【R18】無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる

第5章 家族のかたち

第38話 竜の血と聖女3※

　翌朝――。


　フィオーレは、ちょっとだけ夫であるデュランダルの扱いに困っていた。


「フィオーレ……お前はなんでそんなに俺をおかしくさせるんだよ？」


　寝台の上、寝転がるフィオーレの身体の上に乗ったデュランダルが、熱っぽく彼女に訴えかけてくる――。
　もちろん二人は昨晩愛し合った姿――つまるところ裸のままだった――。

（昨日は一晩中激しかったのに――朝になっても、デュランダル様が落ち着いてくれない――！）

　藍色の短い髪に、紫色の綺麗な瞳をした端正な顔立ちの夫。
　彼から見つめられ、フィオーレの心臓は鳴りやまない。
　デュランダルの両手に顔を挟まれたフィオーレは、身動きがとれずにいた。
　白いシーツの上には、彼女の亜麻色の緩やかな髪が流れている。

「えっ……私は何も……きゃうう……んんっ――」

　突然半開きにしていたフィオーレの唇に、デュランダルが同じようにして唇を重ねてくる。そのまま彼女の口の中に彼の舌が侵入し、しばらく互いの舌を絡ませ合った。

「ふあっ――あっ――あ――」

　いったん互いの顔が離れると、デュランダルがフィオーレを見つめる。

「何度抱いても飽きたりねぇ……――離れてる間、お前に変な男が寄ってきてるんじゃないかって、気が気じゃなかったんだ――はあ……頼む――フィオーレ――俺以外の男に優しくしないでくれ」

　フィオーレの開いた口からのぞく、苺のように可愛らしい舌を、デュランダルの唇が吸い上げる。

「あっ……んっ……ふあ……あ――」

　唇が離れた折に、フィオーレは夫に向かって訴える。

「わ、わたしに――そんな男の人は……いない――あっ――あっ――あ――」

　フィオーレの開いた口に、デュランダルの舌が何度も挿入を繰り返す。まるで、秘部に局部を抽送していうような動きに、フィオーレは快楽におぼれるように喘いだ。

「お前が知らないだけで、いるかもしれないだろう？　屋敷の警護は今までよりも強固にしていたが――ああ、フィオ――俺のことをどう思ってるのか、教えてくれ――なぁ？」

「あっ、んっ――んぅっ……」

　しばらく舌を弄ばれながら、フィオーレは夫に対しての悩みを頭に浮かべた。

（婚礼の儀以降、私の気持ちの確認をデュランダル様がずっとしてくる……）


　数月前、結婚式で「最愛の夫」だとデュランダルに告げたフィオーレだったが――。


　それ以来、彼はいつもフィオーレに気持ちの確認をしてくるのだった――。

（何回も同じことを答えるのは恥ずかしい……）

　フィオーレは黄金の瞳を潤ませ、デュランダルを見つめながら伝える。

「デュランダル様は――私の――」

　彼女が言いかけた時――。




「デュランダル様！　大変ですよぉ！」




　二人の寝室へと許可なく闖入者が現れたのだった――。

　声の主は、デュランダルの部下で屋敷の警護を担当している、ひょろりと細長い騎士エムジーだった。

（はわわわわわ――は、裸、二人とも、裸――――！）

　動揺するフィオーレの身体を隠すようにしてデュランダルが、騎士エムジーの方を振り向いた。
ものすごく不機嫌な調子でデュランダルが続ける。

「しょうもねぇ理由だったら、マジで容赦しねぇぞ――」

 エムジーは緊迫しているような、ちょっと愉快そうなような声の調子で叫ぶ。


「デュランダル様に会いたいって言ってる女の人が現れたんですよ！！！」


　フィオーレは目を白黒させる。

「デュランダル様に会いたい女の人――？」

　二人の情事は、いったんここで中断されたのだった――。