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アルカトラズの花束【後編】
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懲罰房のなかで、私は座っていた。懲罰房の前の通路に明かりは灯されていない。ほとんど真の闇に近い暗がりで、私はじっと座っていた。
何をしてしまったから、この懲罰房に移されたのかはわからない。私は私の体の一部のように思えるほどに慣れ親しんだあの独房から引き離れて、ここにいた。
そのことに対する不満などなかった。もっとひどい待遇でもいいのにとさえ思った。私の罪は重いから。ただの懲役刑では生ぬるいほどだから。もっともっと重い懲罰を受けるべきだから。
私はそう思いながら、無意味に自分の囚人服のボタンを弄った。他にする事などない。耳が痛いほどの静けさに押し潰されそうになりながら、私はじっと座り込んでいた。不意に、静寂が破られた。
「お隣さん、元気かね?」
隣の房から声がして、私は驚いて飛び上がりそうになった。いつから隣にも人がいたのだろう。嗄れた男の声だった。
私は何秒間か茫然として、それから応えを返さなければならないと思い出した。慌てて言葉を探した。
「うん、元気だよ」
応える私の声も掠れていた。ずっと言葉を発さずに黙り込んでいて、声帯が錆び付いてしまったような声だった。私の答えに、隣人は笑ったようだった。
「そうか。元気なら、何よりだ」
「あなたは?」
「ああ、俺も元気だよ。ありがとう」
お礼を言われるようなことは何もない。私こそ、声をかけてくれたことに感謝を述べるべきだ。そう思ったが、私が言葉を発するより早く、隣人がまた声をかけてきた。
「なあ。あんた、何か望みがあるかい?」
「望み?」
鸚鵡返しに言って、私は瞬いた。隣人は急に何を言い出したのかと訝っていると、「深刻に考えなくていい」と笑いを含んだ声が被せられた。
「酒が飲みたいとか、何が食いたいとか、どこへ行きたいとか、誰かに会いたいとか、早く釈放されたいとか。小さなことでもいいんだ。あんたには、何かあるかい?」
具体例を並べられても、私にはぴんとこなかった。お酒も食べ物もいらない。行きたい場所もない。会いたい人もいない。釈放なんてされたくない。望みがあるとすれば、できるだけ長くこの監獄に収監されて、繰り返した罪を償うことだけだ。
「あなたにはあるの?」
「あるよ」
考えあぐねて問い返すと、隣人ははっきりした口調で答えた。そのままの口調で続ける。
「俺は、星が見たい」
隣人は短くそう言った。アルカトラズの独房は全て外壁から離れており、外へ続く窓はない。戸外運動は昼間だから、夜に外に出て星を見上げることもできない。隣人が望み通り星を見ることができるのは、釈放されてからのことだろう。隣人もそのことはわかっているはずだ。
「星が好きなの?」
「ああ」
問いかけると、隣人は笑みを含んだ声で答えた。いとおしむように言葉を続ける。
「星はいい。移り気な月とは違う。いつでも同じ姿で空にある。季節が巡れば同じ場所へ帰ってくる。美しくて、迷わない。夜空の道標だ」
「そうだね」
年単位で見れば星は巡っているが、ただ何の気なしに、星座を探すでもなしに見上げるならば、星空はいつも変わらない星空だ。隣人の言っているのとは違う意味でも、星は揺るがぬ姿を持っていると私は思った。
隣人の脳裏にはきっと、彼がかつて見た星空が広がっているのだろう。手を伸ばせば届きそうなほどリアルに、星々が生き生きと輝いているのだろう。それを窺わせる夢見るような声で、彼は言葉を続けた。
「俺の故郷は星がよく見えるんだ。町あかりなんかに邪魔されない。星が夜の王様だ。降り注ぐような星空を、俺は毎晩見ていた。それがどんなに貴重なものだったのか、故郷を離れて初めてわかった」
半ば独り言のような口調で、祈りのような真摯さで、隣人は言う。目を閉じて、その記憶に浸っているのかもしれない。降るような満天の星空を思い描いているのかもしれない。
暗い天井を見上げていると、私にもその星空が見えるようだった。降るような星空が。暗い夜空を埋め尽くす無数の星が。見上げているとその懐に魂まで吸われてしまいそうな、恐ろしくも美しい空が。
私は少しだけ、隣人が羨ましかった。私にはそんなふうに強く望むものも、心の拠り所にするような記憶もないから。ただ漫然と呼吸しているだけだから。ただ漠然と生きているだけだから。
私の望みはなんだろう。私は、何を望んでいるのだろう。目覚めるまで考えても、答えは出なかった。
