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第4章 結婚後の求婚
第35話 青焔の騎士は、無垢な花嫁に囚われる9※
しおりを挟む(あわわ、同い年ぐらいの女の子が――)
まだ気だるい身体のフィオーレは、二人の結合部を慌ててドレスで隠した後、デュランダルの身体を押しのける。そうして、彼女の中から彼の萎茎がゆっくりと抜かれるとともに、彼女は身体を起こした。
デュランダルがやや不機嫌そうに、藍色の髪をかいている。
少女は恥ずかしそうな声で、二人に声をかけてきた。
「む、無理矢理とかではないのなら……」
彼女の言葉に、フィオーレは咄嗟に否定する。
「だ、大丈夫です。その、私たちは夫婦で――その、気になさらないでくださ――」
フィオーレはそこで言葉につまった。
(この女の子……)
綺麗なドレスを身に着けてはいるが、首に奴隷を意味する首輪をつけている。
(不思議な出で立ちね――)
そうして、少女とフィオーレの視線が出会う――。
その少女の瞳の色は――。
「――黄金の――」
フィオーレと同じ、シトリンのような美しい金の瞳をしていたのだった。
少女の方も驚いたように、フィオーレのことを見ている。
そうして、フィオーレにはもう一つだけ気になったことがあった。
それは彼女の――。
「藍色の髪――」
少女は夜のように美しい藍色の長い髪をしていたのだった。
フィオーレは夫の方を振り返る。
「な――」
デュランダルも呆然として、少女の姿を見ていた。
(デュランダル様と同じ髪の色――)
三人がその場で固まっていると――。
「ラピス、どこにいる――?」
そこに、夫婦の聞きなれた声が聴こえた――。
三人の前に現れたのは――。
――男性にしてはやや長い銀色の髪に、デュランダルと同じ紫色の瞳を持った、やや中世的な顔立ちをした青年――。
「シュタール……お前、なんでここに――?」
エスト・グランテ王国の宰相にして、デュランダルの従兄弟兼親友のシュタールが現れたのだった。
「デュラン……」
彼は驚いた様子で、デュランダルを見つめる。
そうしてシュタールは、ラピスと呼ばれた少女に声をかけた。
「ラピス、僕を置いて勝手に行くのは辞めてって、いつも言ってるよね――?」
「ご、ごめんなさい、シュタール様……」
藍色の髪の少女は、シュタールに謝罪する。
「まあ良いか――」
そうしてシュタールはラピスを背に隠すようにして、夫婦の前に立つ。
「こんばんは。こんなところで、相変わらずところ構わず仲が良さそうで何よりだよ――」
にこやかに笑うシュタールとは対照的に、デュランダルは怪訝な顔をしている。
「シュタール、その奴隷は誰だ――?」
シュタールは笑みを崩さずに答える。
「僕の家の奴隷だよ――たまに夜に一緒に散歩してるんだ――」
「奴隷制度に反対を唱えているお前が奴隷を――?」
「まあ、僕にも色々あるんだよ、デュラン」
フィオーレは二人の会話を聞き、やはりシュタールは何を考えているのか分からない人物だと感じた。
「シュタール、その奴隷は――」
デュランダルの言葉をシュタールは遮る。
「おおかた、酔っ払ったデュランをフィオーレ姫が迎えに来たけど、騎士とはぐれて馬車がなく、二人で歩いて帰ってるといったところでしょう? 僕の屋敷の馬車に乗って、家に帰りなよ」
(これ以上デュランダル様が尋ねても、シュタール様は答えてはくれない気がする)
そうして、デュランダルとフィオーレの二人は、シュタールの屋敷の馬車で家に帰ることになったのだった――。
藍色の髪に黄金の瞳をした奴隷の少女ラピスの存在が、夫婦二人の人生にも大きく関与してくるとは――この時のデュランダルとフィオーレは気づくよしもなかった――。
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