蛇と鏡の誰そ彼刻

水笛流羽(みずぶえ・るう)

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蛇鏡SSまとめ2(2020年5月分)

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【ヘタノヨコヅキ様お題「勘違いしたけれど」:X神】
「何だよ、お前だったの?」
「誰だと思ったんだよ?」
 よその家で寝こけておいて、本当に良い態度だ。偶には蹴り起こしてやった方が良かったかと考えていると、そいつに装束の端を引かれて。
「良い匂いがする。似合わない。」
「ほんっと、腹立つ奴だな。」
「褒めてやってるだろ。いいな、僕にも移してよ。」

【ヘタノヨコヅキ様お題「ほんの少しだけ騒がしい夜」:Q神】*第1話ラスト後(=本編終了後)
 恋人とのロマンティックな逢瀬の筈だったのに、何がどうしてこうなったのだ。
 仕方のないことではあるのだ。彼の愛猫が何を拾い食いしたのか具合が悪そうにしているのは気がかりなことではあるし、そんなことになれば彼が動物病院に行ってしまうのも致し方ない。
 致し方ないのだが、あの猫が憎らしく思えてくる。溜息を吐いた時、電話が鳴った。
『遅くにすまない。今から行ってもいいだろうか。』
「勿論だよ!」
 ほんの少しだけ騒がしい夜も、こんな結末なら悪くない。

【ヘタノヨコヅキ様お題「青くない空」:Q神】*第19話「輝く何物も永遠ではない」より前
 世界に昼と夜が代わる代わる訪れるようになってから、もうどれほど経つだろう。暮れかかる空から目を戻して足を早めた時、ぎくりと立ち止まってしまった。
 気軽な足取りで歩いているのは、夜を自分の時間と定めたらしいあの青年神だった。もっと前から起きていたのか、薬草籠を抱えて軽快に歩いている。
 こちらに気づかず、青年神は通り過ぎる。見送った時には、すでに夜が訪れていた。

〈少年神へのお題は
『雨の音』
『僕らが繋がっている理由』
『意味は…ある?』

『快晴』『不透明』『風』

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【「創作小説お題(題名提供)」様より『雨の音』:青年神】
 いつからか、雨の音がしている。ふとその事に気付いて、家の外に目を向けた。途端に少し強く突き上げられて、声が漏れる。
「く、っん、」
「集中しろよ」
 笑いながら一層激しく攻め立ててくるので、雨の音が遠ざかる。キモチヨクて、ひっきりなしに声が溢れて、もう何も考えられなくて。
 胸を締め付けた奇妙な感覚も、もう思い出せない。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『雨の音』:X神】青年神版の続き
 雨はまだ止まない。そいつもまだ目を覚まさない。雨音を聴くともなしに聴きながら、そいつの寝顔に目を向けた。
 雨などに気を取られてキモチヨクしてやっているショロトルを忘れるなど、本当にどこまでも生意気な奴だ。だから思い出させてやったし、何も考えられなくしてやった。
 あられも無く乱れよがるその顔は、気に入っていなくもない。喉の奥で笑ったとき、そいつが身動ぎをした。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『雨の音』:Q神】
 叩きつけるように降る雨に打たれながら、雨の神々の遊びを見守る。そうしながらも、またあの青年神のことを思い出していた。
 今頃どうしているだろう。雨に打たれて寒さに震えてはいないか。どこかで雨をしのいでいるだろうか。それともまた、邪悪な兄弟神との淫らな遊びに耽っているのだろうか。
 また心臓が締め付けられても、何もできはしない。この手は彼に、何もしてやれない。溜息は雨に紛れた。

5/5蛇鏡SS-1
【「創作小説お題(題名提供)」様より『僕らが繋がっている理由』:X神】
 乗り気でないのを無理に組み敷いたのは少しは悪かったかもしれない。そう思ってはいたのだが、こうも文句を言われてはこちらも意固地になる。
「ったく、うるせえ奴だな。文句あんなら、次から他の奴のとこに転がり込めよ。」
「嫌に決まってるだろ、どこも居心地悪いんだから。」
「したことあんのかよ。」
 薄々気付いていたが、こうもあっけらかんと言われると咎める気も失せる。だが勝手知ったるショロトルの家の居心地が良いらしいと分かったのは、そんなに悪い気分ではなかった。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『僕らが繋がっている理由』:青年神】X神版の続き
 そいつはなかなか帰ってこない。待たせるなんて不敬な奴だ、帰ってきたら咎めてやらなくては。そう考えながらも眠いので、半ば眠りながらそいつを待っていた。
 微睡みながら、ぼんやりと考える。そいつの傍は別に居心地よくもないのに、なぜ自分はここにくるんだろう。
 キモチいいことをするなら他の神とだっていい。けれど何度他の神と遊んでも、ついここに足が向くのだ。
 まあいいやと眠りに落ちることにした。きっと、大した理由のないことだ。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『僕らが繋がっている理由』:Q神】
 残忍で忌まわしいあの兄弟神との繋がりを、断ち切れるならばとうにやっている。けれど、対の存在であるという絆はなかなか切り落とせないのだ。
 忌々しいことに、その神は紛れもなく自分と対をなす存在で、自分の半身で。互いの存在をどんなに厭わしく思っても、断ち切ることができないのだ。
 だから、見ていることしかできずにいる。あの少年神が堕落に誘い込まれるのを、あの忌むべき手が彼を暗がりへと導くのを。