目が覚めてから、夢の隣人の事を考えた。星が好きだなんて、その揺るがない姿が好きだなんて、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のジャベール警部のような人だ。そう思うと、顔も知らない隣人への興味と好感がいや増した。
そのミュージカルには、ジャベール警部が星に誓いを立てる場面がある。逃亡を続けるジャン・バルジャンを必ず捕らえると。必ず罪の償いをさせてやると。
私も星は好きだ。不動だからとか迷わないからとか、そういった理論立った理由はない。星に誓いを立てるわけでも、願いをかけるわけでもない。ただ、美しいその光が好きだ。
星座に詳しいわけでもない。天体望遠鏡を覗き込むわけでもない。プラネタリウムに通うわけでもない。高性能のカメラで夜空の写真を撮るわけでもない。私はただ気が向いたときに、ベランダに出て夜空を見上げてみるだけだ。帰りの遅くなった日に、家路を急ぎながらふと夜空に視線をやってみるだけだ。
その程度で星を好きだというのはおこがましいかもしれない。けれど、夜空に散らばる光の粒を眺めていると、悩みも苛立ちもその遥かな輝きに吸われていくような気がする。星は答えを教えてはくれないけれど、無言のまま私の苦悩を洗い流してくれる。何も解決していないはずなのに、心が軽くなる。
恋人の浮気の度に、私は夜空を見上げる。今度こそ別れようかと迷いながら。今回までは許そうかと悩みながら。浮気されたという怒りと悲しみは、星の光を見上げているといつの間にか激しさを失い、静かな諦めに近くなる。結局、私はいつも決断を先延ばしにして、またずるずると彼との恋人関係を継続する。それがいい事なのか悪い事なのか、私には分からない。
また、夢であの隣人に会えるだろうか。きっともう二度と会えないと、ぼんやりと確信する。けれどもしも会えたなら、また星の話を聞きたいと思った。
暗く静かな独房で、私は本を開いていた。タイトルは、『檻の中の失楽』。内容はちっとも頭に入ってこないが、格調高い文体の、美しい小説だということだけは分かった。
かつん。かつん。遠くで足音がしていた。見回りの看守だろうか。頭の隅で考えながら、私はまたページを捲った。
美しい文章が目から脳に入って、するすると素通りしていく。ちっとも身にならない読み方だが、私は文字の海にぷかぷかと浮かぶような感触を楽しんでいた。
かつん。かつん。足音がだんだん近づいてくるのを聞くともなしに聞きながら、私はページを捲り続けた。
私には運動場に出て日差しを浴びる権利はない。独房を出て図書館へ行く権利もない。だが、この本を読むことだけは許されていた。それで私は満足だった。
この独房だけで、私の世界は完結している。それで私には十分だった。
かつん。足音が私の独房のすぐ前で止まり、動かなくなった。ようやく顔を向けた私の目を、懐中電灯の眩い光が射抜いた。
「釈放だ」
影にしか見えない背の高い看守が、感情のない声で一言そう告げた。
喜びは湧いてこなかった。ただ困惑だけが私の胸を満たしていた。
出て行ってもいいのだろうか。私はまた繰り返すかもしれない。また罪を犯すかもしれない。まだ罰が足りていない。なのに、もう外へ出て行ってもいいのだろうか。座ったままの私に焦れることもなく、看守は淡々と言葉を重ねた。
「お前は赦された」
その言葉に導かれるように、私は立ち上がっていた。ためらいながら独房の扉をくぐる。独房の扉を閉めて向き直ると、看守はすでに歩き出していた。慌ててその後を追う。
看守は懐中電灯を手に前を歩いていく。私はその背中を追いかける。通り過ぎるどの独房にも、他の囚人たちの姿はなかった。ただ、粗末な寝台の上に、粗末な花が一輪ずつ転がっていた。以前にも見たことのあるようなその光景を横目に、私は殆ど小走りに看守の後をついて行った。
背の高いその看守は大股に歩いていくので、私は小走りにならないと置いていかれそうだった。暗く静まり返った監獄は迷宮のようで、私は看守を見失わないように必死だった。
「6/8」「2/10」「12/21」「9/5」......。横目に見る独房の番号が後方へ飛び去っていく。やがて独房のエリアを出て、通路を歩いて、私と看守は外へ出た。ひんやりとした外気が顔を撫でる。
満天の星空が頭上に広がっていた。星が見たいと私に漏らした虜囚を思い出す。彼もどこかでこの星を見ているだろうか。それとも、今もなおアルカトラズの壁の中にいるだろうか。空を見上げて物思いに耽っていると、看守に声をかけられた。
「餞別だ」
いつの間に独房から花を集めてきたのか、看守は花束を手にしていた。それを私の方へ差し出していた。
