【R18】無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる

第2章 蜜月

第11話 夫は妻を振り向かせたい（前編）2※

「そう言われると、そうだな……俺が女といると、都合よく現れるんだよな、お前はさ」

　シュタールの話を、デュランダルは否定するどころか肯定する。

「この間なんて、デュランダルは自分が将軍職であることを忘れたのかと……仕事中に女性武官を執務室に連れ込んで――」

　饒舌だったシュタールが、急に口をつぐんだ。
　フィオーレの胸の内は、今の話でもやもやと曇ってしまう。

（デュランダル様は私にだけ優しいわけじゃない……妻である私にだけ優しいと勘違いしそうだった……）

　しゅんとしたフィオーレの様子に気づいたらしいシュタールが、デュランダルに優しく提案した。

「君が奥方に嫌われてしまうような話はやめようか？」

　デュランダルは眉をひそめる。

「なんで俺の話をしたら、こいつに嫌われるんだよ？」

「本当に分かってないの？　相変わらず、女性の気持ちに疎い男だね、デュランダル、君ってやつは――」
 
「ああ？　意味わかんねぇな……」

　ため息をつくデュランダルは、本当に分かっていなさそうだった。
　彼は目の前のフィオーレの落ち込む様子に気づけない。

「今日は、黄金の瞳を持ったお姫様に挨拶に来ただけなんだ」

　にっこりと微笑みながら、シュタールがフィオーレとデュランダルに話かける。　

「我ら竜の血を引くとされているエスト・グランテの王族にとって、オルビス・クラシオンの王族フィオーレ姫は特別な方だ。姫を大事にね、デュランダル――それじゃあ」

　そう言って、シュタールは元来た道を去っていった。

「本当に挨拶に来ただけみたいだな――フィオ？」

　デュランダルは、やっと、落ち込むフィオーレに気づく。

「ああ？　なんだ？　いや、そうか――」

　彼は何かに気付いたようだった。

「泣くのが分かってたから、部屋を出て池に来たって言ってたな……」

　彼女が黙っているのを、当初の理由の方が原因だとデュランダルは解釈したようだった。


「フィオ、ほら、俺の方を見ろ――」


　右手でフィオーレの顎を掴むと、デュランダルは彼女の唇を食んだ。
　そのまま、彼の舌は彼女の歯列を柔らかくなぞっていく。
　デュランダルの左手が、フィオーレの背を撫でる。
　彼の右手は彼女の左の乳房を包みこみ、愛撫を始めた――。

「っん、あ――んっ――あ――」

　デュランダルの淫らな舌遣いと手つきが気持ちよくて、フィオーレはそのまま快楽に身を任せそうになる。
　彼の舌が、彼女の口の中に向かおうとしたのだが――。

　デュランダルの胸を、フィオーレは両手で突き飛ばした。
　互いの唇が離れる。

「っつ……」

　彼女の歯が当たったのか、彼の口の端に血がにじんでいた。

　フィオーレは声をあげる。

「や、やめてください……！　こんなことされても、嬉しくないです！」


「ああ？　さっき、お前も気持ちいいって――自分から身体動かしてたの、忘れたのかよ……？」

　デュランダルは少しだけ苛立っているようだった。
　それでも、フィオーレは引けなかった。彼女はすっくと立ち上がる。

「さっきのことは忘れてください！」

　彼女はデュランダルを見下ろしたまま訴える。

「なんで……怒ってるんだよ？」

　フィオーレがデュランダルを見ると、彼は本当によく分かっていないようだった。
　彼女は自分でも感情が制御できないで、混乱してしまう。

「自分でもよく分からないけど……私、私は――」

　そうしてフィオーレは叫んだ――。



「デュランダル様みたいな男性は、好みじゃないんです！！！」



　彼女の声を聞いて、雀たちが一斉に飛び立ったのだった――。