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永劫の欠落とは傷に非じ
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「何だ、こんな処に居たの?」
背後から掛けられた思わぬ声に、ケツァルコアトルは自分の肩が震えるのを感じた。
努めて心臓を落ち着けながら、ゆっくりと振り返る。気軽な足取りで歩み寄ってくるのは、やはり予想通りの姿だった。
恐ろしいまでの力で高みに昇り詰めた、その青年神。誰よりも早く天空の王座に上り詰めて、最初の太陽として世界を照らした神。
だが、その残酷で無慈悲な力は支配される民のためにはならないから。その横暴で横柄な振る舞いが眼に余るものだったから。だから、ケツァルコアトルが彼を引き摺り落としたのは、間違いではない。苦しい思いで決断し、実行したそれは。
事実、王座を追われたことに憤ったこの青年神は、自ら創造した民までも己で食い滅ぼしてしまった。残酷で凶暴で傲慢なその気質は、到底太陽の座には相応しくない。
たとえそのことで、青年神からは恨みを受けることになろうとも。疎まれ、憎まれ、もう二度とあの宝石のような笑顔を向けてもらえなくなろうとも。ケツァルコアトルは、そうせざるを得なかったのだ。
その相手が今、何の蟠りもないような様子で気軽に歩み寄ってくる。そして、親しげとさえ言えそうな態度で明るく詰った。
「何でこんな処に居るんだよ。あちこち探したんだぞ」
「え……」
思わぬその様子に、戸惑いが隠せない。何故彼がケツァルコアトルを探し歩くのか、理解できない。
混乱するケツァルコアトルに構わず、青年神は本題に入ることにしたらしかった。まあいいけどと軽く唇を尖らせてから、表情を切り替えてまた軽やかに話し出す。
「お前も知ってるだろ、あの海の怪物」
「あ、ああ」
戸惑いながらも、反射的に頷く。水に満たされた世界を悠々と泳ぎ回っている怪物のことは、ケツァルコアトルも気掛かりだった。次にどの神が太陽の座を占めるとしても、どんな民を創り導くとしても、あんな怪物がいては誰も安心して暮らせない。それをどうしたものかと落ち着いて考えるために、ケツァルコアトルはここで、他の神々の寄り付かない野の果てで、思索に耽っていたのだ。
「知ってるなら分かるだろ。あんな怪物がいたら、何をするにも困るじゃないか」
「まあ、そうだね」
「だからさ、手伝えよ」
気軽な調子で言われた言葉に、不意を突かれる。青年神は焦れた様子も見せず、もう一度繰り返した。
「許してやるから、手伝えよ。あの怪物をどうにかして、また大地と民を創ろうよ」
思いがけない誘いに、言葉も出ない。それはケツァルコアトルも頭の片隅で考え計画していたことだったが、その「相棒」を選ぶならばこの青年神ほどに力のある神はまさしく適任だとも考えていたが、彼は決してケツァルコアトルの誘いに乗らないだろうと諦めていた。まさかこの青年神の方からケツァルコアトルを勧誘するなどとは、予想もしていなかった。
半ば茫然としているケツァルコアトルの顔を覗き込むようにして、青年神はにこっと笑った。明るい笑顔で、親しげな声で、甘く誘う。
「一緒に、もう一度創ろう?」
その笑みに、声音に、胸の奥を揺さぶられるのを感じた。遠い遠い時の宝石のような笑顔が、いつも大切に胸に抱いている面影が、また鮮やかに輝き始める。
青年神の無邪気とさえ呼べそうな笑顔は、打算に塗り固められたものだ。そうでない筈はない。そうもあっさりと、この青年神が自分を許した筈はない。
なのに、信じてしまいたくなる。彼は心からケツァルコアトルを許したのだと、またあの遠い美しいひと時のように笑ってもらえると、その未来にも手が届くと。
思わず頷きそうになって、だがはっと我に返る。努めて冷静を保って頭を巡らせ、譲れないたったひとつの条件を突きつけた。
「君も私も、太陽の座には座らない。それが条件だ」
天空の玉座を巡って争い合った彼と自分のどちらがその座に就いても、遺恨が生まれるだけだ。次の太陽として世界を統べるのは、全く違う神であるべきだ。だからそれだけは、はっきりと決めておかなくてはならない。
青年神がその取り決めを嫌がる気配を少しでも見せたなら、ケツァルコアトルは彼とは手を組めない。だから、瞬きをして考えている青年神の様子を、伏せがちの長い睫毛を見守る。ややして、青年神は目を上げた。
「うん、いいよ。分かった」
