白き神よ永遠に

大空 ヒロト

文字の大きさ
上 下
7 / 24

11月のお祭り⑦

しおりを挟む
 休日の学校は誰もいない…………わけではなく勿論職員室に行けば誰かいるだろうが、普段とは違った暗いつめたい感じがする。

 「まさかサンダルまで用意してるとは」

 俺達はそんな寒いトイレで着替えを終えると教室へと戻った。すると中ではまた何やら新しいことを始めていた。

 「おい、今度はなにやってんだ」

 「ゆ、ゆうとくん、これ」

 赤井さんはそう言って虫眼鏡みたいなもんを渡してきた。よく見るとそれは円に持ち手がついて中に紙? 布? よく分からないが薄いものがはられていた。

 「あれ、なんだっけこれ」

 「あ、これ僕知ってるよ」

 「そうなん? 絶対見たことあるんだけど思いだせん」

 俺はなんとも歯がゆい、もどかしい気がしてうねうねとうねっていると見せてくれた赤井さんが教えてくれた。

 「金魚すくい、知ってる?」

 「そうか! 知ってる知ってる。あれだよね、それでえーと金魚をすくうんでしょ?」

 にこにこしながらぶんぶんと頭を振っているのでどうやら当たったらしい。金魚すくいか、勿論知ってはいるけれどやったことはない。

 「ぐぅぅぅぅ…………あがぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「な、なんだよ!」

 先にその金魚すくいをやっていためぐるが急に大声をあげた。そして穴の空いたすくうやつ? を放り投げている。どうやら上手く出来なくて爆発したようだ。

 「なんだめぐる、こんなことも出来ないのか?」

 「う、うっさいわね、じゃああんたもやってみなさいよ!」

 俺はめぐるが渡してきた虫眼鏡(仮)を受け取ると改めて見直してみた。

 「確かにうすいな。これですくえんのか?」

 ぶつぶつ言いながらも虫眼鏡(仮)を潜水させていく。破れないように慎重に金魚の下に持っていくと俺は勢いよくすくいあげた。

 「はあぁ!」

 「おぉ!」

 みんなの視線が俺のすくいあげたものに注がれる。

 「おぉ! ぉ……………………穴、あいてるね」

 「なにぃ!?」

 確かに確認するとそこに金魚の姿はなく大きな穴だけがあいていた。くそっ、思ったより難しいな。

 「アはははははぁーはーあはははははは」

 横でめぐるはこれでもかと言わんばかりに笑い転げていた。

 「そこまで笑うことないだろ、初めてなんだから」

 「そ、そうね…………ごめ、あはっ…………、ごめんなさい」

 なんか謝られてんのにすげぇムカつくんだけど。俺だけなのかなそう思うの。

 「先輩、ちょっとそこにある虫眼鏡改をとってもらっていいですか」

 「え、むしめ……あぁこれね、はい」

 先輩から受け取ると俺は鋭く構え精神の統一に入った。すべてを感じろ、無になるんだ俺。隣のニヤニヤした顔は気にするな。

 そんなよく分からない雰囲気にのまれたのか、みんなが息を飲んでみまもった。そして、

 「ハアァァァ!」

 思いっきり突っ込んですくいあげた。そしてそこには…………またしても大きな穴だけだった。

 「あ? は、あははははははぁぁぁ」

 それをみてまた笑い出すめぐる。だが見ておけよこれが俺の実力だ。確かに穴はあいているが問題はそこじゃない上だ。

 「え、あれ」

 先輩がそれに気づいたようで天井付近を指差した。そこにはなんと舞い上がった金魚がいるではないか。

 「あらよっと」

 俺が水の入った容器を下に持っていくとポチャンと落ちて泳ぎ始めた。

 「な、なによそれ!?」

 「おぉーすごいね佑斗君」

 「でしょ? めぐる、俺は一匹すくったかんな」

 めぐるに向けて最大の笑顔で言ってやった。どうやら相当悔しいようでうぅぅぅ、と唸っているけど反論はしてこない。

 「美羽! ちょっとそれ取って」

 赤井さんに虫眼鏡(仮)を取ってもらうとまたやりはじめた。だけどやっぱり上手くいかないようで騒いでいる。俺達はそんなめぐるを見て苦笑いをするしかなかった。

 そんななかふと、俺は窓の外を見た。もう集まったのが15時ごろだったこともありすっかり暗くなっている。今さらだが一体どうやってこんな時間までこの教室を借りることができたんだろうか。