5/6蛇鏡SS-1
【「創作小説お題(題名提供)」様より『意味は…ある?』:X神】
「なんか意味あんのかよ、そんなくだらねえこと?」
「うるさいな、お前には分かんないよ。邪魔するなよ。」
 家に押しかけてきて勝手に床を占領しておいて、つくづく良い態度だ。偶には咎めてやるべきかと思った時、何かが飛んできた。
「んだよ?」
「お前、また怪我しただろ。触り心地悪いんだよ、それつけとけよ。」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『意味は…ある?』:Q神】
 そんなものに意味などないと思いたい。あの少年神が邪悪な兄弟神を選ぶことに、深い意味などないと。ただの一時の気の迷いだと、思っていたい。
 あの伸びやかな少年神にふさわしいのは、そんな薄汚れた場所ではないのだ。彼はもっと自由に、何にも縛られずに、居るべきなのだ。
 そうしないのはちょっとした悪い好奇心のためだけで、意味などないのだ。そう思っていなければ、自分は、もう。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『意味は…ある?』:少年神】
「何それ、どんな意味?」
「ほんっと、物知らずだな。」
「うるさいな、だから聞いてるんだろ。」
 早く教えてよと急かしても、そいつは意地悪く笑うばかりで教えてくれない。じゃあ良い、他の神に聞く、と立ち上がろうとした時、腕を掴んで引き戻された。
「なんだよ、離せよ。」
「教えてやるよ、カラダにな。」

5/8蛇鏡SS-1
【「創作小説お題(題名提供)」様より『快晴』:X神】
 昼と名付けられた時間の雲のない空なんて、眩しいばかりで何も良いことはない。だから眠っていたのに、身勝手なそいつに起こされた。
「んだよ、」
「したい。しようよ。」
 同意などしていないのにそいつはさっさとショロトルの腰衣を解き、まだ萎えているその部分を口に含もうとする。追い払うのも面倒で、溜息ひとつで諦めることにした。
「したけりゃ、全部やれよ。」
「分かってるよ。」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『快晴』:青年神】
 珍しく昼間に目が覚めてしまって、寝直すにも目が冴えていて。どうしようかなと考えて、そいつのところに行くことにした。
 雲ひとつない空、降り注ぐ目の眩みそうな陽射し。少しくらい手加減しろよと太陽神に毒づいて、目を細めながら歩き出した。
 空は青く、草花は鮮やかで、そよぐ風は穏やかで。昼間に起きるのもたまには悪くないと思ったので、少し回り道をすることにした。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『快晴』:Q神】
 よく晴れた美しい日だったから、少し遠くまで歩いてみた。それが間違いだったのかもしれない。
「何、見てるんだよ。またしたい?」
「っ、」
 二度と会いたくもなかったその神が嘲るように笑うから、かっとなった。気付けば、その細身の体を組み敷いていた。
「っ、はは。何だよ、図星か?」
「黙れ!」
 怒鳴りつけても、余裕の笑みは揺るがない。怒りに目が眩んで、思わず手を振り上げた。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『不透明』:X神】
 余計な気など回すものではない、こんな生意気な少年神のために何かしてやろうと思った自分が愚かだった。つくづく噛み締めていると、伸びてきた手にその石を奪われた。
「んだよ、要らねえんだろ。」
「要らないなんて言ってないだろ。透明な方が好きだけど、これも綺麗。」
 空から注ぐ光で確かめるように、手の中で宝石を転がして。そいつは、嬉しげに笑った。
「気に入った、貰っとく。」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『不透明』:少年神】X神版続き
 そいつに貰った、綺麗な石。透明ではないけれどきらきらして、鮮やかな色で、とても綺麗な宝石。
 どんな飾りを作ろうかなと楽しく考えながら眺めていると、伸びてきた手にそれを奪われてしまう。むっとして振り返った。
「なんだよ、返せよ。」
「俺のやった石だろうが。」
「でも今は僕のだろ。早く返して。」
 手を伸ばしても、ひょいと遠ざけられてしまう。そいつが、意地悪く笑って。
「どうしても返して欲しいか?」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『不透明』:Q神】少年神版続き
 他の神々の真似をしてか、宝石を磨いた飾りを身につけるようになってきたその少年神。どうやら透明な石が好きなようだと思って見ていたが、不透明な石が増え始めたのに気付いた。
 似合っていないわけではないが、妙に違和感が拭えない。水晶を思わせたあのきらきらする笑顔がまた遠ざかるようで、嫌な思いがする。
 けれど、自分にできることなど、何もないのだ。

【ひとりいちごつみ5/9-1「噛む」:X神】
 くぅっと声を漏らしたそいつが、肩に噛み付いてきた。走った小さな痛みに顔をしかめる。
「何、噛んでんだよ。ケダモノかよ。」
「る、さ、んぁ、あ、」
 反論してきた隙にまた揺さぶってやると、声を漏らしたそいつがまた歯を立ててくる。あられも無く乱れよがるのはいつものことなのに、何がしたいのか。
 けれど、その小さな痛みは気分の悪いものでは無くて。喉の奥で笑って、お返しにそいつの悦ぶ場所を擦り上げてやった。

【ひとりいちごつみ5/9-2「肩」:青年神】「噛む」続き
 そいつの肩にくっきり刻まれた歯形。何の感慨もなしに眺めていると、軽く耳を引っ張られた。
「なんだよ、痛いだろ。」
「うるせえな、噛まれる方が痛えっての。」
「知らないよ、噛まれたことないし。」
 獣たちだって自分に強く噛み付いたりしないから、噛まれたことなんてない。口を尖らせると、なら噛んでやるよと組み伏せられた。けれどいつまでも噛み付いては来ないで、その手はいやらしく腰をなぞっているから。
「なんだよ、したいなら素直に言えよな。」

【ひとりいちごつみ5/9-3「素直」:X神】「肩」続き
「ぁん、あ、ぁ、そこ、」
「っは、いつも、そーしてろよ。」
素直に声を上げるそいつは、少しは可愛げがある。笑みを漏らして、その頬を指先で擽ってやった。
「カワイくおねだりできたら、キモチヨクしてやるよ。」
囁きを吹き込んで耳を噛んでやると、ふるりと背筋を震わせる。蕩けた瞳に貪婪な期待を満たしたそいつは、甘くねだった。
「して、もっと、」