あっさりと頷くので、こちらが拍子抜けしてしまう。そんなことには構わず、もう話が決まったと思っているらしい青年神は気軽な足取りで更に近寄ってきた。邪気のない笑顔で、ケツァルコアトルの腕を引く。
「早く行こうよ」
海の怪物は、降りてくる二神に気づくと首をもたげた。怪訝そうに、あるいは「獲物」にできるかと推し量るように、その虚ろで凶悪な目が青年神とケツァルコアトルを見比べる。そんな邪悪な目付きには気付かないような屈託のない様子で、青年神は明るく声を掛けた。
「こんにちは、美人さん」
『こんにちは』
青年神の言葉でそれが雌の怪物であると思い出しても、ケツァルコアトルにはその怪物が「美人さん」だとはとても思えなかった。あまりに悍ましいその姿に、声も出ない。
だが青年神はその怪物を恐れも厭いもしない様子で、明るくその牙や爪を褒めちぎっている。怪物はそれに気を良くして、少しばかりの礼儀を思い出したらしかった。
『ご機嫌いかが?』
「まずまずかな。貴女は?」
屈託のない笑顔で青年神に問われた怪物は、不吉に響く唸り声を上げながら瞬きをした。それから、悲しげな様子で答える。
『とても、お腹が空いているの』
「そっかあ、それは悲しいね。何を食べるのが好き?」
空腹が「悲しい」気分であるということも、ケツァルコアトルは青年神の言葉でやっと気付いた。神々の国では、神も獣も何かを獲って食らったりはしない。空腹に責め苛まれる者は居ない。だが自らの民を食い滅ぼしたこの青年神は、空腹と満腹についての何かを学んだのかもしれない。
半ば目を閉じて夢見るように考え込んでいた怪物は、ゆっくりとまた目を開けた。物欲しげに答える。
『ヒトの心臓が食べたい』
「っ!?」
そのあまりにも不吉な答えに、ケツァルコアトルは寒気を覚える。だが青年神はやはり屈託のない様子で、親切な様子で、ごく気軽に答えてやっていた。
「ヒトは、今はいないんだ。これからまた作ろうと思ってんだけど」
『そう。残念だわ』
本当に残念そうに呟いた怪物が、また獲物を付け狙う目付きでケツァルコアトルを眺め回す。思わず武器に手が伸びそうになった時、青年神が明るい声で話題を変えた。
「この辺りは眺めが良いね。いつもここに居るの?」
『そうね。ここで体を伸ばすと、気持ちが良いの』
「そう、とても良いね。体を伸ばすのはすごく良い気分だよね」
明るく答えて自分も少し伸びをした青年神が、ちらりとこちらに目を向けた。だがケツァルコアトルには何も言わずに、また怪物へと笑顔で話しかける。
「今は帰るけど、またお話ししに来たいな。いい?」
『ええ、いつでも』
怪物の答えに青年神は嬉しげに笑い、弾んだ声で礼を言う。怪物もつられたようにごろごろと笑い声を立てて、別れの挨拶をした。
『ご機嫌よう』
「うん、またね」
青年神の親しげな笑顔に、怪物もすっかり安心しているらしい。不吉な唸り声を残して、醜い巨獣はゆっくりと水底へ体を沈めていった。それを見送った青年神がさっさと天に戻り始めるので、ケツァルコアトルも慌てて後を追う。
ケツァルコアトルのことなど忘れたような顔で前を向いていた青年神が、急にこちらを振り向いた。ちらりと元来た方に目を向けてから、あっさりした声音で尋ねてくる。
「なあ、あの怪物どうする?」
「え?」
思いがけない言葉にケツァルコアトル不意を突かれる。青年神はじれったそうに言葉を継いだ。
「だって、あんなのが居るままじゃ、民が安心して住めないじゃないか。なんとかあいつを取り除かないと、民を創ることもできないだろ」
「それは、そうだが」
だがこの青年神は、あの怪物とあんなにも親しげに話をしていたのに。だと言うのに青年神は掌を返したように、平然と残酷な算段を始めた。
「思うんだけどさ、あいつの体を引き裂いて、それで大地と天を作れば良いんじゃない? あいつ大きいから、大きさは足りそうだし」
まあ僕も考えとくから、お前も考えろよな。さらりと命じた青年神が、さっさとこちらに背を向けてしまう。その細身の後ろ姿を茫然と見送ってから、ケツァルコアトルはまた怪物の居る海に目を向けた。
あれは恐ろしい、邪悪な怪物だ。取り除かねばならない障壁だ。それは確かで明らかなことだ。ケツァルコアトルにも、それはよく分かっている。
だが、その怪物を騙し丸め込んで安心させ、その寝首を掻こうとしている青年神も、また邪悪なのではないのか。その片棒を担ごうとしている自分も、同様なのではないか。そんな恐ろしい思いが胸を吹き抜けて、思わず自分の装束を握りしめた。
「何をぐずぐずしてるんだよ。入るなら入れよ」
洞窟の中から掛けられた声に、はっとして背筋を伸ばす。少し躊躇ってから、ケツァルコアトルは覚悟を決めて中に足を踏み入れた。
