【R18】無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる

第8章 将軍夫婦の結末

第69話 革命の夜明け2

　同時刻、王太后の部屋にて――。

「なんだと……？」

　銀色の髪を高く結い上げ、紫色のきつい瞳をし、豪奢なドレスをまとった妙齢の女性――王太后が、声を上げる。

「王太后様、日の曜日の夜だというのに、城の周囲に騎士達が集結しているようです」

　王太后・国王付きの近衛筆頭である壮年の騎士・ベイリンが、彼女に向かって報告する。
　彼は、若い頃は手練れだったことが分かる、鍛え抜かれた大きな体躯をしており、顔には大きな傷が入っている。

「騎士の動向が怪しく思われます。秘密裏に進めていた、聖女であるという奴隷の少女と、国王陛下の儀式の邪魔をしたい勢力がいるのかもしれません……」

「その件は、国の中枢の者たちにしか伝えていないはずだ……！　裏切り者がいるというのか……！？」

「その可能性も考えた方がよろしいかと――」

　ぎりぎりと王太后は歯を鳴らした。
　
　彼女の息子である国王ジョワユースこそが、『真の王』であるということを証明するために、国中を探し出して見つけた金の瞳を持った少女。
　かつて、王太后の夫だった前・国王からの寵愛を受け、デュランダルを生んだカエルラ。
城から追い出した彼女が、別の男との間に設けていた少女――ラピスという名の娘をジョワユースにあてがうことは、はっきり言って不快だった。
　だが、それを我慢してでも、儀式をすませないと、自分たちの権威が危うい。

「そういえば、宰相シュタールは一体どこにいる……？」

　カエルラを追い詰めたくて、村を買収して奴隷にしたはずのラピスだったが、なぜだか宰相シュタールの屋敷で見つかっていた。

「まさかシュタールが何か画策しているのか？　……よもや、周りの者が全て怪しく思えてきた……城に残った騎士達を追い出し、防護には近衛兵だけで当たれ――！」

「はい」

　王太后は妖艶な笑みを浮かべる。

「ベイリン……お前のように、王家に忠実な騎士がまだ残っていて本当に良かったよ」

　頭を垂れる騎士・ベイリンの暗い表情を、彼女は知る由もなかったのだった。