蛇鏡SS-1
【「創作小説お題(題名提供)」様より『風』:X神】
 強い風が顔に吹き付けたので、いけ好かない兄弟神のことをつい思い出してしまう。顔をしかめると、怪訝な声がかかった。
「何、変な顔してるんだよ?」
「うるせえな。お前の顔よりは変じゃねえよ。」
「何だよ、それ。」
 むくれて顔を背けた生意気な少年神だったが、すぐにまた違うことに気を引かれたらしい。目を輝かせて、装束の端を引っ張ってくる。
「ねえ、あの花は? あれはなんて名前?」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『風』:Q神】
 雨の神々の遊戯のために、雲の通り道を風で掃き清める。心得ている神々が慌てて家路を急ぎ始めるのを眺めながら、雲がやってくる前には帰り着くだろうと考えた。
 そうしながら見回した時、その姿が目に入った。骨の花のようにすんなりとした、その姿は。
 飛び跳ねたケツァルコアトルの心臓に決して気づかないその少年神は、雲のやってくる空を好奇心に満ちた瞳で見上げていた。ケツァルコアトルを振り向きもせず、ただ空に見惚れていた。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『風』:青年神】
 風が吹き始めたので、雨が近いんだなと思った。ちょうどいいなと嬉しくなる。雨の後は薬草がよく伸びるから、またたくさん集められるだろう。
 その前にどこかで雨宿りをしたほうがいいけれど、自分の家は少し遠い。どうしようかなと考えるまでもないので、そいつの家に行くことにした。
 そいつも風には妙に敏感だから、きっと家にいるんだろう。居なくても勝手に入るけれど。キモチイイことをしながら、雨の止むのを待てばいい。

【ひとりいちごつみ5/10-1「敏感」:少年神】
「く、っん、」
「はは、今日はビンカンだなあ。」
「うるさ、ぁ、ん、」
 意地悪く指摘されても、体が熱くて、勝手に声が漏れて、どうしようもない。喉の奥で笑ったそいつがまた深い場所を抉ってくるから、また声が漏れてしまう。
 満足そうに笑ったそいつが、頬っぺたに軽く爪を立ててきた。開きっぱなしの口に指を入れてきながら、また笑う。
「もっと、声聞かせろよ。」

【ひとりいちごつみ5/10-2「喉」:X神】
「あ、ぁ、んぁ、」
「はは、ヤラシい声。」
 嘲ってやっても、そいつには聞こえていないのかもしれない。あるいは、気にも留めないのか。喉を反らせて身悶えるそいつは、深く深く快楽に溺れるばかりで返事もしない。
 その曝け出される喉に軽く噛みついてみると、驚いたように体を震わせる。ショロトルを咥え込んでいる場所がきゅうっと収縮する。その快感に目を細め、薄い皮膚をべろりと舐めてやった。
「もっと締めろよ。」

【ひとりいちごつみ5/10-2「返事」:X神】
「聞こえてたなら返事くらいしろよ。座ったまま寝てたの?」
「うるせえな。」
 考え事をしている相手に話しかけるこいつの方が、邪魔で身勝手なだけだ。指摘してやるのも面倒なので、細い腰を引き寄せる。
 そいつは案外素直に身を寄せ、首に腕を回してきた。くすくすと笑う。
「なんだよ、したいの?」
「嫌だってのか?」
「お前がしたいなら、させてやってもいいよ。」

〈青年神へのお題は
『鬼ごっこ』
『三日月と金星』
『運命の輪』

『花』『春』『天の川』

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5/11蛇鏡SS-1
【「創作小説お題(題名提供)」様より『花』:X神】
 何がしたいのか、今度は花をせっせと摘み集めてきたらしい少年神。そのままショロトルの家にやってきて我が物顔で筵の上に並べているから、家の中には甘い香りが漂っている。
「何がしてえんだよ?」
「うるさいぞ、邪魔するなよ。」
 顔も上げないそいつが生意気なので、簡単に折ってしまえそうな細い腕を掴んで引き寄せた。だが組み敷く前に、するりと手の中から逃げていく。
「後で相手してやるから、邪魔するな。」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『花』:Q神】
 また、あの少年神を見かけた。色とりどりの花を籠に入れて、嬉しげに歩くその姿を。
 どんな花よりも、どんな宝石よりも、美しかったあの笑顔。あの遠い笑顔には及ばないけれど、その満足げな笑みはやはり美しかった。
 けれどその足が向かっていくのはやはり、邪悪な兄弟神の家のある方角で。何も言えず、目を向けられもせず、見送ることしか自分はできない。この手は彼に、何もしてやれない。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『花』:少年神】
 綺麗で良い香りのする花が咲いていたから、近寄ってみた。指先で突いてみると、ふわふわと揺れて花粉が零れる。
 綺麗だな、名前を知りたいな、と思ったけれど、その花の名前を聞けるような神々は誰も歩いていない。残念に思いながら身を起こした。
 今度また、あいつを連れてきて名前を尋ねれば良い。あいつは馬鹿にした笑い方をするけれど、ちゃんと教えてはくれるから。

【ひとりいちごつみ5/11-1「尋ねる」:X 神】
「今度は何やってんだよ?」
「うるさいな、関係ないだろ。」
 家に押しかけてきて床を占拠しておいて、よくそんな言葉が吐けるものだ。しかもやたらと香りの強い草ばかり集めてきているから、匂いがきつくて嫌でも目を向けてしまう。草の匂いを立てている当のそいつは全く気にならない様子で、熱心にまた別の草をすり潰し始める。
 こんな迷惑をかけられては後で組み敷いて鳴かせてやらなければ気が済まないが、こんな匂いをさせていては萎えそうだ。溜息しか出なかった。

5/13蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/11「尋ねる」より「熱心」】
 熱心にショロトルの熱を舐めしゃぶっている姿には、それなりに可愛げがある。潤んだ瞳や汗ばんだうなじにも、色香らしいものが漂っている。
 だから褒美のつもりで髪を撫でてやったのに、そいつは嫌そうに振り払って不機嫌に睨み上げてきた。その生意気な態度に苛立ったと言うよりは、征服欲を刺激されて。
「もっと舌使えよ。」
 笑って命じて、その頭を少し強く押さえつける。喉の奥で呻いたそいつは、反抗的な目をしながら舌を絡みつかせてきた。