「お前か。何か用?」
筵の上に横になっていた青年神が、問い掛けてきながら身を起こす。種々様々の薬草の匂いを感じながら、あまりにも大きい欠落からつい目を背けながら、ケツァルコアトルは不躾にならない言葉を探した。
「傷の、具合は?」
「大したことはない」
青年神はそう言うが、強がりであることは見て取れる。傷が疼くのか声の響きは少し不自然で、暗がりに居ても分かるほどに顔色も悪い。だが青年神は、なんでもなさそうな声を出した。
「覚悟はしてた。片足だけでまた大地が創れたんだから、別にいいだろ」
「しかし……」
「僕の力量不足だ。お前が気にすることじゃない。こう言えば満足か?」
そうじゃない、と訴えたかった。ケツァルコアトルの自己満足のために、ここに来たのではないのだと。
ケツァルコアトルはただ、この青年神のことが気掛かりで、心配で。他の神々と離れて独りで療養している彼の役に、少しでも立ちたかったのだ。
けれど、心のどこかでは分かっていた。彼はケツァルコアトルをを望みはしないのだと、決してケツァルコアトルを頼ってはくれないのだと。
その事実にまた絶望を感じながら、目を背けていた青年神の傷に目を向けた。永遠の欠如、失われた片足のあった場所に。
薬草と布で青年神が自ら手当てをしたらしい傷は、生々しい傷口を曝け出してはいない。けれどあるべきものが、ほんの少し前までは確かにあったその部位が、無いことはとても惨たらしく不自然に思えた。
だから思わず、ケツァルコアトルは謝罪していた。言葉が口をついていた。
「すまなかった。守ってあげられなくて」
あんなにも近くにいたのに、すぐ傍で共にあの怪物と戦っていたのに。あの怪物の醜怪な口が美しい足を食い千切るのを、自分はみすみす許してしまった。
いつもそうだ。自分は、彼を守ってやることさえできない。彼がみすみす穢され貶められるのを、自分は何もできずにいつも見ているばかりだ。力量不足なのは、自分の方なのだ。
改めて打ちひしがれながら、青年神の顔に目を戻す。そして、はっとした。
青年神は驚いたように、不意をつかれたように、目を瞠っていた。だが、ケツァルコアトルと目が合うと、我に返ったらしい。その美しいかんばせに、見る間に怒りが上った。
「あの……」
「出て行け!」
その思いがけない感情に狼狽えるケツァルコアトルを、青年神は怒鳴りつけた。美しく愛らしいその顔立ちを怒りに歪め、怒鳴り散らす。
「僕はお前に守られるほど弱くなんてない! 僕は強いんだ、誰にも守られも助けられもしない! 僕を守るだと、ふざけるなよ!」
激しい怒りに圧倒され、言葉も出ない。立ち竦むケツァルコアトルに、青年神は激しい怒りをぶつけるのをやめなかった。
「お前なんかに守られる筋合いはない! お前に限らず誰にもだ! 馬鹿にするな!」
「いや……」
「失せろ!」
怒鳴りつけられても、ケツァルコアトルは動けなかった。怒りの目でこちらを睨みつけている青年神を、呆然と見つめ返す。
だが少しずつ、理解が追いついた。完全に理解はできないものの、うっすらと悟った。
この青年神は、彼自身のことを「弱い」とは決して思いたくないのだ。強い存在として、彼自身を認めていたいのだ。それを否定されたと思い、青年神はこうして憤っているのだ。ならば、そんなつもりはないと伝えなくては。
「悪かった、馬鹿にするつもりなんかじゃなかったんだ。謝るから、許してほしい」
心を込めて謝罪すると、まだ息を荒げている青年神が疑うような目で見据えてくる。その視線を受け止めた。
束の間、互いに何も言わなかった。青年神は推し量るようにケツァルコアトルの目を見つめ、ケツァルコアトルもその視線を静かに受け止めた。
ややして、青年神が出し抜けに微笑んだ。美しいかんばせを、綺麗な笑みで彩った。だがケツァルコアトルには、その笑みに安堵する暇さえ与えられなかった。
「じゃあ、ショロトルを呼んでこい」
「っ!」
綺麗な瞳に残忍な光を宿して青年神が言い捨てた言葉に、息を飲む。どうしてと聞くことさえできないケツァルコアトルを、甘いとさえ呼べそうな声が残酷に急かした。
「早くしろよ」
重い足を引き摺るようにして呼びに行った兄弟神は初めは面倒臭そうな顔でケツァルコアトルに応対したが、青年神が会いたがっていることを伝えると思案げな顔をした。そして、にやりと笑う。
「仕方ねえな」
様々な感情を含んでいるその笑みがケツァルコアトルには不快だったが、他にどうしようもない。それを分かっているかのように、邪悪な兄弟神は洞窟への道中もつまらないことを喋り続けた。
