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第7章 青焔将軍の妻

第58話 夫は嫉妬を隠せない3

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 屋敷にある客間へと向かった一行は、丸い机を取り囲むようにして座っていた。
 カエルラだけは、少しだけ席を外している。
 そのため部屋の中には、年長者からデュランダル、フィオーレ、イリョス、ローザと呼ばれた少女――以上の四人で過ごしていた。

「それで、どうしてイリョスがエスト・グランテに――?」

 彼女の問いに、夫が答える。

「俺が呼んだんだよ。フィオーレの身体のこととか、まあ色々気になったんでな――」

 ちらりと彼の方を、フィオーレは見た。

(やっぱりデュランダル様が……)

 デュランダルの発言にイリョスが頷いた。

「姫様の身体について気になることがある――それと、気落ちしている姫様を慰めてほしいと書状には書かれ――」

 がばっと身体を動かしたデュランダルが、少年イリョスに向かって叫ぶ


「てめぇ、馬鹿正直に色々喋ってんじゃねぇ――」


「あなたの方こそなんですか、いったい……正直言って、外交問題ですよ……」

 はあと、イリョスはため息をついた。

 それを見たデュランダルの苛立ちが増していく。


「初対面なのに、マジでむかつくガキだな」

「それはこちらのセリフですが……」


 牽制し始めた二人を見てフィオーレは、一つ提案をした。


「そうだ! 気を取り直しましょう!」


 ふふふと、フィオーレは微笑みながら部屋をいったん出る。

 器をいくつか載せた盆を持って、彼女は部屋の中に帰ってきた。


「果実に砂糖を混ぜて固めたお菓子です」


 色とりどりの菓子がのった器を、机の上にフィオーレは置いた。

 眉をひそめるデュランダルに向かって、彼女は告げる。

「砂糖の入っていない、果汁だけで作ったものもありますから、デュランダル様でも食べられると思います」

「へぇ、俺が食えるように準備してくれてたのか――」

 にこにこと笑う妻を見て、夫も機嫌をよくしていく。

(良かった。デュランダル様の調子が良くなったわ)

 そうして、幼馴染の少年に向かってフィオーレは続ける。

「イリョス。このお菓子、好物だったわよね、どうぞ食べて」

 彼女の発言に、デュランダルがぴくりと反応する。

「姫様、相変わらず、お菓子を作ったりなさっているのですね。だいぶ上手になられましたか? 貴女の味見によく付き合わされたのを思い出します――そういえば、あれはいつの話でしたか手を洗わないままお菓子を作った貴方様の――」

 耳だけ赤くしたイリョスが嬉しそうに返答した後、くどくどと話を続ける。
 
 フィオーレは返す。

「むぅ……相変わらずイリョスは説教ばっかりだわ……もう、とにかくお菓子を食べてちょうだい」

「ああ……わかりました。では、菓子を――」

 イリョスが菓子を摘まもうとしたところ――。


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