【ひとりいちごつみ 「熱心」続き「反抗的」】
「下手だな、もっと腰使えよ。」
 咎めてやっても、反抗的な目をしたそいつは勝気に笑った。唇を皮肉に歪めた生意気な笑みを浮かべ、惚けて見せる。
「文句あるなら、自分で、動けば?」
「は。泣き言言うんじゃねえぞ。」
「ひぅ!?」
 容赦なく下から突き上げてやると、そいつが背筋を震わせて甘い悲鳴を上げる。だが、もう逃さない。許さない。
「やぅ、あ、ぁあ、ひぁ、」
「はは。ほんと、インランだなあ。」

【ひとりいちごつみ 「反抗的」続き「文句」】
「お前ほんと最悪。がっつきすぎ。疲れた、腰痛い、喉痛い、身体中痛い。」
「そんだけ喋れりゃ充分だろ。」
 嘲笑ってやると、不機嫌な顔のそいつはますます機嫌の悪い顔をした。尚も文句を並べようとするので、面倒くさくなってまた組み敷くことにする。
「何だよ。もうしないって、」
「うるせえな。もう黙れよ。」
 そう言ったところで黙る奴ではないので口を塞いでやりたいが、手の届くところに手頃なものは落ちていない。仕方なく、唇で塞いでやった。

5/14蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/13「反抗的」より「腰」】
「何だよ、したいの?」
 腰を引き寄せると、そいつは嫌がるでもなく笑った。答えるのも面倒なので、にやにや笑っている唇を自分の唇で塞ぐ。その器官は当たり前のように、ショロトルを迎え入れた。
 柔らかな舌が自分から絡みついてくる。以前よりは随分と男らしさを増している体が擦り付けられる。けれどまだ腰の線などは細いなと考えながら、その腰付きを掌で辿った。
 もどかしそうに呻いた青年神が、一層体を擦り付けてくる。喉の奥で笑い、口付けを深めてやることにした。

【ひとりいちごつみ 「腰」より「器官」】
 必要なのは、その器官だけだ。こいつ自身など別にどうだっていい。いいや、こんな生意気で不遜な青年神などいない方がマシかもしれない。
 けれどその熱く狭い器官を使うためには、それを有している青年神を少しは宥めてその気にさせなければならない。どうしようもなく面倒臭いことだが、何しろそいつの体は具合がいいのだし、悦楽に溺れる表情を気に入っていないわけではないのだ。
 だから、仕方がない。不本意ながら、多少は我慢してやろうではないか。

【ひとりいちごつみ 「器官」より「表情」】
 ありありと不機嫌を浮かべ、そいつは顔を顰めている。黙って大人しくしていれば無視もできるが、表情だけでなくばしばしとショロトルの手足を叩いてくる。仕方なく、その手を振り払いながら尋ねてやった。
「んだよ、文句あんなら言えよ。」
「文句、ないとでも、思ってんの?」
 不満げな声が掠れているのは、ショロトルのせいだけでは断じてない。こいつだって自分から欲しがってねだって散々に乱れたのだ。だというのにそれを忘れたように、その唇はぶちぶちと文句を垂れる。相手をするのも面倒になったので、その唇を唇で塞いだ。

5/15蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/14「表情」より「面倒」】
 面倒臭い奴だなと溜息を飲み込む。だが見透かされていたのか、生意気な青年神は不機嫌な目を向けてきた。
「誰のせいだと思ってるんだよ。いいから早く水汲んでこいよ。」
「分かったよ、うるせえな。」
 渋々立ち上がって装束を身につけ始める。ふんと鼻を鳴らしたそいつは、少しは機嫌が治ったようだった。早くしろよなと言いながら、寝返りを打って床に散らばる装身具を弄び始める。その指から自分のものを取り返しながら、また溜息を堪えた。

【ひとりいちごつみ 「面倒」より「機嫌」】
 そいつが機嫌の良い時は、大抵ろくなことは考えていない。だがショロトルに害のあることになるのはそれほど多くないし、機嫌の良いそいつを抱くのは悪い気分ではない。
「ねえ、しようよ。」
「は、本当、インランだなあ。」
 嘲ってやりながらも、擦り付けられる体を引き寄せてやる。淫猥な目をした青年神は機嫌よく笑い、自分からショロトルの首に腕を回して口付けをせがむ。唇を重ねてやりながら、今度はどの神が不幸になったのかと考えた。

【ひとりいちごつみ 「機嫌」より「害」】
 まあ放っておいても害はないだろう。そう結論づけたから放置してやっただけなのだが、そいつがすぐにつけ上がることを忘れていたのは自分の落ち度かもしれない。
「そこ邪魔、どけよ。」
「誰の家だと思ってんだよ?」
 言うまでもなくここはショロトルの家であり、そこに押しかけてきたのがこの青年神なのだ。間違っても追い立てられる筋合いはない。生意気なそいつに今一度立場をはっきりと分からせるべく、床に組み敷いてやることにしたのだが。
「なんだよ、邪魔するなよ。後にしろ。」

5/18蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/15「害」より「間違える」】
 どうやら読み間違えたらしいと気づいたが、まあ大したことはない。この不遜な青年神が機嫌を損ねようがどうしようが、ショロトルの知ったことでは無いのだから。
「文句あんなら出てけよ、うるせえ奴だな。」
「何だよ、せっかく来てやったのに。」
「頼んでねえよ。」
 あまりに身勝手な言い草には怒りさえ沸かない。もう無視しようと顔を背けたが、装束の端を掴まれた。仕方なく顔を向けてやると、拗ねた顔に視線がぶつかる。
「もう良いよ、許してやるよ。だからしようよ。」