「俺が居ないと寂しくて寝れないってか? まあ仕方ねえよな、俺がシてやらねえと満足できねえ奴だもんな。すーぐ擦り寄ってくるし、もっとちょうだいってオネダリするし、この間も……」
「もう黙れ」
「嫌だね」
にやっと不快な笑みを浮かべる兄弟神を殴り倒して打ち捨てていきたい衝動が、胸の中で沸き起こる。必死で自分を律しながら、ケツァルコアトルはやっとの思いで洞窟に辿り着いた。
声を掛けられる前に、気配に聡い青年神はやはりこちらに気付いたらしかった。中から不満げな声が聞こえてくる。
「遅い」
「そんなに寂しかったかよ?」
「別に?」
気軽に踏み込んでいくショロトルに、青年神はやはり気安い様子で返事をしている。青年神が手にしていた黒い大きな石を脇に置くので、ケツァルコアトルは反射的にそれに目をやった。どうやら、イツトリを磨いた鏡らしい。
半身を起こしていた青年神の傍に歩み寄ったショロトルが、思いがけないほどの優しい手つきでその頬を撫でる。ケツァルコアトルに見せつけるための動作だと分かっていても、目を逸らすことができなかった。
「傷が痛い」
ショロトルの邪悪な手を受け入れている青年神が、甘えた声を出す。くくっと喉の奥で笑ったショロトルが、薄気味悪いほどに優しげな声を出した。
「カワイソウにな。痛いのも、忘れさせてやるよ」
ケツァルコアトルがはっと身を強張らせるより、止めに入るより早く。ショロトルが青年神を筵の上に押し倒し、その上に乗りかかった。青年神は、それを咎めもしない。
「早くしろよ。何のために呼んだと思ってるんだよ」
「そんなに欲しかったか?」
「欲しいよ」
随分スナオだなとショロトルが笑い、その手がふしだらな意図を持って触れたらしかった。青年神が甘い声を上げるので、茫然としていたケツァルコアトルも我に返る。何も言えないまま踵を返し、逃げるように洞窟を飛び出した。
甘やかな声は、いつまでも耳にこびりついて離れなかった。
淫らに乞われるがままにキモチイイことをしてやって、ショロトルも満足して。心地良い気怠さに浸っていると、眠っているとばかり思っていた青年神が身じろいだ。そちらへ目を向けると、意外にもはっきりとした目をしたそいつは洞窟の外に目を向けている。
どうしたと尋ねてやるほどの興味はないから、ショロトルは黙ってそいつの横顔を眺めていた。その視線に気付いたというわけでもないだろうが、青年神が独り言のように呟く。
「僕、なんであの高い処に行きたかったんだっけ」
「はぁ? 俺が知るかよ」
知るよしもないから気軽に答えると、大して機嫌を損ねてもいない視線が返された。いつもの通りの生意気な返事をされる。
「お前なんか最初からあてにしてないけど、本当に役に立たないな」
「うるせえな、泣かすぞ」
もう一度組み敷いてやると、青年神は機嫌の良い笑い声を立てた。首に腕を絡ませてきて、艶やかな目をして誘う。
「しようよ、もっと」
また何回かキモチイイことをして、その汗が冷えた頃にまた始めて。そんなことを繰り返し、またうとうとしていた時、不愉快な気配が洞窟に入ってきたのを感じた。
「ショロトル」
「んだよ」
仕方なく目を開けてやると、感情を抑えた目をした兄弟神が見下ろしている。隣で眠っていたらしい青年神も、不機嫌な声を上げて身じろいだ。
「冥府に降りる。一緒に来い」
「はぁ? 勝手に行けよ、そんなの」
「お前が一番詳しいと聞いた」
それはどう考えてもこの青年神のせいなのだが、療養中のそいつを連れて行くのは善良ぶっている兄弟神としては気が引けると見える。ごねても引き摺っていかれそうな勢いだったので、ショロトルは渋々起き上がって装束を身につけることにした。
間近で交わされた会話に目が覚めたらしい青年神も身を起こし、まだ眠り足りなそうな顔をしてイツトリの鏡を引き寄せている。その烟る鏡面に目を落としている横顔を、いけ好かない兄弟神は切なそうに見つめている。それがショロトルには少しだけ愉快だったから、視線を断ち切るように割り込んで青年神の乱れた髪を撫でた。
「サビシくて俺を呼んだのに、留守にして悪いなあ。帰ってきたら、またシてやるよ」
とびきり甘く囁いてやるが、身勝手なそいつはもうそうした気分ではないらしかった。煩わしげに手を払いのけ、気の無い返事を寄越す。
「帰ってこなくても良いよ、別に」
「生意気言うと、もうシてやらねえぞ」
「良いよ、他の奴とするから」
「ショロトル、行くぞ」
業を煮やしたらしい兄弟神に呼ばれ、仕方なくショロトルも立ち上がる。だが洞窟を出しなに、またちらりと振り返った。
