私には出来なかった。
私は望遠鏡から目を離した。それをピクシーに返しながら尋ねる。
「この人がオモカゲさん?」
「いや、そうじゃないよ」
望遠鏡を大切そうに受け取りながら、ピクシーは笑った。今更になった説明を加えてくれる。
「面影というのは、思い出の事だよ。思い出の中にある姿の事だよ」
「じゃあ、この人は今どこにいるの?」
私が尋ねると、ピクシーは笑顔のままでくしゃりと顔を歪めた。ひどく悲しげな眼だった。
「もういないんだよ」
受け取った望遠鏡を空へ向けながら、ピクシーはそれだけ言った。望遠鏡を覗き込みながら、私と目を合わせないまま、言葉を続ける。
「この人はもう、宇宙の果てまで探しても、どこにもいないんだよ」
死んじゃったの? とは聞けなかった。その寂しげな横顔にかける言葉が見つからず、私は所在なくピクシーを見ていた。
私もピクシーも何も言わないままで時間が過ぎた。ピクシーは望遠鏡で夜空を見上げたまま、私はその横顔を見上げたまま、じっと立っていた。
不意に、ピクシーの閉じた二つの目の端で何かがきらりと光った。あ、と思う間もなく、それは光る筋となって流れ落ちた。
三つの目玉から緑色の涙を流しながら、ピクシーはいつまでも望遠鏡を覗き込んでいた。何も言わず、望遠鏡越しの面影に見入っていた。
「だいじょうぶ?」
「ああ。ありがとう」
おそるおそる声を掛けると、ピクシーはようやく我に返ったように望遠鏡から目を離した。私を見下ろして、涙を拭いながらにっこりと笑う。哀しげな笑顔だった。
「もう、君は眠らないとね。明日という日もある」
「……そうだね」
言外に別れを告げられて、私は名残惜しい気持ちで頷いた。涙を見たせいだろうか、私はこのピクシーに親近感のような気持ちを抱いていて、別れがたい気分だった。
私を抱き上げてベッドの上へ戻してくれたピクシーは、緑色の涙の筋の残る顔で、紫色に充血した目を細めて微笑んだ。
「いつか追いかけたい面影が出来たら、私を呼ぶと良い。今日のお礼に、君の気が済むまで面影を追いかけてあげるよ」
「また会えるの?」
ぱっと顔を輝かせた私に、ピクシーは「君が本当に望むならね」と微笑んだ。
「枕元に、この色の布を置いて眠りなさい。見つけられるように、私は君のことも見ている事にするから」
黄色い服の襟元をつまんで引っ張って見せながら、ピクシーはそう言った。黄色い布を枕元にと、私は胸に刻み込んだ。
「でも、いいの? オモカゲを見てなくて」
「ああ、大丈夫」
私が気を遣ってみせると、ピクシーは微笑んで頷いた。なんでもないことのように、けれど微かな痛みを滲ませる声で答えた。
「この星の時間で十年もすれば、私はもう面影に追いつけなくなってしまうから」
ピクシーはそう言って寂しそうに笑った。
そんな妙ちきりんな夢の事なんて、ずっと忘れていた。ごくごく稀に、SF映画や今までに見た奇妙な夢のことが話題になった時に、ふと思い出す程度のものだった。
それをはっきりと思い出したのは、私にも追いかけたい面影が現れたからだ。宇宙の果てまでも追いかけてもう一度会いたい面影が、今の私にはあるからだ。
私の恋人が酒気帯び運転の車にはねられて、呆気なく他界した。即死だった。
私は茫然としながら通夜に出席し、葬儀に参列し、火葬場で彼の骨を拾った。涙も出なかった。泣けない私を、彼の母親は泣きながら抱き締めてくれた。
私は茫然としたまま家に帰り、お清めの塩をまき、自室へ戻った。そして呆然としたまま、ピクシーとのあの約束を思い出した。
まさに今こそ、面影を追いかけたい時だ。あのピクシーがしていたように、面影を追いかけて宇宙の果てまでも行きたい時だ。わずかの間だけでも、一瞬だけでも、彼の面影に会えるならば私はどこまででも行く。
私は真っ黄色のハンカチを箪笥から探し出して枕元に置き、そして寝床に入った。思った以上に疲れていたのか眠りはすぐに訪れた。
いつの間にやってきたのだろう。私は見知らぬ部屋の中に居た。
ほぼ真円の部屋の中で、私はあのピクシーと向かい合って座っていた。窓の外には暗い宇宙が星を散りばめて果てしなく広がっていた。
「何年ぶりだろうね」
ピクシーはそういって、懐かしそうに笑った。記憶の中のそれと同じ、寂しさが滲んでいる笑顔だった。
ああ、この人は今も寂しいんだ。そう思いながら、私も笑顔を返した。そうしたつもりだった。だがピクシーは心配そうに眉を寄せたから、私は上手く笑えていなかったのかもしれない。
「君も、大事な人を亡くしたんだね」
そう言いながら、ピクシーは苦しそうな顔をした。まだ癒えぬ傷が痛むように。
だがすぐに、ピクシーは表情を切り替えて立ち上がった。どうやらこの宇宙船の運転席らしい、計器やボタンが並んでいる部屋の隅の一角へと歩いて行く。
「じゃあ、早速出かけようか。朝になっても君が目覚めなかったら、君の家族が心配する」
「『目覚めなかったら』? 私、ここにいるよ?」