【ひとりいちごつみ 「間違える」より「文句」】
 感情の伴わない決まり文句、浮かべ慣れた作り笑い。いかにも無邪気で無害そうなこの笑顔を、他の神々はまるで疑わない。
 だから誰も知らないのだ、この自分がどんなに強く賢いのか、どれほど凄い力をつけたのか。もう他のどんな神も及ばないほどに今の自分は強いのに、そのことを誰も知らないのだ。
 もうすぐ願いが叶う。願い続けたあの玉座にだって、もうすぐ辿り着ける。そうなればなんだってできるし、なんだって好きなように思うままにできるのだ。
 そうすればきっと、大好きなあいつにもまた会える。それが嬉しくて、一人笑った。

【ひとりいちごつみ 「文句」より「感情」】
 そいつは感情的なように見えて、随分と冷静で冷徹な神だ。ショロトルには見えすいているその事が全く分かっていないのだから、他の神々の目は節穴どころではない。
 すぐに拗ねたり膨れっ面をしたりはする奴だが、それは表面上だけのことだ。腹の中で何を計算しているのかは知らないが、相当に打算的だし頭もまあ回る。だがいかにも害のなさそうな作り笑いが妙に上手いから、他の神々はころりと騙される。
 いけ好かない兄弟神がこいつの正体を知ったらどんな顔をするだろう。それが楽しみなので、しばらくは黙っていてやろうと決めた。

5/19蛇鏡SS
【ひとりいちごつみ 5/18「感情」より「正体」】
 鳴り響いた大きな音にそいつがびくっとしたので、愉快な気分になる。音の正体は大方落雷だろう。
「んだよ、怖えのか?」
「怖くないよ、別に。」
 強がった口を聞きながらも、生意気な少年神は心細げに体を寄せてくる。優しく慰めてやるような間柄ではないから、ここぞとばかりに嘲笑ってやった。
「怖くないって顔じゃねえぞ。臆病だな。」
「うるさいな!」
 怒りを見せながらも、雷雨の中に出て行く勇気はないらしい。不満げな顔のそいつが、不意に何か思いついたらしかった。
「ねえ、したいだろ? させてやるから、しようよ。」

【ひとりいちごつみ 「正体」より「雷雨」】「正体」続き
 こいつに雷雨を怖がる可愛げのあった頃が懐かしい。生意気で身勝手なのは昔からにせよ、ここまで横暴で不遜な神に成長しなくてもいいだろうに。
「そこ立ってると暗い。邪魔だからどけよ。」
「俺の家だってこと忘れてるだろ、お前。」
「忘れてないけど、それが何?」
 けろりと答える青年神は、こちらを見向きもせずに熱心に石を磨いている。何に使うのかは知らないが、どうせろくなことには使わないのだろう。まあ、ショロトルには関係のないことだが。
 呆れながら目を背けたとき、遠くに雷が落ちた。

【ひとりいちごつみ 「雷雨」より「邪魔」】
「何だよ、邪魔するな。」
「うるせえな。押しかけてきたのはそっちだろうが。」
 ぎいぎい文句を言おうとするそいつから、さっさと装束を取り払う。抵抗していたそいつもだんだんその気になってきたのか、急に大人しくなってショロトルの装束に手をかけた。
「お前も脱げよ。」
「は、本当、やらしーよなあ。」
 嘲笑ってやっても、そいつの顔に浮かぶ笑みは消えない。誘うように、その指がショロトルの胸をなぞって。
「その気にさせたの、お前だろ?」

5/20蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/19「邪魔」より「装束」】
「何だよ?」
「決まってるだろ、雨宿りさせろ。」
 挨拶もなく飛び込んできた不遜な青年神は、さっさとずぶ濡れの装束を脱ぎ始める。なんとはなしにその背中や肩を眺めていると、気付いたそいつが嫌そうな顔をした。
「何だよ、しないからな。走ってきたら疲れた。」
「ほんっと、勝手な奴だな。」
 そこまで言われると組み伏せてやりたくなるが、臍を曲げたそいつが暫く寄り付かなくなるのも分かり切っている。大袈裟に溜息を吐いてやったが、そいつは気にも留めなかった。
「蜂蜜ないの? 食べたい。」

【ひとりいちごつみ 「装束」より「臍」】
「何だよ、しないって言ってるだろ。」
「したくさせてやるよ。」
 振り解こうとされるのに構わず、背中から回した手でそいつの臍をなぞる。ふるっと体を震わせたその青年神が、嫌がって身を捩った。
「べたべた触るなよ、気持ち悪いな。」
「ふーん? ココのほうがよかったか?」
「あ、やめ、」
 腰衣の上から軽く爪を立ててやると、そいつが甘い声を漏らす。この分ならあと少しだろう。

【ひとりいちごつみ 「臍」より「嫌がる」】
「やだって言っただろ、本当勝手な奴だな。」
「お前に言われる筋合いはねえよ。」
 自分だって途中からは乗り気になっていたくせに、そもそも呼びもしないのに勝手に押しかけてきた身だと言うのに、つくづく勝手な奴だ。むくれている青年神になど構わず、自分の装束に手を伸ばしたが。
「ってえな、爪立てんな。」
「お前が話聞いてないからだろ。」
 不満げな青年神がベしべしと腕や肩を叩いてくる。面倒になったので、蜂蜜でも舐めさせて黙らせることにした。

5/21蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/20「嫌がる」より「呼ぶ」】
 呼ばれた気がして、渋々目を開ける。最初に目に入ったのは、不満げで小さな顔だった。
「んだよ。」
「お前こそ何だよ、何で寝てるんだよ?」
「俺の勝手だろうが。」
 お前こそ何で勝手に入ってきてんだよと咎めても、この少年神はどうせ一顧だにしないのだろう。どんどん生意気さと不遜さを増していくその様子には、呆れる他ない。不機嫌に唇を尖らせていたそいつが、まあいいやと漏らして。
「させてやるから、しよう?」

