【R18】無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる

第5章 家族のかたち

第41話 竜の血と聖女10※

　鏡の前に立つデュランダルに、裸のまま抱きしめられたフィオーレ。
　彼の首にぎゅっと抱き着きながら、彼女はにっこりと微笑む。


「デュランダル様がご自身を慰めているところを、今度は私が見ますね――」


「ああ――？」


　フィオーレを抱きしめたままのデュランダルはたじろぐ。

　彼は彼女を床に降ろす。そうして、妻の顔を見ながら口を開いた。


「姫さんは、出会った頃から俺がしごいてる姿は何度か見てるはずだ――今さらわざわざ見せるもんでもないだろ？　嫌な思い出もあるし、あんまり人に見せたくねぇ――」


（嫌な思い出――？　確かに、まだデュランダル様を受け入れる前に少しだけ見たことはあるけれど――）

　わりと真面目な顔をした夫に見下ろされたフィオーレは、口をとがらせる。
　そうして夫を黄金の瞳でじっと見つめた。

「私ばっかり見られてずるい……デュランダル様が、してるのを見たい……です」

　そう言うと、彼女は思い切って彼の身体から離れる。
　続いて、デュランダルの着ているシャツの釦を外し始めた。

「うおっ――どうした、フィオーレ――！」

　夫のシャツの釦を全て外し終えたフィオーレは、引き続き、彼の下衣のベルトをカチャカチャと外しはじめる。

「おい――フィオ――」

「見たい……」

　デュランダルが名を呼ぶと、フィオーレはぽつりと呟いた。

「ああ――？　お前が積極的なのは嬉しいが――まだあきらめてなか――」

　夫を見上げる彼女の黄金の瞳には涙がたまっていた。

「な、な――どうした、フィオ――？」

　デュランダルは動揺しはじめる。

　フィオーレはこぼれる涙を手の甲で拭った。

「デュランダル様は、私のことが嫌いだから見せたくないんですか――？」

　先ほど、彼女の自慰行為見たさにデュランダルが言った「俺のことが嫌いだから、見せられないのか」尋ねた言葉が、そっくりそのまま、彼に返ってきてしまった。
　ぽろぽろと涙を流す妻を見下ろす彼は、首に手を当てため息を吐く。


（私の方こそ、私のことをデュランダル様がそんなに好きじゃないから見せたくないのかななんて思ってしまった……私のわがままで、嫌な思い出があるというデュランダル様に無理強いは出来ない――）


　彼が自分のことを嫌うことなんてあるはずはないとは思ってはいたが――しばらく地方に行っていた夫と再会したフィオーレは、彼と会えずに抱いていた不安や我慢といった思いが、一気にこみあげてきてしまっていた。
　久しぶりに会った夫に対して、彼女はわがままになってしまっていると自身で感じてしまう。


「デュラン様、ごめんなさい――無理にしなくて良いんで――きゃっ――――！」


　突然、彼女の身体が宙に浮いた――。


「お前に泣かれたんなら、仕方ねぇか――」