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本編
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しおりを挟む高校時代に付き合っていた龍ヶ崎大牙。
クラスの隣の席に座っていた、ちょっとだけノリの軽い美少年。身長は170㎝前後ぐらい。髪染めをしたわけじゃないのに、ちょっとだけ色素の薄い髪ときりっとした瞳の持ち主で、愛嬌のある動物顔っていうのかな? 犬っぽい懐っこさもあるんだけど猫っぽさもある、なんだか女子にも男子にも好かれるような無邪気な印象が強い、そんな顔。
冬の制服の下にはパーカーなんか着てて、襟元からフードが飛び出したりしてる。
『兎羽まゆりさん、俺の分までプリントありがとう。お礼にこれ上げる』
制服のポケットにはいつも棒のついた丸いキャンディを潜ませていて、まるで猫みたいな動きで私に差し出してくる。
まゆりにだけズルい何でって女子生徒たちの間に波紋を呼んだんだっけ。
『ねえねえこの音楽、可愛いんだよ、まゆりさんも聞いちゃう?』
今は絶滅危惧種になりつつある、コードありのイヤホンの片耳を貸してくれたりして。
いつでもご機嫌な調子で、授業も聞いてるんだか聞いてないんだか分からない感じのくせに、成績はすこぶる良くて学年主席、スポーツテストなんかでも上位に食い込んでいた。得意のバスケをさせたら、動きが素早いものだから、ガンガンゴールを決めてたなって思い出す。
『ねえねえ、兎羽まゆりさん、俺さ、君のことが好きなんだよね』
『え?』
『体調悪いやつ見たら、保健室に連れて行ってあげるしさ。授業も真面目に受けてるし、クラスの話し合いなんかの時にもさ、言葉を選んで皆がちゃんと言えるように配慮したり優しいなって』
『それは誰かがやらなきゃいけないことだから……』
『あとさ――俺が欠席した時のノートのコピーとったりしてくれてたでしょう? 真面目で優しいなって。結構ドキドキしたんだよね。だからさ、試しに付き合ってみない?』
茶目っ気のある笑顔とフランクな口調で心にするっと入ってくる感じ。
机の上に突っ伏しながら、上目遣いでこちらを覗き見してこられたら、胸がキュンとなってしまった。
女子でいうなら小悪魔とかあざとい感じの仕草を平然としてくる男の子。
中学時代にも結構モテてたみたい。
同年代の男子たちからすれば、ちょっとだけ女性慣れしていて……
『本気だって信じてよ。ああ、それともあんまり信じてくれない?』
『ええっと……』
『ああ、ごめんごめん、君のさ、そういう困った顔見るのが好きなんだよね』
老若男女問わずに愛されそうな笑顔を向けられるとドキドキして落ち着かなかった。
大牙くんは冗談か本気なのかよく分からない話し方をしてくるし、私のことを揶揄ってくるし、時々意地悪なのかなって言い方だってしてくるし……
最初は嘘告白でもされてるのかなって断っていたんだけど、同じ調子で何度もめげずに口説いてくるものだから、せっかくだからと付き合ってみることにした。
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