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第6話① お兄ちゃんは、夜這いの言い訳が下手すぎます
しおりを挟む懐かしい夢を見ていた。
私よりも大きいけれど、今ほど逞しくはない頃のシルヴァとの思い出。
銀色の短い髪に、碧色の瞳をした美少年。
すごく綺麗な顔立ちだけど、不愛想で無口な幼馴染のシルヴァお兄ちゃん。
昔から伯爵家に仕えてくれている家の子どもで、いつも私の世話をしてくれていた。
幼い頃の私は、彼にすごく懐いていたのを覚えている。
「シルヴァお兄ちゃん、ずっと一緒にいてリモーネのことを護ってね、約束よ」
「ああ、約束するよ、リモーネ。ずっとお前のそばに仕えて、ずっとお前のことを護るよ――たとえお前が誰と結婚しようと、お前の夫になる人と共に、お前のことを護り続けるよ――」
そう言って、めったに笑わないシルヴァは、少しだけ寂しそうに私に笑いかけてきていた。
私は母親を早くに失くし、忙しい父に迷惑をかけたくなくて、その頃から自分の意見を言わずに我慢することが多かった。
そう、自分の気持ちに蓋をするのに慣れてきてしまっていたのだ。
自分の心を守るために。
だけど、父の代わりにシルヴァがいつも話を聞いてくれていた。
彼にだけ、唯一自分の本心を伝えることが出来ていたのだ。
ずっと私のそばにいるというシルヴァだったが、彼が大人に近づくにつれ、そうはいかなくなった。
あれは彼が、全寮制の騎士学校の入学する頃のことだったはずだ。
「リモーネ、また騎士の絵本を読んでいるのか?」
「うん……だって立派な騎士様、カッコいいんだもの……シルヴァお兄ちゃんは、もうすぐこの家から出て行っちゃうのね……」
「ああ……リモーネがよくいう立派な騎士様になって、お前のもとに必ず帰ってくるよ」
(本当は寂しいから行かないでほしい)
そう言いたかったけれど、迷惑がかかるのも分かっている。
ぐっと胸の奥深くに、その時の私は本心をしまったのだ。
結局、本心は語れないまま――彼が騎士学校に向かう日が来た。
当日、シルヴァを笑顔で送ろうと思っていたはずなのに、残念なことに私は熱を出してしまったのだった。
かなりの高熱だったようで、今でもその前後の記憶が曖昧だ。
そんな病床の自分のもとに、彼が訪れてきた。
とは言っても、もしかしたら夢現に見た幻だったのかもしれないが――。
自分よりも年上の幼馴染に対して、熱にうかされた私は何かを口走る。
「ずっとリモーネのそばにいてくれるって言ったのに――シルヴァお兄ちゃんの――――――――――」
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