私が聞きとがめると、ピクシーはああと笑った。
「君は君の体ごとここにいる訳じゃないんだ。君の精神だけがこの船に乗り込んでいるんだよ。君の体は君の家で、君が戻るまで眠っているよ」
「へえ」
そんな事も出来るのかと、私は頭の片隅でだけ感心した。頭の大部分は早く彼の面影に会いたいと急かしていたが、頭の片隅はピクシーのもつ技術に感心していた。
ピクシーが慣れた様子で何か操作すると、宇宙船は初めはゆっくりと、次第にスピードを上げて動き出した。窓の外の星々が一瞬の煌めきとなって瞬く間に消えて行く。
私は座っていた椅子から立ち上がり、ピクシーの傍へいった。空いていた隣の椅子に座り直すと、ピクシーは私を見て笑った。
「私は元々宇宙飛行士だったんだ。この宇宙船で、あちこちへ行ったよ」
懐かしむように三つの目を細め、ピクシーはそう言った。
「この宇宙船は光よりも速く動けるから、面影を追い越して待ち受ける事が出来るんだ」
「そうなんだ」
それはきっととてもすごい事なのだろうと、私はまた頭の片隅でだけ思った。暫くの間、私もピクシーも何も言わなかった。沈黙が宇宙船の中に満ちていた。やがてピクシーが口を開いた。
「とりあえず、ここで降りてみよう」
ピクシーは独り言のように呟き、また計器を操作した。 白く光っていた窓の外が徐々に茶色っぽくなってくる。窓の外に風景が現れる。
紫色の虚空の中を、宇宙船はゆっくりと下降して行く。やがて小さな揺れとともに静止した。
「さあ、降りよう」
「うん」
立ち上がりながらピクシーが計器をまた操作すると、部屋の隅の床の一部が開いた。
赤茶けた荒野が一面に広がっていた。ひどく殺風景な場所に見えた。
「この望遠鏡は、宇宙飛行士が地上の家族とやり取りするために開発されたんだ」
地面に三脚を据え付けながらピクシーはそう説明した。
「地上の家族が空に向かってメッセージを送る。宇宙飛行士は遠くでその光を、この望遠鏡で捕らえる事が出来る。望遠鏡が自動的に、見たい人の姿を探し出してくれる」
望遠鏡を三脚の上に据え付けたピクシーは、角度を少し調整してから私を振り返った。
「さあ、見てごらん」
私は頷き、ピクシーが体を横にずらしてあけた場所へ立った。あの幼かった頃とは全く異なる期待で胸を躍らせながら、望遠鏡を覗き込んだ。けれど望遠鏡を覗き込んでも、靄がかかったようになっていて何も見えなかった。
「面影を探したい人を思い浮かべながら、このねじを回してごらん」
ピクシーはそう指示しながら私の手を取り、望遠鏡の脇についているねじの一つに触れさせた。燃えるように熱い手だった。
私は言われた通り、恋人の笑顔を思い出しながらゆっくりとねじを回した。ぼやけていた視界に徐々にピントが合ってくる。そして完全に焦点が合ったとき、私は息を呑んだ。
彼が居た。生きて、笑って、『私』の隣に居た。
服装から推し量るに、それは最後のデートの日の光景だった。彼がその帰り道に事故に遭った、最悪の日の光景だった。
レンズの向こうで彼と『私』は笑っていた。自分がその晩命を落とすとは、隣に居る人をもうすぐ喪うなどとは、考えてもみない二つの笑顔で。
――帰らないで。あの道を通らないで。
私の必死の願いなどつゆ知らず、レンズの向こうの彼と『私』は楽しげに談笑している。その日最後に入ったバーで隣り合わせにグラスを傾けている彼と『私』には、レンズ越しに二人を見ている私の願いは届かない。
『じゃあ、また来週』
『ああ。寝る前に電話するから』
『うん、じゃあね』
それが最後の会話だった事を覚えている。その夜に掛かってきた電話は彼の声ではなくて、涙に濡れた彼の母親の声で私に彼の死を告げた。
――帰らないで。
私の声にならない祈りは届かない。二人はやがてグラスを空にして立ち上がってしまった。
――彼を引き止めて。
何も知らずに暢気に笑っている『私』の事が憎かった。一分でも十秒でも『私』が彼を引き止めてさえくれれば彼は死なずに済むのに、それを伝えられない私の事が憎かった。私と彼との間に広がる距離と時間が、その断絶が憎かった。
彼は『私』が電車に乗るのを見送ると、自分も電車に乗り込んだ。
――もう間に合わない。
そう思うと涙が零れそうになった。だがせめて彼の最期を見届けようと、涙を堪えてレンズ越しの風景に集中した。
電車を降りた彼が夜道を歩き出した。刻々と彼の最期が近づいてくる。死神が彼に迫って行く。歩道を歩く彼に車が迫った。
私は咄嗟に望遠鏡から顔をもぎ離していた。後ろから私を見守っていたピクシーを振り返る。一度唇をきつく噛み締めて、それから告げた。
「もっと遠くに連れて行って」
もっと彼を見ていられる場所へ。もっと長く面影に見入っていられる場所へ。
「じゃあ、行こうか」
私の言葉を予期していたようにピクシーは言い、宇宙船へと足を向けた。
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