【ひとりいちごつみ 「呼ぶ」より「不機嫌」】
 身勝手で生意気な青年神が不機嫌な顔で何かぶちぶち言っているからと言って、ショロトルが宥めてやる必要は全くない。だから無視していたのに。
「ってえな、」
「聞いてないだろ! 元はといえばお前のせいなんだぞ!」
「何で俺のせいだよ?」
 ショロトルがしたことと言えば、嫌がっているのを組み敷いてやったことだけだ。この青年神だって途中からは乗り気だったし、そもそもこいつの方から呼びもしないのにやってきたのだ。責められるいわれはないと言うのに。
「お前が変な時にサカるから、薬草が台無しになっただろ!」

【ひとりいちごつみ 「不機嫌」より「途中」】
 その神の家から帰る途中で、森の方へ行ってみた。もう森を離れて随分になるが、獣たちはいつも歓迎してくれる。
 嬉しそうに鳴いて甘えてくる、狐や山猫や山犬。不思議そうに装束の裾を嗅いでいる仔犬を膝に抱き上げると、そいつは驚いたようにくんくん鳴いた。その耳の後ろを擽ってやりながら、少しだけ悲しくなる。
 遠い遠い場所に行ってしまった、大切なあいつ。守れなかった、みすみす害させてしまった、大切な獣。あいつを連れ戻す手立ては、まだ見つからない。
 けれど、必ず見つかるはずだ。見つけてみせる。決意を胸に、仔犬を下ろして立ち上がった。

蛇鏡5/22SS-1
【ひとりいちごつみ 5/21「途中」より「耳」】
 耳を少し強く噛んでやると、そいつが甘えた声を漏らした。喉の奥で笑って、囁きを吹き込んでやる。
「痛いのがキモチイイってか?」
「ぁ、だ、って、」
「だって、何だよ?」
 喘ぎ混じりの抗議など構わず、耳に舌を差し入れてやる。息を飲んだ青年神が体を震わせた。
「ゃ、それ、やだって、」
「にしちゃあ、随分と気持ちよさそうだなあ?」

【ひとりいちごつみ 「耳」より「息」】
 んん、ふぅ、あ、ぁ。常は生意気な言葉しか吐かない唇は、今は乱れた熱い息だけを漏らしている。わざと優しく肌をなぞってやりながら、嘲った。
「は、ほんっと、インランだよなあ。」
「うるさ、ん、ぅ、」
 腰骨の上に軽く爪を立ててやると、青年神の吐息が甘く震える。その様子にまた笑いながら、脚を開かせた。この先を知っている青年神が、貪婪な目をしてねだる。
「はやく、」

【ひとりいちごつみ 「息」より「熱い」】
 熱い肌が触れ合うのなんて普段ならば絶対に嫌だけれど、この時だけはそんなに不快ではない。と言うより、そんなことはどうでも良くなる程にキモチイイから、我慢できる。
「あ、ぁ、もっと、」
「はは、やらしい顔。」
 嘲りながらもそいつはキモチイイ場所を擦り上げてくれるから、また声が漏れる。そいつの肩に爪を立てながら快楽を貪る。痛えなとそいつが笑って、腰に軽く爪を立ててきた。
 熱くて、気持ち良くて、気が狂いそうで。もう、何も分からない。

5/24蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/22「熱い」より「場所」】
「もっと詰めろよ、僕の寝る場所がないだろ。」
「誰の家だと思ってんだよ?」
 呆れながら尋ねてやっても、その青年神は悪びれもしない。ごく当然のような顔でぐいぐいとショロトルを押して、無理に場所を作って寝床に入ってくる。伸び伸びと体を伸ばして、満足げな顔をした。
「おい、邪魔だ。」
「うるさいな、我慢してやってるのに。」
「我慢しなくていいから出てけよ。」
「嫌だよ、こんな雨の中。」

5/24蛇鏡SS-2
【ひとりいちごつみ 「場所」より「我慢」】
 はやく、と吐息混じりにそいつがねだる。生意気な青年神の素直に欲しがる様子に満足しながら、もう暫く焦らしてやろうと決めた。
「少しは我慢しろよ、堪え性のねえ奴だな。」
「やだ、も、はやく、」
 甘えた声でねだりながら、青年神は熱い肌を擦り付けてくる。貪婪な期待に満ちた目でショロトルを見上げ、与えられるべき快楽を待ち望んでいる。淫らに煌めく瞳に笑い、望みを叶えてやることにした。

5/24蛇鏡SS-3
【ひとりいちごつみ 「我慢」より「期待」】
「何だ、期待してたってか?」
 ほんとインランだなあ、と嘲笑ってやる。不機嫌を露わにするかと思ったが、青年神は予想に反して艶やかに笑った。
「してたよ。お前とするの、キモチイイし。」
「はは、ほんっと、ヤラシイよなあ。」
「お前が教えたんだろ?」
 責任取れよ。甘くねだりながら身を擦り寄せてくるので、腰を引き寄せてやった。まだ細さを残している体の線を辿りながら、喉の奥で笑う。
「ここまでヤラシくなれなんて、言ってねえけどな?」

5/25蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/24「期待」より「予想」】
 予想していたより、いけ好かない兄弟神には堪えているようだ。傷ついた目をして少年神を追い掛ける眼差しが愉快で忍び笑うと、怪訝な声が隣からかけられた。
「何笑ってるんだよ。なんかやな感じ。」
「俺の勝手だろ。」
 いなしながら、その細い腰を引き寄せる。抗いもしないそいつの腰の線を辿りながら、殊更ににっこりと笑ってやった。
「気は済んだな? 帰るぞ。」

【ひとりいちごつみ 「予想」より「抗う」】
 やだよ、やめろよ、もう疲れた。そんな言葉には構わず、まだ濡れている場所を指で探る。往生際悪く抗う青年神は、くぅっと息を飲んだ。
「やだ、って、言って、」
「コッチは、嫌がってねえけどなあ?」
 嘲笑ってやりながら、指を差し入れる。甘えた声を漏らしたそいつは、どうやら乗り気になりかけているらしい。腰を揺らめかせ、甘い声でねだった。
「も、しろよ、早く、」