自分勝手な青年神は、もうこちらには興味を失っているらしい。また、イツトリの鏡を磨き始めていた。
背後から掛けられた思わぬ声に、ケツァルコアトルは自分の肩が震えるのを感じた。
努めて心臓を落ち着けながら、ゆっくりと振り返る。気軽な足取りで歩み寄ってくるのは、やはり予想通りの姿だった。
恐ろしいまでの力で高みに昇り詰めた、その青年神。誰よりも早く天空の王座に上り詰めて、最初の太陽として世界を照らした神。
だが、その残酷で無慈悲な力は支配される民のためにはならないから。その横暴で横柄な振る舞いが眼に余るものだったから。だから、ケツァルコアトルが彼を引き摺り落としたのは、間違いではない。苦しい思いで決断し、実行したそれは。
事実、王座を追われたことに憤ったこの青年神は、自ら創造した民までも己で食い滅ぼしてしまった。残酷で凶暴で傲慢なその気質は、到底太陽の座には相応しくない。
たとえそのことで、青年神からは恨みを受けることになろうとも。疎まれ、憎まれ、もう二度とあの宝石のような笑顔を向けてもらえなくなろうとも。ケツァルコアトルは、そうせざるを得なかったのだ。
その相手が今、何の蟠りもないような様子で気軽に歩み寄ってくる。そして、親しげとさえ言えそうな態度で明るく詰った。
「何でこんな処に居るんだよ。あちこち探したんだぞ」
「え……」
思わぬその様子に、戸惑いが隠せない。何故彼がケツァルコアトルを探し歩くのか、理解できない。
混乱するケツァルコアトルに構わず、青年神は本題に入ることにしたらしかった。まあいいけどと軽く唇を尖らせてから、表情を切り替えてまた軽やかに話し出す。
「お前も知ってるだろ、あの海の怪物」
「あ、ああ」
戸惑いながらも、反射的に頷く。水に満たされた世界を悠々と泳ぎ回っている怪物のことは、ケツァルコアトルも気掛かりだった。次にどの神が太陽の座を占めるとしても、どんな民を創り導くとしても、あんな怪物がいては誰も安心して暮らせない。それをどうしたものかと落ち着いて考えるために、ケツァルコアトルはここで、他の神々の寄り付かない野の果てで、思索に耽っていたのだ。
「知ってるなら分かるだろ。あんな怪物がいたら、何をするにも困るじゃないか」
「まあ、そうだね」
「だからさ、手伝えよ」
気軽な調子で言われた言葉に、不意を突かれる。青年神は焦れた様子も見せず、もう一度繰り返した。
「許してやるから、手伝えよ。あの怪物をどうにかして、また大地と民を創ろうよ」
思いがけない誘いに、言葉も出ない。それはケツァルコアトルも頭の片隅で考え計画していたことだったが、その「相棒」を選ぶならばこの青年神ほどに力のある神はまさしく適任だとも考えていたが、彼は決してケツァルコアトルの誘いに乗らないだろうと諦めていた。まさかこの青年神の方からケツァルコアトルを勧誘するなどとは、予想もしていなかった。
半ば茫然としているケツァルコアトルの顔を覗き込むようにして、青年神はにこっと笑った。明るい笑顔で、親しげな声で、甘く誘う。
「一緒に、もう一度創ろう?」
その笑みに、声音に、胸の奥を揺さぶられるのを感じた。遠い遠い時の宝石のような笑顔が、いつも大切に胸に抱いている面影が、また鮮やかに輝き始める。
青年神の無邪気とさえ呼べそうな笑顔は、打算に塗り固められたものだ。そうでない筈はない。そうもあっさりと、この青年神が自分を許した筈はない。
なのに、信じてしまいたくなる。彼は心からケツァルコアトルを許したのだと、またあの遠い美しいひと時のように笑ってもらえると、その未来にも手が届くと。
思わず頷きそうになって、だがはっと我に返る。努めて冷静を保って頭を巡らせ、譲れないたったひとつの条件を突きつけた。
「君も私も、太陽の座には座らない。それが条件だ」
天空の玉座を巡って争い合った彼と自分のどちらがその座に就いても、遺恨が生まれるだけだ。次の太陽として世界を統べるのは、全く違う神であるべきだ。だからそれだけは、はっきりと決めておかなくてはならない。
青年神がその取り決めを嫌がる気配を少しでも見せたなら、ケツァルコアトルは彼とは手を組めない。だから、瞬きをして考えている青年神の様子を、伏せがちの長い睫毛を見守る。ややして、青年神は目を上げた。
「うん、いいよ。分かった」
あっさりと頷くので、こちらが拍子抜けしてしまう。そんなことには構わず、もう話が決まったと思っているらしい青年神は気軽な足取りで更に近寄ってきた。邪気のない笑顔で、ケツァルコアトルの腕を引く。
「早く行こうよ」