包み紙などない、彩りもバランスも悪い、ただ見栄えのしない花を束ねたというだけの粗末な花束。だがそれは全体として、思いの外に美しかった。私はそれを、ほとんど呆然としながら反射的に受け取っていた。
礼を言おうと顔を上げれば、初めて看守と目が合う。そのいかめしい顔を見上げて、唇を開けて、けれど私は結局何も言えずに花束を抱きしめた。看守はまた口を閉じ、港へと続く坂道を下り始めていた。あわてて私も後を追う。
坂道を下り、一度折り返して、さらに下った先に港がある。看守の懐中電灯の明かりだけを頼りに、私と看守は夜の坂道を下って行った。
港では一隻のフェリーが接岸していた。他に乗船しようとする人影はなかった。白いフェリーは夜の闇の中で静かにライトを光らせて、従順な獣のようにかすかに揺れていた。フェリーに乗り込もうとしてまたためらった私の背中に、声がかけられた。
「お前はもう、自分を殺すなよ」
看守はそう言って、私の背を押した。私は花束を抱えたまま、勢い余って数歩進んだ。気がつくと、私はすでに船の上に乗っていた。
振り返ってみても、看守の姿はもうどこにもなかった。ただ、広々とした甲板だけが広がっていた。
船はすでに港を出ていて、波を割って進んでいる。時折汽笛が夜気を裂いて鳴り響く。
波に揺られる船は揺籠に似ている。甲板のベンチに腰掛けて、私は目を閉じて花束に顔をうずめた。むせ返るような甘い香りに眩暈を覚えた。
恋人がまた浮気をした。今回発覚したのは、共通の友人からの告げ口のためだった。
私ではない女性と私の恋人が腕を組んで仲睦まじく歩いているのを見たという目撃談を突きつけると、彼はあっさりと浮気を白状した。責め立てようとした私に、彼は蕩けるような笑みを浮かべて言った。
「でも、愛してるのはお前だけだよ」
何の寝言だと、とっさに言ってやれなかった。私は愚かしくも、その言葉を聞いて嬉しいと思ってしまった。まだ彼の心は離れていないと。まだ彼の心は私の元にあると。
出鼻をくじかれた私を、彼は笑顔で抱きしめた。私はその腕を拒めなかった。振り払うことができなかった。結局また、私はわだかまる思いを抱えたままなし崩しに彼を許してしまった。
なぜまた許してしまったのかと、自分で自分が腹立たしかった。別れてしまわない理由が、私にはもうわからない。まだ彼を愛しているからなのか。浮気相手への単なる意地なのか。あるいはもはや惰性でしかないのか。
認めたくないが、恋人の浮気はもう、私たちの間では単なるスパイスに他ならなくなっているのかもしれない。それはすでに日常の中の非日常でしかなくなっていて、ただの刺激という以上の何物でもなくなっているのかもしれない。
忍耐と愛情を混同しているだけなのではないかと、私の中の冷静な声は囁きかける。こんなに我慢していることを、それほど強く彼を愛している故と錯覚しているだけなのではないかと。こんなに浮気をくりかえす恋人のことを、それほど誰からも愛される魅力的な人だと計り間違えているのではないかと。
本当はそうなのかも知れない。私には、もう分からない。不甲斐なくも、情けなくも、愛されている自信も愛している自信もない。恋人よりも浮気相手よりも、他の誰よりもそんな私自分のことが許せなかった。
彼と結婚したいかと問われれば、悩みながらも頷くことができる。プロポーズされたなら、きっとその手を取ってしまう。けれどその一番の理由は、きっと愛情ではない。きっと、法的に彼を縛り付けたいという単なる欲求に過ぎない。
けれど結婚という形に自分たちを嵌め込んだとして、果たして私は彼を信じられるのだろうか。信用して背中を預けることができるのだろうか。信頼し合って家庭を築くことができるのだろうか。
少なくとも、今のままの彼のことは、私は信じきれない。それだけは分かっていた。
私は看守にもらった花束を抱え、知らない街に佇んでいた。人の声や足音は聞こえるが、周りを見回しても私以外の誰もいない。音だけが満ちる無人の街だった。
立ち尽くしていても仕方がないと、私は歩き出した。最初に目に付いた角で曲がる。
角を曲がった途端、花束からほろりと花がこぼれた。あ、と思い、拾いあげようとする。だが、花は私の手から滑り落ちた。何度拾い上げても、私の手を拒むように零れ落ちてしまう。私はついに諦めて、花に背を向けた。
次の角を曲がると、また花が零れて落ちた。その次の角でも、またもう一輪が零れ落ちる。私はもう拾おうとさえしなかった。
角を曲がるたび、花束から花が零れ落ちていく。私の足跡のように。アルカトラズへの道標のように。
また角を曲がり終えたところで、最後の花が腕から滑り落ちた。そこには一軒の花屋があった。