【ひとりいちごつみ 「抗う」より「濡れる」】
 雨の神々の気まぐれな遊びのお陰でずぶ濡れだ。忌々しい思いで帰り着くと、そいつは当たり前のように入り込んでいた。
「勝手に入ってんじゃねえよ。」
「仕方ないだろ、雨になりそうだったんだから。」
 全く悪びれない青年神に、咎める気も失せる。大袈裟に溜息を吐いて着替え始めると、そいつもまた石を磨く作業に没頭し始めた。
 俯き加減の首の線に漂う、色香と呼ばそうな気配。着替えるよりもそいつを組み敷いてやったほうが体も温まりそうだと思いつき、実行することにした。

5/26蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/25「濡れる」より「咎める」】
「これは駄目、毒になるよ。」
 不思議そうに薬草を齧ろうとする子狐を咎めて、薬草籠は手近な木の枝に載せる。落ちてこないようにしっかりと置いて振り返ると、大人しく待っていた獣達が喜んで寄ってきた。
 薬草を齧ろうとした子狐も、甘えた声を上げながら装束の裾に戯れている。笑いながら抱き上げると、嬉しそうに鳴いて手を舐めてきた。
「ふふ、擽ったいよ。」

【ひとりいちごつみ 「咎める」より「落ちる」】
 木の上から落ちてきたそいつは、すました顔で装束についた木の葉を払い落としている。呆れながら声をかけてやった。
「何がしてえんだよ?」
「僕の勝手だろ。」
 生意気な返事をしながら、そいつは摘んできたらしい若葉を籠に入れている。満足げに籠の中身を確かめているそいつに背を向けて歩き出したが、足音がついてきた。
「また来る気かよ?」
「当たり前だろ。」

【ひとりいちごつみ 「落ちる」より「向ける」】
「本当に知らないんだな?」
「知らねえっての。どっか転がってるんじゃねえのかよ?」
 尚も疑いの目を向けてくるので、舌打ちを堪えながら突き放す。食い下がってくるかと思った青年神は、意外なほどあっさりと引き下がった。
「なら良いけど。見つけたら言えよな。」
「分ぁかったよ、うるせえな。」
 仕方なくそう答える。そいつはとりあえずは満足したように、装身具の一つ足りない身支度を再開した。

5/27蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/26「向ける」より「足りない」】
「なあ、足りない。」
「はは、ほんとインランだなあ。」
 詰ってやっても、淫らな青年神は恥入りもしない。まだじんわりと熱を残している肌をショロトルにすり寄せ、尚も甘えた声を上げる。
「お前だって、したいだろ? させてやるから、もっとしようよ。」
 叶えてやるのは吝かではないが、ただ乗ってやるのもつまらない。どうするかと考えて。
「っん、ぅ、」
「やりたきゃ、自分で動けよ。」

【ひとりいちごつみ 「足りない」より「甘えた」】
「あ、ぁん、そこ、」
「はは、やらしー声。」
 嘲笑ってやっても、そいつには聞こえているのかいないのか。深く深く快楽に溺れる青年神は、答えさえしない。
 少しつまらないので、そいつの肩に少し強く噛み付いた。組み敷いている体がびくっと震え、また甘えた声を漏らす。やっとショロトルに向けられた眼は、淫らに蕩け切っていて。
「ぁん、な、に、」
「もっと鳴けよ。」

【ひとりいちごつみ 「甘えた」より「鳴く」】
 鳥が鳴いたので目を向ける。鮮やかな緑の羽をしたケツァール鳥は、ちょうど飛び立つところだった。
 何か仲間に合図をしたんだろうか。少し考えたが、興味もないのですぐに考えを放棄する。また手元に目を戻し、薬草を摘み始めた。
 それぞれ少しずつ違う緑色をした、たくさんの種類の薬草。少しずつ摘み集めていたとき、ふと他の神に見られているような気がした。
 けれど振り向いてみても、誰もいない。森だけがざわめいていた。

5/28蛇鏡SS-1
【ひとりいちごつみ 5/27「鳴く」より「興味」】
「ねえ、それ何?」
「ああ?」
 目を輝かせて手元を覗き込んでくる物知らずの少年神は、今度は何に興味を惹かれたのか。好奇心をありありと瞳に宿すそいつは、図々しく手を伸ばしてきた。
「それ綺麗、何ていう石? どこで見つかる?」
「んだよ、欲しいのかよ?」
「欲しい。」
 あっさり認める素直さの持ち合わせがあるならば、普段から見せれば良いものを。半ば呆れながら、唇の端を吊り上げた。
「知りてえか?」

【ひとりいちごつみ 「興味」より「欲しい」】
 快楽に慣れた青年神はもどかしげに腰を揺らすが、まだ与えてはやらない。生意気で不遜なこいつは、焦らして泣かせてやるくらいでちょうどいい。
「も、早く…!」
 耐えきれなくなったように声を上げられても、まだ早い。これ見よがしに笑ってやった。
「欲しけりゃ、もっとカワイくおねだりしろよ。」
「っ、悪、趣味…。」
 毒吐く唇にはまだ可愛げがない。だが、すぐに陥落するだろう。

【ひとりいちごつみ 「欲しい」より「毒」】
 毒々しいほどに淫らな瞳でこちらを見据えながら、青年神は何も言わずに笑っている。不遜で艶やかな笑みに、今は乗せられてやることにした。
「ほんっと、ヤラシいよなあ。」
 嘲笑いながら引き寄せても、常は生意気な唇は何も言い返さない。ただ満足げに笑みを深めて、首に腕を絡みつかせてきた。
 淫らに笑う唇を奪いながら、まだ細さを残している体を組み敷く。自分から唇を開きながら、青年神は声を立てずに笑った。

