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本編
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しおりを挟む大牙くんが黙って話を聞いてくれている。
「――自分の信念があって、それを貫くためにその仕事を選んでるんなら――医者でも弁護士でも、警察でもコンビニのバイトやパートさん、アパレルでも在宅のお仕事でも――それこそヤクザでも教師でも――どんな職業であれ、カッコイイと思うんだ」
紛れもない本心だ。
「もちろん、病気やケガなんかで事情があって働けない人もいるだろうから、そういう人達はのぞいてね――きゃっ……!」
突然、大牙くんがぎゅっと私のことを抱きしめてくるものだから驚いてしまった。
そうして彼がぽつぽつと話しはじめる。
「それって……隠しごとしてたような俺でも――ありなの?」
今度こそ大牙くんが自分のことを尋ねてきた。
「もちろん、それこそ――大牙くんが大牙くんでありさえすれば、教師でも警察でも、それこそヤクザでも何でも良いよ」
そこまで言うと、少しだけ尖った雰囲気だった大牙くんの雰囲気がいつもの明るい雰囲気に戻った。
「まゆりちゃんも俺のことが好きなの!? 嬉しいな……!」
そこでハッと気づく。
どんな大牙くんでも好きって言ったようなものじゃん……!
内心慌てふためく自分とは違って、大牙くんは平常運転のまま、私をぎゅうっと抱きしめてくる。
「そういえば、やっぱり大牙くんはお金持ちのお家の息子さんだったの?」
「うん、まあ見ての通り、お金はあるかもね?」
大牙くんが不敵に微笑んだ。
もしかすると高校時代、それこそさっきの話みたいに……日本に身分差はないはずだけど、大牙相手に身分が釣り合わないとかご両親が言ったりしてたのかな?
(私のお家はサラリーマンのお父さんとパートのお母さんだから……)
そういう自分ではどうしようもないもので判断されてたんだと思うと悔しくはある。
そんな中、大牙くんの額が私の額にコツンとぶつかってきた。
綺麗な顔が目の前にあって、ドキドキして落ち着かなくなる。
「あ……」
「まゆりちゃん、ごめんね。十年前、俺は父親から『今のお前じゃあ彼女を幸せにできないから離れろ』って言われたんだ」
どうも十年前に自分から離れた時の話をしてくれているらしい。
「高校時代の俺は『できる』って宣言したんだけど――結局親父との賭けに俺は負けて――まゆりちゃんと離れることになってしまったんだ」
そんな裏事情があったなんて……
「ちゃんと、まゆりちゃんを守れて幸せにできる男になって迎えにくるんだって決めて。そこからは死に物狂いで頑張ったよ」
真摯な眼差しで見つめられるとドキドキして落ち着かない。
「今の俺は昔の俺とは違う。今の俺なら絶対に君を幸せにできる。牛口先生の色々も片づけて、とびきり素敵なクリスマスにしてあげる――その時、ちゃんと告白しなおすから」
「……ありがとう」
まだヨリを完全に戻したわけじゃないのに、なんだか元の彼氏彼女に戻った気持ちになったまま――
寮に辿り着くまでの車の中、大牙くんから優しく口づけられ続けたのでした。
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