私は空っぽになった腕を見下ろして、それから花屋へと近づいた。覗き込むと、店の奥では一人の老人が椅子に座って花束を作っていた。
「ごめんください」
私が声をかけると、店主は顔を上げた。眼鏡を押し上げながらじろじろと私を見て、口を開く。
「ずいぶんみすぼらしい花が来たね」
そう言われて、初めて気がついた。私はいつの間にか、一輪の花になっていた。
自分では自分の姿は見えないが、私は自分が粗末な花だと知っていた。腕の中でこぼれ落ちていったあの花束のどの花よりも、自分という花は不恰好だと。
店主は足を引きずりながら店から出てきて、私を拾い上げた。そして、店先のバケツに私を差し入れる。私はふらふらと首を振って、やがて動きを止めた。
アスファルトから照り返す陽光が、存在しないはずの私の目を射抜いた。くらりと眩暈を感じて、私は目を閉じた。
目を開けると、朝の光が私の目を射抜いた。ぱちぱちと瞬きを繰り返して、布団の中で身じろぎをして、ようやく自分が人間だったことを思い出した。
カーテンをきっちり締めていなかったのか、いつもより明るく部屋が光に満たされている。時計を見ると、ちょうどアラームの鳴る一分前だった。アラームを解除して起き上がる。いつもと同じ朝食を用意し、もそもそと咀嚼する。機械的に食事しながら、私は夢を思い返していた。
みすぼらしい花と、夢の花屋の老店主は私を呼んだ。私も自分がみすぼらしいことをよく知っていた。そう呼ばれることに反感も異論もなかった。
現実の私の容姿がどの程度なのか、私にはよくわからない。十人並み以下とまでは思いたくないが、道行く人を振り返らせるほどの美人でもないことは確かだ。
恋人の浮気相手たちは私の知っている限り、みんな少なくとも私よりは美人だ。私よりスタイルが良くて、私より整った顔立ちをしていて、声が可愛らしくて、仕草が愛らしい。彼女たちより私の方が優っているところなど、彼との付き合いの長さくらいしか私には思いつけない。
そんな私を、恋人は浮気を繰り返しながらも選び取り続けている。浮気相手を抱きしめたのと同じ腕で私を抱きしめて、浮気相手を口説いたのと同じその唇で、愛しているのは私だけだと囁く。そのことに優越感も安堵も安心も、なにひとつ私は抱けない。私の心は平穏とは程遠く、ただ不安と悲しみだけが募っていく。
いつの間にか止まっていた食事の手を再開しながら、私はため息を吐いた。私には彼しかいないのに。私には浮気なんて考えもつかないのに。彼にとっての私は、彼を取り巻く大勢の女の中の一人でしかないのだろう。ただその女達の中で、一番気心が知れているのが私だというだけで。
自分のものだとはとても言い切れない人を恋人と呼びながら、私はいつも怯えている。いつ彼から別れを切り出されるかと。いつ彼が私より美人で可愛らしくて気も会う女に出会って私を見限るかと。
いっそその前に、私から彼に別れを突きつけてやるのが一番いいのだろう。そうするだけの理由だって十分にある。なのに、どうして私はそうできないのだろう。ため息と共に私は立ち上がり、出勤するために準備を始めた。
私は花屋の店先から、通り過ぎて行く人々を見ていた。人々は私にも花屋にも目もくれず、忙しげに歩み去る。私は何も思わずにそれを見ていた。店主も何も言わずに座っていた。ふと影が差した。私が何を思う前に、低い声が降ってくる。
「また自分を殺したな」
私は顔を上げた。そこには、あの花束を私にくれた看守が立っていた。私が黙っていると、彼は顔を顰めて言葉を継ぐ。
「またアルカトラズに戻るか?」
そうさせて。その方がいい。そう答えようとしたが、声が出なかった。それでも、看守と店主には私の言いたいことがわかったようだった。二人はうなずき合い、店主が私に手を伸ばす。
その時、店にもう一人の客が入ってきた。それは私の恋人だった。彼はぐるりと店内を見回し、迷いない様子で腕を上げた。
「この花をください」
恋人はそう言って、私ではない花を指差した。私はここにいるのに。みすぼらしくても、粗末でも、私もちゃんと咲いているのに。
彼の手に指差された花は嬉しげに揺れて、一人の女性に姿を変えた。私よりずっと綺麗な、私よりずっと女の子らしい、非の打ち所のない女性だった。
声を出せない私に目もくれず、恋人は女性の手を取った。二人で仲睦まじい様子で店を出て行く。その背中を見送るしかない私に、声がかかった。
「言ってやりたいことがあるんだろう?」
そう言ったのは、店主だっただろうか。看守だっただろうか。
言いたいことはあった。きっとずっと言ってやりたかった言葉があった。
私はいつの間にか、人間に戻っていた。声が出せる。嗄れていても、錆び付いていても、今の私なら声が出る。話すことができる。だから去っていく恋人の背中を睨み据えて、私は叫んだ。