 まだ金魚と格闘しているめぐるをみる。どうせ、色々と適当な事をいって無理やり納得させたんだろうなぁ。まぁ、そこがあいつの長所と言われればそれまでなんだけど、あ……また、失敗してる。

 「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

 あぁ、またみるみる不機嫌に……。と、視界に一瞬白い物がうつった。再び窓の外を見ると雪が降り始めていた。

 「雪、か…………」

 16年前から始まった原因不明の冬。と、ほとんどの人は思っている。でも、実際はなにかが起こらなければこんなことにはならない。

 「知っているのは……………………か、」

 ん、俺今変なこと言ったような気がする。変なパーティーのせいで俺までおかしくなったら笑えない。そろそろコツでも教えやるかとめぐるにやさしく声をかえた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~

新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。 佐倉 かなた 長女の影響でエロゲを始める。 エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。 口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM 美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな 橋本 紗耶香 ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。 橋本 遥 ど天然。シャイ ピュアピュア 高円寺希望 お嬢様 クール 桑畑 英梨 好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク 高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才 佐倉 ひより かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】神様と縁結び~え、神様って女子高生?~

愛早さくら
キャラ文芸
「私はあなたの神様です」 突然訪ねてきた見覚えのない女子高生が、俺にそんなことを言い始めた。 それ以降、何を言っているのかさあっぱり意味が分からないまま、俺は自称神様に振り回されることになる。 普通のサラリーマン・咲真と自称神様な女子高生・幸凪のちょっと変わった日常と交流のお話。 「誰もがみんな誰かの神様なのです」 「それって意味違うくない?」

目指せ高嶺の華

紅美
キャラ文芸
よくある元風嬢上がりと元ホストじゃなく、羽ばたこうとする2人のラブを

群青の空

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
キャラ文芸
十年前―― 東京から引っ越し、友達も彼女もなく。退屈な日々を送り、隣の家から聴こえてくるピアノの音は、綺麗で穏やかな感じをさせるが、どこか腑に落ちないところがあった。そんな高校生・拓海がその土地で不思議な高校生美少女・空と出会う。 そんな彼女のと出会い、俺の一年は自分の人生の中で、何よりも大切なものになった。 ただ、俺は彼女に……。 これは十年前のたった一年の青春物語――

秘密兵器猫壱号

津嶋朋靖(つしまともやす)
キャラ文芸
日本国内のとある研究施設で動物を知性化する研究が行われていた。 その研究施設で生み出された知性化猫のリアルは、他の知性化動物たちとともに政府の対テロ組織に入れられる。 そこでは南氷洋での捕鯨活動を妨害している環境テロリストをつぶす計画が進行中だった。リアル達もその計画に組み込まれたのだ。  計画は成功して環境テロリストたちはほとんど逮捕されるのだが、逮捕を免れたメンバーたちによって『日本政府は動物に非人道的な改造手術をして兵器として使用している』とネットに流された  世界中からの非難を恐れた政府は証拠隠滅のためにリアル達、知性化動物の処分を命令するのだが…… その前にリアルはトロンとサムと一緒に逃げ出す。しかし、リアルは途中仲間とはぐれてしまう。 仲間とはぐれたリアル町の中で行き倒れになっていたところを、女子中学生、美樹本瑠璃華に拾われる。そして…… 注:途中で一人称と三人称が入れ替わるところがあります。 三人称のところでは冒頭に(三人称)と入ります。 一人称で進むところは、リアルの場合(リアル視点)瑠璃華の一人称部分では(瑠璃華視点)と表記してます。 なお、大半の部分は瑠璃華視点になっています。

薔薇と少年

白亜凛
キャラ文芸
 路地裏のレストランバー『執事のシャルール』に、非日常の夜が訪れた。  夕べ、店の近くで男が刺されたという。  警察官が示すふたつのキーワードは、薔薇と少年。  常連客のなかにはその条件にマッチする少年も、夕べ薔薇を手にしていた女性もいる。  ふたりの常連客は事件と関係があるのだろうか。  アルバイトのアキラとバーのマスターの亮一のふたりは、心を揺らしながら店を開ける。  事件の全容が見えた時、日付が変わり、別の秘密が顔を出した。

すみません!死んじゃいました!

まろまろマロン
キャラ文芸
工事の鉄骨に巻き込まれて死んでしまった命咲 雪、未練たらたら霊になってしまい成仏できず守護霊に、家族と周りの人を守りつつ未練をなくせ!

処理中です...