海の怪物は、降りてくる二神に気づくと首をもたげた。怪訝そうに、あるいは「獲物」にできるかと推し量るように、その虚ろで凶悪な目が青年神とケツァルコアトルを見比べる。そんな邪悪な目付きには気付かないような屈託のない様子で、青年神は明るく声を掛けた。
「こんにちは、美人さん」
『こんにちは』
青年神の言葉でそれが雌の怪物であると思い出しても、ケツァルコアトルにはその怪物が「美人さん」だとはとても思えなかった。あまりに悍ましいその姿に、声も出ない。
だが青年神はその怪物を恐れも厭いもしない様子で、明るくその牙や爪を褒めちぎっている。怪物はそれに気を良くして、少しばかりの礼儀を思い出したらしかった。
『ご機嫌いかが?』
「まずまずかな。貴女は?」
屈託のない笑顔で青年神に問われた怪物は、不吉に響く唸り声を上げながら瞬きをした。それから、悲しげな様子で答える。
『とても、お腹が空いているの』
「そっかあ、それは悲しいね。何を食べるのが好き?」
空腹が「悲しい」気分であるということも、ケツァルコアトルは青年神の言葉でやっと気付いた。神々の国では、神も獣も何かを獲って食らったりはしない。空腹に責め苛まれる者は居ない。だが自らの民を食い滅ぼしたこの青年神は、空腹と満腹についての何かを学んだのかもしれない。
半ば目を閉じて夢見るように考え込んでいた怪物は、ゆっくりとまた目を開けた。物欲しげに答える。
『ヒトの心臓が食べたい』
「っ!?」
そのあまりにも不吉な答えに、ケツァルコアトルは寒気を覚える。だが青年神はやはり屈託のない様子で、親切な様子で、ごく気軽に答えてやっていた。
「ヒトは、今はいないんだ。これからまた作ろうと思ってんだけど」
『そう。残念だわ』
本当に残念そうに呟いた怪物が、また獲物を付け狙う目付きでケツァルコアトルを眺め回す。思わず武器に手が伸びそうになった時、青年神が明るい声で話題を変えた。
「この辺りは眺めが良いね。いつもここに居るの?」
『そうね。ここで体を伸ばすと、気持ちが良いの』
「そう、とても良いね。体を伸ばすのはすごく良い気分だよね」
明るく答えて自分も少し伸びをした青年神が、ちらりとこちらに目を向けた。だがケツァルコアトルには何も言わずに、また怪物へと笑顔で話しかける。
「今は帰るけど、またお話ししに来たいな。いい?」
『ええ、いつでも』
怪物の答えに青年神は嬉しげに笑い、弾んだ声で礼を言う。怪物もつられたようにごろごろと笑い声を立てて、別れの挨拶をした。
『ご機嫌よう』
「うん、またね」
青年神の親しげな笑顔に、怪物もすっかり安心しているらしい。不吉な唸り声を残して、醜い巨獣はゆっくりと水底へ体を沈めていった。それを見送った青年神がさっさと天に戻り始めるので、ケツァルコアトルも慌てて後を追う。
ケツァルコアトルのことなど忘れたような顔で前を向いていた青年神が、急にこちらを振り向いた。ちらりと元来た方に目を向けてから、あっさりした声音で尋ねてくる。
「なあ、あの怪物どうする?」
「え?」
思いがけない言葉にケツァルコアトル不意を突かれる。青年神はじれったそうに言葉を継いだ。
「だって、あんなのが居るままじゃ、民が安心して住めないじゃないか。なんとかあいつを取り除かないと、民を創ることもできないだろ」
「それは、そうだが」
だがこの青年神は、あの怪物とあんなにも親しげに話をしていたのに。だと言うのに青年神は掌を返したように、平然と残酷な算段を始めた。
「思うんだけどさ、あいつの体を引き裂いて、それで大地と天を作れば良いんじゃない? あいつ大きいから、大きさは足りそうだし」
まあ僕も考えとくから、お前も考えろよな。さらりと命じた青年神が、さっさとこちらに背を向けてしまう。その細身の後ろ姿を茫然と見送ってから、ケツァルコアトルはまた怪物の居る海に目を向けた。
あれは恐ろしい、邪悪な怪物だ。取り除かねばならない障壁だ。それは確かで明らかなことだ。ケツァルコアトルにも、それはよく分かっている。
だが、その怪物を騙し丸め込んで安心させ、その寝首を掻こうとしている青年神も、また邪悪なのではないのか。その片棒を担ごうとしている自分も、同様なのではないか。そんな恐ろしい思いが胸を吹き抜けて、思わず自分の装束を握りしめた。
「何をぐずぐずしてるんだよ。入るなら入れよ」
洞窟の中から掛けられた声に、はっとして背筋を伸ばす。少し躊躇ってから、ケツァルコアトルは覚悟を決めて中に足を踏み入れた。
「お前か。何か用?」
筵の上に横になっていた青年神が、問い掛けてきながら身を起こす。種々様々の薬草の匂いを感じながら、あまりにも大きい欠落からつい目を背けながら、ケツァルコアトルは不躾にならない言葉を探した。