「あんたが私を選ばないなら、私だってあんたを選ばない」
そして私は覚醒した。
何をしてしまったから、この懲罰房に移されたのかはわからない。私は私の体の一部のように思えるほどに慣れ親しんだあの独房から引き離れて、ここにいた。
そのことに対する不満などなかった。もっとひどい待遇でもいいのにとさえ思った。私の罪は重いから。ただの懲役刑では生ぬるいほどだから。もっともっと重い懲罰を受けるべきだから。
私はそう思いながら、無意味に自分の囚人服のボタンを弄った。他にする事などない。耳が痛いほどの静けさに押し潰されそうになりながら、私はじっと座り込んでいた。不意に、静寂が破られた。
「お隣さん、元気かね?」
隣の房から声がして、私は驚いて飛び上がりそうになった。いつから隣にも人がいたのだろう。嗄れた男の声だった。
私は何秒間か茫然として、それから応えを返さなければならないと思い出した。慌てて言葉を探した。
「うん、元気だよ」
応える私の声も掠れていた。ずっと言葉を発さずに黙り込んでいて、声帯が錆び付いてしまったような声だった。私の答えに、隣人は笑ったようだった。
「そうか。元気なら、何よりだ」
「あなたは?」
「ああ、俺も元気だよ。ありがとう」
お礼を言われるようなことは何もない。私こそ、声をかけてくれたことに感謝を述べるべきだ。そう思ったが、私が言葉を発するより早く、隣人がまた声をかけてきた。
「なあ。あんた、何か望みがあるかい?」
「望み?」
鸚鵡返しに言って、私は瞬いた。隣人は急に何を言い出したのかと訝っていると、「深刻に考えなくていい」と笑いを含んだ声が被せられた。
「酒が飲みたいとか、何が食いたいとか、どこへ行きたいとか、誰かに会いたいとか、早く釈放されたいとか。小さなことでもいいんだ。あんたには、何かあるかい?」
具体例を並べられても、私にはぴんとこなかった。お酒も食べ物もいらない。行きたい場所もない。会いたい人もいない。釈放なんてされたくない。望みがあるとすれば、できるだけ長くこの監獄に収監されて、繰り返した罪を償うことだけだ。
「あなたにはあるの?」
「あるよ」
考えあぐねて問い返すと、隣人ははっきりした口調で答えた。そのままの口調で続ける。
「俺は、星が見たい」
隣人は短くそう言った。アルカトラズの独房は全て外壁から離れており、外へ続く窓はない。戸外運動は昼間だから、夜に外に出て星を見上げることもできない。隣人が望み通り星を見ることができるのは、釈放されてからのことだろう。隣人もそのことはわかっているはずだ。
「星が好きなの?」
「ああ」
問いかけると、隣人は笑みを含んだ声で答えた。いとおしむように言葉を続ける。
「星はいい。移り気な月とは違う。いつでも同じ姿で空にある。季節が巡れば同じ場所へ帰ってくる。美しくて、迷わない。夜空の道標だ」
「そうだね」
年単位で見れば星は巡っているが、ただ何の気なしに、星座を探すでもなしに見上げるならば、星空はいつも変わらない星空だ。隣人の言っているのとは違う意味でも、星は揺るがぬ姿を持っていると私は思った。
隣人の脳裏にはきっと、彼がかつて見た星空が広がっているのだろう。手を伸ばせば届きそうなほどリアルに、星々が生き生きと輝いているのだろう。それを窺わせる夢見るような声で、彼は言葉を続けた。
「俺の故郷は星がよく見えるんだ。町あかりなんかに邪魔されない。星が夜の王様だ。降り注ぐような星空を、俺は毎晩見ていた。それがどんなに貴重なものだったのか、故郷を離れて初めてわかった」
半ば独り言のような口調で、祈りのような真摯さで、隣人は言う。目を閉じて、その記憶に浸っているのかもしれない。降るような満天の星空を思い描いているのかもしれない。
暗い天井を見上げていると、私にもその星空が見えるようだった。降るような星空が。暗い夜空を埋め尽くす無数の星が。見上げているとその懐に魂まで吸われてしまいそうな、恐ろしくも美しい空が。
私は少しだけ、隣人が羨ましかった。私にはそんなふうに強く望むものも、心の拠り所にするような記憶もないから。ただ漫然と呼吸しているだけだから。ただ漠然と生きているだけだから。
私の望みはなんだろう。私は、何を望んでいるのだろう。目覚めるまで考えても、答えは出なかった。
目が覚めてから、夢の隣人の事を考えた。星が好きだなんて、その揺るがない姿が好きだなんて、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のジャベール警部のような人だ。そう思うと、顔も知らない隣人への興味と好感がいや増した。