〈少年神へのお題は
『新月は何も見えない』
『私になれる場所』
『朝焼けの色』

『透明』『手帳』『秋』

Let's try!!!
#shindanmaker
https://shindanmaker.com/509623〉

5/29蛇鏡SS
【「創作小説お題(題名提供)」様より『新月は何も見えない』:X神】
 新月の、暗い夜だった。そいつはそれが当たり前のように、またも勝手に入ってきたらしい。
「んだよ。」
「お前だって、したいだろ?」
 させてやるから、しようよ。甘えた声を出しながら、そいつの指が愛おしそうにその場所を撫でさする。払いのけてやっても良かったが、そうする代わりに腰を抱き寄せた。
「お前が動くんだろうな?」
「ものぐさ。別にいいけどね。」
 くすくすと笑うそいつが肌を擦り付けてくる。手探りに腰衣を解いてやりながら、唇を重ねた。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『新月は何も見えない』:青年神】X神版の続き
 新月の闇は暗く深い。暗闇に深く身を沈めてキモチイイことをするのは、それほど悪い心地ではなかった。
「あ、ぁ、」
「もっと腰使えよ。」
 意地悪く笑うそいつの顔は見えないけれど、そいつも興奮しているのが声で分かる。いつもは余裕めかしているそいつにも余裕なんてないのが、そいつももうぎりぎりの所まで追い詰められているのが、よく分かる。それがおかしくて笑った。
「っ、ぁ、ぅ、」
「笑ってるヨユー、あんのかよ?」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『新月は何も見えない』:Q神】
 ずいぶん遅くなってしまったこんな時に限って、運悪く新月だ。乏しい星明かりだけを頼りに歩くほかない。
 夜風は様々な香りを運んでくる。花の香り、草の香り、火の香り、水の香り。その中に淫らな香りが混じった気がして、思わず足を止めた。
 風の吹き来る方角には、邪悪な兄弟神の家がある。またあの青年神だろうか、また淫らな遊びに耽っているのだろうか。刺すように胸が痛んでも、どうすることもできはしない。

5/30蛇鏡SS
【スペイン語「El esta cansado. 彼は疲れている。」:X神】
「なあ、したい。」
 そいつは甘えた声ですり寄ってくるが、ほいほい乗ってやるのもつまらない。わざと素っ気なく、その体を押し返した。
「めんどくせえ。疲れてんだよ。」
「お前は動かなくていいよ、僕が乗ってやるよ。なあ、しようよ。」
 まだ了解してやってもいないのに、そいつの手はもうショロトルの腰衣を解こうとしている。もっと焦らしてやっても良かったが、渋々という態度を装いながら受けてやることにした。
「言ったことは守れよ?」

【スペイン語「El esta cansado. 彼は疲れている。」:青年神】X神の続き
 もうやだよ、疲れた。訴えても、そいつは意地悪く笑うばかり。
「この程度でか?」
「疲れてたとか、嘘だろ、お前。」
 薄々そんな気はしていたから、溜息も出ない。こいつは本当に嫌な奴だ。
 けれどこいつとするのはキモチいいから、こいつの家は居心地がいいから。だからつい足が向いてしまうし、顔を見るとまたしたくなる。
 僕も何考えてるんだ、と自分に呆れる。諦めまじりの気持ちで、そいつの肩に歯を立てた。

【スペイン語「El esta cansado. 彼は疲れている。」:Q神】
 またあの青年神を見かけたのは、草原と森の境でのことだった。
 彼は少し疲れているのか、気怠げな様子で大きな石に腰掛けていた。森から出てきて盛んに膝に戯れている山猫たちを撫でてやりながら、ふわあと欠伸をする。
 その様子に艶いた香りを感じた気がして、ひどく狼狽える。声をかけあぐねていた自分に、青年神はやっと気づいたらしかった。少し眠たげな目で微笑む。
「どうしたの、そんなところで?」

5/31蛇鏡SS
【「創作小説お題(題名提供)」様より『私になれる場所』:少年神】
 そいつは腹の立つ奴だけれど、すぐに嘲ったり馬鹿にしたりしてくるけれど、楽な相手だ。気を使ったり取り繕ったりなんて、全くしなくて済むから。
 今に、どの神に対しても好きなように振る舞える時はくる。その時は近づいている。そうなれば自分は思うままに振る舞えるし、全ての神々が自分の機嫌を取ろうとするだろう。けれどまだ、その時ではない。
 その時のために力を蓄えていることを、今はまだ他の神々に悟られないように。他の神々が油断して、好きなようにさせてくれるように。
 そのために、いかにも邪気のなさげに笑っておこう。けれどそんな作り笑いも、そいつには必要ないのだ。

【「創作小説お題(題名提供)」様より『私になれる場所』:X神】
「ほんっと、腹立つ奴だな。少しは俺にも気を使えよ。」
 あまりに横暴で生意気な少年神に、たまらず苦言を呈する。だと言うのに、そいつは心外そうな顔をした。
「なんで僕が、お前に気を使わないといけないんだよ?」
「なんで気を使わなくていいと思ってんだよ?」
 反射的に咎めながらも、言葉を重ねる気力も失せる。呆れながら腰を引き寄せると、もう機嫌を直したそいつが首に腕を回してきた。甘い声で囁く。
「光栄に思えよ、相手にしてやってるんだから。」

【「創作小説お題(題名提供)」様より『私になれる場所』:Q神】
 あの少年神はまた、邪悪な兄弟神の隣を歩いている。完全に気を許した様子で、その神に笑顔を向けている。
「ねえ、あれは? あれはなんて名前?」
「そんなことも知らねえのかよ。」
 呆れた様子で答える兄弟神が、ちらりとこちらに目を向けて勝ち誇ったように笑う。こちらには全く気付かない少年神は、早く教えてよと甘くせがむ。満足げに笑った兄弟神は、その細い腰を引き寄せた。
 見ていられなくなって、背を向ける。無邪気な声が、いつまでも耳の奥でこだましていた。
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