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第5章 家族のかたち
第43話 やり直したい過去6※
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「フィオ――どうして――?」
夫の問いかけに、妻は真剣に返した。
「デュランダル様が、誰に何を言われ続けてきたのか、想像もできませんが……私は、好きなんです。いつも、私のことを気持ちよくさせてくれて、頑張ってくれてるこの子のことが……」
フィオーレの言葉に、デュランダルは困惑しているようだった。
「でも、もう取り返しがつかないぐらい――俺は――汚れて――できることなら、お前にふさわしい男になるために、過去をやりなおしたいぐらいで――」
「デュランダル様――」
フィオーレは夫の言葉を遮った。
「じゃあ、貴方はこの子が汚れていると思ったままで、嫌いなままで良いです……だけど私は、あなたの身体の一部を大事にしたいから――私は大好きでい続けますね――」
そう言いながら、彼女は彼の萎茎をまた優しく撫で始めた。
「大丈夫です。どんな貴方だったとしても……いつもありがとう――」
フィオーレの脳内に何かがひらめく。
『どんな貴方だったとしても――私が、貴方のそばにいますから――』
(私、どこかで――)
彼女がデュランダルに触れていると――。
彼は紫色の瞳を見開いていた。
少しだけ彼の唇がわななく。
「夢で――いつも俺を――」
いつの間にか、フィオーレはデュランダルに抱き寄せられていた。
彼女の背中に回された彼の腕が、亜麻色の緩やかな髪を撫でる。
「やっぱりお前で間違いない――ずっと、俺を綺麗だと、どんな貴方のままでも良いと……そう言ってくれていたのは――」
「夢――?」
夫が何を言っているのかは、フィオーレには理解できなかった。
そうして、彼女の身体はそっとベッドの上に横たえられる。
「デュラン様……」
彼女は、デュランダルの頬を流れる涙をそっと拭う。
彼を見上げながら続ける。
「貴方のことを愛しています――」
だが、フィオーレの身体の上に乗っているデュランダルは、首を横に振った。
「急に不安になったんだ――ずっと思い出さないように気づかないふりをしてたってのに――過去を知れば、お前も俺を嫌うかもしれないと怖くなって――」
紫色の瞳から、涙が零れ落ちる。
フィオーレはその雫をそっと指で受け止めた。
「子どもの頃の貴方のそばにいてあげることは出来なかった。だから、これから、ずっと貴方のそばにいますから――どんな過去があったとしても、私は、貴方を嫌いにはなりません。それらの過去があるから、今の貴方がいるんです、デュランダル様――」
嗚咽をもらす夫の涙を、フィオーレは唇で吸い取る。
デュランダルは、ぽつりぽつりと呟いた。
「ある時から、あの女以外の女を夢に見るようになった――」
あの女とは誰のことだか分からなかったが、フィオーレは黙って話を聞いた。
「絶望しかなかった俺に、夢の中でいつも声をかけてくれる女がいた――二十年近く前に突然夢に出てくるようになったんだ――」
彼女の唇の端に、彼は唇を寄せた。
「お前がこの世に生を受ける前から、ずっと、お前は俺の近くにいてくれてたんだ――お前といつか会えると信じて、俺はずっとここまで生きてこれた――」
デュランダルは嬉しそうにフィオーレに声をかけてくる。
彼の話す内容がよくわからず、彼女は少しだけ戸惑った。
(よくはわからないけれど、デュランダル様の元気が出たなら良かった――)
ふふふと笑うフィオーレに、デュランダルが口づけを落とす。
そうして彼は口を開いた――。
「愛しいフィオーレ――今度は俺に、お前を愛させてくれ――」
狂おしそうに告げる彼は、彼女のドレスのリボンにそっと手を伸ばしたのだった――。
夫の問いかけに、妻は真剣に返した。
「デュランダル様が、誰に何を言われ続けてきたのか、想像もできませんが……私は、好きなんです。いつも、私のことを気持ちよくさせてくれて、頑張ってくれてるこの子のことが……」
フィオーレの言葉に、デュランダルは困惑しているようだった。
「でも、もう取り返しがつかないぐらい――俺は――汚れて――できることなら、お前にふさわしい男になるために、過去をやりなおしたいぐらいで――」
「デュランダル様――」
フィオーレは夫の言葉を遮った。
「じゃあ、貴方はこの子が汚れていると思ったままで、嫌いなままで良いです……だけど私は、あなたの身体の一部を大事にしたいから――私は大好きでい続けますね――」
そう言いながら、彼女は彼の萎茎をまた優しく撫で始めた。
「大丈夫です。どんな貴方だったとしても……いつもありがとう――」
フィオーレの脳内に何かがひらめく。
『どんな貴方だったとしても――私が、貴方のそばにいますから――』
(私、どこかで――)
彼女がデュランダルに触れていると――。
彼は紫色の瞳を見開いていた。
少しだけ彼の唇がわななく。
「夢で――いつも俺を――」
いつの間にか、フィオーレはデュランダルに抱き寄せられていた。
彼女の背中に回された彼の腕が、亜麻色の緩やかな髪を撫でる。
「やっぱりお前で間違いない――ずっと、俺を綺麗だと、どんな貴方のままでも良いと……そう言ってくれていたのは――」
「夢――?」
夫が何を言っているのかは、フィオーレには理解できなかった。
そうして、彼女の身体はそっとベッドの上に横たえられる。
「デュラン様……」
彼女は、デュランダルの頬を流れる涙をそっと拭う。
彼を見上げながら続ける。
「貴方のことを愛しています――」
だが、フィオーレの身体の上に乗っているデュランダルは、首を横に振った。
「急に不安になったんだ――ずっと思い出さないように気づかないふりをしてたってのに――過去を知れば、お前も俺を嫌うかもしれないと怖くなって――」
紫色の瞳から、涙が零れ落ちる。
フィオーレはその雫をそっと指で受け止めた。
「子どもの頃の貴方のそばにいてあげることは出来なかった。だから、これから、ずっと貴方のそばにいますから――どんな過去があったとしても、私は、貴方を嫌いにはなりません。それらの過去があるから、今の貴方がいるんです、デュランダル様――」
嗚咽をもらす夫の涙を、フィオーレは唇で吸い取る。
デュランダルは、ぽつりぽつりと呟いた。
「ある時から、あの女以外の女を夢に見るようになった――」
あの女とは誰のことだか分からなかったが、フィオーレは黙って話を聞いた。
「絶望しかなかった俺に、夢の中でいつも声をかけてくれる女がいた――二十年近く前に突然夢に出てくるようになったんだ――」
彼女の唇の端に、彼は唇を寄せた。
「お前がこの世に生を受ける前から、ずっと、お前は俺の近くにいてくれてたんだ――お前といつか会えると信じて、俺はずっとここまで生きてこれた――」
デュランダルは嬉しそうにフィオーレに声をかけてくる。
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ふふふと笑うフィオーレに、デュランダルが口づけを落とす。
そうして彼は口を開いた――。
「愛しいフィオーレ――今度は俺に、お前を愛させてくれ――」
狂おしそうに告げる彼は、彼女のドレスのリボンにそっと手を伸ばしたのだった――。
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