そのミュージカルには、ジャベール警部が星に誓いを立てる場面がある。逃亡を続けるジャン・バルジャンを必ず捕らえると。必ず罪の償いをさせてやると。
私も星は好きだ。不動だからとか迷わないからとか、そういった理論立った理由はない。星に誓いを立てるわけでも、願いをかけるわけでもない。ただ、美しいその光が好きだ。
星座に詳しいわけでもない。天体望遠鏡を覗き込むわけでもない。プラネタリウムに通うわけでもない。高性能のカメラで夜空の写真を撮るわけでもない。私はただ気が向いたときに、ベランダに出て夜空を見上げてみるだけだ。帰りの遅くなった日に、家路を急ぎながらふと夜空に視線をやってみるだけだ。
その程度で星を好きだというのはおこがましいかもしれない。けれど、夜空に散らばる光の粒を眺めていると、悩みも苛立ちもその遥かな輝きに吸われていくような気がする。星は答えを教えてはくれないけれど、無言のまま私の苦悩を洗い流してくれる。何も解決していないはずなのに、心が軽くなる。
恋人の浮気の度に、私は夜空を見上げる。今度こそ別れようかと迷いながら。今回までは許そうかと悩みながら。浮気されたという怒りと悲しみは、星の光を見上げているといつの間にか激しさを失い、静かな諦めに近くなる。結局、私はいつも決断を先延ばしにして、またずるずると彼との恋人関係を継続する。それがいい事なのか悪い事なのか、私には分からない。
また、夢であの隣人に会えるだろうか。きっともう二度と会えないと、ぼんやりと確信する。けれどもしも会えたなら、また星の話を聞きたいと思った。
暗く静かな独房で、私は本を開いていた。タイトルは、『檻の中の失楽』。内容はちっとも頭に入ってこないが、格調高い文体の、美しい小説だということだけは分かった。
かつん。かつん。遠くで足音がしていた。見回りの看守だろうか。頭の隅で考えながら、私はまたページを捲った。
美しい文章が目から脳に入って、するすると素通りしていく。ちっとも身にならない読み方だが、私は文字の海にぷかぷかと浮かぶような感触を楽しんでいた。
かつん。かつん。足音がだんだん近づいてくるのを聞くともなしに聞きながら、私はページを捲り続けた。
私には運動場に出て日差しを浴びる権利はない。独房を出て図書館へ行く権利もない。だが、この本を読むことだけは許されていた。それで私は満足だった。
この独房だけで、私の世界は完結している。それで私には十分だった。
かつん。足音が私の独房のすぐ前で止まり、動かなくなった。ようやく顔を向けた私の目を、懐中電灯の眩い光が射抜いた。
「釈放だ」
影にしか見えない背の高い看守が、感情のない声で一言そう告げた。
喜びは湧いてこなかった。ただ困惑だけが私の胸を満たしていた。
出て行ってもいいのだろうか。私はまた繰り返すかもしれない。また罪を犯すかもしれない。まだ罰が足りていない。なのに、もう外へ出て行ってもいいのだろうか。座ったままの私に焦れることもなく、看守は淡々と言葉を重ねた。
「お前は赦された」
その言葉に導かれるように、私は立ち上がっていた。ためらいながら独房の扉をくぐる。独房の扉を閉めて向き直ると、看守はすでに歩き出していた。慌ててその後を追う。
看守は懐中電灯を手に前を歩いていく。私はその背中を追いかける。通り過ぎるどの独房にも、他の囚人たちの姿はなかった。ただ、粗末な寝台の上に、粗末な花が一輪ずつ転がっていた。以前にも見たことのあるようなその光景を横目に、私は殆ど小走りに看守の後をついて行った。
背の高いその看守は大股に歩いていくので、私は小走りにならないと置いていかれそうだった。暗く静まり返った監獄は迷宮のようで、私は看守を見失わないように必死だった。
「6/8」「2/10」「12/21」「9/5」......。横目に見る独房の番号が後方へ飛び去っていく。やがて独房のエリアを出て、通路を歩いて、私と看守は外へ出た。ひんやりとした外気が顔を撫でる。
満天の星空が頭上に広がっていた。星が見たいと私に漏らした虜囚を思い出す。彼もどこかでこの星を見ているだろうか。それとも、今もなおアルカトラズの壁の中にいるだろうか。空を見上げて物思いに耽っていると、看守に声をかけられた。
「餞別だ」
いつの間に独房から花を集めてきたのか、看守は花束を手にしていた。それを私の方へ差し出していた。
包み紙などない、彩りもバランスも悪い、ただ見栄えのしない花を束ねたというだけの粗末な花束。だがそれは全体として、思いの外に美しかった。私はそれを、ほとんど呆然としながら反射的に受け取っていた。