「傷の、具合は?」
「大したことはない」
青年神はそう言うが、強がりであることは見て取れる。傷が疼くのか声の響きは少し不自然で、暗がりに居ても分かるほどに顔色も悪い。だが青年神は、なんでもなさそうな声を出した。
「覚悟はしてた。片足だけでまた大地が創れたんだから、別にいいだろ」
「しかし……」
「僕の力量不足だ。お前が気にすることじゃない。こう言えば満足か?」
そうじゃない、と訴えたかった。ケツァルコアトルの自己満足のために、ここに来たのではないのだと。
ケツァルコアトルはただ、この青年神のことが気掛かりで、心配で。他の神々と離れて独りで療養している彼の役に、少しでも立ちたかったのだ。
けれど、心のどこかでは分かっていた。彼はケツァルコアトルをを望みはしないのだと、決してケツァルコアトルを頼ってはくれないのだと。
その事実にまた絶望を感じながら、目を背けていた青年神の傷に目を向けた。永遠の欠如、失われた片足のあった場所に。
薬草と布で青年神が自ら手当てをしたらしい傷は、生々しい傷口を曝け出してはいない。けれどあるべきものが、ほんの少し前までは確かにあったその部位が、無いことはとても惨たらしく不自然に思えた。
だから思わず、ケツァルコアトルは謝罪していた。言葉が口をついていた。
「すまなかった。守ってあげられなくて」
あんなにも近くにいたのに、すぐ傍で共にあの怪物と戦っていたのに。あの怪物の醜怪な口が美しい足を食い千切るのを、自分はみすみす許してしまった。
いつもそうだ。自分は、彼を守ってやることさえできない。彼がみすみす穢され貶められるのを、自分は何もできずにいつも見ているばかりだ。力量不足なのは、自分の方なのだ。
改めて打ちひしがれながら、青年神の顔に目を戻す。そして、はっとした。
青年神は驚いたように、不意をつかれたように、目を瞠っていた。だが、ケツァルコアトルと目が合うと、我に返ったらしい。その美しいかんばせに、見る間に怒りが上った。
「あの……」
「出て行け!」
その思いがけない感情に狼狽えるケツァルコアトルを、青年神は怒鳴りつけた。美しく愛らしいその顔立ちを怒りに歪め、怒鳴り散らす。
「僕はお前に守られるほど弱くなんてない! 僕は強いんだ、誰にも守られも助けられもしない! 僕を守るだと、ふざけるなよ!」
激しい怒りに圧倒され、言葉も出ない。立ち竦むケツァルコアトルに、青年神は激しい怒りをぶつけるのをやめなかった。
「お前なんかに守られる筋合いはない! お前に限らず誰にもだ! 馬鹿にするな!」
「いや……」
「失せろ!」
怒鳴りつけられても、ケツァルコアトルは動けなかった。怒りの目でこちらを睨みつけている青年神を、呆然と見つめ返す。
だが少しずつ、理解が追いついた。完全に理解はできないものの、うっすらと悟った。
この青年神は、彼自身のことを「弱い」とは決して思いたくないのだ。強い存在として、彼自身を認めていたいのだ。それを否定されたと思い、青年神はこうして憤っているのだ。ならば、そんなつもりはないと伝えなくては。
「悪かった、馬鹿にするつもりなんかじゃなかったんだ。謝るから、許してほしい」
心を込めて謝罪すると、まだ息を荒げている青年神が疑うような目で見据えてくる。その視線を受け止めた。
束の間、互いに何も言わなかった。青年神は推し量るようにケツァルコアトルの目を見つめ、ケツァルコアトルもその視線を静かに受け止めた。
ややして、青年神が出し抜けに微笑んだ。美しいかんばせを、綺麗な笑みで彩った。だがケツァルコアトルには、その笑みに安堵する暇さえ与えられなかった。
「じゃあ、ショロトルを呼んでこい」
「っ!」
綺麗な瞳に残忍な光を宿して青年神が言い捨てた言葉に、息を飲む。どうしてと聞くことさえできないケツァルコアトルを、甘いとさえ呼べそうな声が残酷に急かした。
「早くしろよ」
重い足を引き摺るようにして呼びに行った兄弟神は初めは面倒臭そうな顔でケツァルコアトルに応対したが、青年神が会いたがっていることを伝えると思案げな顔をした。そして、にやりと笑う。
「仕方ねえな」
様々な感情を含んでいるその笑みがケツァルコアトルには不快だったが、他にどうしようもない。それを分かっているかのように、邪悪な兄弟神は洞窟への道中もつまらないことを喋り続けた。
「俺が居ないと寂しくて寝れないってか? まあ仕方ねえよな、俺がシてやらねえと満足できねえ奴だもんな。すーぐ擦り寄ってくるし、もっとちょうだいってオネダリするし、この間も……」