礼を言おうと顔を上げれば、初めて看守と目が合う。そのいかめしい顔を見上げて、唇を開けて、けれど私は結局何も言えずに花束を抱きしめた。看守はまた口を閉じ、港へと続く坂道を下り始めていた。あわてて私も後を追う。
坂道を下り、一度折り返して、さらに下った先に港がある。看守の懐中電灯の明かりだけを頼りに、私と看守は夜の坂道を下って行った。
港では一隻のフェリーが接岸していた。他に乗船しようとする人影はなかった。白いフェリーは夜の闇の中で静かにライトを光らせて、従順な獣のようにかすかに揺れていた。フェリーに乗り込もうとしてまたためらった私の背中に、声がかけられた。
「お前はもう、自分を殺すなよ」
看守はそう言って、私の背を押した。私は花束を抱えたまま、勢い余って数歩進んだ。気がつくと、私はすでに船の上に乗っていた。
振り返ってみても、看守の姿はもうどこにもなかった。ただ、広々とした甲板だけが広がっていた。
船はすでに港を出ていて、波を割って進んでいる。時折汽笛が夜気を裂いて鳴り響く。
波に揺られる船は揺籠に似ている。甲板のベンチに腰掛けて、私は目を閉じて花束に顔をうずめた。むせ返るような甘い香りに眩暈を覚えた。
恋人がまた浮気をした。今回発覚したのは、共通の友人からの告げ口のためだった。
私ではない女性と私の恋人が腕を組んで仲睦まじく歩いているのを見たという目撃談を突きつけると、彼はあっさりと浮気を白状した。責め立てようとした私に、彼は蕩けるような笑みを浮かべて言った。
「でも、愛してるのはお前だけだよ」
何の寝言だと、とっさに言ってやれなかった。私は愚かしくも、その言葉を聞いて嬉しいと思ってしまった。まだ彼の心は離れていないと。まだ彼の心は私の元にあると。
出鼻をくじかれた私を、彼は笑顔で抱きしめた。私はその腕を拒めなかった。振り払うことができなかった。結局また、私はわだかまる思いを抱えたままなし崩しに彼を許してしまった。
なぜまた許してしまったのかと、自分で自分が腹立たしかった。別れてしまわない理由が、私にはもうわからない。まだ彼を愛しているからなのか。浮気相手への単なる意地なのか。あるいはもはや惰性でしかないのか。
認めたくないが、恋人の浮気はもう、私たちの間では単なるスパイスに他ならなくなっているのかもしれない。それはすでに日常の中の非日常でしかなくなっていて、ただの刺激という以上の何物でもなくなっているのかもしれない。
忍耐と愛情を混同しているだけなのではないかと、私の中の冷静な声は囁きかける。こんなに我慢していることを、それほど強く彼を愛している故と錯覚しているだけなのではないかと。こんなに浮気をくりかえす恋人のことを、それほど誰からも愛される魅力的な人だと計り間違えているのではないかと。
本当はそうなのかも知れない。私には、もう分からない。不甲斐なくも、情けなくも、愛されている自信も愛している自信もない。恋人よりも浮気相手よりも、他の誰よりもそんな私自分のことが許せなかった。
彼と結婚したいかと問われれば、悩みながらも頷くことができる。プロポーズされたなら、きっとその手を取ってしまう。けれどその一番の理由は、きっと愛情ではない。きっと、法的に彼を縛り付けたいという単なる欲求に過ぎない。
けれど結婚という形に自分たちを嵌め込んだとして、果たして私は彼を信じられるのだろうか。信用して背中を預けることができるのだろうか。信頼し合って家庭を築くことができるのだろうか。
少なくとも、今のままの彼のことは、私は信じきれない。それだけは分かっていた。
私は看守にもらった花束を抱え、知らない街に佇んでいた。人の声や足音は聞こえるが、周りを見回しても私以外の誰もいない。音だけが満ちる無人の街だった。
立ち尽くしていても仕方がないと、私は歩き出した。最初に目に付いた角で曲がる。
角を曲がった途端、花束からほろりと花がこぼれた。あ、と思い、拾いあげようとする。だが、花は私の手から滑り落ちた。何度拾い上げても、私の手を拒むように零れ落ちてしまう。私はついに諦めて、花に背を向けた。
次の角を曲がると、また花が零れて落ちた。その次の角でも、またもう一輪が零れ落ちる。私はもう拾おうとさえしなかった。
角を曲がるたび、花束から花が零れ落ちていく。私の足跡のように。アルカトラズへの道標のように。
また角を曲がり終えたところで、最後の花が腕から滑り落ちた。そこには一軒の花屋があった。
私は空っぽになった腕を見下ろして、それから花屋へと近づいた。覗き込むと、店の奥では一人の老人が椅子に座って花束を作っていた。
「ごめんください」
私が声をかけると、店主は顔を上げた。眼鏡を押し上げながらじろじろと私を見て、口を開く。
「ずいぶんみすぼらしい花が来たね」