「もう黙れ」
「嫌だね」
にやっと不快な笑みを浮かべる兄弟神を殴り倒して打ち捨てていきたい衝動が、胸の中で沸き起こる。必死で自分を律しながら、ケツァルコアトルはやっとの思いで洞窟に辿り着いた。
声を掛けられる前に、気配に聡い青年神はやはりこちらに気付いたらしかった。中から不満げな声が聞こえてくる。
「遅い」
「そんなに寂しかったかよ?」
「別に?」
気軽に踏み込んでいくショロトルに、青年神はやはり気安い様子で返事をしている。青年神が手にしていた黒い大きな石を脇に置くので、ケツァルコアトルは反射的にそれに目をやった。どうやら、イツトリを磨いた鏡らしい。
半身を起こしていた青年神の傍に歩み寄ったショロトルが、思いがけないほどの優しい手つきでその頬を撫でる。ケツァルコアトルに見せつけるための動作だと分かっていても、目を逸らすことができなかった。
「傷が痛い」
ショロトルの邪悪な手を受け入れている青年神が、甘えた声を出す。くくっと喉の奥で笑ったショロトルが、薄気味悪いほどに優しげな声を出した。
「カワイソウにな。痛いのも、忘れさせてやるよ」
ケツァルコアトルがはっと身を強張らせるより、止めに入るより早く。ショロトルが青年神を筵の上に押し倒し、その上に乗りかかった。青年神は、それを咎めもしない。
「早くしろよ。何のために呼んだと思ってるんだよ」
「そんなに欲しかったか?」
「欲しいよ」
随分スナオだなとショロトルが笑い、その手がふしだらな意図を持って触れたらしかった。青年神が甘い声を上げるので、茫然としていたケツァルコアトルも我に返る。何も言えないまま踵を返し、逃げるように洞窟を飛び出した。
甘やかな声は、いつまでも耳にこびりついて離れなかった。
淫らに乞われるがままにキモチイイことをしてやって、ショロトルも満足して。心地良い気怠さに浸っていると、眠っているとばかり思っていた青年神が身じろいだ。そちらへ目を向けると、意外にもはっきりとした目をしたそいつは洞窟の外に目を向けている。
どうしたと尋ねてやるほどの興味はないから、ショロトルは黙ってそいつの横顔を眺めていた。その視線に気付いたというわけでもないだろうが、青年神が独り言のように呟く。
「僕、なんであの高い処に行きたかったんだっけ」
「はぁ? 俺が知るかよ」
知るよしもないから気軽に答えると、大して機嫌を損ねてもいない視線が返された。いつもの通りの生意気な返事をされる。
「お前なんか最初からあてにしてないけど、本当に役に立たないな」
「うるせえな、泣かすぞ」
もう一度組み敷いてやると、青年神は機嫌の良い笑い声を立てた。首に腕を絡ませてきて、艶やかな目をして誘う。
「しようよ、もっと」
また何回かキモチイイことをして、その汗が冷えた頃にまた始めて。そんなことを繰り返し、またうとうとしていた時、不愉快な気配が洞窟に入ってきたのを感じた。
「ショロトル」
「んだよ」
仕方なく目を開けてやると、感情を抑えた目をした兄弟神が見下ろしている。隣で眠っていたらしい青年神も、不機嫌な声を上げて身じろいだ。
「冥府に降りる。一緒に来い」
「はぁ? 勝手に行けよ、そんなの」
「お前が一番詳しいと聞いた」
それはどう考えてもこの青年神のせいなのだが、療養中のそいつを連れて行くのは善良ぶっている兄弟神としては気が引けると見える。ごねても引き摺っていかれそうな勢いだったので、ショロトルは渋々起き上がって装束を身につけることにした。
間近で交わされた会話に目が覚めたらしい青年神も身を起こし、まだ眠り足りなそうな顔をしてイツトリの鏡を引き寄せている。その烟る鏡面に目を落としている横顔を、いけ好かない兄弟神は切なそうに見つめている。それがショロトルには少しだけ愉快だったから、視線を断ち切るように割り込んで青年神の乱れた髪を撫でた。
「サビシくて俺を呼んだのに、留守にして悪いなあ。帰ってきたら、またシてやるよ」
とびきり甘く囁いてやるが、身勝手なそいつはもうそうした気分ではないらしかった。煩わしげに手を払いのけ、気の無い返事を寄越す。
「帰ってこなくても良いよ、別に」
「生意気言うと、もうシてやらねえぞ」
「良いよ、他の奴とするから」
「ショロトル、行くぞ」
業を煮やしたらしい兄弟神に呼ばれ、仕方なくショロトルも立ち上がる。だが洞窟を出しなに、またちらりと振り返った。
自分勝手な青年神は、もうこちらには興味を失っているらしい。また、イツトリの鏡を磨き始めていた。
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