そう言われて、初めて気がついた。私はいつの間にか、一輪の花になっていた。
自分では自分の姿は見えないが、私は自分が粗末な花だと知っていた。腕の中でこぼれ落ちていったあの花束のどの花よりも、自分という花は不恰好だと。
店主は足を引きずりながら店から出てきて、私を拾い上げた。そして、店先のバケツに私を差し入れる。私はふらふらと首を振って、やがて動きを止めた。
アスファルトから照り返す陽光が、存在しないはずの私の目を射抜いた。くらりと眩暈を感じて、私は目を閉じた。
目を開けると、朝の光が私の目を射抜いた。ぱちぱちと瞬きを繰り返して、布団の中で身じろぎをして、ようやく自分が人間だったことを思い出した。
カーテンをきっちり締めていなかったのか、いつもより明るく部屋が光に満たされている。時計を見ると、ちょうどアラームの鳴る一分前だった。アラームを解除して起き上がる。いつもと同じ朝食を用意し、もそもそと咀嚼する。機械的に食事しながら、私は夢を思い返していた。
みすぼらしい花と、夢の花屋の老店主は私を呼んだ。私も自分がみすぼらしいことをよく知っていた。そう呼ばれることに反感も異論もなかった。
現実の私の容姿がどの程度なのか、私にはよくわからない。十人並み以下とまでは思いたくないが、道行く人を振り返らせるほどの美人でもないことは確かだ。
恋人の浮気相手たちは私の知っている限り、みんな少なくとも私よりは美人だ。私よりスタイルが良くて、私より整った顔立ちをしていて、声が可愛らしくて、仕草が愛らしい。彼女たちより私の方が優っているところなど、彼との付き合いの長さくらいしか私には思いつけない。
そんな私を、恋人は浮気を繰り返しながらも選び取り続けている。浮気相手を抱きしめたのと同じ腕で私を抱きしめて、浮気相手を口説いたのと同じその唇で、愛しているのは私だけだと囁く。そのことに優越感も安堵も安心も、なにひとつ私は抱けない。私の心は平穏とは程遠く、ただ不安と悲しみだけが募っていく。
いつの間にか止まっていた食事の手を再開しながら、私はため息を吐いた。私には彼しかいないのに。私には浮気なんて考えもつかないのに。彼にとっての私は、彼を取り巻く大勢の女の中の一人でしかないのだろう。ただその女達の中で、一番気心が知れているのが私だというだけで。
自分のものだとはとても言い切れない人を恋人と呼びながら、私はいつも怯えている。いつ彼から別れを切り出されるかと。いつ彼が私より美人で可愛らしくて気も会う女に出会って私を見限るかと。
いっそその前に、私から彼に別れを突きつけてやるのが一番いいのだろう。そうするだけの理由だって十分にある。なのに、どうして私はそうできないのだろう。ため息と共に私は立ち上がり、出勤するために準備を始めた。
私は花屋の店先から、通り過ぎて行く人々を見ていた。人々は私にも花屋にも目もくれず、忙しげに歩み去る。私は何も思わずにそれを見ていた。店主も何も言わずに座っていた。ふと影が差した。私が何を思う前に、低い声が降ってくる。
「また自分を殺したな」
私は顔を上げた。そこには、あの花束を私にくれた看守が立っていた。私が黙っていると、彼は顔を顰めて言葉を継ぐ。
「またアルカトラズに戻るか?」
そうさせて。その方がいい。そう答えようとしたが、声が出なかった。それでも、看守と店主には私の言いたいことがわかったようだった。二人はうなずき合い、店主が私に手を伸ばす。
その時、店にもう一人の客が入ってきた。それは私の恋人だった。彼はぐるりと店内を見回し、迷いない様子で腕を上げた。
「この花をください」
恋人はそう言って、私ではない花を指差した。私はここにいるのに。みすぼらしくても、粗末でも、私もちゃんと咲いているのに。
彼の手に指差された花は嬉しげに揺れて、一人の女性に姿を変えた。私よりずっと綺麗な、私よりずっと女の子らしい、非の打ち所のない女性だった。
声を出せない私に目もくれず、恋人は女性の手を取った。二人で仲睦まじい様子で店を出て行く。その背中を見送るしかない私に、声がかかった。
「言ってやりたいことがあるんだろう?」
そう言ったのは、店主だっただろうか。看守だっただろうか。
言いたいことはあった。きっとずっと言ってやりたかった言葉があった。
私はいつの間にか、人間に戻っていた。声が出せる。嗄れていても、錆び付いていても、今の私なら声が出る。話すことができる。だから去っていく恋人の背中を睨み据えて、私は叫んだ。
「あんたが私を選ばないなら、私だってあんたを選ばない」
そして私は覚醒した。
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